【ボイスドラマ化全三部作】突然変異~mutation~【Youtube】
第八話 長閑-4
「あなたの方がプロとして失格なのではないですか? 木村さん」
入ってきたのは先ほどまで対談をしていた有村だった。
木村は有村の顔を見るなり、「しまった」という顔をする。
「報道では聞いていましたが、まさかここまでとは思いませんでした。がっかりですよ。木村さん」
木村は俯く。
「なんとか言ったらどうですか?」
木村は少しずつ自分の言動について話し始める。
「カメラ回してもらえますか?」
木村は自分の会見のためにカメラをその場で回すよう頼む。
そして、カメラマンは木村にピンスポットを当てる。
「視聴者の皆様、この度は私事で世間を騒がせてしまい、申し訳ございません。
週刊誌に掲載された記事も全て本当です。
私の態度が変わったのには理由があります。
先ほど対談をさせていただいた有村さんのニュースが連日続き、苛立っていたことが一点目です。
私の周りには支えてくださる方がたくさんいます。スタッフさんやマネージャーさん、そして大事な大事な仲間がいます。
この場所で仲間の名前を挙げるわけにはいきませんので割愛させていただきますが、とにかく私の周りはいい人ばかりでした」
木村は涙ぐみながら言葉を紡いでいく。
「そんな中、私は大病を患ってしまいました。
マネージャーさんにも伝えていなかったのですが、一応、今クールでこの業界から離れることを決意し、その旨をマネージャーさんには伝えていました。
とにかく私には時間がない! というそんなプライベートなことを周りに当たってしまったことは反省すべき点であります。
本当に申し訳ありません。正直なところを話すともう長くはなさそうです。
皆さんに当り散らしておいて自分はいなくなる。なんてひどい終わり方だなと思いましたが、自分の感情とは裏腹に態度は日に日に焦る一方でした。
本当にすいませんでした。この場をお借りして謝罪させていただきます」
木村の涙の謝罪会見にテロップが画面上には流れる。
【ニュースキャスター 木村真衣さん 大病患い芸能界引退へ】
元に戻ると木村や深沢がいなくなってしまう。
だから、木村は今しておきたいことを、今伝えておきたいことをどういう形で周りに知らせていくかを試行錯誤していてああいう普段とらないような行動でしか表せなかったのかと一本の線につながっていった。
そういうことなら自分があの時DSGを飲んだことが全てを動かしてしまったんだと強く後悔した。
それでも、木村は前向きだった。
いつもニコニコしていてモデルデビューが決まった時もまるで子供のように嬉しがって、いや、現実に嬉しかったのだろう。
無邪気な木村がここまで悪態をつくことは誰もわからなかったのだ。
ここで一番に川島が気付くべきだったのにそれすらも気付けなかった自分が情けないと彼は思っていた。
カメラが止まると、木村は泣き崩れた。
こんなカタチで最後になってしまったことと生活がもう出来ないということの二つが大きくのしかかっていたのだ。
大病と言うのは嘘だったが、事実上「大病」と言われても変わらないものだった。
そんな木村を見てすかさずマネージャーの高木がそばへ寄る。
泣き崩れている自分が見つけた原石を自分の手で磨き続けてダイヤモンドに変えた素敵な財産を失うことが悔しくて悲しくて切なくなって木村の横で一緒に涙をこぼした。
そして、彼女は車で木村を送ってくれた。
「真衣ちゃん、本当にお疲れ様。今までこんな私のそばでずっと一緒に動いてくれて感謝してるわ。至らないマネージャーでごめんね。異変に気付いた時にもっとちゃんと話をしていればこんなことには……」
高木はまだ苦しそうだった。
そんな言葉を聞いて返事をする。
「高木さんのせいじゃないです。事実、言ってもどうしようもないことだから黙ってるって決めてましたから。だから、悪くないです。悪くないんですよ、誰も」
木村はもう涙を拭いて前の道をずっと見つめていた。
川島は最後の「誰も」というのは自分のことだろうなと感づいていた。
そして、家に着いた。
「はい! 到着! 真衣ちゃん、病院にはお見舞いに行くからね!」
高木は最後ぐらいは元気に送り出そうと思い、最高に満面の笑みで木村に言葉を投げかけた。
それを聞いた木村は入院もしないし、大病も嘘だったため、少し残念そうな顔をしながら返事をする。
「ごめんなさい。高木さん、面会謝絶でお見舞いは身内しか入れないんです。だから、その、ありがとうございました! 御手紙ください! 読んで返しますので!」
最後くらいはついてもいい嘘をついて高木との別れをした。
入ってきたのは先ほどまで対談をしていた有村だった。
木村は有村の顔を見るなり、「しまった」という顔をする。
「報道では聞いていましたが、まさかここまでとは思いませんでした。がっかりですよ。木村さん」
木村は俯く。
「なんとか言ったらどうですか?」
木村は少しずつ自分の言動について話し始める。
「カメラ回してもらえますか?」
木村は自分の会見のためにカメラをその場で回すよう頼む。
そして、カメラマンは木村にピンスポットを当てる。
「視聴者の皆様、この度は私事で世間を騒がせてしまい、申し訳ございません。
週刊誌に掲載された記事も全て本当です。
私の態度が変わったのには理由があります。
先ほど対談をさせていただいた有村さんのニュースが連日続き、苛立っていたことが一点目です。
私の周りには支えてくださる方がたくさんいます。スタッフさんやマネージャーさん、そして大事な大事な仲間がいます。
この場所で仲間の名前を挙げるわけにはいきませんので割愛させていただきますが、とにかく私の周りはいい人ばかりでした」
木村は涙ぐみながら言葉を紡いでいく。
「そんな中、私は大病を患ってしまいました。
マネージャーさんにも伝えていなかったのですが、一応、今クールでこの業界から離れることを決意し、その旨をマネージャーさんには伝えていました。
とにかく私には時間がない! というそんなプライベートなことを周りに当たってしまったことは反省すべき点であります。
本当に申し訳ありません。正直なところを話すともう長くはなさそうです。
皆さんに当り散らしておいて自分はいなくなる。なんてひどい終わり方だなと思いましたが、自分の感情とは裏腹に態度は日に日に焦る一方でした。
本当にすいませんでした。この場をお借りして謝罪させていただきます」
木村の涙の謝罪会見にテロップが画面上には流れる。
【ニュースキャスター 木村真衣さん 大病患い芸能界引退へ】
元に戻ると木村や深沢がいなくなってしまう。
だから、木村は今しておきたいことを、今伝えておきたいことをどういう形で周りに知らせていくかを試行錯誤していてああいう普段とらないような行動でしか表せなかったのかと一本の線につながっていった。
そういうことなら自分があの時DSGを飲んだことが全てを動かしてしまったんだと強く後悔した。
それでも、木村は前向きだった。
いつもニコニコしていてモデルデビューが決まった時もまるで子供のように嬉しがって、いや、現実に嬉しかったのだろう。
無邪気な木村がここまで悪態をつくことは誰もわからなかったのだ。
ここで一番に川島が気付くべきだったのにそれすらも気付けなかった自分が情けないと彼は思っていた。
カメラが止まると、木村は泣き崩れた。
こんなカタチで最後になってしまったことと生活がもう出来ないということの二つが大きくのしかかっていたのだ。
大病と言うのは嘘だったが、事実上「大病」と言われても変わらないものだった。
そんな木村を見てすかさずマネージャーの高木がそばへ寄る。
泣き崩れている自分が見つけた原石を自分の手で磨き続けてダイヤモンドに変えた素敵な財産を失うことが悔しくて悲しくて切なくなって木村の横で一緒に涙をこぼした。
そして、彼女は車で木村を送ってくれた。
「真衣ちゃん、本当にお疲れ様。今までこんな私のそばでずっと一緒に動いてくれて感謝してるわ。至らないマネージャーでごめんね。異変に気付いた時にもっとちゃんと話をしていればこんなことには……」
高木はまだ苦しそうだった。
そんな言葉を聞いて返事をする。
「高木さんのせいじゃないです。事実、言ってもどうしようもないことだから黙ってるって決めてましたから。だから、悪くないです。悪くないんですよ、誰も」
木村はもう涙を拭いて前の道をずっと見つめていた。
川島は最後の「誰も」というのは自分のことだろうなと感づいていた。
そして、家に着いた。
「はい! 到着! 真衣ちゃん、病院にはお見舞いに行くからね!」
高木は最後ぐらいは元気に送り出そうと思い、最高に満面の笑みで木村に言葉を投げかけた。
それを聞いた木村は入院もしないし、大病も嘘だったため、少し残念そうな顔をしながら返事をする。
「ごめんなさい。高木さん、面会謝絶でお見舞いは身内しか入れないんです。だから、その、ありがとうございました! 御手紙ください! 読んで返しますので!」
最後くらいはついてもいい嘘をついて高木との別れをした。
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