トカゲな俺の異世界迷宮生活
No.23 おっちゃん
『あーっ!何やってるんですか!』
我が家にそんな叫び声が響く。それは、俺がこの異世界迷宮に来て何度も繰り返されたことだ。リリナさんがドS発言を放って、それに俺とコーキが反論して………いたかどうかはさておいて。
とにかく、この叫び声は幾度となく繰り返されてきたものだ。放った人物が、リリナさんでなければ。
そう、普段とは立場が逆ということだ。
『なにって………見ての通りだけど?』
『そうッスよ。少しは近所迷惑も考えるッス』
『いやいやコーキ。その点は問題なくね?』
『そう言えばそうッスね。じゃあおもいっきり騒いだらいいッスよ、女神』
アハハと笑いあう俺達をよそに、当のリリナさんは沈黙する。というか、肩のあたりがプルプルと小刻みに震えはじめていて。
『………す』
『ん?何か言った?』
『さあ?聞こえなかったからもっかい言ってくれないッスか?』
『殺すっつってんですよが死になさいっ!』
『ひいっ!?な、何故ぶちギレモードに移行!?』
『女神と思いきや正体は鬼神ッスか!?』
突如ぶちギレモードに移行したリリナさんが俺達目掛けて、より正確には俺達の後ろの焼き魚目掛けて特攻をかますのだった………。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そして、一難去って。
苦労して俺とコーキで釣ってきた魚7匹を瞬く間に平らげたリリナさんは、満面の笑みを浮かべていた。
『ふぅ………生き返りました!』
『生き返りましたじゃねぇよ、俺らのご飯丸々平らげといてなに言ってんだ!』
『そうッスよ!オイラ達がやっとの思いで苦労して釣ってきたっていうのに!』
俺らの抗議を軽くスルーしたリリナさんは、部屋のすみで順調に育っているタール草の葉の上に腰かけ。そして、物理的に見下ろす状態でニヤッとドSにしかできない笑みを浮かべる。
『じゃあまた釣ってくればいいじゃないんですかねぇ?』
『あんな危険地帯でか!?正気かよ!?』
『そうッスよ!オイラ達の方がが何度補食されかけたことか!一体何様のつもりッスか?』
『女神様ですが、なにか?』
すっかり以前のドS女神へと戻ったリリナさんは、満足げな表情でうんうんと頷いている。というか、天界に1人でご飯食べに行ったんじゃ………?
『ハッ!そうッスよ!あんた1人だけ美味しいもの食べに行ったじゃないッスか!』
『ふっ、甘い考えですね。神様付き合いというのはそう簡単なものではないんですよ………っ!』
『要するに食べさせてもらえなかったのか?』
『………何をおっしゃるやら。よく分かりませんね!』
『じゃあ何で涙目なんだよ』
目の端に涙を滲ませたリリナさんは、どこか遠くを見て黄昏ている。だが、ここで「さすがに可哀想かもな………」とは思わないのが俺達である。
『ぷぷっ、人望無いんスね!』
『やめとけコーキ、そっとしといてやれ。あの性格じゃ友達いないのは目に見えてるだろ………?』
『そ、それもそうッスね………。すんません女神、ここは同情した方がよかったッスね………』
『そうだぞ。可哀想な女神様に友達ができるよう、せめて俺達だけでも祈って………』
そう結論に達した俺達が、憐れみと共に星に願いを届けようとしたその瞬間。ズッドン!という音を立てて、俺とコーキの間を何か危険な光線が通過した。
その出所はもちろん、女神どころか閻魔もかくやといった形相のリリナさんで。しかも、依然涙目で。
『いくら力を失ってるとはいえ、あなた達2人くらい簡単に消せるんですからね………?』
『『ごめんなさい、調子のりましたっ!』』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
リリナさんに消されかけた俺達は、逃げるように2層の湖へとテレポートしていた。というか、半ば追い出された。
『くっそ、あんな怒ることねーだろ………』
『ま、しゃあないッスよ。あの女神はよく分かんない存在ッスから』
『だな………』
思えば、あの女神様も出会った時からかなり変わったものだ。最初は慈愛に満ちた人だなぁと思ったりもしたが、今はただのドSである。
まあ、それだけ俺に心を開いてくれてるのかと思えば少し嬉しくもあるのだが。
『いやぁ、ただイジりやすいと思われてるんじゃないんスかね?』
『うっ………それは、まあ………そうかもな』
そう言われるとそんな気がしてくる。だとしたらかなりショックなのだが。
『まったく、もうちょいSっ気が無くなれば可愛いのになぁ………!』
そんな叶わない願望を口にしつつ、俺は近くに落ちていた石ころを尻尾で湖へと弾く。
その石ころは放物線を描いて宙を舞い、湖から突き出ていた茶色の岩へと当たり………。
ぶにょん、と弾かれた。
『『………え?』』
岩では有り得ない柔らかいカンジで弾かれた石ころを呆然と見つめる俺達。するとその柔らかい岩はドプンと湖へと消えた。
そして、徐々に俺達がいる岸辺へとさざ波が近づいてくる。
『ヤベェ、殺られる………ッ!?』
『どうするッスか、戦闘スか逃走スか!』
『んなこと言われたって………!』
俺達がそんなことを言っている内に、さざ波はすぐ側まで迫っており。
ドッパァン!と水しぶきと共に出現したのは、ウーパールーパーみたいな4本足の肺魚的な謎生物。
『ひいいっ!食べるならウチのいらない女神にしてくださいっ!』
『今ならタダで差し上げるッスから!』
必死で懇願する俺達をよそに、その肺魚的な謎生物は大きく口を開けると………。
『痛いやないか!まったく近頃の若いもんは礼儀っちゅうもんがなっとらんな!』
と関西弁で説教を開始するのだった。
我が家にそんな叫び声が響く。それは、俺がこの異世界迷宮に来て何度も繰り返されたことだ。リリナさんがドS発言を放って、それに俺とコーキが反論して………いたかどうかはさておいて。
とにかく、この叫び声は幾度となく繰り返されてきたものだ。放った人物が、リリナさんでなければ。
そう、普段とは立場が逆ということだ。
『なにって………見ての通りだけど?』
『そうッスよ。少しは近所迷惑も考えるッス』
『いやいやコーキ。その点は問題なくね?』
『そう言えばそうッスね。じゃあおもいっきり騒いだらいいッスよ、女神』
アハハと笑いあう俺達をよそに、当のリリナさんは沈黙する。というか、肩のあたりがプルプルと小刻みに震えはじめていて。
『………す』
『ん?何か言った?』
『さあ?聞こえなかったからもっかい言ってくれないッスか?』
『殺すっつってんですよが死になさいっ!』
『ひいっ!?な、何故ぶちギレモードに移行!?』
『女神と思いきや正体は鬼神ッスか!?』
突如ぶちギレモードに移行したリリナさんが俺達目掛けて、より正確には俺達の後ろの焼き魚目掛けて特攻をかますのだった………。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そして、一難去って。
苦労して俺とコーキで釣ってきた魚7匹を瞬く間に平らげたリリナさんは、満面の笑みを浮かべていた。
『ふぅ………生き返りました!』
『生き返りましたじゃねぇよ、俺らのご飯丸々平らげといてなに言ってんだ!』
『そうッスよ!オイラ達がやっとの思いで苦労して釣ってきたっていうのに!』
俺らの抗議を軽くスルーしたリリナさんは、部屋のすみで順調に育っているタール草の葉の上に腰かけ。そして、物理的に見下ろす状態でニヤッとドSにしかできない笑みを浮かべる。
『じゃあまた釣ってくればいいじゃないんですかねぇ?』
『あんな危険地帯でか!?正気かよ!?』
『そうッスよ!オイラ達の方がが何度補食されかけたことか!一体何様のつもりッスか?』
『女神様ですが、なにか?』
すっかり以前のドS女神へと戻ったリリナさんは、満足げな表情でうんうんと頷いている。というか、天界に1人でご飯食べに行ったんじゃ………?
『ハッ!そうッスよ!あんた1人だけ美味しいもの食べに行ったじゃないッスか!』
『ふっ、甘い考えですね。神様付き合いというのはそう簡単なものではないんですよ………っ!』
『要するに食べさせてもらえなかったのか?』
『………何をおっしゃるやら。よく分かりませんね!』
『じゃあ何で涙目なんだよ』
目の端に涙を滲ませたリリナさんは、どこか遠くを見て黄昏ている。だが、ここで「さすがに可哀想かもな………」とは思わないのが俺達である。
『ぷぷっ、人望無いんスね!』
『やめとけコーキ、そっとしといてやれ。あの性格じゃ友達いないのは目に見えてるだろ………?』
『そ、それもそうッスね………。すんません女神、ここは同情した方がよかったッスね………』
『そうだぞ。可哀想な女神様に友達ができるよう、せめて俺達だけでも祈って………』
そう結論に達した俺達が、憐れみと共に星に願いを届けようとしたその瞬間。ズッドン!という音を立てて、俺とコーキの間を何か危険な光線が通過した。
その出所はもちろん、女神どころか閻魔もかくやといった形相のリリナさんで。しかも、依然涙目で。
『いくら力を失ってるとはいえ、あなた達2人くらい簡単に消せるんですからね………?』
『『ごめんなさい、調子のりましたっ!』』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
リリナさんに消されかけた俺達は、逃げるように2層の湖へとテレポートしていた。というか、半ば追い出された。
『くっそ、あんな怒ることねーだろ………』
『ま、しゃあないッスよ。あの女神はよく分かんない存在ッスから』
『だな………』
思えば、あの女神様も出会った時からかなり変わったものだ。最初は慈愛に満ちた人だなぁと思ったりもしたが、今はただのドSである。
まあ、それだけ俺に心を開いてくれてるのかと思えば少し嬉しくもあるのだが。
『いやぁ、ただイジりやすいと思われてるんじゃないんスかね?』
『うっ………それは、まあ………そうかもな』
そう言われるとそんな気がしてくる。だとしたらかなりショックなのだが。
『まったく、もうちょいSっ気が無くなれば可愛いのになぁ………!』
そんな叶わない願望を口にしつつ、俺は近くに落ちていた石ころを尻尾で湖へと弾く。
その石ころは放物線を描いて宙を舞い、湖から突き出ていた茶色の岩へと当たり………。
ぶにょん、と弾かれた。
『『………え?』』
岩では有り得ない柔らかいカンジで弾かれた石ころを呆然と見つめる俺達。するとその柔らかい岩はドプンと湖へと消えた。
そして、徐々に俺達がいる岸辺へとさざ波が近づいてくる。
『ヤベェ、殺られる………ッ!?』
『どうするッスか、戦闘スか逃走スか!』
『んなこと言われたって………!』
俺達がそんなことを言っている内に、さざ波はすぐ側まで迫っており。
ドッパァン!と水しぶきと共に出現したのは、ウーパールーパーみたいな4本足の肺魚的な謎生物。
『ひいいっ!食べるならウチのいらない女神にしてくださいっ!』
『今ならタダで差し上げるッスから!』
必死で懇願する俺達をよそに、その肺魚的な謎生物は大きく口を開けると………。
『痛いやないか!まったく近頃の若いもんは礼儀っちゅうもんがなっとらんな!』
と関西弁で説教を開始するのだった。
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