トカゲな俺の異世界迷宮生活

本城ユイト

No.12 進化目指して

とりあえず八つ当たりも兼ねてコーキを実力行使で叩きのめした後。俺達は、例のチート野郎フロアボスを倒すために作戦会議を行っていたのだが………。

『何言ってるんスか!女はスタイルでしょ!?』

『そんなこと無いです!性格重視、これ基本!』

なんというか、会議はあらぬ方向へと突っ走り始めていた。まあそもそも、コーキの『女神なのにペチャパイなんスねぇー(笑)』という不用意な一言が発端なのだが。

事実、俺から見てもリリナさんはその………なんというか、あまり大きくない。だが、それ以前にこの2人の相性はあまりよろしくないらしい。

いや、普段は仲が良いのだ。
ただどっちも負けず嫌いだから、ひとたびこうなれば止まらなくなってしまう。

最近は何かとこれに振り回されるのだ………。
そして、決着のつかない戦いの向かう先は―――

『海翔さんはどう思います!?』

『どうなんスか、アニキッ!』

誰であろう、俺である。
またなのかよ、この展開。もう8回目だぞ。

しかし、ここを乗り越えなければ話は進まない。
ならばやるしかないだろう。

まあ俺としては、スタイルよりも性格よりも、相性重視だと思うんだがな。相性最悪だったら、ストレス溜まって別れるのがオチだろ。

『な、なるほど………。一理ありますね………』

『さすがアニキ………説得力があるッスね』

はい、しゅーりょー。
単にネットで拾った知識を展開しただけなのだが、思った以上に効果があってなりよりだ。ちなみに、何故俺がこんな知識を持っているかは、追及しないでくれるとありがたい。いや、ホントマジで。

世の中の童貞君の中には、心当たりがある人も居るのではないか?意味もなく、恋愛知識を集めた経験がある人が。まあいないかもしれないが。
俺はその1人だ。

『………?誰に何を言ってるんです?』

いや、何でもない。ただの独り言だよ。
それより作戦会議、その続きを始めようぜ?

『………まあ良いですけど。それに作戦って言っても地道にレベル上げくらいしか案無いですよね?』

『そっスね。もっとお手軽にパパッと強くなれたらいいんスけど………』

はぁ………と大きなため息が3つ、我が家に響く。
完全に無限ループへと突入した会議だったが、ここでコーキがボソッと呟いた。

『この世界ってー、《進化》とか無いんスかね?ホラ、ポ○モンとかであるじゃないッスか』

『………それですッ!!!』

コーキをビシッ!と指差して叫んだリリナさんは、興奮したのかパタパタと辺りを飛び回る。そして俺の頭の上へと降り立つと、話し始めた。

『進化しましょう、海翔さん!』

………いや、ちょっと待て。
進化?そんなのあるなんて聞いてないぞ。
というかそんな簡単に進化出来んのか?

『あっれー?言ってませんでしたっけ?』

てへぺろ☆と可愛く舌をだし、おどけて見せるリリナさん。いや、普通に似合うし可愛いけどな。というかそれよりも、まったく、これっぽっちも、1ミリも聞いてないんだが。

『そんな………。可愛いだなんて照れるじゃないですかぁ。まったく海翔さんは………』

いや、それはもうホントにマジでどうでもいい。
それより話を進めてくれ。

『………分かりましたよ、M翔さん。えーっと、要はポ○モンと同じですよ。レベルを上げて進化する、ゲームの基本です』

おっと、久しぶりに聴いたな、M翔。
なにそれそのあだ名定着してんの?いやだわー、定着させんなよ、気に入ったのか!?

というか前に『ゲームはよく分からないですけど』って言ってたよな?どういうことだよ。

『め、女神だってゲームくらいやりますよ!ちなみにマイブームはモ○ハンとバ○オハザードです』

『あっ、オイラもやってたッスよ、モ○ハン!』

おい止めろ、怒られるぞ。
誰にって大人の方々とかその辺りから!

というかどっちも俺が好きなやつじゃないか。
何?リリナさん天界に報告ーとか言ってゲームしてたのか!?超絶ズルい!

『だってー、この迷宮暇なんですよ。やることがないっていうか………』

うん、さすがの俺も殺意が湧いたよ。
俺がこんなに苦労してんのに、ズルいだろがッ!

『まあそんなことより、無事に進化目指して頑張りましょう?』

『なんか進化って響きがイイッスよね!』

上手く誤魔化された気がしてならないが、ここは早くも乗り気なコーキに合わせることにしよう。そして、とっととこの迷宮脱出してゲーム三昧だぜ!

………まあ、進化するのにどれくらい時間が掛かるのか分かんないけどな。

『ふっふっふ、その点は抜かりありませんよ。解決方法は既に用意してありますっ!』

ドバーン!と効果音が付きそうなほど、腰に手を当てて自信満々なリリナさん。その顔には、満面の笑みが浮かんでいる。

それを見て、俺は思った。

―――ああ、これまたしても面倒事になる予感。

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