異世界転移は分解で作成チート

神無木雷兎

第149話 ゼロの解析。

第149話 ゼロの解析。


「一一という事で、ゼロ先生対勇者様チームの模擬戦、スタートですっ!」

 ・・・まぁそんなこんなで、何故か勇者たちと戦うことになって訓練場に来た俺たち御一行。
 一応、勝手に訓練場使ったり本来あった授業をまるまる潰すわけにはいかないから、念の為、校長に聞いてみたところ、模擬戦も授業内容の一環だから問題ない、との事。

 たしかに、実践に優る経験はないとも言うし、模擬戦を見学する奴らも、戦い方を聞くだけよりは経験値は入る……よな?

 あ、ちなみに、本来の授業をまるまる潰しちゃう問題の方は、『ゼロの教えとる授業は、例え一時間くらい潰したとしても、やってる内容が進みすぎているから別に心配ないじゃろう。』とのこと。

 と、まぁ以上の理由により、勇者との模擬戦を止めるものは誰もいなかった。

 ・・・だからこうして現在。勇者と向き合っている、という事だ。・・・はぁ、まぁ察した通りだわ。


 ・・・まぁ決まったもんはしょうがないし、とりあえず模擬戦が始まったわけだから今は模擬戦に集中しようか。


 一一戦闘が始まり、まず勇者達は各自自身のポジションらしき所についた。

 雲海ウンカイが前に出てその後ろに時雨シグレ。さらに時雨の後ろに横並びになったミカド丸井マル。そして、さらにその後ろに白銀シロガネ

(ふむ。雲海が前衛職の物理攻撃、時雨が後衛職達の守り、後衛職達が遠くから魔法攻撃、と言ったところか。かなりバランスのとれたチームってことか。)

 一一ゼロがポジションについて考察をしていると、雲海が攻撃を仕掛けてきた。

 一秒のうちに2~3回の剣撃がゼロを襲う。

「ゥリャァ!」

 ゼロはそれを動じずに半身で避け、次の攻撃も同じく軽く避ける、避ける、さらに避ける。

「くッ!」

「……ふむ。剣の重さによる力の制御、剣自体の切れ味と重さを活かした技、避けられた際の次いでの攻撃。・・・見事だな。さすが勇者と言ったところか。」

 俺は避けながら雲海の攻撃について賞賛していると、雲海は額に汗を浮かべながらも顔に喜色を浮かべた……所で、俺はそのまま「だが」と続けて

「動きが単調すぎる。まるで教科書に書いてあることをそのままくり出しているようだな。」

 と、そう言った。

 雲海はそれを聞いてやや思い当たるところがあるのか、少し苦い顔をしたが、すぐさまに横に飛び避けた。

「“火炎弾フレアバレット”!」

 すると、目の前に突然火の球、いや、炎の弾丸が現れて、俺に向かって発射された。

 俺はすぐさま帝さんが撃った魔法だと理解し、炎の弾丸を“凍らせ”た。そして、俺はすぐさま動くことはせず、その場に佇む。

「ふむ、なるほど。俺が雲海に集中してるのを利用して横に避けることで視線をずらして魔法攻撃を仕掛けてダメージを与えるって寸法だったのか。」

凍結せし空間フリーズ・エリア
雷精霊の祝祭エレキ・カーニバル
終息の黒焔カース・フレア

 俺が立ち止まったことを好機と思ったのか、後衛職勢がいっせいに魔法を仕掛ける。

 すると、一気に周りは冷気に満ち溢れ、雷がそこらじゅうを踊り狂い、呪いがこもった暗黒の炎が俺に向かって飛んでくる。

(ふむ。ここは……そうだ。あれができるか試してみよう。・・・いや、確実にできるだろうけど。)

「『収縮』『炸裂』一応『弱化』」

 俺がそう唱えると、周辺の冷気と踊り狂う雷、そして暗黒の炎が一箇所に集まり、混じって空中に浮かび上がる。
 一一と、その直後。とてつもない爆裂音と異常な程の爆風が起こる。

「おぉー、やっぱり出来たか。他人の魔法でも。ってか弱化してこれだったら弱化しなかったらどうなってたんだろう。・・・弱めてよかった。」

 あ、わかると思うが、解説だ。
 俺が今しがたやったのは他人の魔法の制御、というか命令だ。やっぱり思った通り出来た。さすが俺。

「っと、んじゃそろそろ俺も反撃開始と行こうかねぇ。さっきの爆発は反撃の合図って所かな?」

 俺がそういうと、勇者達は再度体制を整え、気を引き締めて俺の攻撃に耐えようとしていた。

「まずはさっきから攻撃をしてこなかった時雨くんからだな。」

 確か、時雨のジョブは聖騎士とかそんなんだったっけ? ってことは守り専門だよな。よし、ならそれにあった攻撃をしてやるか。

「まずは速さからだ。俺の速度に対応できるか?」

 俺は常人なら理解できないようなスピードで時雨に攻撃を仕掛ける。
 時雨は俺の初速スピードに一瞬戸惑ったようだが、すぐさま理解して攻撃を防いだ。

「ッッッ!!」

「おけ、なるほど。だいたい分かった。動体視力、腕力の強弱、瞬間的な決断力はなかなか良い方だな。
 だが、力の受け流し方がまだまだだな。無意識的なもので多少は流せているが、意識下では無理か。
 まぁそこら辺は努力次第ってところか。」

 俺は一瞬のうちに解析をすると、時雨の後ろの3人組……のさらに後ろから3人組に攻撃を仕掛ける。

 とりあえずこっちに視線を誘導するため、魔力波を3人にぶつける。(魔力波とは簡単に言えば魔力の振動)

「なっ!?」
「きゃっ!」
「えぇっ!?」

 3人は突然の衝撃に戸惑いながらもこちらに気づいて気を締め直す。

「とりあえず『魔核弾エネルギーボール』」

 俺はそんなのも気にせずとりあえず感覚で攻撃を仕掛ける。

「『反射結界リフレクト』」
「『守護精霊の護りフェアリー・ガーディアン』」
「『魔吸結界ドレイン・バリア』」

 三人は三者三様の守り方をして攻撃を無効化した。
 帝は反射して俺に魔法を返し、白銀は普通に防御して攻撃を消し、マルは魔法を吸収して魔力を回復した。

 あ、ちゃんと反射されたやつは消した。

「よし、把握した。
 まず最初に帝さんは魔法の威力や状況に応じた魔法の発動は完璧と言ってもいい。が、扱いが完全にスキル便りになってる。
 たしかに、スキルがあれば便利だが、それだけに頼るのはそれ以上の成長を止める行為でもある。ある程度は自分の意識下で操作できるようにしようか。」

 と、ここで時雨が攻撃を仕掛けてきた。とりあえず、避けて時雨との間をあける。

 俺は避けながらも白銀さんの評価に入る。

「次に白銀さんは魔法の威力、魔法の制御、精霊との調和性は中々のものだ。
 だが、魔力の消費が荒すぎる。たかだか中級程度の魔法に対して、防御するだけなのに高レベルの防御魔法を使うのはどうかと思う。
 もしも守りきれなかったら、と不安になるのもわかるが、ちゃんと場面場面に応じた魔法の消費ができるように努力しようか。」

 俺が避けながら評価をしていると、時雨に続き、雲海も攻撃してきた。そして、魔法使い達も負けじと魔法で攻撃してくる。しかし、先程言ったポイントはまだまだ直っていない。

「最後に丸井。お前は隙という隙がない。魔法の威力もさながら、思考力、物理的能力もまぁまぁ高い。……ある意味、後衛職の中でかなり強い部類に入ると思う。まるで人じゃないみたいだな。
 ・・・が、その力に溺れてやや傲慢になっているようだな。いや、傲慢になるのは別に悪いことじゃないが、強くなりすぎて他者を見下しがちになっている。
 確かにお前は強いが、お前の力は傲慢になっては意味をなさない。もっと相手を知るように努力しろ。」

 ・・・人じゃないみたい、と、言ったところで他の生徒達から『お前が言うな』と、思念が飛んできた気がした。

 そして、マルはその言葉を聞いた瞬間、一瞬の硬直を見せた。が、すぐさま気を取り直し、魔法を打ち続けた。

 ・・・あ、ちなみに、なんでわざわざこんなに説明まがいなことをしているかって言うと、仮にとはいえ授業として模擬戦をするんだ。
 だからできる限りはちゃんと指導をしようと思ってな。

「・・・と、こんな感じで勇者達全員の分析が終わったわけで。
 ……こっからは俺も本気を出していく。みんな、気をつけろよ?」

 俺が満面の笑みで、勇者たちに向かってそういうと、勇者達の額に汗が浮かび苦しいような、絶望したような顔つきになった。

「HAHAHA。勇者達よ、そんなに嫌な顔をすんなって。安心しろ、俺も鬼じゃねぇちゃんと手加減はするさ。」

 勇者達はそれを聞いて少しほっとしたような、安心したような顔つきになった。
 ・・・が、

「・・・殺さなければ手加減だよね!」

 ゼロの最後の一言で勇者達は絶望を見たかのように顔を歪めた。・・・いや、実際に絶望しているのかもしれない。

 だが、ゼロは攻撃をやめるという選択はしない。なぜならそんな気分であるから。

 ・・・あぁ、勇者達よ。可哀想にどんまい



・雑談
 筆がノリに乗って久しぶりに少しだけ長くなりました! 後悔はしていない! あとこれ夜中に書いてるから誤字脱字あるかも。見つけたら報告お願いします! どうもテトです。俺は彼女を助けた!

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