シスコンの兄に通常の恋愛を求めてはならない。

うっしー

第1話世界一の妹


 俺は妹が好きだ。
アニメ・ゲーム・マンガetc.…
そんなもの妹に比べたら死肉に群がるハイエナ同然。俺は妹を愛している。世界中のだれよりも。

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 私の兄は極度のシスコンよ。
アニメ・ゲーム・マンガetc.…よりも私を愛している。キモすぎっ。本当にやめてほしい。まぁでも、少し嬉しいことないかな…
いや!やっぱり訂正!キモイキモイキモイ!



この物語は、極度のシスコンな兄こと田中トモヤと、世界一可愛俺の妹田中サキの二人の物語だ。


我が家、田中家は父、母、俺、妹の四人家族構成。元々は俺が小学生のときに昔の母と離婚して、今の母と再婚した。つまり、俺と妹は血の繋がりはない。初めて会ったのは母方の連れ子として、俺の家に来た時だ。当時俺は小学六年生で妹は小学四年生だった。当時の妹はとても、言葉で言い表せない可愛さだった。俺は一目惚れした。それからの俺は、強くかっこいい兄(男)になるために、今までやったこともないスポーツを始め、武道を始め、美容院に通い、服もしまむらを卒業した。妹がオタクが嫌いという情報を聞きつけたときは、大好きだったアニメ・ゲーム・マンガ全てを封印までしたというのに…

なのに…なのに…なぜなんだ!!!

学校で話しかけても無視!
登下校中に話しかけても無視!
終いには家の中でも無視!
お兄ちゃんのヒットポイントはもう0だよ。
なんで、俺はこんなにも妹を愛してるのに…
あぁ、サキ!サキ!サキィイイイイイ!!!

「おい!」
「うわぁっ!」
いきなり大声をあげたのは親友の島田ショウタだ。
「おーい。何ボーとしてるんだよ。」
島田は良い奴だ。めんどくさがり屋なのに、俺の妹惚気話はちゃんと最後まで聞いてくれる。
「どうせまた妹のサキちゃんことでも考えてたんだろ?そういうのは家でしろよなー。学校の昼放課は俺の話し相手になってくれ。」
ニヤニヤしながら島田が言う。
「俺は年がら年中サキのことしか考えられないの!」
「出たよ。最強のシスコン。」
そんなバカ話をしていたとき、ふと島田が窓の外をみた。
「あれ?あそこにいるのサキちゃんじゃね?」
「なにぃ!?」
俺は血走った目で窓の外に目をやる。
間違いない。サキだ。俺がサキを見間違えるはずがない。しかし、まずそもそもサキがそこにいること自体別になんの問題もない。俺ら兄妹が通ってる学校は中高一貫の私立北来学園。とんでもなく広いグラウンドを中等部の校舎と高等部の校舎で挟んでいるようになっている。そして、昼放課は週別に中等部か高等部どちらが使うかを分けている。今週は中等部の週だ。別にサキがいたってなんの不思議もない。ホントなら今すぐ会いに行って、力の限り抱きしめてやりたいがそんなことをしたら縁を切ると言いかねないのでやめておこう。
そしたら、島田がなにか気づいたような素振りを見せた。
「あれ?なんか男子と話してね?」
「なぁにぃぃぃぃい!?」
「もしかしたら愛の告白だったりして♡」
からかい半分のつもりで島田は言ったのだろうが、俺に妹関連のからかいは通じない。
クソっ!今すぐ止めてやる。俺は島田を置き去りにして教室をでて、サキがいるグラウンドへ走り出した。
「あーあ。いっちゃった。これだから極度のシスコンは。サキちゃん可哀想」
島田は呆れたような顔をしてまた、ニヤニヤ笑っていた。
クッソ!サキは俺のもんだ!誰にも渡してたまるもんか!…………………見えた!
「俺の妹に何してんだァァ!!!」
怒鳴りつけながら俺は二人に近づいた。
「え!?お兄ちゃん!?」
サキの声がした。やっぱり可愛いなぁ…
いや!今はそんなことを思ってる場合じゃない!お兄ちゃんがいま魔の手から救ってやるからな!
俺はサキと男子のあいだに割って入った。
「ちょっと!なにしてるのよ!」
妹が強い口調で俺に話しかける、
「なにって、俺はお前を助けるために来たんだよ!」
「はぁ?」
サキは俺を訳がわからないという顔をして見つめた。
「アハハハハッ」
その時、ムカつくほどに爽やかな笑い声がした。声の主は、サキと話していた男子だった。……ん?こいつ、たしか中等部のくせに高等部まで噂が伝わってきてる高身長で金髪ハーフ、オマケには全国大会に出場したうちの中等部サッカー部のエース通称<ハイスペックイケメン>八王子タクトじゃねぇか!!
なんで、こんなハイスペックイケメンが…いや確かに俺の妹の美貌は宇宙一だけど!こんなんじゃ俺勝てる要素ひとつもねぇじゃないか。
「本当にシスコンなんですね。田中さんのお兄さん。」
爽やかな笑顔で話し出すタクト。
「やめてよ。こんな恥ずかしいだけなんだから。」
サキが口を挟む。
「それで、お兄さん。なにか勘違いしてませんか?」
今こいつ、俺のことお兄さんと呼んだ?おいおいこいつら一体どこまで進展して……ん?勘違い?
「勘違い?お前がサキに愛の告白してたんじゃないのか?」
「はぁ?」
サキが驚いて大声を出した。
「ばっかじゃないの!?私は友達のリカにタクトくんに手紙を渡してって頼まれただけ!

サキが俺に説明してるときにちょうどチャイムがなった。昼放課の終了を知らせるチャイムだ。
「え、もう終わり?全然遊べなかったじゃない。とりあえずそういうことだからもう学校では話しかけないでよね。お兄ちゃん。」
と言い残すとタクトと一緒に中等部の校舎に戻っていった。

…よかった。俺の勘違いだったのか。よかっ……え?まてよ。手紙を渡しって頼まれるほど仲がいいってこと?えぇえお兄ちゃんショック!!

**************************
トモヤとわかれて、中等部に戻る途中。
「ねぇ田中さんひとつ聞いていい?」
「なぁに?タクトくん」
「田中さんはお兄さんのこと嫌いなの?」
「え?え、別に嫌いじゃないけど…」
顔を赤らめたサキ。
「へぇ、じゃあ手ごわいライバルになりそうだな……」
「え?今なんて言ったの?」
「なんにもだよ!ほら早く戻ろ!」
「えぇ教えてよぉ〜」        
      
   2話に続く

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