主徒リングの契約

雪村 ましろ

私と貴方の出会い。

私は雨の中ひとり、暗い夜道を歩く。
「今日も…死ねなかった。」
この言葉を呟いたのは何回目だろうか?
そういえば、私はもう何年生きているのだろうか?
いつになったら死ねるのか…
暗い暗い闇のなかをさまよう私は、一体誰なんだろう。
怪物…。
心の中で私が答えた。
私は怪物か…何をしてもされても死なず、寿命があんのかすら分からない。


私は恋鈴。
歳も苗字も、もう覚えてない。
覚えているのは名前と、毎晩夢に出てくる歌。
けれど、歌おうとしても口づさめない。
何故か声が出なくなる。
頭の中では永遠とリピートしているのに。


「雨…冷たいな」
まるで私のようだ。
私のように、冷たく暗く寂しい…。


「大…丈夫…?」
「え…?」
バサッと大きな傘を私に差し出したのは…誰?
いや、この人は…人じゃない。
「雨、寒い?大丈夫…?」
薄明かりに照らされて私と貴方は初めて自分以外の怪物に出会った。

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