イタダキマス〜とりあえず魔王の手下になって世界作り直します!あれ?なんかループしてない?〜

駅構内の狂っぽー

夢のエルフ村は何処へ

目が覚めると、やはり地面の裂け目の中にいた。まぁ夢オチとか現実にはありえないし、どうしようもないか。だが、思うところはある。どうせ異世界に来たんだったらエルフに会いたい。いやエルフ村に行きたい。金髪のエルフに会いたい。そこまで妄想の世界が膨らんだところで現実の世界から何者かの足音がした。ザッザッザッと4つ足音が続いたところで、足音は止まった。目を閉じたままやり過ごせるかな?とか思ってた僕が甘かった。
「大丈夫かー?行き倒れだ。おーい誰か、こいつを荷台に載せるから手伝え。」んー?載せられるのか、荷台に。中々複雑な心境だ。適当なタイミングで目を覚ますか。
「おい、どうしたフレッド?行き倒れか?ん、白髪の少年か。珍しいが人間か?しょうがない村まで連れていこう。母さんがイライラしてないといいが…」
なんか優しそうだ。二人組か、荷台ってことは馬車か、台車だな。商人なのかもしれない。鑑定スキルとかあればわかるのかもしれないな、職業とか。ただ使い手がいないと模倣でも取れないからどれぐらいレアなのかとか、ラノベでよく出てくるスキルは再現出来ないかもしれない。まぁほぼチートだしな。やばい、目つぶってたらだんだん眠たくなってきた。台車の上とか快適だったのか…そして眠りについた。しばらくして起きた。
「は、よく寝たぁ、ここは建物?いやどちらかと言えば洞窟か。」
周りを見回してみれば、ゴブリンとしか言いようがないファンタジーな生き物が1、2、3、4匹。思ったよりもふっくらしてる。肌が緑でつり目、耳が長くて身長が僕よりも少し小さい。theゴブリンと言えるこの生き物は洞窟で生きているのか。珍しいケースなんだろうか。ただひとつ言えるのは、村というかこの場所が1つの集落として機能していること。そして現代には遠く及ばないが、文化的な生活をしている事だ。それがかなりすごいもので今、僕がいるのはおおまかに言えば洞窟だが、その中にも10数個の小さな穴になっていてゴブリンの出入りが激しいところを見ても、店舗兼居住スペースになっている。そして1つ問題だと言えるのがスキルの習得速度だ。目を開けた瞬間からものすごい速度でスキルが仕事をしている。というのも半端ない凄さで頭の中を音が余すところなく埋めていく。耳が痛い、頭は今なっている音と残響でいっぱいになって今にも自分で割りそうだ。しばらくすると、だんだん声は無くなってくる。結局聞き取れたのは最後の1つで、

五感スキル 《耳》 が覚醒しました。気配察知などのスキルは 《耳》に統合されます。

よくわかんない。多分、気配察知とかそういう斥候的なスキルのマスタリだったりするのをまとめるのが五感の内の1つの耳なんだろうな。ひとまず外へ出て、色んなスキルを手に入れよう。ベットから起き上がり考えながら歩く。それにしても幸いだったな。集落に来られるとは、ある程度魔物や人が集まるということはそれだけ色んなスキルを持った者がいるってことだ。ほぼ奇跡に近い。元々いた家から3軒ほど歩いたところで後ろから呼び止められた。
「おーい、そこの人!もう大丈夫なのかい?」
そこに居たのはゴブリンの女性だった。(何人かゴブリンを見ているが男女ではほとんどの場合服装以外には差が見られなかったので服装で判断した。)恐らく僕を助けてくれた家族のお母さんだろう。
「あ、ありがとうございます。怪我とかはしていないので。体は大丈夫です。ただすきっ腹だけは手なずけられないみたいで…あはは、命の恩人にそんなこと言うもんじゃないですよね。すいません、」するとお母さんは、「なんだ腹が減ってるのかい。じゃあうちのフレッドと一緒に狩りに行ってきておいで。流石にうちもタダで飯を食わせてやれるほど裕福じゃないんだ。でもこんなんでも一応宿屋だ。好きなだけ泊まりなよ。」
この人は宿屋か。スキルをある程度集めるまでここを拠点にするか。女将さんにフレッドのいる場所を聞くとオマケにパンと干し肉をくれた。この洞窟の端の苔が生えているスペースには小型の羊のような魔物がいるそうで、そこでフレッドは毎日剣を振るっているらしい。苔むした岩の上に座っている、ゴブリンの少年を発見したのはそれから5分くらい後のこと。
「おーい、君がフレッド君かい?」
ゴブリンの少年はこちらを向いて頷く。
「僕はキョウセイ カナザワ、君の家の宿に今日から泊まることになったんだ、宜しくね。」
名乗る時にラノベでは異世界の名前は並びが逆だと気づいた。
「ん、母さんから聞いてる。お前は武器持ってないの?」
「まぁ見てればわかるよ。」
鋼鉄化には自信がある。そしてフレッド君の反応を見てどれくらい強いのかの基準にしてみよう。
「じゃあまず俺からね。あそこのショックゴートから行くよ?」
なるほど、この魔物はショックゴートというのか。ゴートだからヤギか、騙された。モフモフしてる方がヒツジって言ったやつどこだよ、そんな残念な少年を前にゴブリンの少年はしっかりとした剣筋でショックゴートの急所を捉えていく。しかし幼体と言ったところか、1.2.3.4、と急所に入れているのにゴートはまだ倒れない。フレッドが追撃を入れようとした瞬間、ゴートはバックステップで1歩遠ざかり、スキル~縮地~ で一気に突進、これは危ないな。と思ってフレッドとゴートの間に入った。だがふと我に帰った。衝動的に動いてしまったため、このあとの動きを一切考えていなかったのだ。ショックゴートはもう1度突進を試みようとタイミングを伺っている。まだ時間はある。そう思った時だった。可愛げのあるヒツジもどきの顔が歪んだ。縮地を使い、フェイントを仕掛けてきた。しかしヒツジもどきの目は捉えた。捕食者の目をした凶星の顔が禍々しく歪んでいることに。だが縮地の勢いはヒツジもどきにも殺せない。凶星の腕がキラリと光った。そして衝撃のタイミング、物はぶつかるとどちらかが凹む。そのどちらか・・・・が今回はショックゴートの頭だった。ショックゴートの頭の凹んだところから凶星の鋼鉄化された手刀が割って入る。これから何百回も繰り返す、肉を切り裂く初めての体験、その瞬間だった。

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