悪役令嬢は魔王の小鳥
10話
「ねぇ、あの人間知ってる?」
「人間?…ぁー、あの真っ白な!」
「そうそう、それ。」
魔王城内はとある人間の噂でもちきりになっていた。
魔王様に侍り寵愛されようとする、真っ白な醜い女…そんな、噂で。
最初は白い髪の人間が魔王様のペットとなった、という話だったのだが…やはり言葉というのはあやふやな物だな。尾びれや背びれをつけていつの間にこんな話になったのやら。
………魔王様のお耳に入ったりすれば…激怒するかもしれない。
魔王様は誰が見てもあの人間…マリアンヌを溺愛していることは一目瞭然だ。わざわざ隣の部屋をマリアンヌの部屋にし扉を繋げるということをしているしな。
それにあんなお顔、見たことないというのに…!!!
何百年と仕えてさせていただいてきたが…あいつが来てから初めて見るお顔ばかりだ。…なんというか、敗北感を覚える。
……くそぉ………だが仕事に私情を挟んではいけない。実は魔王様からマリアンヌになにか害を与える者は取り除けとのご命令なのだ。だが魔族の者ならば命を取るな、と。…つまり、魔王様とマリアンヌの関係を公に伝えねばならない。
…主人とペット、と伝えるか…?……いや、余計な誤解を与えそうだ。…だがマリアンヌを未来の妃候補等と伝えれば…マリアンヌに被害が及びかねない。この城に人間に対する好印象を持つものはほとんどいないだろう。つまりそういうことだ。
………
「……どうするべきか…」
「あら、簡単じゃない」
「んぁ?…あぁ、ルジェロンか。」
ぽすっと私の座っている1人座りソファの手すりに寄りかかった。
恐らく無意識のうちに今考えていたことを独り言なんかで呟いていたのだろう。魔王様やルジェロンに地味に煩いとよく文句を言われていた…意識するようにせねば。
「それでなにかいい案があるのか?」
「えぇ。だってこのお城には馬鹿がいるでしょう?」
「……ぁー…まぁ、そうだな。」
馬鹿というのは私と結婚するまでルジェロンを虐めていたというか…虐めきれていなかったが陰口等を叩いていた魔物のことだ。実は魔物は互いを信用していない。唯一信用出来るのは魔王様の忠誠心のみ。みな魔王様に対する愛は異常だからな…それ故に魔王様に近しい者は嫌われることが多いのだ。特に女は。
「その馬鹿にも分かるように…こう言えばいいのよ。
『あの人間は魔王様が大層気に入っていらっしゃるからちょっかいをかければ魔王様に嫌われてしまう』…ってね」
ふふっと唇に指を当て楽しそうに笑うルジェロン。
…こいつは魔王様に関することじゃないと笑うことがかなり少ない。本当に希だ。
…私の事で笑ってくれたのは何年前だったか……
なんだか少し寂しいが、まぁ笑ってくれるだけありがたいか。
「…そうだな。そう言えば確実か…ん、ありがとう」
そう言って微笑めばむっと眉間にシワを寄せるルジェロン。なにか気に触ったか?
「…それじゃ、私は行くわね。魔王様があの人間にドレスを選んでほしいって。」
「…あぁ、またな」
くるりと踵を返してルジェロンは部屋を出ていった。……後で彼女の部屋に菓子を置いておこう。確か好きだったのは…マカロンだったよな。買ってこなければ…
「…もぉ…」
なんであの人は魔王様のことでしか笑わないのよ!いっつも魔王様魔王様ってぇ…私にも構ってほしいわ。
…だってさっきのありがとうって…ここ最近言ってくれなかったのに…魔王様の事になるとさらっと言って…たしかに、最近会話が少ないかもしれないから当然かもしれないけど…でも、でも……
……魔王様があの人間にするみたいにどろどろに甘やかして欲しいなぁ…でも、ベルフェルはそんなこと、しないだろうしなぁ…もー…
……気分転換にあの人間のドレス、いっぱい選ぼ。見た目は凄くいいから選びがいあるし……いつか、あの人間とも話してみたいかも。…どろどろに甘やかされるって、どんな感じなのか知りたいし。
…………ちょっとあの人間が羨ましいじゃないの。…腹立つ。
「人間?…ぁー、あの真っ白な!」
「そうそう、それ。」
魔王城内はとある人間の噂でもちきりになっていた。
魔王様に侍り寵愛されようとする、真っ白な醜い女…そんな、噂で。
最初は白い髪の人間が魔王様のペットとなった、という話だったのだが…やはり言葉というのはあやふやな物だな。尾びれや背びれをつけていつの間にこんな話になったのやら。
………魔王様のお耳に入ったりすれば…激怒するかもしれない。
魔王様は誰が見てもあの人間…マリアンヌを溺愛していることは一目瞭然だ。わざわざ隣の部屋をマリアンヌの部屋にし扉を繋げるということをしているしな。
それにあんなお顔、見たことないというのに…!!!
何百年と仕えてさせていただいてきたが…あいつが来てから初めて見るお顔ばかりだ。…なんというか、敗北感を覚える。
……くそぉ………だが仕事に私情を挟んではいけない。実は魔王様からマリアンヌになにか害を与える者は取り除けとのご命令なのだ。だが魔族の者ならば命を取るな、と。…つまり、魔王様とマリアンヌの関係を公に伝えねばならない。
…主人とペット、と伝えるか…?……いや、余計な誤解を与えそうだ。…だがマリアンヌを未来の妃候補等と伝えれば…マリアンヌに被害が及びかねない。この城に人間に対する好印象を持つものはほとんどいないだろう。つまりそういうことだ。
………
「……どうするべきか…」
「あら、簡単じゃない」
「んぁ?…あぁ、ルジェロンか。」
ぽすっと私の座っている1人座りソファの手すりに寄りかかった。
恐らく無意識のうちに今考えていたことを独り言なんかで呟いていたのだろう。魔王様やルジェロンに地味に煩いとよく文句を言われていた…意識するようにせねば。
「それでなにかいい案があるのか?」
「えぇ。だってこのお城には馬鹿がいるでしょう?」
「……ぁー…まぁ、そうだな。」
馬鹿というのは私と結婚するまでルジェロンを虐めていたというか…虐めきれていなかったが陰口等を叩いていた魔物のことだ。実は魔物は互いを信用していない。唯一信用出来るのは魔王様の忠誠心のみ。みな魔王様に対する愛は異常だからな…それ故に魔王様に近しい者は嫌われることが多いのだ。特に女は。
「その馬鹿にも分かるように…こう言えばいいのよ。
『あの人間は魔王様が大層気に入っていらっしゃるからちょっかいをかければ魔王様に嫌われてしまう』…ってね」
ふふっと唇に指を当て楽しそうに笑うルジェロン。
…こいつは魔王様に関することじゃないと笑うことがかなり少ない。本当に希だ。
…私の事で笑ってくれたのは何年前だったか……
なんだか少し寂しいが、まぁ笑ってくれるだけありがたいか。
「…そうだな。そう言えば確実か…ん、ありがとう」
そう言って微笑めばむっと眉間にシワを寄せるルジェロン。なにか気に触ったか?
「…それじゃ、私は行くわね。魔王様があの人間にドレスを選んでほしいって。」
「…あぁ、またな」
くるりと踵を返してルジェロンは部屋を出ていった。……後で彼女の部屋に菓子を置いておこう。確か好きだったのは…マカロンだったよな。買ってこなければ…
「…もぉ…」
なんであの人は魔王様のことでしか笑わないのよ!いっつも魔王様魔王様ってぇ…私にも構ってほしいわ。
…だってさっきのありがとうって…ここ最近言ってくれなかったのに…魔王様の事になるとさらっと言って…たしかに、最近会話が少ないかもしれないから当然かもしれないけど…でも、でも……
……魔王様があの人間にするみたいにどろどろに甘やかして欲しいなぁ…でも、ベルフェルはそんなこと、しないだろうしなぁ…もー…
……気分転換にあの人間のドレス、いっぱい選ぼ。見た目は凄くいいから選びがいあるし……いつか、あの人間とも話してみたいかも。…どろどろに甘やかされるって、どんな感じなのか知りたいし。
…………ちょっとあの人間が羨ましいじゃないの。…腹立つ。
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