ビースト・ブラッド・ベルセルク
魔の森
魔法学園アマテラスから少し離れた場所に魔の森と呼ばれる森がある。
隣国の境界となる広大な森には、魔獣と呼ばれる生き物が多数生息しており、独自の生態系を形成していた。
草木にが鬱蒼と生い茂る魔の森は、昼間でも薄暗く、夜になれば足元すら覚束ない様な漆黒の闇が広がる。
それは決して人が住み居る場所ではない事を示しおり、人の世との境界とも言えるかもしれない。
魔獣は危険な生き物である。
動物よりも遥かに大きい体と恵まれた身体能力。個体によっては魔法を使う事もあり、見つけ次第討伐することが望ましいが、そう簡単に倒せる程に弱い訳でもないため、基本的には冒険者と呼ばれる専門家に任せるしか無い。
魔獣と人とは相容れない存在でもあるが、同時に互いに恵みの存在でもある。
人にとっては貴重な素材として、魔獣にとっては食料として。
魔の森には素材を求め多数の冒険者と呼ばれる者が出入りし、定期的に間引かれており、魔獣が森の外に出る事はあまりない。例え森から出たとしても、冒険者ギルドから派遣された冒険者によってすぐに駆逐される事になる。
そのため表層部であれば比較的安全とも言えるが、奥側の深部、もっと奥に行けば深淵部と呼ばれる場所があり、そこには強力な魔獣が存在している。
深部、深淵部にいる魔獣は非常に強力で竜種などの幻想種と呼ばれる魔獣が存在していると記録上で確認されている。
記録上と言うのは最後に確認されたのが百年前となるため、現時点でも同じなのか誰も分からない。
深淵部ともなれば最上級の実力者が何人も居て、初めて探査が可能になるが、最上級の実力者を雇うとなれば幾らかかるか、考えただけで財政が傾きかねない。
百年前の大調査も国から少なくない金額が出資され、町も財政が傾くギリギリだったという。
それでいて、三十名の冒険者が派遣され、戻ってきたのは僅かに数名。分かった事は深淵部には幻想種が多数存在すると言う事のみである。
今では一部の実力者が必要に応じて素材を取りに行くだけになっており、それも決まったルートだけを通っているのが現状である。
深淵部に手を出すな。と言うのは世界共通の認識であると言えるだろう。
強力な魔獣は特定のテリトリーを持っており、基本的にはテリトリーを侵さない限り、自分のテリトリーから出てくることは無い。
手を出さなければ安全と言うことだろう。
一昔前は魔の森の魔獣を討伐する事が実力を示すステータスだった時代もあり、無残な死体を晒す学園生が一定数存在していたが、罰則はないものの学園は自主的に規制するように働き掛けていた。
そのお陰で学園生に限れば死者が減ったものの、依然として力試しに向かい、二度と戻ってこない者が毎年居ることも事実である。
そして、そんな森の中に一人の学園生が居た。
黒を貴重とした特徴製な服に、金属製のエンブレムが肩についている。
耐刃、対魔法に優れた特殊な素材であり、制服でありながら戦闘着としても使用出来るように工夫されている。
十夜は荒い息を吐きながら小さな人型の魔獣の首を刎ね、そのまま体を回し雄叫びを上げながら次の獲物へと走り出した。
そこには普段の気弱な姿は見て取れない。
獰猛で攻撃的な獣のようだった。
妹から逃げ出した十夜は一度部屋に戻り、武器だけを手に取るとすぐに部屋を出た。
向かった先は魔獣の住処である魔の森だった。
十夜とて学園の実習訓練の一環で何度も入ったことがあるし、自主的に入った事も少なくはない。
十分に用意をしていけば、魔法が禄に使えない学年最下位の十夜でも十分に戦える程度の実力は持っていた。
十夜が部屋から持ち出したのは片手の剣だった。それは刃を潰した訓練用の剣ではなく、切れやすくするために鋭く研いだ刃を持つ本物の剣だった。
尤も、貴重な金属を使ったような高いものではなく、一般的な量産品である。
魔獣を見つけては次の獲物を探すと言う事を十夜はずっと繰り返していため、幾つもの肉を切り骨を断った剣は、脂肪と刃毀れで『少しだけ切れ味の有る頑丈なノコギリ』以上の役割を果たしていない。
それでも魔獣の切り口が鋭利なのは十夜の技量が生半可ではない事を証明していた。
次は魔法的な効果の付いた剣にしないとダメだなと思いながら、大きな蛇型の魔獣に止めを刺し、十夜は次の獲物へと視線を動かす。
これが何匹目かは分からない。
剣を振るう度に、命を奪う度に、十夜の脳裏に何かの光景が思い浮かんでは消えていった。
それが何のかは分からないが、なんとなく失った自分の何かだというのがぼんやりと分かった。
十夜が覚えている一番古い記憶は病院の天井だった。
目が覚めた時、自分の事が何も分からない状態であることに、ああそうかと妙に冷静に受け入れた記憶がある。
心配気に見つめる男、無邪気な顔でお兄ちゃんと呼ぶ少女。母親は既にそこに居なかった。
最後の一匹となった狼の顔を持つ半獣半人の魔獣ーーーコボルトの首を突き刺した。
後ろを向けばゴブリンと呼ばれる魔獣や、獣型、ヘビ型など様々な表層部の魔獣が、十夜の軌跡を示すように無造作に転がっている。
荒い息を吐きながら自分は何をやってるんだろうと考える。軽々しく命を掛けて何をしたいんだろうと。
こんな事をしても強くはなれないと、冷静な部分が疑問を投げかけるが、心にくすんだ火が燃え上がり、激情が頭から離れない。
頭の中を覆う霧を晴らすようにひたすら剣を振るが、体力的にも精神的にも限界はとうに迎えている。
それでも体は動く。危険を察知すれば転げ周り、魔獣を見つけてた無我夢中に駆け寄った。血走った目を見れば自棄と言っても良いかもしれない。
数え切れない程の魔物と戦った十夜も無傷であるはずがなく、全身がボロ雑巾のように傷だらけだ。
訓練で殴打された箇所も完治はしていない。その上から新しい痛みが次々と増えていく。
回復しやすい体質が必死に傷を癒そうとするが、負う怪我のほうが圧倒的に多い。
それでも止まること無く十夜は森を進む。
  血の匂いを漂わせフラフラと歩く十夜は魔獣にとって美味しそうな獲物に見えるのだろう。誘われるように次々と魔獣が十夜に群がるが、十夜はその全てを屠っていった。
お腹が空けば魔獣の肉を喰らい、喉が乾けば魔獣の血を飲み、十夜はフラフラと森を彷徨った。
隣国の境界となる広大な森には、魔獣と呼ばれる生き物が多数生息しており、独自の生態系を形成していた。
草木にが鬱蒼と生い茂る魔の森は、昼間でも薄暗く、夜になれば足元すら覚束ない様な漆黒の闇が広がる。
それは決して人が住み居る場所ではない事を示しおり、人の世との境界とも言えるかもしれない。
魔獣は危険な生き物である。
動物よりも遥かに大きい体と恵まれた身体能力。個体によっては魔法を使う事もあり、見つけ次第討伐することが望ましいが、そう簡単に倒せる程に弱い訳でもないため、基本的には冒険者と呼ばれる専門家に任せるしか無い。
魔獣と人とは相容れない存在でもあるが、同時に互いに恵みの存在でもある。
人にとっては貴重な素材として、魔獣にとっては食料として。
魔の森には素材を求め多数の冒険者と呼ばれる者が出入りし、定期的に間引かれており、魔獣が森の外に出る事はあまりない。例え森から出たとしても、冒険者ギルドから派遣された冒険者によってすぐに駆逐される事になる。
そのため表層部であれば比較的安全とも言えるが、奥側の深部、もっと奥に行けば深淵部と呼ばれる場所があり、そこには強力な魔獣が存在している。
深部、深淵部にいる魔獣は非常に強力で竜種などの幻想種と呼ばれる魔獣が存在していると記録上で確認されている。
記録上と言うのは最後に確認されたのが百年前となるため、現時点でも同じなのか誰も分からない。
深淵部ともなれば最上級の実力者が何人も居て、初めて探査が可能になるが、最上級の実力者を雇うとなれば幾らかかるか、考えただけで財政が傾きかねない。
百年前の大調査も国から少なくない金額が出資され、町も財政が傾くギリギリだったという。
それでいて、三十名の冒険者が派遣され、戻ってきたのは僅かに数名。分かった事は深淵部には幻想種が多数存在すると言う事のみである。
今では一部の実力者が必要に応じて素材を取りに行くだけになっており、それも決まったルートだけを通っているのが現状である。
深淵部に手を出すな。と言うのは世界共通の認識であると言えるだろう。
強力な魔獣は特定のテリトリーを持っており、基本的にはテリトリーを侵さない限り、自分のテリトリーから出てくることは無い。
手を出さなければ安全と言うことだろう。
一昔前は魔の森の魔獣を討伐する事が実力を示すステータスだった時代もあり、無残な死体を晒す学園生が一定数存在していたが、罰則はないものの学園は自主的に規制するように働き掛けていた。
そのお陰で学園生に限れば死者が減ったものの、依然として力試しに向かい、二度と戻ってこない者が毎年居ることも事実である。
そして、そんな森の中に一人の学園生が居た。
黒を貴重とした特徴製な服に、金属製のエンブレムが肩についている。
耐刃、対魔法に優れた特殊な素材であり、制服でありながら戦闘着としても使用出来るように工夫されている。
十夜は荒い息を吐きながら小さな人型の魔獣の首を刎ね、そのまま体を回し雄叫びを上げながら次の獲物へと走り出した。
そこには普段の気弱な姿は見て取れない。
獰猛で攻撃的な獣のようだった。
妹から逃げ出した十夜は一度部屋に戻り、武器だけを手に取るとすぐに部屋を出た。
向かった先は魔獣の住処である魔の森だった。
十夜とて学園の実習訓練の一環で何度も入ったことがあるし、自主的に入った事も少なくはない。
十分に用意をしていけば、魔法が禄に使えない学年最下位の十夜でも十分に戦える程度の実力は持っていた。
十夜が部屋から持ち出したのは片手の剣だった。それは刃を潰した訓練用の剣ではなく、切れやすくするために鋭く研いだ刃を持つ本物の剣だった。
尤も、貴重な金属を使ったような高いものではなく、一般的な量産品である。
魔獣を見つけては次の獲物を探すと言う事を十夜はずっと繰り返していため、幾つもの肉を切り骨を断った剣は、脂肪と刃毀れで『少しだけ切れ味の有る頑丈なノコギリ』以上の役割を果たしていない。
それでも魔獣の切り口が鋭利なのは十夜の技量が生半可ではない事を証明していた。
次は魔法的な効果の付いた剣にしないとダメだなと思いながら、大きな蛇型の魔獣に止めを刺し、十夜は次の獲物へと視線を動かす。
これが何匹目かは分からない。
剣を振るう度に、命を奪う度に、十夜の脳裏に何かの光景が思い浮かんでは消えていった。
それが何のかは分からないが、なんとなく失った自分の何かだというのがぼんやりと分かった。
十夜が覚えている一番古い記憶は病院の天井だった。
目が覚めた時、自分の事が何も分からない状態であることに、ああそうかと妙に冷静に受け入れた記憶がある。
心配気に見つめる男、無邪気な顔でお兄ちゃんと呼ぶ少女。母親は既にそこに居なかった。
最後の一匹となった狼の顔を持つ半獣半人の魔獣ーーーコボルトの首を突き刺した。
後ろを向けばゴブリンと呼ばれる魔獣や、獣型、ヘビ型など様々な表層部の魔獣が、十夜の軌跡を示すように無造作に転がっている。
荒い息を吐きながら自分は何をやってるんだろうと考える。軽々しく命を掛けて何をしたいんだろうと。
こんな事をしても強くはなれないと、冷静な部分が疑問を投げかけるが、心にくすんだ火が燃え上がり、激情が頭から離れない。
頭の中を覆う霧を晴らすようにひたすら剣を振るが、体力的にも精神的にも限界はとうに迎えている。
それでも体は動く。危険を察知すれば転げ周り、魔獣を見つけてた無我夢中に駆け寄った。血走った目を見れば自棄と言っても良いかもしれない。
数え切れない程の魔物と戦った十夜も無傷であるはずがなく、全身がボロ雑巾のように傷だらけだ。
訓練で殴打された箇所も完治はしていない。その上から新しい痛みが次々と増えていく。
回復しやすい体質が必死に傷を癒そうとするが、負う怪我のほうが圧倒的に多い。
それでも止まること無く十夜は森を進む。
  血の匂いを漂わせフラフラと歩く十夜は魔獣にとって美味しそうな獲物に見えるのだろう。誘われるように次々と魔獣が十夜に群がるが、十夜はその全てを屠っていった。
お腹が空けば魔獣の肉を喰らい、喉が乾けば魔獣の血を飲み、十夜はフラフラと森を彷徨った。
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