話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

ビースト・ブラッド・ベルセルク

あひる300

魔法の講義

「あー何度も言うように魔法と言うのはイメージの力とも言われてる」

 午前中は座学の授業に充てがわれ、Dクラスの教室内では星川テレサによる魔法の講義が行われていた。
 教師と呼ぶには若すぎるように見え、火の付いていないタバコを咥えたまま教鞭を取る姿は、きついのウェーブのかかった長い金髪と鋭い目付きが相乗効果を生み、教師というよりも、何世代か前のヤンキーにも見える。
 まるで、シミの無い白衣が特攻服のようだった。

「イメージとは想像だ。結果を想像し、現象を理解し、発生プロセスを辿れば、正しく発動するかは別にして、だいたいの魔法は発現するもんだ」

 見た目はアレで喋ってもアレだが、生徒の中でテレサの実力を疑う者は居ない。
 魔法学園アマテラスで教鞭を取るという事は、若くても彼女の知識と魔法技能が確実なものだと証明していた。

「大体が適性がある属性ってもんが存在している事は知ってると思う。例えばアタシなら水って具合にな」

 テレサの手の上に水の塊が出現する。
 一瞬の溜めすら感じさせない技量に感嘆の声が漏れる。

「これはただの水だ。これにイメージを反映させると、こうなる」

 手のひらの上でフヨフヨと浮いていた水が、小さな竜となり教室を飛び回る。
 威力を考えないのであれば得意とする魔法属性で形を作る事は難しくない。
 しかし 飛ぶように空を泳ぐ小さな水竜は、優雅で繊細な動きを再現していた。
 スムーズな変化と手元から離れながらも形を保持し、尚且つ体を波打たせるようなモーションを再現するとなれば難易度が格段に上がる。
 自分では決して真似出来ない高等技術に十夜は羨望の眼差しを送っていた。

「これは魔法ってより手品みてぇなもんだが、強くイメージすれば、その魔法は発動し、逆にイメージが脆弱だと……」

 教室内を泳いでいた小さい水竜は、居眠りをしていた生徒の頭上で水となって降り注いだ。
 突然の水にハッと起き上がった生徒は周囲をキョロキョロと見渡す。クスクスと笑われている事に気づき、自分が寝ていて先生に怒られたのだと理解すると、小さく「すみません」と謝り席についた。

「こんな感じで形にならずに自壊してしまう。そして適正が無いと魔法が使えないって訳でもない、例えば火」

 水を出した時に比べほんの僅かな溜めがあったが、テレサの手に炎が現れユラユラと揺れ、鳥の形とり羽ばたいた。

「例えば土……は掃除が面倒だから省略。例えば風」

 火の鳥がテレサに近づき、口元のタバコに火をつける。
 ゆっくりと深く吸い込むと、口から白い煙を吐き出す。
 煙はユラユラと空を舞い白い虎を型取り空を駆け回る。
 咆哮の替わりにドーナツ上の白い煙を吐き出すと、生徒から歓声が上がった。

「そして…水。勿論使いやすい、使いにくいってのはあるが、その属性に適正が無くても魔法は使えるってわけだ」

 テレサの逆の手に先程と同じような小さい竜が現れ飛び上がる。
 火の鳥と風の虎と水の竜はテレサの頭上を戯れるようにグルグルと回り出した。

「さて、ここで問題だ。この三匹の中で一番強いのはどれだと思う?ん……じゃお前、答えてみろ」

 テレサに名指しされた生徒は威勢のいい返事と共に立ち上がった。

「……水の竜だと思います」

「ほう。そう思った理由は?」

「火は水で消えます。風は火を燃え上がらせますが、それでも水の質量を破るのは難しいかと……。それに先生は水が得意ですから」

「なるほど。座っていいぞ」

 テレサは腕を組み。答えた生徒に着席を促した。

「一般的に属性には相性ってのがあるが、実はそれは絶対的なもんじゃない」

 グルグルと駆け回って居た三体の幻獣はテレサの頭上で急に方向を変え、教室の真ん中でぶつかり合う。
 コミカルなポンッと言う音と共に白い煙が現れ、中から火の鳥が姿を現した。

「今のはわざと、火の方に多めの魔力を注いだ。逆に水にも風にも少ししか注いでない。つまり、魔法の威力と言うのは込められた魔力の量に依存すると言い換える事ができる」

 他の幻獣と体当たりした事により小さくなった火の鳥が、テレサが咥えていたタバコを飲み込むと、燃えカスすら残さずに燃やし尽くし、出番を終えたとばかりに消失した。

「つまり反属性だからって、絶対に敵わないって訳じゃない。でも不利な事は変わりないから気をつけろよ」

 どうやって気をつければいんですか?と生徒から質問が飛ぶ。

「魔法に注ぎ込まれた魔力量を見るのが手っ取り早いが……それが出来ないなら避ければいい」

 身も蓋もない言い方に戸惑いの空気が生まれる。
 懐から新しいタバコを取り出すと、咥えた瞬間に火が着いた。
 味わうように深く吸うと、白い煙を吐き出す。白い煙は兎となり、空を蹴りながら自ら窓の外へと走っていった。

「まぁ…土の魔法で壁を作ったり、反属性魔法で体を覆って立ち向かうのもいいかもしれんな。死んでなければアタシが治してやるよ」

 白い煙(兎)を吐き出しながらテレサがニヤリと笑う。
 馬場テレアは水魔法に高い適性持ち、中でも回復魔法と呼ばれる分野のエキスパートだ。学園内では教師と保険員を兼任しているため、怪我をした時に世話になる事も多い。
 容姿が整っている事もあり、黙っていれば戦場であれば天使の様に見えるかもしれないが、平和な学園の中ではガラの悪いヤンキーにしか見えず、一様に苦笑いを零した。
 手に持ったタバコが燃えカスを残さずに瞬時に燃え尽きるのと同時に、チャイムが鳴り午前の授業が終わった事を告げた。

「ビースト・ブラッド・ベルセルク」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く