ビースト・ブラッド・ベルセルク
それはどこかであった遠い話
赤く染まった大地の上で少年は朝日を浴びていた。
その表情には僅かながら悲しみが宿っており、遠目に見れば一枚の絵画のように見えるかもしれない。
幻想的でどこか儚い。そんな風景だった。
しかし、そこは地獄でもあった。
少年の足元には無数の死体は無造作に転がっている。同じ鎧を着ている事からどこかの兵士だったのかもしれない。
そこに転がっているのは人だけではなかった。
一つ目の巨人やドラゴン、巨大な犬など、どれ一つとして五体満足な死体はなく、人の形をした玩具のようだった。
形ある者に等しく死を与えられていた。
そこには少年以外に動く者はおらず、静寂と静謐と凄惨に満ちていた。
少年も死体と同じようなだった。
無事な部位などどこにもない。体のあちこちに穴が空き、血だらけで血まみれだった。
辛うじて無事なのは少年が持つ二本の剣のみだ。
無数の戦場を渡り歩き、数え切れない死線を超えた二本の剣は、刃毀れも罅が入ることもなく、血に塗れている事が正しい姿かのように朝日を浴びて輝いている。
眩しそうに目を細めながら、呆然と空を見上げている少年の視界の端に誰かが入ったのが見えた。動いている者の乱入に半ば反射神経に近い動きで少年の視線が動いた。
それは白金色の髪をした美しい少女だった。綺羅びやかな和装をしており、踊り子の様にも見えた。
少女は朝日を浴びる少年の姿を見つけると悲しそうな顔をする。
「ーーごめん」
近づく度に赤い水たまりに足が着き、着物の裾が血を吸い赤く染まる。
少年の前まで来ると少女は目を伏せて謝った。
「ぅ……ぁ……」
悲壮に満ちた少女の顔を見て、そんな顔をさせたい訳じゃないと、少年は口を開けかけたが、喉から声が出なくて、辛うじてうめき声が出ただけだった。
「うん、そうだね」
それでも何が言いたかったのか分かったのか、少女は答え少年にぎこちなく笑いかけた。
「それでも……ごめんなさい。そしてありがとう」
少女はゆっくりと少年を抱きしめた。少女の体を抱き返そうと少年は剣を落とそうとするが、ずっと握り締めていたせいで手が強張り、まるで剣と指が一体化しているかのように動かない。
それでも、少しでも少女の事を感じようと体を預け甘えるように目を細めた。
「もう……一人じゃないから。ずっと一緒だから」
少女の手にはいつの間にか剣が握られている。少女の髪と同じような白銀色の剣だった。
「ァ……ぁ……」
少年の口から辛うじて紡がれた声に少女は私もだよと答え、少年の背中から自分を突き刺した。
少年の口から溢れる血が少女を汚し、少女の血が少年を汚す。
少女から流れる血と、少年から流れる血が混ざり合い、体を伝い大地へ流れる。
薄っすらと消えていく意識の中、少年の耳に嗚咽の声が聞こえた。
少年の口が開いたが、少女に聞こえたかは分からない。
その表情には僅かながら悲しみが宿っており、遠目に見れば一枚の絵画のように見えるかもしれない。
幻想的でどこか儚い。そんな風景だった。
しかし、そこは地獄でもあった。
少年の足元には無数の死体は無造作に転がっている。同じ鎧を着ている事からどこかの兵士だったのかもしれない。
そこに転がっているのは人だけではなかった。
一つ目の巨人やドラゴン、巨大な犬など、どれ一つとして五体満足な死体はなく、人の形をした玩具のようだった。
形ある者に等しく死を与えられていた。
そこには少年以外に動く者はおらず、静寂と静謐と凄惨に満ちていた。
少年も死体と同じようなだった。
無事な部位などどこにもない。体のあちこちに穴が空き、血だらけで血まみれだった。
辛うじて無事なのは少年が持つ二本の剣のみだ。
無数の戦場を渡り歩き、数え切れない死線を超えた二本の剣は、刃毀れも罅が入ることもなく、血に塗れている事が正しい姿かのように朝日を浴びて輝いている。
眩しそうに目を細めながら、呆然と空を見上げている少年の視界の端に誰かが入ったのが見えた。動いている者の乱入に半ば反射神経に近い動きで少年の視線が動いた。
それは白金色の髪をした美しい少女だった。綺羅びやかな和装をしており、踊り子の様にも見えた。
少女は朝日を浴びる少年の姿を見つけると悲しそうな顔をする。
「ーーごめん」
近づく度に赤い水たまりに足が着き、着物の裾が血を吸い赤く染まる。
少年の前まで来ると少女は目を伏せて謝った。
「ぅ……ぁ……」
悲壮に満ちた少女の顔を見て、そんな顔をさせたい訳じゃないと、少年は口を開けかけたが、喉から声が出なくて、辛うじてうめき声が出ただけだった。
「うん、そうだね」
それでも何が言いたかったのか分かったのか、少女は答え少年にぎこちなく笑いかけた。
「それでも……ごめんなさい。そしてありがとう」
少女はゆっくりと少年を抱きしめた。少女の体を抱き返そうと少年は剣を落とそうとするが、ずっと握り締めていたせいで手が強張り、まるで剣と指が一体化しているかのように動かない。
それでも、少しでも少女の事を感じようと体を預け甘えるように目を細めた。
「もう……一人じゃないから。ずっと一緒だから」
少女の手にはいつの間にか剣が握られている。少女の髪と同じような白銀色の剣だった。
「ァ……ぁ……」
少年の口から辛うじて紡がれた声に少女は私もだよと答え、少年の背中から自分を突き刺した。
少年の口から溢れる血が少女を汚し、少女の血が少年を汚す。
少女から流れる血と、少年から流れる血が混ざり合い、体を伝い大地へ流れる。
薄っすらと消えていく意識の中、少年の耳に嗚咽の声が聞こえた。
少年の口が開いたが、少女に聞こえたかは分からない。
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