In defense of you

嘉禄(かろく)

Alone mission

全ての任務において、実践すべき事は沢山ある。

油断しないこと、驕らないこと、状況を正確に把握すること、相手の実力を見極めて最良の方法で殲滅すること、体力を温存すること。

こうして具体的に挙げていくと数えきれないが、一つでも欠けると今の俺みたいになる。

俺、加々美いつきは久しぶりに涼のいない単独任務についていた。
任務目的は敵を殲滅して活動情報を抜き取ること。
俺も前より強くなったから単独任務を任されるようになって、実際途中までは上手くいってた。

…なのに、途中で本部との通信が切れた。
恐らくハッキングを受けて遮断されたんだろう。
再び通信が取れるのを、物陰に潜んで待機していたらそれに集中しすぎたのか前後を敵に挟まれて…。
そこで意識が途切れて、気づくと真っ白な部屋の中心に置かれた椅子に縛り付けられていた。
意識が途切れたのは、睡眠薬か何かを投与されたんだろう…今が何時かすらわからない。
もちろんインカムも奪われているから通信も取れない。

俺の目が覚めていることに気づいたのか、見張っていた構成員の一人が近づいてきて俺の顎を持ち上げた。
俺が真っ直ぐに目を見ると、睨まれたと思ったのか思いっきり殴られた。
大方殺すな、情報を抜き取るだけ抜き取って用済みになったら殺せとでも言われたんだろう。
どうやってこの状況から抜け出すか…幸いリールタイプのチェーンソーは奪われてないけど、拘束を解いたところでさっきの負傷もあるから動きは鈍い…。
出血が止まってないのもあまりよろしくないしな…通信が途絶えたことで救援が来るかどうか…。
腹部に一発くらったのに、俺が意識を失ってる間にご丁寧に両足も撃ち抜いてくれたみたいだ。
俺は絶対に情報吐かないから、このまま嬲り殺されて終わりかな…。

そう思って諦めかけていたら、部屋の外から銃声が聞こえた。
程なくしてドアが乱暴に吹き飛ばされ誰かが入ってきて、俺を監視してた奴らが銃を構えるも遅すぎた。
呆気なくやられ、入ってきた人が俺に近づいた。
血を流しすぎてよく見えなかったんだけど、この距離なら顔が判別できた。


「…涼、助けに来てくれたんだね。」
「当たり前だ、通信が途絶えたって聞いて慌てて来たんだ。ったく、肝が冷えたぞ。
…こんな負傷までしやがって…。」
「ごめん、でもどこかで来てくれるような気はしてた。俺との通信が途絶えてからどれくらい経った?」
「ざっと2時間。死んでなくてよかった。」



涼が俺の拘束を解いて、傷を確認したあとおぶってくれたので、俺は後ろから抱きついた。
死は怖くない、でも君を置いて一人にさせるのは怖い。
だから、俺は何としても生きなくちゃね。
内心そう思いながら僕は目を閉じた。

…チャーチに戻って意識を取り戻してから、ドクターと百瀬さんに怒られたのは言うまでもない。



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