Incontriamoci alla riunione delle streghe.

ハスルク

Colore caldo

人間は愚かだ。

大嫌いだ。
 
人間同士で差別をし合い、自分達が優位に立てるものは、下等生物として扱い優位に立てないものは忌み嫌う。

あたしら魔女にだってそう。

薬が欲しいからと作ってやれば秘薬と勝手に呼び、病気にかかれば魔女の呪いだという。

魔女だって千差万別さ。

不老不死もいれば人間とさして変わらないのもいる。

其れなのに人間はあたしらを一括りにし、自分達が不必要な時はまじないや呪いに偏見を持っている。
何とも身勝手なものだ。





…本当に、身勝手なものだ。
人間に限らず、魔女も身勝手だった。

「まったく…何が魔女の集会だ。
集まったところで何もありゃしないじゃないか。」

毎月、集会の梟が魔女の便りを届けてくる。
新たな薬の調合レシピやまじない…魔女狩りが近々行われる地域なども書かれてる。
そして数年に一度、魔女の交流だかなんだか知らないが魔女の集会なんてものも絶対に招待される。

「最近は…、何?
孤児や捨て子を拾って育てるのが流行り?
は〜…戦争が多いのは知ってたけど魔女が…ねぇ…」

つまらない内容に呆れて便りを折って紙飛行機にして飛ばした。
飛んだ白い飛行機はあの子の頭に当たった。

「イタッ。」

飛行機の先が顳顬付近に当たり少し痛そうに当たったところを撫でてあたしに泣きそうな眼で見てくる。

「魔女サマ、イタイデス。」

「気の所為だ。」

カタコトの言葉と共にあたしの朝食を運んで来るのは使用人のベルナルト。
夕陽と同じ髪色をした13歳の少年。
嗚呼…そういえば、この子も似た様なものだったな…。

3年前にベルナルトを連れた両親が子供を弟子にして欲しいと言って置いて行ったはいいが…ベルナルトに手紙も何も寄越さない。
其れどころか、ベルナルトの体を見たら痣や傷が古い新しいに関わらず有った。
ベルナルトにとっては此処はまだマシかもしれんな…あたしの勝手な考えだが。

「魔女サマ…?ドウサレマシタ?」

キョトンとした顔と大きな眼があたしを見つめる。

「何でもないわよ。
其れより今日は良い匂いが特にするじゃない。」

リビングテーブルに運ばれた朝食はホットケーキ…と言っても毎朝ホットケーキ。
あたしが大好きだからね、ベルナルトはいつも作ってくれる。

「昨日、村、山羊バター、売ッテマシタ。」

「へぇ…山羊のバターかい、だからいつもと違うんだねぇ。」

あたしの席には既にナイフとフォークが並べられて、真ん中にはいつもと匂いの違うふんわりとしたらホットケーキが3枚重なっていた。

「ベルナルト、コーヒーを淹れておくれ。」

あたしの言葉にベルナルトは頷いてカップにコーヒーを淹れる。
3年間、あたしのところで文句言わずに料理だの掃除だの薬草採りだのして使いパシってるけど捨てられるのが嫌でそうしてるのだろうか。

「ねぇ、ベルナルト?」

「ハイ、魔女サマ。」

あたしの呼び掛けに重なりそうな早さで返事をする。

「あんた…無理に此処に居なくていいのよ?」

ホットケーキをフォークで抑えナイフで食べやすい様に切り込みを入れながらそう言った瞬間、ベルナルトの眼は大きく見開き大粒の涙が溢れ出した。

「魔女サマ…何故ソンナ事、仰ルノデスカ…。」

予想外の展開でナイフもフォークも手を止めてしまい、口をあんぐりと開けてしまった。

「僕、魔女サマ、ズット一緒、イイ…!」

大粒の涙を何粒も流しながら眼にはしっかり、あたしを写していた。
まさか、此処がいいというか…あたしがいいとは思っていなかったし…うん。
何というか、申し訳ないわね。

「あー…悪かったわね。
アンタがそんな風に思ってくれてるとは思いもしなかったから、さ。
ベルナルトが生きたい様に生きてくれるなら、あたしは嬉しいんだよ。」

何でか胸が鼓動を上げて、あたしの顔に少し火を付けたような感覚があった。
ベルナルトの大粒の涙も収まって少しの間、静かになった。

「アノ、魔女サマ…。」

ベルナルトが沈黙を破り、ポケットに入れていたハンカチで頬をつたった涙も拭いて、あたしに何かを決心したような瞳で視線を交わす。

「何だ?」

「僕、魔女サマ、イツカ、立派ナリマス。
ソノ時、側、見テテ…下サイ。」

ベルナルトが懸命に自分の気持ちを伝えてる。
嗚呼…母親とはこんな気持ちなんだろうか。
あたしは笑って答えてあげた。

「勿論だ、いつまでも見ていてやるよ。」

ベルナルトは嬉しそうに瞳をキラキラさせて何度も何度も大きく頷いた。
頬は赤い薔薇の様に染まり、見ているあたしまで幸せという気持ちになった。

「ア、魔女サマ。」

何かを思い出した様にベルナルトは可愛い顔をした。

「何だ?」

「集会、一緒、行キマショウ。」

飛行機に折った便りを開いてあたしに見せてくる。

「何で行きたいんだい?」

そう聞くと赤い薔薇の様な頬はさらに赤みを増して、あたしの耳に手を添え出した。
余程言いづらいのだろうか。

あたしの耳にベルナルトの顔が近づき少し擽ったい感覚になる。

「他ノ魔女サマ、教エル。
僕ノ、未来ノ奥様。」

コメント

  • ノベルバユーザー601499

    たくましく、強くなっていく様を見ているのはとても楽しいです。
    ヒロインがとても気持ちが良いです!

    0
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