メイドの鈴木さんは僕に恋をした

破錠 斬々

第9話:参考

何かおかしい…日曜日の昼間学生であれば誰もが暇を持て余している時間に鈴木さんは一人でじっくりと本を眺めている。本を見ているその姿はまるで獲物の様子を伺う獣のような感じだった。

奈緒「ふむふむ…」

雑誌を穴が開くように見ている鈴木さんはとても真剣だった。一体何を読んでいるか気になった俺はこっそり鈴木さんの後ろに回り込み雑誌の内容を見ようとした。

奈緒「うわっ!?もう、勝手に見ないでくださいよ。今大切なことをしてるんですから」

湊「大切って何かの参考書ですか?」

鈴木さんは基本あまり勉強をするところを見ないのでもしかすると勉強をしているかもしれないと思った俺はそっと聞いてみた。

奈緒「えっ…とまぁそんなとこです」

目を泳がせ曖昧な答えを出す鈴木さんを見て俺はすぐに嘘だと悟った。しかし、俺は否定的な意見を言わずそのままそうですかと答えた。

湊「へぇー奈緒さんが勉強するところなんてあまり見ないので不思議に思いました」

奈緒「な、何ですかその言いかたは!私だってやる気があるときはちゃんと勉強ぐらいしますよ」

その場は笑いで済ませ俺は部屋を後にした。見ないでと言われてしまうと逆に見たくなってしまうのは人間のいけないところだと思う。俺は鈴木さんにばれないようにあの雑誌を見ることにした。

奈緒「~♪」

昼食を調理中の鈴木さんは完全に無防備状態だ。その間に俺はリビングのテーブルに置かれているはずの雑誌を見ることにした。しかし、その雑誌はテーブルに置かれておらず鈴木さんのエプロンの結び目と背中の間に挟まれていた。

奈緒「ぼっちゃまどうかしました?」

じっと眺めていると視線を感じたのか鈴木さんは振り向いた。俺の視線が彼女の読んでいる雑誌目当て雑誌目当てだと悟られないように必死にごまかした。

湊「えっ!?いや、今日のお昼ご飯は何かなって思って」

奈緒「そうですか。お昼は暑いのでゴーヤチャンプルですよ!あと少しで完成なので待っててくださいね!」

湊「は、は~い…」

一回目失敗。頭の中でそんなナレーションが流れた気分だった。鈴木さんは雑誌の内容を頑なに見せようといてくれない。それほど俺に見られてしまっては困るものなのだろう。

奈緒「できましたよ。私特性スペシャルゴーヤチャンプルです!」

自分でスペシャルと言ってしまうのはとても痛々しい。そんなことは決して口にせず俺たちは席に着いた。目の前にはとてもおいしそうな香りを出す出来立てのゴーヤチャンプルが置いてあった。

湊・奈緒「いただきます」

おいしい。今日のゴーヤチャンプルはいつもと何か違う。そう気付くのに時間はかからなかった。

いつもよりより香ばしく食事をしているのにさらに食欲をそそるものだった。

湊「なんかいつもより美味しいですね。調味料でも変えたんですか?」

なぜ美味しくなったのか疑問に思った俺は鈴木さんに聞いた。尋ねると鈴木さんは持っていた箸を静かに置きニコッと笑いながら話し始めた。

奈緒「えっ、そうですか〜?いつもと同じなんだけどな〜。何でかな〜」

明らかにいつもと様子がおかしい。いつもの鈴木さんはこんな表情はしないのにと思えるほどいつもの笑顔の20%増しでにやけていた。

食事が終わると鈴木さんと一緒に食器の片ずけを始めた。鈴木さんが食器を洗い、俺が鈴木さんが洗った食器を乾拭きし片ずける普段から行う作業だ。

ただし、今日はいつもとは違い俺の視線は隣にいる鈴木さんではなくあの雑誌だった。これほど片時も離さず俺に見られないように隠している姿からするとよほど見られては困るものだろう。無理にでもこんなことをしてしまっては鈴木さんが怒ってしまうと予想していてもこの衝動は抑えられない。

奈緒「ぼっちゃま、どうかなさいましたか?早く拭いてしまわないと終わりませんよ?」

湊「あぁ、すいません。考え事をしていました」

心配そうにこちらを見つめる鈴木さんを見て俺は我に戻った。まだ昼なのだから後から狙えばいいものを肉食獣のように見つめるのはもうやめようと思う。

奈緒「ぼっちゃま、もし気分が悪いのでしたら自室で休んでもいいですよ?」

湊「いやいや、本当に大丈夫ですから!本当にただボーっとしてただけなんで」

いつもと違う様子から鈴木さんは俺の気分が悪いのではないのかと心配してくれる。でも、普段はこんなに優しくしてくれたのか疑問に思ってしまう。別に普段は冷たいわけじゃないが今日の鈴木さんはまるで過保護だ。

奈緒「ぼっちゃま〜一緒にカートしましょう」

鈴木さんはとてもゲーム好きだ。俺よりプレイする時間はないのにプレイヤーのデータははるかに俺より強い。一体いつどこでプレイしているのかはわからないが俺もゲーム好きなのであまり負けたくない。

湊「いいですよ。カートですね」

今日は某人気ゲーム会社のレースゲームをすることにした。二人でレースをするので鈴木さんはとても機嫌よくゲーム本体をテレビに接続する。

奈緒「ぼっちゃま、1Pがいいですか?それとも2Pがいいですか?」

今回はただのレースなので俺は2Pを選んだ。二人でどのステージにするかキャッキャしながら選びいよいよ対決の時がきた。

3…2…1…Go!

奈緒「よし、行きますよ!手加減はなしです!」

早速鈴木さんがスタートダッシュを決めた。俺はスタートの緊張でそれを忘れてしまい出だしを遅れてしまう。だが、このレースゲームではアイテムを使用することができ最下位からの始まりでも逆転をすることは簡単なことだ。

湊「ここでロケットランチャー使いますよっと」

都合よくアイテム内で早く移動できるロケットランチャーを入手し12位から8位まで追いついた。対する鈴木さんはスタートダッシュが効いたのか現在は2位を決めている。

奈緒「うわっ差がこんなに縮んで…負けませんよ!」

俺は華麗にカーブでNPCと差をつけ2周目を回ったくらいで3位まで上り詰めた。奈緒さんは当然1位を独占し2位であるNPCと大きな差をつけていた。

奈緒「ふふん。ぼっちゃまにはこの差が縮めれますか〜?」

鈴木さんは嘲笑うように余裕な表情を見せ俺は中々2位を譲ってくれないNPCにイラつきながら鈴木さんを無視する。3周目を回るとようやくNPCを追い越し鈴木さんと俺の一騎討ちとなった。あれほど伸びていた差も今まで2位だったNPCが甲羅をバンバン投げてくれたおかげで車1台分にまで縮んだ。

湊「さっきまでのお礼に痛めつけますよ!」

俺はゴーストで他NPCで奪い取った甲羅で鈴木さんに集中攻撃をした。追跡機能が付いているので鈴木さんは避ける暇もなく全弾命中する。

奈緒「もうっもうっ!あ〜抜かれた〜」

3周目の後半に出たあたりで俺はやっと鈴木さんを追い抜いた。鈴木さんは悔しそうに俺を睨み俺はそんなことも気にせずにコースを走る。

湊「いや〜勝負はいつ何が起こるかわかりませんね?」

奈緒「ふっ勝負も終わっていないのに勝つ気になるのは早いですよ。ぼっちゃま」

俺が余裕な表情を見せていると鈴木さんはニヤリと笑いアイテム使用ボタンを押した。

奈緒「私はぼっちゃまに抜かれてすぐにこのアイテムを入手したんです!私はこれで1位を取ります!さらばですぼっちゃま!」

鈴木さんが使用したアイテムは甲羅の中で最も強いプレイヤーの上空を飛び1位の相手にだけ爆発を喰らわせるものだった。

湊「そんなっ!くっそ〜!」

奈緒「ぼっちゃまが私に勝つなんて100年はや…あーー!」

俺のすぐ後ろで甲羅を使用したため甲羅の爆発に巻き込まれ鈴木さんも動けなくなった。そうすると後ろから見た目から性格が悪そうなNPCが俺たちを抜き去りゴールした。

湊・奈緒「あーー!」

レース結果は1位NPC2位鈴木さん3位俺の順になった。勝負が終わり鈴木さんは残念そうな表情をしながらリビングにあるソファーに倒れこんだ。

奈緒「はぁーNPCに負けるなんて思いもしませんでした。そもそもあのキャラクター顔がムカつくんですよね。大体何で主人公と同じような服装で紫色なんですか?デザインが手抜きかってんですか?」

NPCに負けたのが相当根に持ったらしく鈴木さんはソファーの上で暴れながらNPCの愚痴を言っている。俺は鈴木さんがでしょう?と聞いてくるたびにそうですねと適当な相槌をした。

奈緒「まぁ結果的にぼっちゃまに勝てたので良しとしますかね」

鈴木さんの失礼な言葉に俺はムッとしながらコントローラーをテーブルに置こうとした。すると、テーブルの上に俺がずっと見たかった鈴木さんの雑誌が置いてあった。

奈緒「〜♪」

幸いなことに鈴木さんはネットショッピングサイトを見ていてこちらに気づいていない。俺はそっと物音を立てないように雑誌を取りページをめくった。雑誌の中身は普通の今時の女の子が見そうなファッション雑誌で一部が女の子が気になるような記事が書かれたページがあった。

『量も思い女子必見!!好きな彼氏と長続きする方法!!』

このいかにも年頃の女の子が好きそうなページに鈴木さんの付箋が貼ってあった。

湊「真面目だなぁ」

『必見1!まずは胃袋を掴むべし!』

『必見2!いつもより笑顔で話すべし!』

『必見3!趣味で楽しむべし!』

この雑誌に書かれている内容は今日鈴木さんがここなっていたことばかりだ。いつもより美味しいゴーヤチャンプルに20%増しの笑顔にカートゲーム全てがこの内容と共通している。

真面目だなと心の中で思った。鈴木さんは普段だらしなく生活しているように見えるけど実際は裏で人一倍努力している人だということは俺だけが知っている。雑誌のページの汚れ具合や付箋に書かれている文字のにじみ方を見ると彼女の努力の証が思い浮かぶ。

奈緒「今度これを注文せてみますかねー」

鈴木さんはまだ通販サイトを見ている。俺は不真面目でたまに真面目な彼女の姿を微笑ましく思い彼女の寝転んでいるソファーにダイブした。

奈緒「わっ!ど、どうしましたぼっちゃま?」

彼女は俺が飛び込んできたことに驚きスマホをサッと避難させた。俺は鈴木さんの胸元に飛び込み抱きついた。そんな俺を鈴木さんは優しく抱き寄せ俺の頭を撫で始めた。

奈緒「見ちゃったんですね…あの雑誌」

俺の様子が変化したことから彼女は俺があの雑誌を覗いたことに気がついたらしい。でも鈴木さんは別に恥ずかしがることもなく俺の頭を撫で続けた。

奈緒「私も自分なりに頑張ったんですよ?私もこう見えて常に不安なんです。ぼっちゃまが私のことを飽きていないかとか、ぼっちゃまが浮気してないだろうかとか一人に時にはよく考えてるんですよ?」

俺には鈴木さんがいるのに飽きたり浮気したりするはずがない。しかし、その言葉を表現するのは恥ずかしくできるだけ伝わるよう先程よりもギュッと抱きつく力を強めた。

奈緒「もう夕飯にしましょうか。周りも薄暗くなってきましたし」

俺はコクリと頷き鈴木さんと一緒に食器を並べ始め夕飯の準備をした。今日の夕飯はビーフシチューとサラダとコーンスープどれも心も体も温まるメニューだった。

食事が済むと時計はもう午後9時になろうとしていた。明日から学校もあるためいつもより早く風呂も済ませ就寝することにした。だが、今日は別々に寝るのではなく両親が家で使用するキングサイズのベッドで共に寝ることにした。

湊「いいんですかね。父さんや母さんに内緒でこのベッド使って」

奈緒「いいと思いますよ。ご主人様たちにはバレないように明日の朝私がちゃんと片づけておきますから。それよりぼっちゃま…手、繋いでもいいですか?寝るまでの間だけでもいいので」

そう言うと鈴木さんは布団の中で手を絡ませてきた。手を絡ませると彼女の体温が直に伝わり自然と瞼が重くなり始めそのまま眠りに入った。

奈緒「ぼっちゃま…眠られたのですね。おやすみなさい」


○月○日

今日は以前に購入した雑誌の内容を試してみました。雑誌には書かれている内容と同じことを行うと彼氏との恋が長続きすると書かれていたので私は全て実行しました。

しかし、それは途中でぼっちゃまに気づかれました。でもぼっちゃまは何も言わずに私を抱きしめて甘えてくれました。

ぼっちゃまの体の暖かさを直で感じ私は今の幸せを実感しこれが永遠に続いて欲しいです。


ご愛読ありがとうございます。

投稿がほぼ2ヶ月ぶりとなってしまってもうし申し訳ございません。投稿が遅れるのは完全に私が悪いのですが私も部活とバイトをやりながらなのであまり書く時間がありません(言い訳ですが…)。お許しください!

別に小説を書くことを辞めるわけではありませんのでご心配なく。

さて、お知らせに入りますが「あの夏二人で見た打ち上げ花火は君の胸の中だった」をもうそろそろ投稿しようと思います。

予定では7月中に投稿しようと考えていましたがこの話を書くので思ったより時間を使ってしまったのでかなり予定を遅らせていました。すぐに書き始めるのでもうしばらくお待ちください!



〜コメント返信〜

ノベルバユーザー114788様→応援ありがとうございます。これからもご期待に添えるように頑張ります!

ミラル ムカデ様→ご指摘ありがとうございます。できるだけ早急に訂正いたしますのでご安心ください。

ノベルバユーザー217822様→ご指摘ありがとうございます。強いご指摘ながらも丁寧な言葉遣いで感服いたしました。早急に訂正いたしますのでご安心ください。

他のユーザー様の応援も作者である私の励みとなっています。これからもどうぞよろしくお願いいたします。

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コメント

  • アニメ好き不登校

    今更かもですがぼっちゃまの言葉使いで俺と使っていますが僕にした方がいいと思います
    これからも頑張ってください‼️

    1
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