ノスタルジアの箱

六月菜摘

果てしなく続く


今、 僕は マナウスにいます。

毎夜、君に電話したいと想いながら、叶わずに 
思いきり逢いたいと願って、君のことを空にうかべて
ただ心の中で、何度も 何度も 叫んでいます。

絵葉書を書こうか、手紙を書こうか
君が 旅先からの僕の連絡を 心待ちにしていることを
知っていながら、なかなか書けずにいます。
きっとインクが切れたせいなんだ。 本当だよ。

果てしない空の下で、僕だけが撮れる写真を
そう、そんなのを撮りたくて
日本を逃げるように飛び出して
君にも きちんと話せないままに。



何を撮っているか当ててみて。
そう君に尋ねたなら、君の答えは すぐにわかる。

   空の写真に きまってる。

そうだね、でも、意外に人の写真も撮っていたりするんだ。
ここで一人でいるせいか、人恋しい気分のせいか。
僕が 誰かと話していたら、おかしいだろうか。

君といる時、僕はきちんと君に向かわずに 空ばかり見てた。
そのさみしさが 今はわかる。 ほんとにごめん。



今日は 事務所に立ち寄れたので
言葉はうまく託せないけど、昨夜の写真を一枚送ります。
この写真に、君の言葉をつけてほしい。
君の眼には、水に何が映ってみえるだろうか。

いつか 帰った時、君に逢いに行ったら
たくさんの集めた言葉で 僕を迎えてほしい。

だから、不安にならないで。
イヤよ、もう待たないわ。
そう聞こえたけど、君は絶対、僕のことをすきなんだ。
そうに決まってる。 自信があるんだ。



夜の闇に、夜の河に、何かが光っている。
魚の鱗のようでもあり、星が映っているようでもあり
君からのメッセージのようでもある。

夜の邪魔をしないように シャッターを切りながら
息を潜めて、この水の中に姿を隠せたら 凄いのに。
僕の存在は  ただ風景に溶けていく。

いつまでも 果てしなく 続けよう。

君がたとえ嫌だといっても
僕は ずっと 君のことを 勝手に想っている。




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