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苦役甦す莇

マウスウォッシュ

Another:Episode17 Round 2

 俺らは当てもなくフラフラと彷徨い、取り敢えずこの世界の情報を収集しまくった。


「疲れたね......そろそろちょっと休憩しようか。」


 とサリューが提案してきたので、俺らは無言で頷くと、近くにあった川原の丘に3人並んで座った。


「さっきそこで新聞拾ったんだけどさ。」


 と俺は話を切り出し、他2人にも見えるように新聞を広げ、この世界の情勢がどうなっているのか読んでみた。



「この新聞から得られた情報と、ゴクから借りた道具で調べた所、どうやらここは小さな島国らしい。

まぁ小さな島国と言っても、文明が未発達という訳でもなく、さっき俺らが転移してきた直後の場所はこの国の教育機関らしく、国民はちゃんと教育を受けられてるらしい。」



「なるほどね。ところで、今夜の宿はどうしようか? ゴクの道具に何か泊まれるものはある?」

 サリューは俺が眺めていた新聞の中にあった、宿泊用テントの広告を見ながら訊ねてきた。


「あぁ、あるぜ。そろそろ日も暮れる頃だし、準備しようか?」


 俺はゴクから『ルービックホーム』を借りると、そのまま面を揃えようとした。


「じゃあ、俺は食材を調達してくるよ。」

 とヨギが言ったので、一瞬俺は手を止めて、ヨギの方に向き直った。


「待て待て。この世界の通貨を持ってないだろ? ゴク、この世界の通貨が出るような道具は無いか?」


「ん、そうだな。ヨギ、これを持ってけ。」


 ゴクは何か小さなハンマーのようなものを、ヨギに投げ渡した。


「それは『打出の小槌』という、願ったものを唱えながら打つとそれが出てくるってもんだ。便利だから持ってけ。」


「ありがとうな!」


 ヨギは『打出の小槌』と『エイリンガル』を持って、街の方へと駆け出した。









 一方、ミカとティフォルの追跡チーム。2人はミカの予知によって用意しておいたお金によって、ホテルに宿泊していた。


「さて、そろそろ本気で仕留めようと思う。そこでティフォル、君はこれから私が出す兵どものゲリラコマンドとして動いてもらいたい。」


「兵ども?」


 ミカはニヤリと口角を歪ませると、パチンとフィンガースナップをし、どこからともなく異形のモノどもを召喚した。


「接近戦型人形スルプ、捕獲用人形カヴァタネ、防衛戦型人形ベデムだ。君の遺伝子情報から作成した、言わば君のクローンだ。まぁ、それぞれ特化させる項目によってオリジナルの君より弄ってはいるがな。」


「コイツらが兵になるってか?」


「そうさ。君の脳波とリンクさせてるから、君の腹積もり1つで自由に動かせる。最も、私に歯向かわれるようじゃ叶わないから、私には攻撃できないよう調整してあるけどね。」


「なるほど。じゃあ、ヤツらを捕まえてくる。位置情報は?」


「ベデムにこのニャルマの位置情報探知と同じ機能を付けてある。ベデムを先頭にして、ヤツらの確保に向かってくれ。」


「了解。」








 一方、遠く離れた異世界にて、裁定者と共生体マゴクは静かに動き出していた。


「この世界もまた、私の手によって平和が齎された......やはり私の行っていることは正しい......」


 裁定者ゼノンは、灰に変わった街の上で、ひとりぼっちで独善的に独り言を独り言ちっていた。


「さてと......『ラムダオに捧げる贄』でも発動するとするか。」


 ゼノンは、もはや意識を失い、ただの四次元ポケットとなってしまったマゴクから、無理やり道具を引っ張り出した。それはまるでインド半島北部で生贄の儀式用に用いられた武器ラムダオに酷似していた。


 ゼノンはそれを天高く掲げると、この世界で灰に変わってしまった生き物達の魂が、そのラムダオに集められた。そして、その魂の数が100万を超えた時、そのラムダオから一筋の光が解き放たれて、宙に大きな穴を開けた。


「Happy Birthday to New World !!! さぁさぁ皆の衆祝うがいい!!! 争うしか能のない君たちの無駄な命が、今まさに役に立ち、新たな世界が誕生したぞ!!!」


 ゼノンのそのどこまでも独善的な叫びを聞いた者は、最早その世界には存在せず、ただ乾いた空気に染みていくだけだった。








 一方、ルービックホームにて団欒のひとときを過ごすサリューと俺。


 俺は、サリューから俺の旅に着いてきてくれた理由を聞いていた。


「なんだってサリューは、俺の旅に着いてきてくれたんだ?」


「なんでって、そりゃあ、もうあの職場はボロボロで再建不可能だろうなって思ったし、かと言って、私には頼れるような身寄りが無いから......だから、サイの夢の果てを見届けたくなったの! それで着いてきたって訳!」


「なるほどね......って夢の果て?」


「サイ言ってたじゃん。『鳥になりたい』って。それが何を意味してるかは私には分からない。だけど、多分きっと素敵な事なんだろうなってことだけは分かるの。」


「......そうだな。うっ!」


 その瞬間、俺は頭が割れそうなほど痛い衝撃が脳内に走り、その場にバタッと倒れ込んだ。








 俺は昏い暗闇の中に一人で立っている。どっちが前でどっちが後ろかすら分からないような空間で、ただ1人俺はキョロキョロしていた。


「すまないサイ。」


 ゴクの声がその空間に響き渡った。俺は「何が起きたんだ?」と声を出そうとしたが、何故か声が目の前の闇に吸われてしまったかのように、どれだけ声を出しても何も喋れなかった。


「大丈夫だ。お前の疑問は伝わっている。お前の疑問に答えよう。俺らはあまりにも繋がりすぎたってことだ。」


 繋がりすぎた?


「そうだな......マゴクに異変が起きたことは前に話したろ? そして、お前と俺は繋がっているという事も出会ったばかりの頃に話したろ?」


 そうだな。それが何か?


「その2つが今起きてる状況の原因だ。まず、マゴクが裁定者によって完全に意識のコントロールを奪われてしまった。それによってある程度念話で繋がっていた俺も、マゴクのその意識を失うという体験を『共有』してしまった。

だから俺も擬似的な意識混濁状態に陥った。それで、俺と繋がっているお前も意識混濁してしまったという訳だ。」


 どういうことだ? お前が意識混濁したからって、なんで俺まで!


「それはだな、俺がお前に接続していた部分が、脳のかなり重要なポイントだったってのが主な原因だ。

何故かは分からないが、お前は記憶を失った事故の時に、多大なダメージを脳に受けたらしい。俺はそれを補助する形で融合していた。だから俺が抜けてしまうと、お前の脳はマトモに動かないんだ。

俺とお前は一心同体。俺が飢えればお前も死ぬ。俺が意識を失えばお前も意識を失う。俺らは互いにより集まって初めて1人前なんだ。」


 なるほど......まぁそれはいいとして、どうやったら目覚められる? 顔を引っぱたく?


「さてな......意識空間内でいくら顔を引っぱたいても意味は無いと思うが......まぁ、外からの強い刺激があれば目覚められるだろうな。
それに、マゴクとの体験共有もそう長いものでは無い。普通の睡眠時間と同じくらい経てば、強い刺激が無くても目覚められるかもな。」








 一方、サイがぶっ倒れて、慌てふためく現実世界のサリュー。


「もしもし! 聞こえる!? サイ! 私の声が、聞こえてますか!?」


 サリューは強く肩を叩きながら呼びかけるも、一切の応答が無い。


「不味い......心音......そうだ心音!」


 サリューは急いで耳を済まし、心音を聞き取るのに集中した。


「心肺は止まってはいない......まだ生きてはいる......一時的な休眠状態?」


 そこに、バンッ! と荒々しく扉をぶち開ける音が響き渡り、同時にガシャーン! と窓ガラスが割れる音も響き渡った。


 本能的に危機を感じ取ったサリューは、眠っているサイを布で包んで、一緒にベッドに隠れた。


(なになになになになに? 焦ってサイと一緒に隠れたは良いけど、一体全体何事!? 先ず窓ガラスから入ってきてる時点で、もう侵入者確定なんだけど、誰だよ!)


 と、心の中でサリューが色々思っていると、いきなり隠れるのに使っていたベッドがグワッと持ち上げられ、サリューは侵入者たちと対面することとなる。


「こんばんは、お嬢さん。前の病院以来ですね......さて、早速要求なのですが、そこの布にくるまってるヤツを寄越して欲しいんですよ。

先に言っておきますけど、抵抗するとかそういう考えは捨て去った方がいい。どう考えてもこの状況、不利以外の何物でもないでしょう?」


 異形の者共が取り囲んでいる中、眠っている男を守れるのはか弱い女性だけ。異形の者が紳士的でなければ、まわされていても可笑しくはない状況であった。


「抵抗するつもりはありませんが......この大切な人を渡すワケにもいきません......」


 と、言った瞬間、今までサリューを見下ろしていた異形のうち1体が、顔を歪ませ横方向に吹っ飛んで行った。


「よく言ったサリュー......そうだよな、俺らは絶対友達を売ったりなんかしねぇ。」


 そこには買い物を終え、ルービックホームに戻ってきたヨギの姿があった。


「おや君も病院で......なるほど。面白いですね、あの時の続きでもやるか?」


「あったりめーだ。」

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