話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

苦役甦す莇

マウスウォッシュ

Another:Episode12 Taboo magic

 ティフォルとミカは、ニャルマの元へ転移し、病院にゴクが居なかった事を伝えた。


「なるほど。病院には居なかったか。やはり私が追っていた方向に本命がいるのかな。」

 ニャルマは腕時計型端末を見て、その後顔を上げてゴクの居る方向を見据えた。


「そうだな。そう言えば、病院の中でこの世界の情勢を報道している映像を見たんだが、どうやらこの辺りは、定期的にある時間帯になると大きな波に飲まれるらしい。

そしてその時間というのが、あともう暫くするとやってくるそうだ。ここら辺の住人は地下に逃げ込む事で事なきを得てるそうだから、我々もどこかに泊まらせてもらう事にしよう。」

 と、ミカが提案した。ティフォルとニャルマは何の異論もない様子で首を縦に振った。


「そうだな、どこか近くの街を探そう......ぅぐっ......!」

 ティフォルは突然、右腕を抑えながらその場に崩れてしまった。顔色はお世辞にもあまり良くなく、顔には脂汗がジットリと浮かんでいた。


「どうしたんです? ティフォルさん?」

 ニャルマが心配して近寄ると、ニャルマの目に、凡そ人の物とは思えない形をしたティフォルの右腕が映った。


「ん......先程病院で邪魔が入ってね。どうしてもティフォルが劣勢を強いられていたから、少々強引に禁忌の秘術を使わせてもらってんだ。

この術は彼にトンデモナイ力を与える代わりに、死んだ方がマシと思える激痛を定期的に与えるんだ。

まぁ冷静に考えれば、人外に片足突っ込んでるんだから、何も起きない方が不自然さね。」


「ミカ! それはちょっと勝手過ぎない?」


「ニャルマ! ミカを責めてるな......どうせ後先短い命だ。死ぬまでちょっと面白おかしく生きる事くらい許してくれよ。
それに、あの時劣勢を強いられていたのは事実だ。弱かった俺が悪い。」


「だってさ。まぁ、この禁忌の秘術は更なる飛躍を遂げるハズだよ。君の生命エネルギーだけでなく、他の生命エネルギーも吸うことによってね。」


「更なる飛躍?」


「そう......グレードアップだよ。」








 一方、吹き飛ばされ雑木林でノビていたヨギ。彼はある女性に手当してもらっていた。


「......うっ......くっ......」


マニュリュツ安静に......グジュビリュツ傷口がルィーンドゥズ開いてしまいますシンニュイ先ほど クォロォグ暴漢から ヘリュカィンシピュウ助けていただいた プレフォィンツお礼です。」


 言葉は通じぬものの、体に走る痛み故に、どの道ヨギは動くことが出来ず、そのままサリューにされるがままの状態を甘んじて受け入れていた。


 サリューがある程度ヨギへの応急手当を終えると同時に、その雑木林に光が差し込んだ。

 その光に照らされた2人は、眩しさのあまり目を細めた。








 俺は、修理が終わったホムンクルスから得た位置情報を頼りに、ヨギとサリューを探し当てる事に成功した。

 そして、自分が今いる部屋に2人を転送した。部屋にとてつもない光が満ち溢れ、見えるような明るさまで戻った時、光の中から2人が現れた。


「おぉ......キタキタ。」

 俺は2人を迎える準備があったため、いつもと変わりない態度でいたが、2人にとっては何が何だかよく分からない事が起きたために、2人とも目を真ん丸くしてこっちを見ていた。


「あれ? サイ? てかココドコ?」

 ヨギは思いついた疑問をバンバン口に出して言った。そこで俺は「まぁまぁ」と言いつつ、事の説明をし始めた。


「お前ら2人は、このスバラシー道具の力で、俺がいるここに転送されたんだよ。
んでまぁ、ここはどこなのって話なんだが、さっきの病院からバカほど離れたとある村だよ。
逃走中に見かけたもんで、今はここに身を潜めてる。少なくとも、さっきの病院よりは安全な場所なハズさ。」


 俺が軽く説明を終えると、そこでサリューが口を開いた。

「え〜と、じゃあここに私たち2人を転送させたのはサイ君ってことかな?」


「おわっ! 普通に喋った!」

 サリューの言葉にヨギがビックリした。何故ビックリしたのか一瞬分からなかったが、よく考えてみればカンタンなことであった。


「あぁ......ヨギ、転送前に1回サリューと話したのか? まぁ、異なる言語を使うからそりゃあ通じなかったのも当たり前だな。
今俺の周りは、言語の壁が無くなってるんだ。だから、普通に言葉が通じるのさ。」


「な......なるほど。それもスバラシー道具のお陰か?」


「そうだぜ。」



 その後、小一時間俺らは情報の共有をし合った。そして、病院が襲撃を受けた事実を知り、いよいよ安全地帯がここしか無いと悟り始めた。


「なるほどな......病院で襲撃を......ってことは、逆に考えれば少なくとも病院は既にノーマークで、この家も見つかってないし遠いから危険度は低めと。

であるとすれば、特にココからまたどこかに逃げようなんてことはしなくていい感じかな?」


 そう俺が言った丁度その時、ガチャりと部屋の扉が開いた。俺がびっくりして扉の方に視線を移すと、そこには家の主シュンの姿があった。


「えーと......お取り込み中だったかな? ってか、いつの間にか増えてるし......」


「あぁシュン、済まない。勝手に俺がココに呼んだんだ。コッチがヨギ・コウウェンで、コッチはサリュー・ゴウガだ。」


「「どうも」」

 サリューとヨギは、ちょっと申し訳なさそうになりながらペコりと会釈した。


「どうも......ってそうだ。ご飯が出来たから呼びに来たんだ。どうだい? ヨギ君もサリューさんも一緒に食べるかい?」


 シュンにそう聞かれた瞬間、ヨギの腹の虫が鳴き声を上げた。そしてヨギはちょっと申し訳なさそうにこう続けた。

「じゃ......お言葉に甘えて......お腹も空いてるし......何よりちょっと体力使ったからね......」

「じゃあ私も。ヨギ君とサイ君と一緒にご馳走になろうかしら。」


「了解。じゃあ着いてきてよ。」








 一方、死刑囚ティフォル、科学者ニャルマ、魔術師ミカの3人は、波から身を守る為の宿へと辿り着いていた。


「う......ぐっ......畜生......痛てぇ......」


 宿についても、依然ティフォルは痛みに襲われ続けたままであり、苦しそうに右腕を抑えるティフォルを、ニャルマは少しでも痛みが緩和するようにと横からさすっていた。


「痛いってのは生きてる証拠さ......ティフォルさん、今あなたは誰よりも生を実感してるんだ。」


 その様子を見て、ミカは口を開きティフォルに対してこう言った。


「君のその痛み、与えられた『過剰な力』に対して、その『人間の体という器』が耐えられないのだ。だから、『力を抑制する』か『人間の体を捨て去る』かのどちらかでしか、君は激痛から解放されない。」


 そう聞いたティフォルは、人間の体を捨て去るという部分に引っかかった。


「人間の体を......捨て去る?」


 ティフォルがそう言うと、ミカはどこから取り出したのかよく分からない鞄を、ティフォルの目の前に突き出し、その鞄から一つ何か気味の悪い物を取り出した。


「君にその覚悟が......あるならね。」


 気味の悪い何かは、触手のようなものをぐにゃぐにゃと動かし、ティフォルからは生きているように見えた。


「ミカ......これは何?」

 ティフォルが抱いたであろう疑問と、全く同じ疑問を、ニャルマがミカに投げかけた。


「何って......君もよく知ってるはずの物だよニャルマ......ってそうか、そう言えば君は『容器』しか造って無いんだったな。」


「......どういうこと?」


「勝手に使っちゃって悪いんだけど、ニャルマが開発した『ゴクを生み出した人工子宮』を使わせてもらったんだ。

それを使って私の魔術の知識を総動員して生み出したのがこれ『パラサイトシード』さ。

『人間』という宿主に取り付いて、体内から様々な恩恵や害悪を及ぼす『パラサイト』を改造した生き物だよ。この『パラサイトシード』は、取り付いた宿主を文字通り『種』というレベルから『作り直す』存在なんだよ。

私は常々『全環境に適応出来る究極生物』という物の完成を目指していた。その答えがこれだよ。この『パラサイトシード』こそ、私が追い求めていた最適解なのさ。」


「......説明してくれ。」


「OKティフォル。説明させてもらおう。この『パラサイトシード』を体内に取り込んだ『宿主』は、今置かれている環境に常に適応し続けられるように、体内のパラサイトシードが肉体改造を行い続ける。

例えば、パラサイトシードを体内に埋め込まれたまま、宇宙に放り出されても、パラサイトシードが肉体改造を行い、宇宙という環境でも生命活動を続けられるようになる。それは即ち『以前の人間の体を捨て去り、次の新たなる生き物となる』という事さ。

故に、ティフォル君がこの『パラサイトシード』を体内に取り込む覚悟があるなら、即時に君の体内にパラサイトシード埋め込む。埋め込まれたパラサイトシードは君の肉体を改造して、君に起きてる『過剰な力という異変』に順応出来るように、肉体改造し最適化させるはずさ。」



「なるほど......」



「私は強要しないわ。
あなた自身が選択するのよ。
さあ選んで。

このまま耐え難い痛みに苦しめ続けられるか、旧態依然とした人間の体を捨てて痛みから解放されるか。」

「苦役甦す莇」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く