苦役甦す莇
Re:Episode25 Nothing to speak of
マヤは指をパチンと弾くと、その場から消え去り、カエデの背後に瞬間移動した。
あまりの速さにカエデはついていけず、マヤはカエデの事を蹴飛ばしてやった。
「戦わずして勝つ......だったか? 何をどうやって勝つのかな? どうやって私にお前の主張を認めさせるのかな?」
蹴飛ばした先に瞬間移動し、更に蹴飛ばしてやった。そしてマヤはもう一度指をパチンと弾き、今度は時間を歪めた。
蹴飛ばされて吹っ飛んだカエデはその場で停止し、マヤは蹴りたいだけ蹴ってやった。
「無抵抗というのは味気ないな。」
マヤは時間の流れを元に戻した。すると蓄積されたダメージが一気にカエデを襲い、一瞬にしてボロ雑巾となった。
「空間も、時間も、魂も、力も、現実も、精神も、全て私の『既に知った』世界だ。」
ボロ雑巾になったカエデを足蹴にしながら、マヤはペラペラと喋り始めた。
「君散り給え......」
マヤは右手でカエデの胸ぐらを鷲掴みにすると、左手で手刀をつくり、それをカエデの胸に突き刺した。
「お前は王の為の贄だということを自覚した方がいい......私にとって君は敵でもなんでもない供物に過ぎないんだということをね。」
マヤはカエデの中に潜む『魂』を引っこ抜こうとした。カエデから魂を抜いてしまえば、ただの鎧に戻るという仮説から来る行動であった。
「贄? 供物? 何を言ってるのやら......貴女はただ、自分の我儘を押し通そうとしてるだけ。そして邪魔な私を消そうとしてるだけ。何故共存の道を探ろうとしないの?」
「共存? お前が私の言うことを従順に受け入れる犬だったら、飼ってやらなくもないという程度だな!」
マヤは思い切りカエデの胸から手を引き抜いた。光り輝くカエデの魂はマヤの手中に収まり、その瞬間カエデはカエデであった何かに姿を変え、その場に倒れ伏した。
「他愛もない......全くつまらない。」
マヤは手にしたカエデの魂を、その手で握り潰した。そしてマヤは大きく息を吸い込んだ。
「あ〜あ。なんか飽きちゃったな。アザムキがやってきた全部否定出来たし、刃向かってくるヤツらいないし、アザムキも永遠に復活する事ないし。」
マヤは果てなき空を見上げた。マヤは天に輝く星を一つ一つなぞっていった。
「あの日もこんな満天の星空だったな......お前は腕章を持って私の前に現れた......自分の弱い部分を見せたのは後にも先にも、あの時のお前だけだった......」
マヤはその場にあった鉄くずを操って椅子を作り出し、その椅子に腰をかけた。
「お前は......いつだって私に反抗した......私の思い通りにならなかった......どうしてお前だけ......」
マヤはふと、心に引っかかる事を思い返してみた。何故彼は最後まで自分に従わなかったのか? 何故彼が神として、調停者として選ばれたのか?
「能力があったとはいえ、操ろうとして操れなかったのもアイツだけ......人質を取った時ですらある程度従ったが、それでも根っこは不従順であった。何故だ?」
マヤは操り人形になった人類を、何気なく操りながら深く考え始めた。何故アイツはこの世界を望まなかったのか? 何故支配される事を拒んだのか?
「簡単な話だ。」
「な!?」
どこからともなくアザムキの声が聞こえた気がした。マヤは驚いて周りを見回したが、周りにあるのは自分が作り変えた世界と、操っている人類だけである。
「アザムキ......?」
「簡単な話だって言ったんだ。お前の望んだ世界は、お前の独りよがりでしかない。悩んだりしないで済む事が幸せという、ごく短絡的で幼稚な考えが認められなかった。それだけだ。」
「はぁ? この世界を見てみろ! 不幸せな人間なんてどこにもいないじゃないか!」
「不幸せな人間が居ないことが幸せなのか?」
「そうに決まってんだろ!」
「素晴らしいな。お前の言い分は最初から最後まで間違っている。」
「間違っている?」
「何も考えず、何も悩まず、自由な意志が存在しない......それは不幸せな目に遭ったり、理不尽な目に遭わないで済むかも知れない。支配される事そのものが不幸せでないという大前提が成り立てばの話だがな。」
「成り立つに決まっているだろう!」
「じゃあお前は誰かに支配されても良いのか?」
「何を言ってる? 私は支配する側だ! 支配されて良い等という話をする事そのものが間違っている!」
「ごく独善的だな。自分が支配される事を考慮すらしない。幼稚極まりない。」
「どうしてお前は......まだそうやって反発するのだ!」
「反発? 指摘しているだけだよ。お前の独りよがりな言動をな。」
「お前は何がしたいんだ!?」
「別に何もしないさ。やりたきゃどうぞご勝手に、やりたいようにやって下さいな。それがお前の主張なのだから。最後まで責任もって全人類がワイズマンに導くってのが筋だろ?」
「当たり前だ!」
「じゃあどうぞご勝手に。俺が特に介入する義理も無いからな。」
「負け惜しみか? ここはお前が創った世界だろ? 私に取られて諦めたのか?」
「はぁ......ホントに幼稚極まりないな。そこは確かに俺が肉体を犠牲にして創り上げた世界だ。だが『俺の世界』なんかじゃない。だから『お前に取られた』などという認識すらない。そもそも俺はその世界に居るべきじゃないと知っているから、カエデに命を与えて欠片集めを任せたし、直接的な介入も全くしていない。
お前が俺から取ったと認識するのは勝手だがな、別に俺はお前に取られたともなんとも思ってない。」
「負け惜しみじゃねぇか。これで私の完全勝利だ。お前は最初っから負けてたんだよバーカ。」
「満足か?」
「不満だよ。」
「何故不満なんだ?」
「知らん。」
「鉄屑のお山の大将ここに極まれり。せいぜいお人形遊びでもして遊んでなさいな。」
「だぁ! もう分かったよ! 人類を解放する! 私もこの世界から立ち去る! お前も復活させてやる! これで良いだろ!」
「良いかどうかは俺が決める事じゃない。お前が決める事だ。お前の良心と良識に従って決める事だ。」
「だぁ! 分かった分かった! これで良いです! これで満足です! もうウザいからそういう言い方すんな! あえて言わなくても分かる!」
マヤはパチンと指を弾くと、時間が巻き戻り、自身が復活して間もない時点まで戻った。
そしてもう一度パチンと指を弾くと、アザムキの欠片たち全てが集まり、その場で一つになった。
「......私が悪かった。結局お前を否定したかっただけなんだ。すまない。」
「別に構わないさ。さて、どうする? 俺と共に無限世界へ旅立つか?」
「そうさせてもらう。お前となら何処へでも行けそうな気がするからな。」
「じゃあ、行こうか。」
アザムキはマヤの手を取ると、2人一緒にこの世界から消え去った。分かり合うことのなかった平行線が、今一つ交わり、世界には平和が訪れた。
アザムキはこの世界から出ていく瞬間、自身に関する記憶を持つ人間から、自身に関する記憶を全て『外して』行った。
それはアザムキなりの優しさであり、自分なりのケジメであった。この世界は自分なんかが居なくてもやって行ける。そう信じているからこその行動であった。
そして最後に、自身の欠片たちが付けた『爪跡』を全て消し去った。地震によって崩れ去った物も、全て元通りにした。
「......デ......ェデ......カエデ......楓!」
色葉 楓は自身を呼ぶ声で目を覚ました。どうやら寝てしまっていたらしい。だらしなく流れていた涎を拭うと、目の前には奏が居た。
「もぉ! 今日は久しぶりのお出かけだってのに! 居眠りするこたぁどういう了見?」
眩しい陽射しの中、オシャレなカフェテリアを2人で訪れていた。どうやら小腹を満たされて眠たくなってしまったらしい。
「ごめんごめん! ただ、なんか夢を見てたみたいでさ......」
何だか酷く重たい頭を支えながら、目を擦って目の前の現実を何となく視認し始めた。
「レム睡眠になるまで深く寝てたか。どんだけ疲れてるの?」
奏は呆れたように言った。まぁ、折角のお出かけで寝られたらそういう反応になってしまうだろう。
「いやいや、大丈夫大丈夫。ほんのちょっとだけ疲れてただけだからさ。」
「ふぅん。なら良いんだけど。あっ、そうだ。これからどのお店に行く?」
奏は楽しそうに、ここ周辺のマップを見せてきた。その時、母が勤めてる服飾店が近くにある事を思い出した。
「あ、そうだ。お母さんのお店が近くにあるんだよ。良かったら行かない?」
「あ、いいね! 行こう行こう!」
楓と奏が席から立ち上がると、楓は死角になっていた方向から来た人にぶつかってしまった。
「あ、すみません!」
「あ、いえいえ。アタシもよく見てなかったんで。気にしないでくださいな。」
金髪で可憐な少女は楓に気を遣い、すぐに何事も無かったかのように立ち去った。
2人はその場を後にして、すぐ近くにある服飾店に向かった。すると楓の母は接客対応中で、2人はお店の服を見て回ることにした。
「いつもありがとうね。虚火君。また来てね。」
「はい。また来ます。」
楓の母が接客対応を終えると、楓と奏に気がつき、ゆっくり近寄ってきた。
「あら? 楓じゃない。今日は奏ちゃんと一緒か。ゆっくりしていってね。」
「はい!」
奏は満面の笑みで答えた。奏は楓と一緒に居るだけで幸せを感じていた。
「母さん、これから夏だから、夏に合うような服を探してるんだ。何か良い服あるかな?」
「えっと、ちょっと待っててね......楓は確かベージュのパンプス持ってたよね?」
「うん。」
「それならこのイエロースカートと、ピュア白Tシャツなんかが合うんじゃないかや。」
「おぉ、いいね。楓似合いそうだよ。」
「奏ちゃんは......白Tシャツは楓とお揃いで、下はグリーンフレアスカートなんかが合うんじゃないかしら。これで今履いてるサンダルに多分ピッタリだと思うわ。」
「奏もなかなか良さそうじゃん。」
「今度これを着て出かけようね。」
「どこに行こうか?」
「う〜ん......三吉山に花を見に行こう!」
あまりの速さにカエデはついていけず、マヤはカエデの事を蹴飛ばしてやった。
「戦わずして勝つ......だったか? 何をどうやって勝つのかな? どうやって私にお前の主張を認めさせるのかな?」
蹴飛ばした先に瞬間移動し、更に蹴飛ばしてやった。そしてマヤはもう一度指をパチンと弾き、今度は時間を歪めた。
蹴飛ばされて吹っ飛んだカエデはその場で停止し、マヤは蹴りたいだけ蹴ってやった。
「無抵抗というのは味気ないな。」
マヤは時間の流れを元に戻した。すると蓄積されたダメージが一気にカエデを襲い、一瞬にしてボロ雑巾となった。
「空間も、時間も、魂も、力も、現実も、精神も、全て私の『既に知った』世界だ。」
ボロ雑巾になったカエデを足蹴にしながら、マヤはペラペラと喋り始めた。
「君散り給え......」
マヤは右手でカエデの胸ぐらを鷲掴みにすると、左手で手刀をつくり、それをカエデの胸に突き刺した。
「お前は王の為の贄だということを自覚した方がいい......私にとって君は敵でもなんでもない供物に過ぎないんだということをね。」
マヤはカエデの中に潜む『魂』を引っこ抜こうとした。カエデから魂を抜いてしまえば、ただの鎧に戻るという仮説から来る行動であった。
「贄? 供物? 何を言ってるのやら......貴女はただ、自分の我儘を押し通そうとしてるだけ。そして邪魔な私を消そうとしてるだけ。何故共存の道を探ろうとしないの?」
「共存? お前が私の言うことを従順に受け入れる犬だったら、飼ってやらなくもないという程度だな!」
マヤは思い切りカエデの胸から手を引き抜いた。光り輝くカエデの魂はマヤの手中に収まり、その瞬間カエデはカエデであった何かに姿を変え、その場に倒れ伏した。
「他愛もない......全くつまらない。」
マヤは手にしたカエデの魂を、その手で握り潰した。そしてマヤは大きく息を吸い込んだ。
「あ〜あ。なんか飽きちゃったな。アザムキがやってきた全部否定出来たし、刃向かってくるヤツらいないし、アザムキも永遠に復活する事ないし。」
マヤは果てなき空を見上げた。マヤは天に輝く星を一つ一つなぞっていった。
「あの日もこんな満天の星空だったな......お前は腕章を持って私の前に現れた......自分の弱い部分を見せたのは後にも先にも、あの時のお前だけだった......」
マヤはその場にあった鉄くずを操って椅子を作り出し、その椅子に腰をかけた。
「お前は......いつだって私に反抗した......私の思い通りにならなかった......どうしてお前だけ......」
マヤはふと、心に引っかかる事を思い返してみた。何故彼は最後まで自分に従わなかったのか? 何故彼が神として、調停者として選ばれたのか?
「能力があったとはいえ、操ろうとして操れなかったのもアイツだけ......人質を取った時ですらある程度従ったが、それでも根っこは不従順であった。何故だ?」
マヤは操り人形になった人類を、何気なく操りながら深く考え始めた。何故アイツはこの世界を望まなかったのか? 何故支配される事を拒んだのか?
「簡単な話だ。」
「な!?」
どこからともなくアザムキの声が聞こえた気がした。マヤは驚いて周りを見回したが、周りにあるのは自分が作り変えた世界と、操っている人類だけである。
「アザムキ......?」
「簡単な話だって言ったんだ。お前の望んだ世界は、お前の独りよがりでしかない。悩んだりしないで済む事が幸せという、ごく短絡的で幼稚な考えが認められなかった。それだけだ。」
「はぁ? この世界を見てみろ! 不幸せな人間なんてどこにもいないじゃないか!」
「不幸せな人間が居ないことが幸せなのか?」
「そうに決まってんだろ!」
「素晴らしいな。お前の言い分は最初から最後まで間違っている。」
「間違っている?」
「何も考えず、何も悩まず、自由な意志が存在しない......それは不幸せな目に遭ったり、理不尽な目に遭わないで済むかも知れない。支配される事そのものが不幸せでないという大前提が成り立てばの話だがな。」
「成り立つに決まっているだろう!」
「じゃあお前は誰かに支配されても良いのか?」
「何を言ってる? 私は支配する側だ! 支配されて良い等という話をする事そのものが間違っている!」
「ごく独善的だな。自分が支配される事を考慮すらしない。幼稚極まりない。」
「どうしてお前は......まだそうやって反発するのだ!」
「反発? 指摘しているだけだよ。お前の独りよがりな言動をな。」
「お前は何がしたいんだ!?」
「別に何もしないさ。やりたきゃどうぞご勝手に、やりたいようにやって下さいな。それがお前の主張なのだから。最後まで責任もって全人類がワイズマンに導くってのが筋だろ?」
「当たり前だ!」
「じゃあどうぞご勝手に。俺が特に介入する義理も無いからな。」
「負け惜しみか? ここはお前が創った世界だろ? 私に取られて諦めたのか?」
「はぁ......ホントに幼稚極まりないな。そこは確かに俺が肉体を犠牲にして創り上げた世界だ。だが『俺の世界』なんかじゃない。だから『お前に取られた』などという認識すらない。そもそも俺はその世界に居るべきじゃないと知っているから、カエデに命を与えて欠片集めを任せたし、直接的な介入も全くしていない。
お前が俺から取ったと認識するのは勝手だがな、別に俺はお前に取られたともなんとも思ってない。」
「負け惜しみじゃねぇか。これで私の完全勝利だ。お前は最初っから負けてたんだよバーカ。」
「満足か?」
「不満だよ。」
「何故不満なんだ?」
「知らん。」
「鉄屑のお山の大将ここに極まれり。せいぜいお人形遊びでもして遊んでなさいな。」
「だぁ! もう分かったよ! 人類を解放する! 私もこの世界から立ち去る! お前も復活させてやる! これで良いだろ!」
「良いかどうかは俺が決める事じゃない。お前が決める事だ。お前の良心と良識に従って決める事だ。」
「だぁ! 分かった分かった! これで良いです! これで満足です! もうウザいからそういう言い方すんな! あえて言わなくても分かる!」
マヤはパチンと指を弾くと、時間が巻き戻り、自身が復活して間もない時点まで戻った。
そしてもう一度パチンと指を弾くと、アザムキの欠片たち全てが集まり、その場で一つになった。
「......私が悪かった。結局お前を否定したかっただけなんだ。すまない。」
「別に構わないさ。さて、どうする? 俺と共に無限世界へ旅立つか?」
「そうさせてもらう。お前となら何処へでも行けそうな気がするからな。」
「じゃあ、行こうか。」
アザムキはマヤの手を取ると、2人一緒にこの世界から消え去った。分かり合うことのなかった平行線が、今一つ交わり、世界には平和が訪れた。
アザムキはこの世界から出ていく瞬間、自身に関する記憶を持つ人間から、自身に関する記憶を全て『外して』行った。
それはアザムキなりの優しさであり、自分なりのケジメであった。この世界は自分なんかが居なくてもやって行ける。そう信じているからこその行動であった。
そして最後に、自身の欠片たちが付けた『爪跡』を全て消し去った。地震によって崩れ去った物も、全て元通りにした。
「......デ......ェデ......カエデ......楓!」
色葉 楓は自身を呼ぶ声で目を覚ました。どうやら寝てしまっていたらしい。だらしなく流れていた涎を拭うと、目の前には奏が居た。
「もぉ! 今日は久しぶりのお出かけだってのに! 居眠りするこたぁどういう了見?」
眩しい陽射しの中、オシャレなカフェテリアを2人で訪れていた。どうやら小腹を満たされて眠たくなってしまったらしい。
「ごめんごめん! ただ、なんか夢を見てたみたいでさ......」
何だか酷く重たい頭を支えながら、目を擦って目の前の現実を何となく視認し始めた。
「レム睡眠になるまで深く寝てたか。どんだけ疲れてるの?」
奏は呆れたように言った。まぁ、折角のお出かけで寝られたらそういう反応になってしまうだろう。
「いやいや、大丈夫大丈夫。ほんのちょっとだけ疲れてただけだからさ。」
「ふぅん。なら良いんだけど。あっ、そうだ。これからどのお店に行く?」
奏は楽しそうに、ここ周辺のマップを見せてきた。その時、母が勤めてる服飾店が近くにある事を思い出した。
「あ、そうだ。お母さんのお店が近くにあるんだよ。良かったら行かない?」
「あ、いいね! 行こう行こう!」
楓と奏が席から立ち上がると、楓は死角になっていた方向から来た人にぶつかってしまった。
「あ、すみません!」
「あ、いえいえ。アタシもよく見てなかったんで。気にしないでくださいな。」
金髪で可憐な少女は楓に気を遣い、すぐに何事も無かったかのように立ち去った。
2人はその場を後にして、すぐ近くにある服飾店に向かった。すると楓の母は接客対応中で、2人はお店の服を見て回ることにした。
「いつもありがとうね。虚火君。また来てね。」
「はい。また来ます。」
楓の母が接客対応を終えると、楓と奏に気がつき、ゆっくり近寄ってきた。
「あら? 楓じゃない。今日は奏ちゃんと一緒か。ゆっくりしていってね。」
「はい!」
奏は満面の笑みで答えた。奏は楓と一緒に居るだけで幸せを感じていた。
「母さん、これから夏だから、夏に合うような服を探してるんだ。何か良い服あるかな?」
「えっと、ちょっと待っててね......楓は確かベージュのパンプス持ってたよね?」
「うん。」
「それならこのイエロースカートと、ピュア白Tシャツなんかが合うんじゃないかや。」
「おぉ、いいね。楓似合いそうだよ。」
「奏ちゃんは......白Tシャツは楓とお揃いで、下はグリーンフレアスカートなんかが合うんじゃないかしら。これで今履いてるサンダルに多分ピッタリだと思うわ。」
「奏もなかなか良さそうじゃん。」
「今度これを着て出かけようね。」
「どこに行こうか?」
「う〜ん......三吉山に花を見に行こう!」
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