苦役甦す莇
Re:Episode18 Express one's anger
カエデは家を後にして、モモとトラオがいるアジトに向かった。
地下水路は地震の影響をほとんど受けていなく、前来た時と全く変わらなかった。
「ここはいつも光源はランタンですもんね。いつもと変わりませんね。」
「サクリさんの話聞けたかい?」
「はい。アザムキソウセキの欠片を全て集めて復活させれば、この世界は大丈夫になるとの事でした。」
「そうかそうか。それなら良かった。」
「そう言えば、聞きそびれていたんですけど、2人は何故こんな所で生活してるんですか?」
「......旧世界からの生活だからかな?」
「旧世界からの?」
「旧世界で、科学の方の世界に私達はいたんだけど、その時クノリって奴が『アザムキ ソウセキに関する記憶を持つ者』をどんどん記憶改竄して行ったの。
私達は恐ろしくなって、このなんでもない地下水路で隠れて暮らし始めた。」
「そのクノリって人は、なんでアザムキソウセキの記憶を抹消して行ったんです?」
「そこまでは分からないんだけど、多分個人的な怨恨なのかな?」
「個人的な怨恨だけで......人の記憶を勝手に消すなんて......随分と自分勝手ですね。」
同時刻、敵を消して議会のほぼ全ての権限を獲得したシュバル。彼女はとある場所に来ていた。
幾重にも重ねられた鍵によって、厳重に守られたとある部屋。その部屋の真ん中には、円筒型の水槽のような物が置いてあり、中には緑色に光る謎の液体が入っており、そこに一人の少女が浮かんでいた。
「......フラン様......ソウセキが約束した世界は......かくの如き実現されませんでした......私はあの日、記憶を引き継いだまま転生して......倒れていたフラン様を見つけ、ソウセキが失敗した事を悟りました。
フラン様......もう少しです。あと少しで完全平和が実現し、貴女と私を分断するものが何も無い世界が創れます......私がソウセキのやり残した事を......完遂してみせます......そして平和になった時、貴女は目覚めるでしょう......」
シュバルはそっと、水槽のガラスに手を触れた。眠り続ける少女の名はフラン。世界が一つになる直前に、脳と精神を支配され、無理やり力を引き出された結果、代償として脳への多大なるダメージを負った少女である。
「私の思い描く理想を実現するのは『ソウセキ』では無い......禁断の兵器『リニィジス』だ......もう誰にも私を止めることは出来ない......」
同時刻、奏も自宅に一時帰宅していた。奏は楓と逆で母親が居なく、父親だけで育てられてきた。そんな父親も、医者という立場上、家を空ける事が多く奏は一人で居ることが多かった。
部屋の隅に置いてある亡き母の写真を見ながら、床下に保存しておいた天然水を飲んだ。
「父さんは......脳死状態になった母さんを殺さないと行けないと知った時......どれだけ残酷な運命を呪ったんだろう......『時戻し』ですら治せないと知った時......どれだけ辛かったんだろう......」
桜木 瑠璃享年28。あまりに早すぎる死であった。そしてルリは獣人であった。
「......よし、行くか。母さん、行ってくるね。」
ソウは大きなバッグを手に取り、扉を開けてミズアメに向かう道を急いだ。
数十分後、シュバルはレイ共にとある場所を訪れていた。
「懐かしいですね......ここ。」
「あぁ。お前の修行の為にこの場所を使ったな......空腹や寝不足に耐え、極限状態で必死に剣を握り......魔脈......聖騎士から闇に堕ちるには最適な場所であった。」
「マスター、この場所に来たは良いんですけど、この場所で一体何をするのです?」
「このレイラインは地球上のありとあらゆる場所に繋がっている。そして、超高濃度の魔力も流れている。つまり、この場所で『リニィジス』を発動する事によって、効率的に『アックス』の全兵器を無力化することが出来る。」
シュバルは、お付きのガードロボットにリニィジスを運搬させ、レイラインの中心地であるグレイブヤードに設置した。
「何だか懐かしいな......前の世界でも同じような事を......いや、これは決して繰り返しなどでは無い。これは私の意志による行動なのだから......」
シュバルはヒタニの資料を片手にリニィジスを操作し始め、計画の最終ステージに入ろうとした。
「さぁ刮目しろ争いを辞められないアックスの人間ども......その手に握る兵器を全て鉄くずに変えてみせよう......」
シュバルはリニィジスを発動させると、リニィジスは光だし、レイラインに書き換えのプログラムを送り始めた。
同時刻、震災でボロボロになった街は、人々の助け合いもあり、完全に復旧とは行かないまでも、どうにか暮らしていけるレベルまでには落ち着いていた。
更に、電気や水道を通す事が出来ないほどの被害にあった地区の人々は、周辺地区へ移動し、無償で提供された仮設住宅に住む事となった。
カエデ達の住んでいる『シンザン地区』はほぼ崩壊したが、隣の『キサラギ地区』は比較的無事であった為、カエデとソウはミズアメリサーチに滞在する事を決めた。
カエデとソウが一時帰宅した目的は、ミズアメに本格的に泊まる為の、道具等を持ってくるためであった。
「電気......復旧したみたいですね。ニュース見ましょう。何か新しい情報が見れるかも。」
カエデは部屋にあるテレビの電源を入れた。するとそこには、何かの記者会見の様子が映し出されていた。
「皆様こんにちは。私、ログ議会の現議長シュバル様の付き人をしています一条 件と申す者です。
本日皆様にお集まり頂きました理由は、シュバル様の意志を私が代理で、全ログ民に伝えたいからであります。
それでは読ませていただきます。
『皆様こんにちは。今回新たな議長に就任致しましたルーカ=殊春・トルシェでございます。
今回、リニィジスという兵器保有問題を指摘し、前議長を退任させ、就任したという経緯がございます。
この経緯を踏まえた上で、私はリニィジスという兵器を、ログの最終目標達成の為に使用させていただきます。
ログの最終目標、それは即ち全世界の完全平和化であります。リニィジスを使用する事により、アックスが保有する全ての兵器を無力化。更に結界を解くことにより、世界は完全平和化が完遂し、一つになる事が出来ます。
本日の明け方にリニィジスを発動し、本日の正午に結界解禁となりますので、ご承知おきください。
それでは皆様ご期待くださいませ。』
以上がシュバル様の意思表明でした。ご清聴ありがとうございました。」
「やっぱり......外の世界をリニィジスとかいう兵器を使って支配する......そして結界を無くす事で平和実現......」
カエデは読み上げられた文の内容が、ジョウジの憶測と似ていた事に気がついた。
「そんなに上手くいくわけなかろうて......武器を取り上げた所で、アックスの連中には、遺伝子に刻み込まれた戦闘本能が備わってる。」
ソウは呆れるように言った。そして、馬鹿らしいとも思った。
「平和を目指す......それなのに何故ヒタニさんは......聖騎士の人達は死ななくてはならなかったの?」
カエデは疑問に思った。思想自体は一概に間違ってるとは言わないが、その過程で亡くなった人間が居ることを無視できなかった。
「平和の為の犠牲......まぁちゃんと完遂されるなら尊いものなんだろうけど、こいつの計画は穴があるからな......盲目的に自分が正しいとでも信じているんだろうか?」
奏は、自分の家から持ってきた大きなバッグから、色々と食料品を取り出した。
「......犠牲? 死んで良かった命なんて、今の今まで一つだって無いよ。
ヒタニさんだって......聖騎士の人達だって......皆......みんな大切な命だよ......」
「じゃあカエデ一個聞きたいんだけど、ボクが今ここに並べた食べ物は、他の動物や植物から作られてる。
これは『人間が生きる為の犠牲』だよね? 屁理屈臭くて申し訳ないんだけど、この犠牲になった命と、亡くなった聖騎士の人達の命、どう違うの?」
「それは......食べ物の為に犠牲になった動物や植物の命は、私達人間の命を生き永らえさせる為のもの。つまり『食べる為』の命。これは大きな自然の営みの内の一つだから、仕方の無いこと。でも、生命に対する感謝を忘れてはいけない。
だからちゃんと『いただきます』そして『ごちそうさま』と言うべき。そして食べる時は漫然と物を口に運んでは行けない。ちゃんと『今何を食しているのか』って事を考えて『味わう』これが大切。
対して今回亡くなった聖騎士の人達や、ヒタニさんの命は『殺すために殺された』命。
つまり『他の生物を生き永らえさせる為』では無く、ただ単に不都合な事があったから殺された。私が言いたいのは、こんな事で命をとってはいけないって事。
不都合だから殺す......そんな事あっちゃいけないんだよ......」
カエデは徐に、目の前に並べられた数ある食料品の中から、缶詰を手に取り、中身を皿にあけた。
「なんか喋ってたらお腹空いちゃったよ。」
「うん......食べよう食べよう。」
「いただきます。」
地下水路は地震の影響をほとんど受けていなく、前来た時と全く変わらなかった。
「ここはいつも光源はランタンですもんね。いつもと変わりませんね。」
「サクリさんの話聞けたかい?」
「はい。アザムキソウセキの欠片を全て集めて復活させれば、この世界は大丈夫になるとの事でした。」
「そうかそうか。それなら良かった。」
「そう言えば、聞きそびれていたんですけど、2人は何故こんな所で生活してるんですか?」
「......旧世界からの生活だからかな?」
「旧世界からの?」
「旧世界で、科学の方の世界に私達はいたんだけど、その時クノリって奴が『アザムキ ソウセキに関する記憶を持つ者』をどんどん記憶改竄して行ったの。
私達は恐ろしくなって、このなんでもない地下水路で隠れて暮らし始めた。」
「そのクノリって人は、なんでアザムキソウセキの記憶を抹消して行ったんです?」
「そこまでは分からないんだけど、多分個人的な怨恨なのかな?」
「個人的な怨恨だけで......人の記憶を勝手に消すなんて......随分と自分勝手ですね。」
同時刻、敵を消して議会のほぼ全ての権限を獲得したシュバル。彼女はとある場所に来ていた。
幾重にも重ねられた鍵によって、厳重に守られたとある部屋。その部屋の真ん中には、円筒型の水槽のような物が置いてあり、中には緑色に光る謎の液体が入っており、そこに一人の少女が浮かんでいた。
「......フラン様......ソウセキが約束した世界は......かくの如き実現されませんでした......私はあの日、記憶を引き継いだまま転生して......倒れていたフラン様を見つけ、ソウセキが失敗した事を悟りました。
フラン様......もう少しです。あと少しで完全平和が実現し、貴女と私を分断するものが何も無い世界が創れます......私がソウセキのやり残した事を......完遂してみせます......そして平和になった時、貴女は目覚めるでしょう......」
シュバルはそっと、水槽のガラスに手を触れた。眠り続ける少女の名はフラン。世界が一つになる直前に、脳と精神を支配され、無理やり力を引き出された結果、代償として脳への多大なるダメージを負った少女である。
「私の思い描く理想を実現するのは『ソウセキ』では無い......禁断の兵器『リニィジス』だ......もう誰にも私を止めることは出来ない......」
同時刻、奏も自宅に一時帰宅していた。奏は楓と逆で母親が居なく、父親だけで育てられてきた。そんな父親も、医者という立場上、家を空ける事が多く奏は一人で居ることが多かった。
部屋の隅に置いてある亡き母の写真を見ながら、床下に保存しておいた天然水を飲んだ。
「父さんは......脳死状態になった母さんを殺さないと行けないと知った時......どれだけ残酷な運命を呪ったんだろう......『時戻し』ですら治せないと知った時......どれだけ辛かったんだろう......」
桜木 瑠璃享年28。あまりに早すぎる死であった。そしてルリは獣人であった。
「......よし、行くか。母さん、行ってくるね。」
ソウは大きなバッグを手に取り、扉を開けてミズアメに向かう道を急いだ。
数十分後、シュバルはレイ共にとある場所を訪れていた。
「懐かしいですね......ここ。」
「あぁ。お前の修行の為にこの場所を使ったな......空腹や寝不足に耐え、極限状態で必死に剣を握り......魔脈......聖騎士から闇に堕ちるには最適な場所であった。」
「マスター、この場所に来たは良いんですけど、この場所で一体何をするのです?」
「このレイラインは地球上のありとあらゆる場所に繋がっている。そして、超高濃度の魔力も流れている。つまり、この場所で『リニィジス』を発動する事によって、効率的に『アックス』の全兵器を無力化することが出来る。」
シュバルは、お付きのガードロボットにリニィジスを運搬させ、レイラインの中心地であるグレイブヤードに設置した。
「何だか懐かしいな......前の世界でも同じような事を......いや、これは決して繰り返しなどでは無い。これは私の意志による行動なのだから......」
シュバルはヒタニの資料を片手にリニィジスを操作し始め、計画の最終ステージに入ろうとした。
「さぁ刮目しろ争いを辞められないアックスの人間ども......その手に握る兵器を全て鉄くずに変えてみせよう......」
シュバルはリニィジスを発動させると、リニィジスは光だし、レイラインに書き換えのプログラムを送り始めた。
同時刻、震災でボロボロになった街は、人々の助け合いもあり、完全に復旧とは行かないまでも、どうにか暮らしていけるレベルまでには落ち着いていた。
更に、電気や水道を通す事が出来ないほどの被害にあった地区の人々は、周辺地区へ移動し、無償で提供された仮設住宅に住む事となった。
カエデ達の住んでいる『シンザン地区』はほぼ崩壊したが、隣の『キサラギ地区』は比較的無事であった為、カエデとソウはミズアメリサーチに滞在する事を決めた。
カエデとソウが一時帰宅した目的は、ミズアメに本格的に泊まる為の、道具等を持ってくるためであった。
「電気......復旧したみたいですね。ニュース見ましょう。何か新しい情報が見れるかも。」
カエデは部屋にあるテレビの電源を入れた。するとそこには、何かの記者会見の様子が映し出されていた。
「皆様こんにちは。私、ログ議会の現議長シュバル様の付き人をしています一条 件と申す者です。
本日皆様にお集まり頂きました理由は、シュバル様の意志を私が代理で、全ログ民に伝えたいからであります。
それでは読ませていただきます。
『皆様こんにちは。今回新たな議長に就任致しましたルーカ=殊春・トルシェでございます。
今回、リニィジスという兵器保有問題を指摘し、前議長を退任させ、就任したという経緯がございます。
この経緯を踏まえた上で、私はリニィジスという兵器を、ログの最終目標達成の為に使用させていただきます。
ログの最終目標、それは即ち全世界の完全平和化であります。リニィジスを使用する事により、アックスが保有する全ての兵器を無力化。更に結界を解くことにより、世界は完全平和化が完遂し、一つになる事が出来ます。
本日の明け方にリニィジスを発動し、本日の正午に結界解禁となりますので、ご承知おきください。
それでは皆様ご期待くださいませ。』
以上がシュバル様の意思表明でした。ご清聴ありがとうございました。」
「やっぱり......外の世界をリニィジスとかいう兵器を使って支配する......そして結界を無くす事で平和実現......」
カエデは読み上げられた文の内容が、ジョウジの憶測と似ていた事に気がついた。
「そんなに上手くいくわけなかろうて......武器を取り上げた所で、アックスの連中には、遺伝子に刻み込まれた戦闘本能が備わってる。」
ソウは呆れるように言った。そして、馬鹿らしいとも思った。
「平和を目指す......それなのに何故ヒタニさんは......聖騎士の人達は死ななくてはならなかったの?」
カエデは疑問に思った。思想自体は一概に間違ってるとは言わないが、その過程で亡くなった人間が居ることを無視できなかった。
「平和の為の犠牲......まぁちゃんと完遂されるなら尊いものなんだろうけど、こいつの計画は穴があるからな......盲目的に自分が正しいとでも信じているんだろうか?」
奏は、自分の家から持ってきた大きなバッグから、色々と食料品を取り出した。
「......犠牲? 死んで良かった命なんて、今の今まで一つだって無いよ。
ヒタニさんだって......聖騎士の人達だって......皆......みんな大切な命だよ......」
「じゃあカエデ一個聞きたいんだけど、ボクが今ここに並べた食べ物は、他の動物や植物から作られてる。
これは『人間が生きる為の犠牲』だよね? 屁理屈臭くて申し訳ないんだけど、この犠牲になった命と、亡くなった聖騎士の人達の命、どう違うの?」
「それは......食べ物の為に犠牲になった動物や植物の命は、私達人間の命を生き永らえさせる為のもの。つまり『食べる為』の命。これは大きな自然の営みの内の一つだから、仕方の無いこと。でも、生命に対する感謝を忘れてはいけない。
だからちゃんと『いただきます』そして『ごちそうさま』と言うべき。そして食べる時は漫然と物を口に運んでは行けない。ちゃんと『今何を食しているのか』って事を考えて『味わう』これが大切。
対して今回亡くなった聖騎士の人達や、ヒタニさんの命は『殺すために殺された』命。
つまり『他の生物を生き永らえさせる為』では無く、ただ単に不都合な事があったから殺された。私が言いたいのは、こんな事で命をとってはいけないって事。
不都合だから殺す......そんな事あっちゃいけないんだよ......」
カエデは徐に、目の前に並べられた数ある食料品の中から、缶詰を手に取り、中身を皿にあけた。
「なんか喋ってたらお腹空いちゃったよ。」
「うん......食べよう食べよう。」
「いただきます。」
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