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苦役甦す莇

マウスウォッシュ

Re:Episode9 Earth quake

 メガロワールドに向かった奏の場合


 奏は、ゲーセンに居た人間なんかいちいち店員が覚えてる訳が無いと思い、他2人と違い割とダメ元な気持ちで向かった。

 ダメだと分かりつつ、何とかしようと奏は奏なりに、歩きながらそれなりの作戦を考えた。

 奏が考え出した作戦というのは、まず他2人が有益な情報を入手してから、その情報を元に探って行くという無難なものだ。

 情報ゼロでゲーセンに人探しに行くと言うのは、無論雲をつかむような話なので、このような無難な作戦以外考えられないのだ。

 奏はメガロワールドの店舗の横にある空き地に座り、2人からの情報共有を待った。


「えーっとぉ......お、キタキタ。」


 奏はポチポチと携帯端末をいじりながら、2人から共有された情報を確認した。


「創君と似てる人......更には8年前の地震かぁ......ナルホドナルホド。つまり、サクリさんは人知れず欠片の保護を行っていたと......ニャルホドね。」


 奏は一通り確認すると、携帯端末をポケットに突っ込み、横に置いていたリュックを背負って、メガロワールドに入店した。

 ジョウジから貰った顔写真と、2人から共有してもらった情報を頼りに、それらしい人物を探すも、やはりというかなんというか、ゲーセンにいるのは毎日通いつめてるプロゲーマーか、ふらっと立ち寄った学生くらいなものである。

 たった一日ここを訪れただけなら店員も覚えてないだろうし、万が一覚えている店員が居たとしても今日この時間ここに居るとは限らない。

 他2人の向かった農場と博物館は人の出入りも少なく、尚且つサクリの目立った行動をちゃんと目撃していた人がいたからイイものの、ゲーセンで人探しとはかなり絶望的であるとしか言いようがない。


「はぁ......そうカンタンに見つかるワケ無いよね......今日はこの辺で引き上げようかな......」


 奏はゲームの筐体の前にあるイスに座り、溜息ひとつ吐いてから、引き上げる時間を見計らっていた。


「ねぇねぇお姉さん、何してるの? もし良かったらこれからオレ達と遊ばない?」


 いきなりチーマー風の男数人が奏の近くに寄ってきて、軽々しい感じで話しかけてきた。


「はぁ......遊ばないよ......ボクだって忙しいんだ......悪いけど他の人探しな。」


「そう言わずにさぁ!」


「あんまり執拗いと嫌われるよ。それに、悪いけどボクは男に興味が無いんだ。」


 奏はシッシッと邪険に払い除けるような仕草をした後、そそくさとその場から立ち去った。


「ったく......当の本人は見つからないし、変なナンパに話しかけられるし......ボクが一生共にするって誓ったのはカエデだけだっつうの......あたっ! あ、すみません!」

 奏がメガロワールドから立ち去ろうと、ボソボソ文句を言っていた所、よそ見をしていたせいで誰かにぶつかってしまった。

「いえいえ、こちらこそすみません。お怪我はありませんか?」

「大丈夫です......って、あれ?」

「どうかしました?」

「えーっと......人違いでしたら申し訳無いんですけど、もしかしてハイス サクリさんですか?」


「えぇ、そうですけど......どうして私の名前を?」


「あぁ......良かった見つかった。貴女の事を探していたんです。ミズアメ・リサーチに向かっても居ないので、ジョウジさんからの情報と、友達からの情報をアテに探していたんです。」


「あら、そうだったの。わざわざ探して頂いて、ごめんなさいね。とりあえず一旦ミズアメまで戻りましょう。」


 奏は先ず、創と楓の2人へ連絡し、咲里と合流したという旨を伝えた。

 ミズアメ・リサーチへ戻る道中、奏はサクリから様々な話を聞き出した。


「自己紹介が遅れてしまって申し訳無いです。ボク、ミヨシヤマ学園の桜木 奏って言います。」


「あら、わざわざ自己紹介ありがとう。多分貴女は私の事を聞かさてるんでしょうけど、とりあえず私も自己紹介するわね。
私の名前は灰吸 咲里ハイス サクリ。前世からの記憶を引き継いで、貴女達に語り継ぐ役目を担っている者よ。」


「私達の事知ってるんですか?」


「名前を聞いてハッとしたわ。貴女がワイズマンから伝えられた『運命の3人』の1人なんだってね。」


「運命の3人?」


「神の鎧である色葉 楓、神の欠片である吉瀬 創、そして貴女、神の子である桜木 奏。」


「疑問に思ってたんですけど、その神の鎧とか神の子とかってどういう意味なんですか?」


「それは貴女達の前世......まぁ融合する前の旧世界の時の『アザムキ ソウセキ』さんとの関係だね。」


「私と......なんだっけ......世界の融合の為の壺になった『アザムキ ソウセキ』さんとの関係?」


「そう。まず、貴女の友達の楓さんは、旧世界ではアザムキさんが身につけていた『カエデ』という鎧の擬似人格だったの。アザムキさんは自らの存在が崩壊する間際に、最後の力を振り絞って『カエデ』を『色葉 楓』という1人の女の子にしたの。

次に貴女。貴女は旧世界で『生まれるはずだった』アザムキさんの娘よ。
ただ、貴女が母親のお腹にいる間......つまり旧世界で生まれないうちに世界が融合してしまった。
アザムキさんの遺伝子を受け継ぐ貴女は特別な存在。だからワイズマンの意思によって生まれさせられた。この新世界で大切な役割を担っている。

最後に創君。彼の正体は、実は『旧世界でアザムキさんが取り戻す事の出来なかった唯一の欠片』なの。
だから他の欠片と違って特別な存在。彼だけは独立した存在だから、試練を乗り越えた貴女達2人と共にいれば『不可逆の破壊』をコントロール出来る。」


「なるほど......つまりボク達は生まれる前から一緒になる『運命の3人』だったと。」


「そういう事。まぁ、形而上の存在......ワイズマンやアザムキさんの意思による物だけどね。」


「あの、一つ聞きたいことが。」


「なぁに?」


「他の『アザムキの欠片』を集めることによって、アザムキさんは復活するんですか?」


「そうよ?」


「それって凄く危険なんじゃないんですか? アザムキさんって、確かこの『有限世界』に存在すると、キャパシティがオーバーしちゃって、宇宙が壊れちゃうみたいな話を聞いたんですけど......」


「それなら大丈夫。彼はもうこの有限世界に存在することは無いから。」


「どういう事ですか?」


「この『有限世界』にて、全ての欠片を1ヶ所に集めたら、その欠片達はこの『有限世界』を飛び出て、『無限世界』にて合体する。
だから、この世界が壊れるとかの心配は一切御無用だよ。」


「そうだったんですか......ってことは、アザムキさんを復活させたら、創君とは二度と会えないって事ですか?」


「それも大丈夫。創君は元々私と一体化してたアザムキさんの欠片。だから世界が融合する瞬間に私と分離してしまったんだけど、彼の残留意思は今も私の中に残ってる。
だから私が創君をイメージすれば、欠片としての役目を果たした後でもそれなりに具現化は出来るよ。」


「なる......ほど? 何かよく分からないですけど、アザムキさんの復活後でも創君とは会えるんですね?」


「そうだね。個人としての吉瀬 創は、残留思念となって私とずっと一緒だから。」


 歩いてる途中、ふとサクリが立ち止まった。そしていきなり夜空を見上げた。


「どうしたんですか?」


「あの日......最後に彼は私にこう言ったの。『サクリ......ありがとうな』って。
何でかな......普通なら私が感謝しないといけないはずなのに、彼の方が私に感謝の言葉を送った......彼はいつもボロボロで、母親の手の上で転がされながらも必死に運命に抗った......と言うより自分なりの神の在り方を貫こうとした。

平穏な日々を取り上げられても、大切な幼馴染を知らぬ間に奪われていても、大切な人達を目の前で殺され続けても、彼はめげなかった。

だから今度は私が彼へ奉仕する番。そして、不完全な平和なこの世界を、完全に平和にさせるのが役目。」


「過激派アックスの問題まで解決しようとしてるんですか? あの絶対に消えることの無いと言われた、戦乱の炎を?」


「現状、ログが出来てるのは飛び火されないように結界を張ってる努力と、アックスに対して戦争を辞めるように勧告を出してるだけ。それだけでは彼らの闘争は終わらない。

ログで対話によって魔術と科学が発展してきたように、アックスでも闘争によって魔術と科学は恐竜的進化を遂げてきた。
だからこそ、この世界の外からの干渉が必要。一応、ログという対話ベースの穏健派のお陰で人類の自滅という自体は免れてるけど、アックスがお互いに争いあって、迎える終結は滅びだけ。

私は......アックスの人達を救いたいのよ。争うことしか出来ない可哀想な人達を。」


「それは......なんて言うですかね......慈愛の心? とかってやつですかね?」


「そうかもね。でもまぁ、綺麗事を言ってるだけで、ホントは私のこの考えはただの押し付けに過ぎないのかもね。

......でも、それでもやっぱり、アックスの人達から争う心を取り除きたい。それが、私がこの世界で果たすべき務めだと思うから。」










 カエデは博物館からの帰り際、奏からの連絡を受け取った。そして、運命の歯車は別の糸を手繰り寄せ始める。


「え? 何? 地震!?」

 突然、カエデの足元が大きく揺れ始め、街ゆく周りの人の表情にも焦りと困惑の色が出始めた。

 人々は異口同音に地震に対する驚きと恐怖を言葉にし、そして同時に、8年前の震災の事を思い出していた。


「あ......あ......」


 カエデはあの日の恐怖がフラッシュバックし、今現在の地震による恐怖と、8年前の思い出による恐怖の相乗効果で、その場から動けなくなってしまった。


「あ......あ......いや......いやあああああ!」


 カエデが自身の内側から湧き出てくる恐怖に食われそうになり、その場でガタガタ震え始めた。
 そしてカエデは怯える事しか出来なくなり、頭上から降ってくるガレキに注意が向かなかった。


 そして、カエデは恐怖により力を暴走させる。カエデの周りには幾つかの装甲の様な物が現れ、カエデを守るための自己防衛プログラムを発動し始めた。

 降ってくるガレキの雨。装甲達はそれらからカエデを守るための傘となった。

 しかし、如何にカエデを守るための自己防衛プログラムの装甲と言っても、やはり耐荷重には限りがあり、とても大きなガレキが降ってきたら一溜りも無かった。

 そしてカエデを殺すかのように、大きなガレキの塊はカエデの所に降ってきた。

 カエデは恐怖に打ち震え、その場から逃げ出すという選択肢すら取れなかった。


「危ない!」


 カエデに向かって誰かが叫んだ。そして、カエデに向かって走り、カエデを抱えてその場から助け出した。

 間一髪で大きなガレキの塊から逃げ出し、カエデは命拾いをした。


「ふぅ......危なかったな......おい、大丈夫か?」


「あ、助けて頂いて、ありがとうございます......お名前は何と仰るのですか?」


「俺の名前は火渓ヒタニだ。火渓 炎ヒタニ エン。」

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