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苦役甦す莇

マウスウォッシュ

Re:Episode5 Determination time

 楓と奏はすぐさまその破壊された駅から移動し、徒歩にて学校を目指した。学校を目指した理由は1つ『マリの銀鏡』の所に向かうため。

 道中、2人はこれまで起きた突飛過ぎる出来事を、必死に頭の中で纏め始めていた。


「転校してきた創君は、実は記憶を無くしてて、この世界を創った『アザムキソウセキ』という存在の欠片だった......で、『アザムキソウセキ』は、私達が今いる『有限世界』の外にある『無限世界』って所と繋がってるから、欠片である創君達も『無限世界と不完全に繋がってる』って状態になってる。」


 奏は歩きながら、楓に話すように事象を纏め始めた。楓はそれに倣うように自分も纏め始めた。


「だから創君は『無限世界と繋がってるが故にこの有限世界では時折キャパシティオーバー』が発生する......それこそ修復不可能な『不可逆の力』による破壊......

何これ? もうワケが分かんない!」


 楓は自分で言ってて、何を言ってるのかよく分からなくなっていた。


「そして記憶を無くす前の創君は、存在してるだけで周りの生物が死に、周りの物が破壊されていく孤独に耐えかねて、自ら記憶を消し去った......そして『止めて欲しい』って願いが『鏡の中の創君』を生み出した......」


「鏡の中の創君は、『勝手に産み出された被害者』でありながら、創君の『失った記憶』とか『旧世界に関する記憶』まで持ってた。

だからこそ、創君が存在を否定して、私達と一緒に行くことを決めた時に、『止めて欲しい』という気持ちで産んだくせにって歪んだ......だから、無理矢理融合して私達から引き剥がして、『アザムキソウセキ』のように神様になろうとしてる......」


「いや......少なくともモモさんの話を聞いた限りじゃ『アザムキソウセキ』は自己犠牲の心があった。でも鏡の中の創君は自己犠牲の心なんて無かった。
自己愛とか自己陶酔に近い何かを感じた......こんな非現実的な事が連続して起こると、今までテスタメントで入れられた知識なんか何も役に立たないね......」


「うん......兎に角、もうこの件は私達しか解決出来ないと思うから、もう私達が解決するしかない。」


「あの『不可逆の力』どうして私達だけには通用しなかったんだろうね?」


「最後に彼が言ってたのが気になる。『神の子と神の鎧が揃って楯突くか』って。あと『産まれる前からアザムキソウセキと繋がっていた』って。」


「もうホントに何がなにやら訳わかんない! どうしてただの女子高校生である私達が、こんなよく分からない事に巻き込まれるの? この世界は2つの世界が混ざっただとか、私達にとって全く関係無くない?」


「多分、運命とかそういう事なんじゃないかな? 事実、こんなに訳わかんない突飛な事が連続して起きて、説明も不十分なままなのに、私達は死んでないし、寧ろ順応しつつある。」


「楓はもう慣れたとでも言いたいの?」


「ううん......慣れると言うより、どこかちょっと懐かしい? 気がするんだよね。さっきちょっとだけ服装が変わった時あったじゃん? その時の感覚。」


 創と鏡の中の創がぶつけ合って生まれた『不可逆の力』の力場。それによって一瞬覚醒した2人に眠っている力。本能的に2人は、それを自らの『本来の姿』と分かった。だからこそ、超常的な存在の創を対面するからには、自分たちも超常的な存在に近づかなければならないと悟った。


 創は『マリの銀鏡』に映った自分と向き合っている。それならば、自分たちも『マリの銀鏡』に姿を映せば『本来の姿』を呼び覚ます事が出来るのではという仮説に至っていた。


「もう......正気の沙汰じゃないよね......あんな宇宙を壊しかねないバケモノ相手に、私達挑もうとしてるんだから。」


「もうあんなの生き物じゃないよ。現象が意志を持って人の形して歩いてるだけだよ。『キセソウ』っていう現象。」


「適わないなんて十分分かってる。でも放っておけないよ。友達なんだから。」


 そうこうしている内に、いつの間にか2人は学校に辿り着いていた。

 2人はダッシュで魔法学科の学科職員室へ向かった。そして学科職員室に入ると、先程まで植物型魔獣が荒らし回った痕跡が、未だに生々しく残っていた。不幸中の幸いであったのは、この現状をまだ先生方に見られていないという事だ。


 2人は急いで『マリの銀鏡』の前に立った。すると、鏡面に映ったのは制服を着た自分では無く、別の姿をした自分であった。


「汝は我。我は汝。神の鎧カエデよ。今こそ貴女に真の姿を与えましょう。」

「汝は我。我は汝。神の子ソウよ。今こそ貴女に真の姿を与えましょう。」


 鏡に映った2人がそう言うと、2人は鏡の中の自分と溶け合い、融合した。

 そして、第六天キ世がいる鏡の中へと誘われて行った。










「......まさか、ここまで追いかけてくるとはな。驚いたよ。」


「創君を取り返す為だから。」


「ボク達は君の力じゃ斃せないんだろう? それならボク達が君みたいな欠片の暴走を止める役割を担うべきなんだ。」


「五月蝿いなぁ......」


 キ世が少し瞬きをすると、周りの物が破壊されて行った。無論、鏡の中なので外には害は無いが、外の世界でこれをしてしまっていたら、今頃先程の快速急行よりも大量の被害者が出ていただろう。


「俺が......俺様がルールなんだよ......それ以上でも以下でも無い。他人がどうなろうと俺の知った事か。

『無効化する力』とか『反射する力』とか、そう言うもの全てを無視してブッ壊す俺の力......能書きの紙そのものを破いちまうような力......それなのに......お前らは......お前らは俺の前に立ちはだかってきやがる......不愉快極まりない......」


 キ世がイライラを募らせると、一瞬にして周りのもの全てが破壊された。鏡の中の学科職員室は、跡形もなく破壊され、更にその職員室を内包する学校の校舎も破壊され、更にそれを内包する街も一瞬にして破壊された。そしてその場所には、キ世とカエデとソウだけがポツンと浮かんでるような寒々しい状況が出来上がった。


「貴方は私たちを壊せない。私たちは『アザムキソウセキの意志によって産み出された存在』だから。」


「裏を返せば、アザムキソウセキが完全復活し、私たちを消さない限り私たちは永遠に消える事は無い。
だから貴方がこの世界にのさばる事なんて出来やしない。私たちを消したかったら大人しく創君を解放して貴方が消えるしか無い。」


「ああっ......ああっ......あぁ......有象無象が何か囀っているなぁ......とても不快な囀りだ......俺の心を......ザワつかせる......消したいのに......消したいのに......なんで消えないかなぁ......なんで至高の存在である俺様が......説教されてるんだ?」


 キ世は思いっきり振りかぶって、2人に向かってパンチを放った。しかし、強すぎるが故に、まともに喧嘩なぞしてこなかったキ世のパンチは当たる訳がなかった。


 カエデ達は何の気なしにひょいひょいと身を動かして、キ世のパンチを躱した。


「この鏡の中で......有象無象に邪魔されずに力を溜めて......他の欠片共を吸収してやろうって時に......お前らはぁ!」


「他の欠片を吸収したら、貴方は未来永劫私たちを倒せなくなるよ。だって私たちは『アザムキソウセキ』によって産み出された存在なんだから。『第六天キ世』である貴方では一生......いや永遠に......仮に世界が終わっても私たちを倒せはしない。
そして欠片でしか無い貴方では、壊せるのはせいぜいこの街一つ分ってとこかしらね。結局、貴方は私たちに勝てやしない。」


「......寧ろ、貴方が勝てる公算がゼロでは無いといつから錯覚していたのかしら?
創君がボク達と会っていた時点で、既に貴方に勝ち目も何も無かったのよ。
既に......そう。既に貴方は敗けていたのよ。」


 キ世は頭をガリガリと掻き毟った。そして瓦礫の山の上で、1つ大きな咆哮を放った。


「認めるかァ!!! お前らが存在するのがいけないんだ!!! お前らが存在しなければ......お前らが存在しなければぁああああああああああ!!!」


 キ世は天高く拳を突き上げた。そして声高々にこう叫んだ。


「時代をゼロから始めよう......今こそ! 始まりの世界からリスタートだ!!!」


「え? 今度は何?」


「俺の望み通りにならないなら......初めっから世界をやり直せば良いんだよぉ!」


 空の雲の流れが今までとは逆の向きに流れ始める。そして、太陽が西から東に向かって進み始め、時が逆行していく。


「お前らは俺らと違い、宇宙が始まる時点では存在していなかった。だからこそ『時戻し』を起こした。この宇宙をゼロから始め直す......お前らの邪魔無しでな!」


「もう時間が無い......奏! 覚悟決めるよ!」

「了解! ボクらなら絶対やり遂げられるさ! 行くよ楓!」


 楓と奏はお互いの拳をトンとぶつけ合った。すると、2人の存在はゆっくりと混ざり合い、1つの存在へと変化した。


「私は平和の音色を奏し者、カナデ也。この世界の平和を脅かす者は、何人たりとものさばらさてはいかん。
例えそれが、我が主の欠片であっても。守護者であり忘れ形見である私が、公平な裁きを下す。」


「......カナデ? あぁそうか......カエデソウの2人でカナデね......
融合して『時戻し』に対抗するとは......いやはや......戻れなくなるかも知れないというのに......それほどまでにコイツが大事かね......面白い......」


 カナデはゆっくりとキ世に向かって手のひらを翳した。


「主の意志に背く貴様へはこれを送ろう......発動『ピースベル』......」

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