苦役甦す莇
Episode50 Wild fox
むかしむかしある所に1匹の狐がいました。
その狐はいつも群れのトップにいて、とても賢く、とても強い心を持っていました。
ある日その狐は群れを置いて1匹だけで虎の所に出かけていきました。
狐は虎の前にやって来ると、何故か堂々と目の前で寝始めました。
虎は自分のテリトリーにズカズカ入ってきた上に、偉そうに無防備に我が物顔で居座られるのが気に食わず、狐に食らいつこうとしました。
しかし、狐は噛みつかれる直前でするりと避け、虎の背中に乗りました。
虎は何が起きてるのかサッパリ分からず、背中に乗った狐を引っ掻こうとゴロンゴロン転げ回ります。
しかし狐は巧みに、しかも最小限の労力で虎の攻撃を避け続けます。
そしてしまいには転がった虎をまるで曲芸の球のように足で転がし、自分の移動手段として使い始めたのです。
虎はバテバテ、しかし狐は未だに澄ました顔でしゃんと立っている。
虎はギブアップの意味を込めて、腹を上にして寝転がりました。
しかし狐はそんな事をされても澄まし顔のまま。
虎は不思議に思い、何をすれば狐の気をひけるのか色々繰り返しました。
時には肉を持ってきたり、時には花を持ってきたり、またある時は隙を見てもう一回攻撃を仕掛けることもありました。
しかし、どれをしても狐は無反応。攻撃に関しては物の見事に躱される。
虎はとうとう分からなくなり、狐の目の前に爪跡を残してその場から立ち去りました。
すると狐は仲間の狐を呼んできて、自身の目の前に虎の爪跡があるのを教えるのと、今まで虎のいたテリトリーを我が物顔で歩くことにより、皆に虎に勝った事を知らしめました。
皆はその狐を真のリーダーだと心酔し、狐のみならず他の動物もその狐に従うようになりました。
ある日狐は烏の居るテリトリーに行きました。
狐は自分が空を飛べないことは弁えていたので、烏を味方につけようと算段を立てたのでした。
一日に一回木の実を持っていき、徐々に烏と狐は打ち解けていき、1ヶ月もすると仲間になっていました。
狐は算段通り烏を味方につけると、烏と共に今まで行ったことの無い遠くの地へ行きました。
人間が使うことの無い獣道を仲間とともに進んで行くこと数ヶ月、狐はとある町に着きました。
そこは炭坑で栄えた町であり、山にはいくつかの穴があいています。
狐はそのいくつかある穴のうち、1番人気のない穴を見つけてピュッと入り込みました。
狐が入り込んだ穴は、坑道ではなく自然にあけられた洞窟でした。
狐はするりするりと尖った岩を避けつつ中に入っていき、とある場所まで辿り着きました。
その場所はこの世で最も低俗で卑しい人間が住んでいるとされる場所、クレル族の住処でした。
狐はそんな事はよく知らなかったが、とりあえず入ってみて民衆の前に立ってみました。
するとクレル族は擬似太陽の後光に照らされて美しく輝く白狐に頭を垂れました。
そしてその狐はしばらくそこに居座りました。クレル族は皆その狐を神のように扱い、崇め奉りました。
実は彼らには心の拠り所が必要だったのです。彼らにとって、同じ人間なのに人間では無いかのような扱いをして洞窟にまで追いやった人類よりも、自分たちの前に恐れずに表れた狐の方がよっぽど心の支えになりました。
数日経ったある日、いきなり住処の洞窟に穴があきます。
それは炭鉱夫達が坑道を掘り進めた結果、クレル族の住処にぶつかってしまったのである。
最初は炭鉱夫達もクレル族もオドオドしていたが、炭鉱夫達が洞窟に潜むものがクレル族と分かるやいなや、スコップやツルハシで殴りかかってきました。
その光景を見た狐は烏に頼んで仲間を呼びに行ってもらい、仲間が来るまでの間時間稼ぎをしました。
炭鉱夫達を化かし、欺き、同士討ちさせ、賢く立ち回って時間稼ぎをしました。
しかし、烏が仲間を呼んできて到着する数分前、狐は油断しツルハシをその身で受けてしまいます。
白い体から溢れ出る赤い血を見て、狐は死を覚悟しました。
烏が呼んできた仲間によって炭鉱夫達は撤退したのですが、狐は虫の息。
そこでクレル族の長は2つある擬似太陽の1つで傷を癒し、もう1つを狐に埋め込みました。
すると狐はまるで不死鳥の如く復活しました。
狐と仲間達はそのクレル族の住処を後にする際に、あけられた穴を塞いであげました。
そして落盤事故に見せかけ、出口を塞いで廃坑にしてやり、残った最後の1つの出口には犬を2匹残し、末代まで守り抜くように指示しました。
数百年経った後、狐はとある里の近くの竹林に仲間とともに住んでいました。
狐は自分だけ歳をとらないので、数百年前の仲間の末代と共に生きていました。
ある日、事件は起こりました。里から数名の人間達がやって来て、いきなり何の理由も無しに狐の仲間を斬り殺して行きました。
幸い姿を隠していた狐と数匹の仲間達は生きており、何が起きたのか探りました。
すると、里には狐の白い毛で作った狐白裘をこれ見よがしにつけている輩がいるではありませんか。
狐達は人間に対する報復を誓いました。
するとその翌日の夜。竹林で空を見上げていると、1つの大きな星が現れました。
月です。狐は月を見上げると、こんな声が聞こえてきました。
「獣人になるか魔獣になるか選べ。」
狐は獣人になる事を選びました。獣人になった狐は目の前で怯えている少年に話しかけました。
「......やぁ。人間。」
彼は夢でも見ているのかと言うほど怯えていました。
人間からしてみれば、獣が人になるはずなど無いのだから。
「あ......あ......あ......ありえねぇ......」
「信じたくないのなら信じなければいい。
見たくない真実なら目を塞げばいい。
君たち人間はいつもそうしてきただろう。」
狐はこの数百年の間、人間という物を見てきました。
人間はいつも愚かで争う事を辞められない生き物だと言うことを狐は理解していた。生きる為に争って、争う為に生きている。
クレル族のような見たくない物は見えない所に追いやって、見えてきたら潰し始める。実に愚かです。
そしてその少年と烏の末代と狐は、次の晩に里を滅ぼしました。
そこから狐は『使名虎』と名乗り始めました。
昔虎に勝った経験からくる名前。しかし、どこまで言っても自分は狐。だから虎の名前を使っているだけだ。という戒めを込めました。
狐と烏と抜け忍は、常に行動を共にしました。
狐は街の市場で獣人が奴隷として売られていることを知り、獣人の立場向上の為動き出しました。
魔法使いの弟子を仲間にして4人でギルドを立ち上げました。
しかし、すぐに烏が脱退。その事が原因で狐の心は荒み、街に出ていきました。
するとそこで第2の神に愛された少女と出会いました。
狐はその少女を仲間に迎え、心に平穏を取り戻しました。
更にまた街に出ていった時には、雨に濡れた王国の姫を保護し、仲間にしました。
またある時は、掲示板の前に居た少年に声をかけました。
「なぁあんた。このギルドに加入しようとしてるのか?」
その狐はいつも群れのトップにいて、とても賢く、とても強い心を持っていました。
ある日その狐は群れを置いて1匹だけで虎の所に出かけていきました。
狐は虎の前にやって来ると、何故か堂々と目の前で寝始めました。
虎は自分のテリトリーにズカズカ入ってきた上に、偉そうに無防備に我が物顔で居座られるのが気に食わず、狐に食らいつこうとしました。
しかし、狐は噛みつかれる直前でするりと避け、虎の背中に乗りました。
虎は何が起きてるのかサッパリ分からず、背中に乗った狐を引っ掻こうとゴロンゴロン転げ回ります。
しかし狐は巧みに、しかも最小限の労力で虎の攻撃を避け続けます。
そしてしまいには転がった虎をまるで曲芸の球のように足で転がし、自分の移動手段として使い始めたのです。
虎はバテバテ、しかし狐は未だに澄ました顔でしゃんと立っている。
虎はギブアップの意味を込めて、腹を上にして寝転がりました。
しかし狐はそんな事をされても澄まし顔のまま。
虎は不思議に思い、何をすれば狐の気をひけるのか色々繰り返しました。
時には肉を持ってきたり、時には花を持ってきたり、またある時は隙を見てもう一回攻撃を仕掛けることもありました。
しかし、どれをしても狐は無反応。攻撃に関しては物の見事に躱される。
虎はとうとう分からなくなり、狐の目の前に爪跡を残してその場から立ち去りました。
すると狐は仲間の狐を呼んできて、自身の目の前に虎の爪跡があるのを教えるのと、今まで虎のいたテリトリーを我が物顔で歩くことにより、皆に虎に勝った事を知らしめました。
皆はその狐を真のリーダーだと心酔し、狐のみならず他の動物もその狐に従うようになりました。
ある日狐は烏の居るテリトリーに行きました。
狐は自分が空を飛べないことは弁えていたので、烏を味方につけようと算段を立てたのでした。
一日に一回木の実を持っていき、徐々に烏と狐は打ち解けていき、1ヶ月もすると仲間になっていました。
狐は算段通り烏を味方につけると、烏と共に今まで行ったことの無い遠くの地へ行きました。
人間が使うことの無い獣道を仲間とともに進んで行くこと数ヶ月、狐はとある町に着きました。
そこは炭坑で栄えた町であり、山にはいくつかの穴があいています。
狐はそのいくつかある穴のうち、1番人気のない穴を見つけてピュッと入り込みました。
狐が入り込んだ穴は、坑道ではなく自然にあけられた洞窟でした。
狐はするりするりと尖った岩を避けつつ中に入っていき、とある場所まで辿り着きました。
その場所はこの世で最も低俗で卑しい人間が住んでいるとされる場所、クレル族の住処でした。
狐はそんな事はよく知らなかったが、とりあえず入ってみて民衆の前に立ってみました。
するとクレル族は擬似太陽の後光に照らされて美しく輝く白狐に頭を垂れました。
そしてその狐はしばらくそこに居座りました。クレル族は皆その狐を神のように扱い、崇め奉りました。
実は彼らには心の拠り所が必要だったのです。彼らにとって、同じ人間なのに人間では無いかのような扱いをして洞窟にまで追いやった人類よりも、自分たちの前に恐れずに表れた狐の方がよっぽど心の支えになりました。
数日経ったある日、いきなり住処の洞窟に穴があきます。
それは炭鉱夫達が坑道を掘り進めた結果、クレル族の住処にぶつかってしまったのである。
最初は炭鉱夫達もクレル族もオドオドしていたが、炭鉱夫達が洞窟に潜むものがクレル族と分かるやいなや、スコップやツルハシで殴りかかってきました。
その光景を見た狐は烏に頼んで仲間を呼びに行ってもらい、仲間が来るまでの間時間稼ぎをしました。
炭鉱夫達を化かし、欺き、同士討ちさせ、賢く立ち回って時間稼ぎをしました。
しかし、烏が仲間を呼んできて到着する数分前、狐は油断しツルハシをその身で受けてしまいます。
白い体から溢れ出る赤い血を見て、狐は死を覚悟しました。
烏が呼んできた仲間によって炭鉱夫達は撤退したのですが、狐は虫の息。
そこでクレル族の長は2つある擬似太陽の1つで傷を癒し、もう1つを狐に埋め込みました。
すると狐はまるで不死鳥の如く復活しました。
狐と仲間達はそのクレル族の住処を後にする際に、あけられた穴を塞いであげました。
そして落盤事故に見せかけ、出口を塞いで廃坑にしてやり、残った最後の1つの出口には犬を2匹残し、末代まで守り抜くように指示しました。
数百年経った後、狐はとある里の近くの竹林に仲間とともに住んでいました。
狐は自分だけ歳をとらないので、数百年前の仲間の末代と共に生きていました。
ある日、事件は起こりました。里から数名の人間達がやって来て、いきなり何の理由も無しに狐の仲間を斬り殺して行きました。
幸い姿を隠していた狐と数匹の仲間達は生きており、何が起きたのか探りました。
すると、里には狐の白い毛で作った狐白裘をこれ見よがしにつけている輩がいるではありませんか。
狐達は人間に対する報復を誓いました。
するとその翌日の夜。竹林で空を見上げていると、1つの大きな星が現れました。
月です。狐は月を見上げると、こんな声が聞こえてきました。
「獣人になるか魔獣になるか選べ。」
狐は獣人になる事を選びました。獣人になった狐は目の前で怯えている少年に話しかけました。
「......やぁ。人間。」
彼は夢でも見ているのかと言うほど怯えていました。
人間からしてみれば、獣が人になるはずなど無いのだから。
「あ......あ......あ......ありえねぇ......」
「信じたくないのなら信じなければいい。
見たくない真実なら目を塞げばいい。
君たち人間はいつもそうしてきただろう。」
狐はこの数百年の間、人間という物を見てきました。
人間はいつも愚かで争う事を辞められない生き物だと言うことを狐は理解していた。生きる為に争って、争う為に生きている。
クレル族のような見たくない物は見えない所に追いやって、見えてきたら潰し始める。実に愚かです。
そしてその少年と烏の末代と狐は、次の晩に里を滅ぼしました。
そこから狐は『使名虎』と名乗り始めました。
昔虎に勝った経験からくる名前。しかし、どこまで言っても自分は狐。だから虎の名前を使っているだけだ。という戒めを込めました。
狐と烏と抜け忍は、常に行動を共にしました。
狐は街の市場で獣人が奴隷として売られていることを知り、獣人の立場向上の為動き出しました。
魔法使いの弟子を仲間にして4人でギルドを立ち上げました。
しかし、すぐに烏が脱退。その事が原因で狐の心は荒み、街に出ていきました。
するとそこで第2の神に愛された少女と出会いました。
狐はその少女を仲間に迎え、心に平穏を取り戻しました。
更にまた街に出ていった時には、雨に濡れた王国の姫を保護し、仲間にしました。
またある時は、掲示板の前に居た少年に声をかけました。
「なぁあんた。このギルドに加入しようとしてるのか?」
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