苦役甦す莇
Episode48 MerryX'mas
現代世界では、街には雪が降り恋人たちが楽しげにあるイベントを謳歌していた。
そんな中、ある公園に1人の少女が立っていた。
その少女はどこかソワソワした感じで数分誰かを待っていて、1人の少年が近づいてくるのが見えると、彼女はとても嬉しそうにその少年の元に走って行った。
「も〜レイ! 遅いよ!」
「ゴメン! 待たせちゃったね!」
「ん〜......まぁでもいいよ。約束した時間より早く来すぎちゃったのは私の方だし。」
「ホントにごめんね。」
「良いって良いって。ホラ、行こ?」
少女は無垢な笑顔で少年の手を取り、街を歩き始めた。
「うわぁ......綺麗だねぇ......」
「この街のイルミネーションも前の年に比べて随分豪華になったなぁ......」
「確か前の年も一緒に来たよね? 私前の年のことイマイチよく覚えてないんだよね。」
「あぁ......仕方ないよ。だってカンナあの時期忙しくてパタパタしてたじゃん。
追われるような毎日だったせいか、去年は一緒に見に来てもずっと他のこと考えてたじゃん?」
「あれ? そうだったっけ? 覚えてないや。」
「そうだよ! だからさ、今年はちゃんと楽しもうよ!」
「そうだね〜」
2人はそのままイルミネーションのある通りに沿って歩き、とあるお店の前で立ち止まった。
「......凄いなぁ......私もこんなの着てみたいな......」
少女は店のショーウィンドウに飾られたウェディングドレスを見て、自然と少年の手を握る手に力が入った。
「そうだね......着れるといいね......」
「え〜! なんでそんなに他人事っぽいの!」
「あはは......ごめんごめん! 言い直すよ。」
「言い直す?」
「俺が着せてあげられるように頑張る! だからさ、ずっと俺と一緒に居て欲しいんだ。これからもずっと。」
少年は少女の手をギュッと握り返した。
「え〜? どうしよっかな〜?」
少女は意地悪く、敢えて考えるフリをした。
「カンナがOKしてくれるまで俺はずっと待つよ。例え10年だろうと50年だろうとね。」
「ふふっ......」
「なっ、なんだよ! 俺は真剣だぜ?」
「だからだよ! なんか可笑しくって......」
少女は少年の手を握ってない方の手で口元を抑えた。
「じゃあさ、約束ね。絶対私を離さないって約束して。」
「分かった。約束。」
「じゃあ次行きたいお店行こ!」
「おわっ!」
少女は少年の手を握ったまま走り出した。
アザムキはゆっくりと瞼を開いた。するとそこには見知らぬ天井が。
「起きたみたいだね。おはようソウセキ君。」
「......おはよう......シュバル。」
アザムキは上体を起こし、自分は今どういう場所にいるのか把握した。
「ここはキセ火山の麓にある空き家さ。長らく誰も使ってなかったようだから、ちょいと拝借してるってワケさ。」
部屋を見回すと、確かに何処と無くホコリ臭くて小汚い。
「......他のみんなは?」
「2階でぐっすり。火山洞窟から抜け出て下山するだけで一苦労だった。
みんな疲れて当然さ......」
「......そうか......」
「ソウセキ君もゆっくり休むといいよ。
神様とはいえ、疲れはあるだろ?」
シュバルは暖炉のそばでリンゴを剥きながらアザムキの事を心配した。
「その言葉に甘えたいのは山々なんですけど......あっ! そうだ!」
アザムキはある事を思い出して、布団から抜け出ようとしたが、その瞬間身体中に激痛が走った。
「......いってぇ......」
アザムキは脇腹を抑えた。ミラ戦での傷も癒えてないのに、無理に無理を重ねた結果であることは自明の理だ。
「そら言わんこっちゃない......何か野暮用でも思い出したのかい?」
シュバルはリンゴを机に置いて、アザムキのもとに駆け寄ってきた。
「......植物のツタに連れてかれた仲間を......」
「それは......ホロウ君の事かい?」
「知ってるんですか?」
「さっきサギさんと連絡を取ってたよ。なんでも、戦争をおっぱじめるとかなんとか......」
「ホロウが戦争を!?」
アザムキは驚きが隠せなかった。戦争幇助を止める為に泣く泣く里を滅ぼしたと思っていたホロウがそんな事するはずが無いと。
「厳密に言えば、手を出したのはバンデット側からだ。ギルドクレル協商とバンデットオブザーバー同盟の戦争......これは歴史に新たな名を残す戦争になるかも知れない。」
「歴史に新たな名を残す戦争?」
「そう。人間対人間の第1次世界大戦、人間対獣人の第2次世界大戦。そして今回の旧時代対新時代の戦争......」
「なんでそんな事に......」
「そこまではまだ分からない......
でも、これは最早いち人間が止められるとかどうとかの話では無くなって来たということは確実だ。」
「今の俺は......何も出来ないのか......」
アザムキは痛む体を抑えながら、自身の無力さに嘆き、布団の端を握り締めた。
一方、とある避難所。
「なぁ母さん、大きな戦争が始まるってホント?」
「嫌な話だけど、ホントらしいね......」
母親はその瞬間、目から涙を一筋流した。少年はその涙の理由が分からなかった。
「なんで母さん泣いてるの?」
「そんなの簡単だよ......ダンク、お前くらいの若い男が戦争に駆り出されるからさ......」
母親は少年の肩をしっかり掴んだ。
「なんだよ、そんなの無視すりゃいいじゃんか......」
少年というのは、大人の事情や考えを知らない。それ故に時たまとんでもない事を口にするのである。
「お前、監視者様に楯突こうなんて考えるんじゃないよ! 監視者様達に楯突いて、月にいる方々にバレたら私達一生お日様浴びて生きていくことが出来なくなるんだからね!」
「なんでぃ......お日様浴びねぇくらい......」
「ダンク、お日様浴びて平和に幸せに生きていくことってのは、何にも変えられない事なんだよ?」
「ぉ......ぉぅ......そうなんか......」
「だから......お前を戦争に行かせることも......お前を匿ってお日様が消える事も......どっちも親の私にとっちゃ辛いんだ......だから戦争なんて起きて欲しくないのさ......」
「き、きっと神様がどうにかしてくれるよ!」
「......そうだね......次の神様がきっと......」
一方、現代世界の地下水路。
「トラオ君! 今日はクリスマスだね!」
「モモ姉ちゃん、クリスマスだからって今ここじゃ特にこれといって出来ることないよ?」
「ふっふ〜ん! 子供は大人しく純粋にクリスマスを楽しむべきなのだぞよ!」
「子供なのに大人しくってなんだよ......」
「......と、とっ! とにかく! 私がこの地下水路で出来る限りの事はしたから! コレ見てみてよ!」
少女は地下水路の奥を指さした。そこには立派なクリスマスツリーが飾ってあった。
「えっ? こんなのいつの間に?」
「ふっふ〜ん。ちょちょっとお得意の工作をしただけだよ。」
「植木鉢はボックスで......飾りは空き缶を変形させて色塗ったやつ......ツリーはハンガーラックと布をいい感じにツリーに見立てて、トップの星はランタンで......」
「どうだい! 見直したかい!」
「すげぇや......モモ姉ちゃんすげぇ!」
「ほらほらもっと褒め称えてもよろしいんやぞ?」
少女は少年の頭を優しく撫でてあげた…...それと同時にこんな事も思った。いつもは強がってるけど、こういう楽しい出来事を目の前にするとやっぱり年相応の少年なのだなと。
「ホンットに凄い!」
そんな中、ある公園に1人の少女が立っていた。
その少女はどこかソワソワした感じで数分誰かを待っていて、1人の少年が近づいてくるのが見えると、彼女はとても嬉しそうにその少年の元に走って行った。
「も〜レイ! 遅いよ!」
「ゴメン! 待たせちゃったね!」
「ん〜......まぁでもいいよ。約束した時間より早く来すぎちゃったのは私の方だし。」
「ホントにごめんね。」
「良いって良いって。ホラ、行こ?」
少女は無垢な笑顔で少年の手を取り、街を歩き始めた。
「うわぁ......綺麗だねぇ......」
「この街のイルミネーションも前の年に比べて随分豪華になったなぁ......」
「確か前の年も一緒に来たよね? 私前の年のことイマイチよく覚えてないんだよね。」
「あぁ......仕方ないよ。だってカンナあの時期忙しくてパタパタしてたじゃん。
追われるような毎日だったせいか、去年は一緒に見に来てもずっと他のこと考えてたじゃん?」
「あれ? そうだったっけ? 覚えてないや。」
「そうだよ! だからさ、今年はちゃんと楽しもうよ!」
「そうだね〜」
2人はそのままイルミネーションのある通りに沿って歩き、とあるお店の前で立ち止まった。
「......凄いなぁ......私もこんなの着てみたいな......」
少女は店のショーウィンドウに飾られたウェディングドレスを見て、自然と少年の手を握る手に力が入った。
「そうだね......着れるといいね......」
「え〜! なんでそんなに他人事っぽいの!」
「あはは......ごめんごめん! 言い直すよ。」
「言い直す?」
「俺が着せてあげられるように頑張る! だからさ、ずっと俺と一緒に居て欲しいんだ。これからもずっと。」
少年は少女の手をギュッと握り返した。
「え〜? どうしよっかな〜?」
少女は意地悪く、敢えて考えるフリをした。
「カンナがOKしてくれるまで俺はずっと待つよ。例え10年だろうと50年だろうとね。」
「ふふっ......」
「なっ、なんだよ! 俺は真剣だぜ?」
「だからだよ! なんか可笑しくって......」
少女は少年の手を握ってない方の手で口元を抑えた。
「じゃあさ、約束ね。絶対私を離さないって約束して。」
「分かった。約束。」
「じゃあ次行きたいお店行こ!」
「おわっ!」
少女は少年の手を握ったまま走り出した。
アザムキはゆっくりと瞼を開いた。するとそこには見知らぬ天井が。
「起きたみたいだね。おはようソウセキ君。」
「......おはよう......シュバル。」
アザムキは上体を起こし、自分は今どういう場所にいるのか把握した。
「ここはキセ火山の麓にある空き家さ。長らく誰も使ってなかったようだから、ちょいと拝借してるってワケさ。」
部屋を見回すと、確かに何処と無くホコリ臭くて小汚い。
「......他のみんなは?」
「2階でぐっすり。火山洞窟から抜け出て下山するだけで一苦労だった。
みんな疲れて当然さ......」
「......そうか......」
「ソウセキ君もゆっくり休むといいよ。
神様とはいえ、疲れはあるだろ?」
シュバルは暖炉のそばでリンゴを剥きながらアザムキの事を心配した。
「その言葉に甘えたいのは山々なんですけど......あっ! そうだ!」
アザムキはある事を思い出して、布団から抜け出ようとしたが、その瞬間身体中に激痛が走った。
「......いってぇ......」
アザムキは脇腹を抑えた。ミラ戦での傷も癒えてないのに、無理に無理を重ねた結果であることは自明の理だ。
「そら言わんこっちゃない......何か野暮用でも思い出したのかい?」
シュバルはリンゴを机に置いて、アザムキのもとに駆け寄ってきた。
「......植物のツタに連れてかれた仲間を......」
「それは......ホロウ君の事かい?」
「知ってるんですか?」
「さっきサギさんと連絡を取ってたよ。なんでも、戦争をおっぱじめるとかなんとか......」
「ホロウが戦争を!?」
アザムキは驚きが隠せなかった。戦争幇助を止める為に泣く泣く里を滅ぼしたと思っていたホロウがそんな事するはずが無いと。
「厳密に言えば、手を出したのはバンデット側からだ。ギルドクレル協商とバンデットオブザーバー同盟の戦争......これは歴史に新たな名を残す戦争になるかも知れない。」
「歴史に新たな名を残す戦争?」
「そう。人間対人間の第1次世界大戦、人間対獣人の第2次世界大戦。そして今回の旧時代対新時代の戦争......」
「なんでそんな事に......」
「そこまではまだ分からない......
でも、これは最早いち人間が止められるとかどうとかの話では無くなって来たということは確実だ。」
「今の俺は......何も出来ないのか......」
アザムキは痛む体を抑えながら、自身の無力さに嘆き、布団の端を握り締めた。
一方、とある避難所。
「なぁ母さん、大きな戦争が始まるってホント?」
「嫌な話だけど、ホントらしいね......」
母親はその瞬間、目から涙を一筋流した。少年はその涙の理由が分からなかった。
「なんで母さん泣いてるの?」
「そんなの簡単だよ......ダンク、お前くらいの若い男が戦争に駆り出されるからさ......」
母親は少年の肩をしっかり掴んだ。
「なんだよ、そんなの無視すりゃいいじゃんか......」
少年というのは、大人の事情や考えを知らない。それ故に時たまとんでもない事を口にするのである。
「お前、監視者様に楯突こうなんて考えるんじゃないよ! 監視者様達に楯突いて、月にいる方々にバレたら私達一生お日様浴びて生きていくことが出来なくなるんだからね!」
「なんでぃ......お日様浴びねぇくらい......」
「ダンク、お日様浴びて平和に幸せに生きていくことってのは、何にも変えられない事なんだよ?」
「ぉ......ぉぅ......そうなんか......」
「だから......お前を戦争に行かせることも......お前を匿ってお日様が消える事も......どっちも親の私にとっちゃ辛いんだ......だから戦争なんて起きて欲しくないのさ......」
「き、きっと神様がどうにかしてくれるよ!」
「......そうだね......次の神様がきっと......」
一方、現代世界の地下水路。
「トラオ君! 今日はクリスマスだね!」
「モモ姉ちゃん、クリスマスだからって今ここじゃ特にこれといって出来ることないよ?」
「ふっふ〜ん! 子供は大人しく純粋にクリスマスを楽しむべきなのだぞよ!」
「子供なのに大人しくってなんだよ......」
「......と、とっ! とにかく! 私がこの地下水路で出来る限りの事はしたから! コレ見てみてよ!」
少女は地下水路の奥を指さした。そこには立派なクリスマスツリーが飾ってあった。
「えっ? こんなのいつの間に?」
「ふっふ〜ん。ちょちょっとお得意の工作をしただけだよ。」
「植木鉢はボックスで......飾りは空き缶を変形させて色塗ったやつ......ツリーはハンガーラックと布をいい感じにツリーに見立てて、トップの星はランタンで......」
「どうだい! 見直したかい!」
「すげぇや......モモ姉ちゃんすげぇ!」
「ほらほらもっと褒め称えてもよろしいんやぞ?」
少女は少年の頭を優しく撫でてあげた…...それと同時にこんな事も思った。いつもは強がってるけど、こういう楽しい出来事を目の前にするとやっぱり年相応の少年なのだなと。
「ホンットに凄い!」
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