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苦役甦す莇

マウスウォッシュ

Episode45 Made of sterner stuff

「そろそろグロッキーなんじゃないの?」

 ラピスはチャクラムを自分の周りでヒュンヒュン回しながら、追い詰めたシュバルに詰問していた。


「......なんで......なんでなの? 私はただ......フラン様と一緒に......」

 追い詰められたシュバル地面に倒れ、あまりにも相性が悪い敵を前に、自分の願望を言うことしか出来ずにいた。


「......何故ギルド側につかなかったの? そしたらフランさんに会えたのに......」


「......その選択肢もあったさ......でもギルド側についてフラン様と会えたとしても......バンデット達からの追撃からは逃れられない......
だったらバンデット側に加担して、フラン様を無事にするという約束をこぎつけた方が、どれほど安全なことか......」


「貴女......甘いわね......完璧で瀟洒なお世話係を自称するくらいなら、バンデットの追撃からも主人を守ってみせなさいよ。」


「......無理に危険な選択肢をする事もあるまいよ......例え、それが道を踏み外していたとしても......私はフラン様の安全が確保出来れば、それで良いのさ......」


「道を踏み外していたとしても? まずそこで貴女は間違っている!」


「......はァ......いつまでも綺麗事じゃ、この世の中は生きていけないのよ......いつの時代も......狡賢い奴が生き残って......バカ正直な奴が先に死んでいく......そういう風に出来てるんだよ......アンタにはわからないだろうけど......」


「分かりたくもないね。テロ屋の理屈なんて。」


「抜かせ......」

 シュバルはそう言って、ゆっくりと立ち上がろうと、足と腰に力を入れた。


「生憎、私はアザムキさんみたいに甘くはないから。」

 ラピスは、ゆっくりと立ち上がろうとするシュバルの足を、チャクラムで斬りつけた。


「うぐっ......!」

 シュバルはもう一度地面に倒れ伏した。


「私は卑怯じゃないから、倒れてる間は手を出さないであげる。
でも立ち上がって、私に攻撃を加えようとするのなら私は容赦なく反撃する。」


「はァ......なんで私の邪魔をするかな......その2人を連れてけば私の願いは叶うというのに......」


「そもそも、マヤが貴女との約束を守ると思ってるの?」


「......守らなかったらマヤを殺すまでだ。」


「きっと貴女には出来ないわ。」


「どうして?」


「マヤの能力は、既知領域を支配する能力だそうね。多分、貴女の心理は既にマヤの既知領域なんじゃないかしら?
だから多分2人を連れてった時点で貴女の役目はおしまい。切り捨てられるだけの手駒よ。」


「......もしそうだとしたら私は愚か者だな。」

 シュバルは、再びゆっくり立ち上がった。

「でももう後には退けない......月への道の植物を生やしてしまったし、もうすぐバンデットの一部メンバーは月に到着する......そうなったらもう何もかもおしまい。
実際にいくつかの神の雷を作動させて、恐怖による支配を始めるわ......」


「そして地上に生きる全ての生き物を脅して、犯罪者扱いになってるアザムキさん達を捕まえるんでしょう?」


「よく分かってるじゃないか......」

 シュバルは、持っていた刺叉をその辺に捨てた。そして開手を広げた。


「なんのつもり?」

 ラピスは、シュバルの取った行動が理解出来なかった。


「フラン様と共に生きていけないなら......もう私は生きている意味が無い......」

 シュバルはフラフラとした足取りで、燃え盛る溶岩に向かって進んで行った。


「まさか......貴女!」


「ラピス......私はもうどうせ貴女には勝てない。嫌というほど思い知らされたよ......
もう私は任務を果たせない…...
それならもういっそ......私の命と引き換えに貴女達にダメージを与える......」

 シュバルの周りに見たことも無いような悍ましい形をした植物が生えた瞬間、誰かがシュバルの手を握った。


「......や......やめとけ......」









 一方キセ火山上空。

 ツタを滑り落ちていくホロウに、もう一度立ちはだかる男が現れた。

「実にしぶといな......カシア......」

 ホロウは自分より下に頭を置く者に冷ややかな視線を送った。


「へへっ......お前が苦無を刺しっぱなしにしてくれたお陰で助かったぜ......」

 カシアは自分に刺された苦無を引っこ抜いて、落ちていく途中でツタにぶっ刺して助かったようである。


「第2ラウンド......って訳にもいかないか。その負傷じゃ。」

 ホロウは自分がつけた傷を見ながら、カシアの戦意の有無を探った。


「やろうと思えばやれる......って言ったら嘘になるか......こうやって苦無でぶら下がってるだけでも限界なのに、どうして強がりが言えようか。」

 カシアは先刻の戦闘で、エネルギーを使い果たしたようである。


「そんなのお前の嘘だって可能性もあるよな? 俺の油断を誘って近寄ってきたところを、その苦無グサッとする事も出来るよな?」

 ホロウは場数を踏んでいる上に、戦闘における人間心理を熟知している。

 戦闘において、ホロウを出し抜く事は不可能に近い。


「君がそう思うならそう思えばいい......君に私を助ける義理もメリットも無いのだからな。」

 カシアは力無く項垂れた。

「そのうちぶら下がってる事も出来なくなるだろう......君はそうして私を見殺しにすればいい。」


 この時、ホロウに迷いが生じる。彼は今、自らが背負う十字架に更なる屍を増やそうというのか。












「......ソウセキ君......」

 シュバルの手を取ったのはアザムキであった。


「やめとけシュバル......貴女が死ぬ事は無いんだ......俺が貴女の望みを実現してやる......この2人を連れていかなくても......フランと一緒に......平和に暮らせる世界を......」


「そんなの......絵空事だよ。」


「俺に賭けてみろ......この目が黒いうちは貴女のことを裏切ったりしねぇ......
もし万が一俺が裏切ったら......植物を操る力で絞め殺してもらって構わない......
今俺を信じられないなら......このまま俺をその植物で殺せ......」

 アザムキは毒に侵された体ながらに、自分の意思を必死に伝えた。


「......分かった。ソウセキ君に賭けてみようじゃないか。」

 シュバルは懐から何かを取り出し、アザムキに打ち込んだ。


「貴女! 今アザムキに何をしたの!?」

 サギがアザムキの事を心配し、シュバルに向かって叫んだ。


「安心しなっせ。解毒剤と強心剤よ。」

 シュバルはアザムキの事を支えた。


「......はァ......良かった......シュバルの事を殺さずに済んだ......」

 こんな目に遭ってもなお、アザムキはシュバルの心配をしていた。


「......私が間違っていた......ごめんなさい......ソウセキ君......」

 シュバルは自らの非を認めた。


「良いんだよ......それより......マヤを止めなきゃ......」

 アザムキはフラフラと立ち上がった。


 すると、アザムキはいきなり後ろから抱きつかれた。

「アザムキさん......」

「......どうしたサクリ?」

「どうしてアザムキさんは......こんなにボロボロになってるのに......他人の為に動けるんですか?」

「......まぁ......神様だからかな......」

「カミサマ?」

「神様ならさ......揉め事起こしてるヤツらを止めなきゃいけないだろ。
それに......この世代の人類は俺が導くべきだから......」


 アザムキは右手に握りしめてた剣を見た。


「こんなもの......」

 アザムキは剣にかけてた能力を解除し、アギルに貰ったばかりの状態に戻した。


 そして彼はそのまま、その剣を溶岩に向かって放り投げた。


「アザムキ......何してるんだ? 君の武器を捨てるなんて。」

 サギはアザムキが取った行動の意味を理解しかねた。


「何言ってんだよ。武器ならあるじゃないか。対話っていう人間らしい武器がさ。」

 彼は笑顔でそう答えると、そのまま地に倒れ伏した。











 一方、フランとクーネのペア。

 2人は廃坑をちまちまと歩き回っていた。


「まぁ......なんにも無いね。」


「そんなことも無いみたいだよ。ここ見てみてよ。」

 フランが何やら熱心に壁を触っている。


「壁に何かあるの?」


「よ〜く聞いててね。」

 フランはそう言うと、今まで触っていた壁を叩き始めた。

 すると、ボスボスというハリのない膜を叩いてるような音がした。

 フランは続いて、今叩いた場所から少し離れた場所に行き、そこの壁を叩いた。すると、そこからは特に音は帰って来ず、至って普通の土壁を叩いてるような感じである。


「ここだけが音が違うの?」

「そうだよ。絶対ここ何かあるよね。」

 フランは怪しげな音がする壁の前に立った。


「破る?」

「もち!」

 フランは右手を思いっきり振りかぶって、壁に向かって大きな一撃をかました。すると、バスン!という音ともに壁はあえなく破れ、拳大の穴が出来た。


「やっぱりここだけ膜だったね。でもなんでこんな事を......? 何かを隠すための偽装工作?」

 クーネはこんな風に壁に工作されていた事に疑問を持った。


「ちょっと中覗いてみるね。」

 フランは拳大の穴から中を覗き込んだ。すると、数秒も経たないうちにフランはそこから目を離し、なんとも言えない表情でクーネに抱きついてきた。


「何が見えたの?」


「い......い......」

「い?」


「い......遺跡だよ! こんなの初めて見た!」

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