話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

苦役甦す莇

マウスウォッシュ

Episode43 Get on one's nerves

 一方、アザムキチーム。


 アザムキはとある敵と相対していた。

「ソウセキ君。こんな形で再開するなんて残念だよ。」

「あぁシュバル。俺も残念だよ。お前はなんでバンデットなんかに力を貸す?」

「理由なら勝ってから聞きなさい。」


 シュバルは武器を取り出して構えた。シュバルが構えた武器は刺叉。殺傷能力こそ低いが、相手の自由を奪うのに適した武器である。


「......ここに来て初めてお世話になった貴女に剣を向けたくなかった。でも、どうしても俺らの前に立ちはだかって敵対するなら仕方無い。」

 アザムキは剣先をシュバルに向けた。


「大人しく後ろに匿っている2人をこちらに渡せば済むことを......」

 シュバルは、逃走してきたサクリとサギを指して言った。


「......フン!」

 アザムキは斬り掛かると見せかけて、認識の外の力を行使し、シュバルの自由を奪った。


「......降参して下さい。俺は貴女を殺したくない。」


「......やはり聞き及んでいた通りの強さだ。でも、そんな能力頼みな戦い方じゃ私には勝てない。」

 いきなりアザムキの足元から植物のツルが伸びてきて、物凄い速さでアザムキの体に巻き付き、アザムキの首元に棘のようなものを刺した。


「痛てぇッ!!」

 アザムキは能力使用への集中が途切れ、シュバルは体の自由を取り戻した。


「見ての通り......私は植物を操る能力を持っている。今ソウセキ君には幻惑効果のある毒を流し込んだ。さぁ2人を明け渡すんだ。」


 アザムキは必死に絡みついたツルから抜け出そうと、剣で斬りまくるが、剣で斬って処理するよりも速く、新たなツルが巻きついてくるので、とうとうアザムキは幻惑効果も相まって地に倒れ付した。


「......貴女を殺したくないんだ......俺に本気を出させないでくれ......頼む......」

 アザムキは懇願した。


「おかしな願いだな。命乞いするならいざ知らず、君はそんな状況で私の心配をしているのか?」


「貴女は恩人なんだ......俺の手で殺させないでくれ......」

 アザムキは自分自身でもおかしな事を言ってるのは自覚してた。しかし、シュバルだけは殺したく無かった。


「義理人情ってやつか? 呆れたものだ。私が君を助けたのはアギルに頼まれたからに他ならない。
つまり君を助けたのは仕事だったんだよ。仕事。」

 対してシュバルはアザムキを助けた事に関して、割とドライな考えを持っていた。


「じゃあなんで......貴女は俺の事を殺さない......?」

 アザムキは不思議に思っていた。植物のツルで拘束するだけに留まらず、シュバルの持っている武器は刺叉。どう考えても戦いに来たと言うよりは、誰かを捕まえに来たという感じである。


「マヤに殺すなと言われてるからだ。どうやらマヤは君との決着を望んでいるらしい。だから殺さない。」


「そうか......」

 アザムキは力なく項垂れた。


「何故植物を枯らさない? 君の力なら植物を枯らすことも燃やすことも可能だろう?」


「俺の力は制御が難しいんだ。俺自身100%理解してるわけじゃない。だからここら一帯の植物を枯らしてしまう危険性がある。」


「何故それをしない?」


「今それをすると困る奴がいるからだ。どうせ今なら抜け出してるだろうけど、少なくともここに降りてくるまでは使わない。」


「なんの事を言ってるか分からないな......まぁいい。それじゃ2人を連れていくぞ。」


「ダメだ!」

 アザムキはどうあっても2人を渡したくなかった。


「君に拒否権はない。」

 シュバルは別の植物の棘で、アザムキの首を刺した。


「あ......ぅ......何をした......」


「睡眠系の毒を入れた。安心しろ。死にはしない。」


「あ......あぁ......」


「君が私を殺す事を厭わなかったら私は確実に負けていた。
でもマヤは全て見抜いていた。だから私を君の前に寄越したのかもしれないな。」


「ダメ......なんだ......仲間を......」

 そこでアザムキは力尽きた。


「仲間......仲間ねぇ? やっぱり義理人情みたいなものに感化されたか。
初めて君と会った時のギラギラした感じはどこへやら......ギルドに入って君は腑抜けになったようだ。」

 シュバルは力尽きたアザムキを踏みつけた。


「アザムキさんをそれ以上バカにしないでください!!」


「ん? 誰かと思えば奴隷サクリ。再教育されたのに、デーツから逃げた失敗作ごときが......私に意見すると?」

 シュバルはアザムキを踏みつけるのをやめ、サクリの方に近づいて行った。


「私はもう奴隷なんかじゃない! 1人の獣人なんだ! アザムキさんは私を1人の人として扱ってくれた! ギルドの皆が私に人間性を与えてくれた! それを馬鹿にされるのは我慢出来ないです!」


 シュバルはバッとサクリとの間合いを一瞬で詰め、サクリの首根っこに刺叉を向けた。

「それ以上言うな......溶岩に突き落とすぞ......お前は最悪殺しても良いと言われてるんだ......私は一切躊躇しないぞ?」

 シュバルは酷く低いドスの効いた声でサクリを脅した。


「私を殺したければ殺せばいい......私の命は全てアザムキさん達の為に使います。
私はこんな所で屈さない。絶対にサギさんは渡しません!」

 サクリは物怖じすることなく真っ直ぐシュバルを睨みつけた。


「そうか......なら死ねて本望なんだな?」

 シュバルが刺叉でサクリを持ち上げようとした瞬間

「ん? 動かない?」

 突然シュバルの刺叉が動かなくなり、シュバルは驚いた。


「アンタ......シュバルとか言ったっけ? そこら辺にしときな......」

 いつの間にかラピスが刺叉を掴んでいた。


「貴女......何者?」

 意外な闖入者に、シュバルは内心驚いていた。


「中央庁監査局特務二尉ラピス。」

「あぁ......貴女がラズリと元々一緒だったラピスか......中央庁のお偉いさんがなんでこんなカスを庇うのかしら?」

 シュバルは刺叉を押し込もうとしたが、意外にラピスの力が強く、2人は拮抗していた。


「サクリさんはカスなんかじゃない。自分の本分を全うしている。
貴女はどうなの? 何故ギルド転覆や背徳者の仲間入りを果たそうとしてるバンデットに力を貸すの?」


「はァ......いい加減しつこいな......分かったよ。そんなに知りたいなら教えてやろうじゃないか。
私はマヤと契約したんだ。実力主義ルドのメンバーを捕らえた暁には、フラン様と一緒に暮らす事を。」

 シュバルは刺叉を引いた。


「何故貴女がフランと?」

 傍で聞いていたサギがシュバルに訊ねた。


「元より私はフラン様の忠実で完全で瀟洒なお世話係。
昔の諸事情により別れてしまったが、バンデットに力を貸すことによって、私とフラン様はもう一度一緒になれるという事だ。」


「ふぅん......そうなの。でもそれってフランさんが望んでることなの?」

 ラピスは刺叉を掴んだ手を緩めることなく、シュバルに詰め寄った。


「きっとフラン様だって望んでいる筈だ! 戦わなくてもいい平和な世界を!」

 シュバルはいきり立ってラピスに顔を近づけた。


「平和な世界? テロリストがよく言うわ。私は絶対にバンデットを許さない。バンデットに加担した貴女もラズリも。」


「なんだってそんなにバンデットを忌み嫌う? バンデットに親でも殺されたか?」


「貴女......言っていいこと悪いことがあるのよ......」

 ラピスは刺叉をグイッと引っ張り、シュバルの事を自分の方に近づけて、そこから一発思いっきり殴った。


「貴女は今......越えてはならない一線を越えた......」

 ラピスはまるで周りの迸る溶岩のように怒っていた。


「なるほど......私とやり合う気か。良いだろう。私を殺す気のないソウセキ君も、力のない元奴隷のサクリも、グロッキーになってるサギさんも、私の相手は務まらない。
貴女なら楽しめそうだ。」

 シュバルは刺叉を構え、周りに植物のツタを茂らせた。


「......きっと私の能力は貴女に取って相性が悪いわ。」

 ラピスがキッと睨むと、シュバルが周りに茂らせた植物はたちまち燃えてしまった。


「......何をした?」

「このキセ火山はいわば私のホームグラウンド。私は流動体の流れや量を操る事が出来る能力を持っている。
貴女がいくら地面から植物を生やそうが、直ぐに地中から溶岩を湧き出させて燃やすことが出来る。」

「なるほど......確かに相性が悪い。でも何故わざわざ手の内を明かす?」


「私は貴女たちバンデットのように卑怯じゃないことを言いたいの。
さて、小細工無しの女の勝負......始めましょうか?」

 ラピスは懐から武器を取り出した。


「チャクラム......なるほど。武器も私とは相性が悪そうだ。」


 チャクラムは円形の投擲武器。射程距離は手持ち武器の刺叉より長く、更にラピスの流動体を操る能力で空気の流動を操作すれば、より強力なものとなる。


「......私の仲間は連絡船襲撃事件で命を落とした......貴女たちバンデットのせいで!」

 ラピスはチャクラムをビュンと投げた。


「私たちのせい?」

 ラピスは刺叉で弾いたが、チャクラムの軌道を変えきれず、頬に当たってしまった。


「元々バンデットを生み出したのは貴女たちギルド管理局及び中央庁でしょうが。」

 シュバルは頬から流れ出る血を拭いながら、不満を言った。


「ギルド申請の認可が降りなかったのは貴女たちの素行のせいでしょ? 
自分たちの非を棚に上げて私たちのせいにするなんて、逆ギレもいいところだわ。
私たちはいつでも公平な立場にいる。」


 ラピスは戻ってきたチャクラムを回収すること無く、能力を使って自分の周りで回し始めた。



「権力者の言うことかよ!」

 シュバルは刺叉を構え直した。


「テロ屋に言われたかないわ!」

「苦役甦す莇」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く