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苦役甦す莇

マウスウォッシュ

Episode38 Witch and sacrifice

 俺らはレイラインを歩いていると、いきなり植物のツタのようなものに捕まった。

 そのままツタは奈落の出口に向かってグングン伸びていく。

「なんだこれ!? 切れねぇ!」

 その植物のツタはあまりに太く、また再生能力も半端無かったので、剣でぶった斬ることはかなわなかった。

 やがて植物のツタと一緒に外に出た。


(植物なら火や熱に弱いハズだろう?)

 俺の中のミラがそっと囁いた。


「火や熱......そうか!」


 俺は初めて能力を使った時のことを思い出した。

外のイメージ......太陽の力を行使する。


 途端に俺の掌中には小さな太陽が生まれ、ツタの一部を焼き払った。


 俺はそのまま地面に転がり落ちた。


「ホロウ!」

 自分は助かったが、まだホロウが助かっていない。


「俺のことはいい! お前は早くラピスと合流しろ!」


「分かりました! これだけは!」


 俺は伸び続けるツタに連れていかれそうになるホロウに向かってペイントボールを投げた。


「何かあるかも知れないので! 持っておいてくださあああああい!」


 俺の最後の叫びは届いただろうか。俺がギリギリ目指出来たのはホロウがペイントボールを受け取った所までだった。


 俺は取り敢えず奈落の穴から伸び続ける植物のツタから距離をとった。


 まず冷静になり、状況を分析し始めた。俺らは奈落の中心地からレイラインを通って外側に向かっていた。すると何故か中心地の方から巨大なツタが襲ってきて、ツタと一緒に外に出てきた。


 奈落の中心地に植物なんて無かった。置いてきたのはシナトラの遺体だけである。


「何者かが......意図的にやったと考えるのが妥当か......」

(あんな植物......この世界に自生してる物じゃない......もう少し周りを探索してみるのが吉だろう......)

 俺はミラの囁きに則り、周りをぐるっと見回した。


 尋常ではない暑さ、そして煮え立つ溶岩。俺らが出てきたここは恐らくキセ火山の中だ。


 それならば中央庁のラピスがいるはずだと思い、俺はゆっくりと歩き始めた。


「なぁミラ。」

(なんだ?)

「中央庁のラピスって奴に聞いた話なんだが、なんでもお前らは中央庁やらギルド管理局やらの連絡船を襲撃していたらしいな。」

(あぁ......そんなこともやっていたな。)

「その目的は一体なんだったんだ?」

(さぁな。俺は尖兵だから上の気持ちとか知らねーよ。)

「連絡船襲撃はお前がやったのか?」

(いや俺はやっていない。連絡船襲撃は俺の仲間の仕事だ。)

「へぇ......そいつの名前は?」

(......)

「この状況でだんまりかよ。」

(まだそこまでは話せない。)

「分かったよ。」


 さて......溶岩を横目に少し進んで来たが、見た感じどうやらここは火山内部でも端っこの方らしい。


 少し進んだ先にこの洞窟の出口が見える。そして溶岩からある程度離れてるはずなのに異様に暑い。奈落の気温が快適だったというのもあったが、さすがに暑すぎる。


「なぁミラ。お前はキセ火山について何か知ってんのか?」

(火山の最深部にヒヒイロカネで作られた剣が奉ってあるなんて噂を耳にしたことがある。)

「ヒヒイロカネの剣......もしかしてホロウが言ってた紅の地ってこのキセ火山のことか?」

(まぁ調べてみる価値はありそうだけどな。)


 調べてみる......か。ラピスとの合流後ホロウを探す事も兼ねてここを探索してみるのも良さそうだ。

 なんて事を思っていると遠くから誰かの声が聞こえた。


「アザムキさーん!」


 このクソ暑い中健気にこちらに走って来るのは俺らが探していたラピスだ。


 俺は彼女を視認すると何を言うわけでもなく、取り敢えず手を振って合図した。



 俺からも少し歩み寄り、程なくして俺らは合流した。

「久しぶりですねラピス。」

「こちらこそ。あれ? ホロウさんは?」

「あ、あのバカでかい植物に捕まってしまいました。」

 俺は奈落の穴から飛び出てる植物のツタを指さしながら言った。


「助けてあげないのですか?」

 俺は少し考え、答えを見つけた。


「俺が彼を助けてあげるのは簡単ですけど、多分それは彼が望まないでしょう。」


「なるほど。取り敢えず近況とこれからすべき事を説明致します。

まず、現在中央庁の人間の約半数はバンデットの下にくだってしまいました。

そして更に、実力至上主義ルドのみならず他のギルドも次々とWANTED扱いに更新されています。」


「そもそも、そのWANTEDってのはなんなのでしょうか?」


「WANTEDとは社会に貢献する為に存在している筈のギルドの活動が、あまりに行き過ぎている行動をしている場合こちらから活動ストップを強制的にかけられる権限の事です。

WANTED扱いにされたギルドは、他のギルドとの交流を一切禁止、危険性がある場合は拘束対象、中央庁及び空の監視者の保護下におかれる、等の措置が取られます。」


「つまり、バンデットは中央庁乗っ取りを行うことで、そのWANTED権限を思いのままに発動、ギルドシステム転覆の最終段階に移ったと?」


「恐らくそうですね。」


「そもそも中央庁の存在はなんの為にあるのですか?」


「中央庁は立法、行政、司法の権限が集まった場所です。これらの権限を一極集中させることにより、より迅速な対応が可能となるとされてきていましたが、今回はこの権限の一極集中を逆手に取られました。」


「ギルドシステム......つまり旧体制は滅んでしまうのでしょうか?」


「この世界の序列的に言えば、トップに月の背徳者達、その下が同列で中央庁と空の監視者達、更にその下にギルド管理局が存在し、末端に様々なギルドという具合です。

バンデットが背徳者の仲間入りを目指している以上、旧体制はこのまま滅んでしまうでしょうね。」


「なるほど。」


「そう言えば、ホロウさんがセルギュで送ってきた文面に、『直接話したい事がある。俺の口から聞けないような状況になったらアザムキに聞いてくれ。』って話があったのですが、どういう事です?」


「あぁ......多分、シナトラが亡くなった事だと思います。」


 その話を口にした瞬間、ラピスの表情がピシッと引き締まった。


「それは......ご愁傷さまでございます......」


「ギルド転覆開始後......初めての犠牲者ってところでしょうかね。」


「実力至上主義ルドのリーダーが亡くなったという事で、ギルド管理局のルール上、『実力至上主義ルドはギルドとしての機能は失効』という判断になります。
つまり、今現在『実力至上主義ルド』はこの世界に存在しないことになります。」


「そうなるとどうなるんだ?」


「貴方達はただの犯罪者扱いになります。
ただ、これはバンデットによる強引なやり方で起こされた結果なので、私としてはあなた達を組織に引き渡す気はありません。」


「大丈夫なのか?」


「大丈夫です。それにアザムキさんは私達に保護される事を一度拒んでますし、無理に貴方の意思を捻じ曲げようとなんてしませんよ。」


『マスター。キセ火山のマッピング終了しました。』


「お、カエデありがとう。」


『前方から近づいてくる者が約2名。奈落の穴から追ってくる者が約2名います。』


「......とうとう来たか。」


『それと、この火山洞窟内に複数の魔獣を確認。』


「......なるほど。ラピス、ここから1番近い火山洞窟の出口は?」


「こちらです。」


 俺はラピスを、前から来る謎の2人から守るようにラピスの前に立ち歩いた。


 ラピスの指示通りに歩いていくと、途中で人影が見えた。


 暑さのせいでゆらゆらと揺らめく陽炎のような人影は、こちらの存在に気がついたようだ。


「そこで止まれ! 貴様ら一体何者だ!」


 俺はラピスに危害が及ばないように、言葉で牽制した。


「あ......アザムキさん! 私です!サクリです! 」


 それは意外な人物の声だった。


「サクリ......? 何故ここに......? 取り敢えずそれは良い! 隣にいる奴は誰だ!」


「サギさんです......2人で命からがら......逃げてきました......」


 俺とラピスは2人に駆け寄った。



「逃げてきた......? お前らはフランとクーネとゲオルグと一緒にアギルの家に行った筈じゃないのか?」


 フラフラになりながら歩く2人に、俺たちは肩を貸した。


「それが......罠だったんだよ......師匠は......バンデットとグルだったんだ......」

 サギが力尽きそうな声で細々と語った。


「何!?」


「正確にいえば......バンデットのリーダーのメイド服の女に力を貸したって感じなのかな......」


「マヤか......取り敢えずここまで来た経緯と、他の3人がどうなったのか教えてくれ。」


「まず、向こうに着いた途端に、師匠の家の中にバンデットのメンバー達が構えてたんだ。」


「そこでまず何の力も持たない私が捕まってしまって人質にされたんです......
その後他の皆さんは抵抗して下さったのですが......本当に申し訳ありません......私が捕まったばっかりに......」

 サクリは泣きそうになりながら語った。


「大丈夫。サクリは何も悪くない。その後、バンデットの数の暴力によってクーネとフランが捕まってしまって、私はゲオルグと協力して何とかサクリを救出。
ゲオルグは残りの2人を救出する為に師匠の家にもう一度突っ込んでった......
それで......私とサクリだけ人気のない所に逃げる為に、アザムキが居る所を占ってここに転移してきた。
ここまで転移してくるのに相当な魔力を消耗したから、もう......休ませて欲しい......」


「なるほど......そういう事だったのか。分かった。」

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