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苦役甦す莇

マウスウォッシュ

Episode4 Guild of the principle of ability supremacy

 自然と涙が流れるほど懐かしい気持ちになっていた。

 俺は明晰夢を見ていた。これは夢だと自覚している。

 しかし、やはり自分の家というものはいいものだ。帰るべき場所というのは。

 元の世界から離れて少ししか経ってないはずなのに、自分の家がひどく懐かしく感じた。

 夢の中の俺の家は現実にある俺の家そのままで、どこの景色を切り取っても懐かしいという気持ちにさせた。

 自然と足は自分の部屋へと向いていき、自室の扉を開けた。

 中に入ると俺がもう一人いた。そいつはベッドで横になって寝息を立てていた。

 俺が寝てる様子を客観的に見るとこんな感じなのか。と不思議な気持ちになった。

 その不思議な気持ちのまま、寝ている自分に触れて見た。


 触れた瞬間、俺は目を覚ました。










 ゆっくりと目を開けると、一瞬知らない天井が見えてびっくりしたが、起き上がって景色を水平に戻すと、そうだ俺はこっちの世界に飛ばされてたんだ、と思い出した。


 部屋の中はすっかり暗くなっていた。夜になるまで寝ていたらしい。

 床に足を下ろしゆっくりと起き上がると、自室の扉にノックがされる音が聞こえた。

「起きたか?」

 先程俺をここに連れてきた女の声がした。どうやらほかの皆も集まったらしい。

「起きましたよ。今行きます。」

 寝起きであまりおぼつかない足を頑張って進め、扉を開けて部屋の外に出た。

 部屋の外に出た瞬間寝起きのせいかよろけて転んでしまった。

 転んだ瞬間、頭上を何かがものすごい勢いで飛んで行った気がした。

「よく避けたな。なまじ合格したわけではなさそうだな。」

 起き上がって自分の背後を見ると、自室の扉に手裏剣のような物が刺さっていた。どうやらまだ試されているらしい。

「挨拶がわりですか。どうも。」

 少し皮肉を言いつつ皆が集まっている所まで歩いていった。



「では自己紹介に入ろうか。」

 先程俺の部屋の扉をノックした女性は皆の真ん中に立っており、自然とこの人がリーダー格だなと察知した。

「ではまず私から。私の名前はシナトラ。この実力至上主義ルドをまとめる立場にある。役割は主に管理局との話し合いやクエストの受理の決定、人員の編成と言った具合だ。」

 雰囲気は落ち着いた女性と言った感じ。着ている格好はアイヌ民族のような暖かそうな服装。そして、他の人には無い特徴的な鎖付きの帽子。


「次は俺か? 俺はホロウだ。まぁーやってることと言ったら、行動時の現場リーダーみたいなもんだ。シナトラが陣を敷いて後ろから指示するって感じで、俺は前線に出て行動で示す。そんな感じだ。」

 先程俺に手裏剣を投げて来た男だ。着ている格好は忍者が着ていそうな軽そうな服装。行動隊長と言ってるあたり、誰よりも動く故の格好か。


「私はサギ。役割は後方支援と緊急撤退時に皆を転移させる役。よろしく。」

 掲示板の前でシナトラと一緒に俺に話しかけてきた女だ。着ている格好は魔法使いのローブのような緩やかな服装。俺をここに連れてきた時魔法陣を使ってたあたり、魔法系の使い手か。


「アタシはフラン! えっと、役割?は、ん〜と......切り込み特攻隊長かな?とにかく敵陣に突っ込んでドカーン! ってカンジ! よろしくね!」

 明るく快活な感じの女の子か。小さい体躯には見合わないパワーブッパ型か。着ている格好は重々しそうな西洋風の鎧と言った感じの装備。背中に背負っているフランの背丈より長さがありそうな大きな剣を振り回す感じか。


「私で最後か。私はクーネだ。ん〜......役割は......クエスト時には遊撃。まぁ生活時には皆の料理作ったりしてるな。」

「あ! クーネずるい! 私料理出来ますアピールなんて! アタシだって皆の服洗濯とかしてるもん!」

「それを言ったら私だってアジトの掃除とゴミ出し担当ですよ。」


「はいはい。クーネもフランもサギも落ち着いて。今は家事出来ますアピールなんてしなくていいから。」

 ヒートアップしてきた3人をなだめたのはシナトラだった。

 シナトラが鶴の一声を放つと、3人は落ち着きを取り戻した。流石リーダーといったところか。

「じゃあ、俺の自己紹介行きます。俺の名前はアザムキ。自分探しの旅をしていて、ここなら自分が見つかるかなって思って加入させて頂きました。今後ともよろしくお願いします。」

 なんか堅すぎる感じがしないでもないが、まぁこれくらいでいいだろう。

「顔合わせと自己紹介済んだし。あとは楽にしてていいぞ。」

 そう言うとシナトラは自室に入っていった。別に楽にしててと言われてもなと困ってしまった。、

「ねーねーアザムキはどこの出身なの?」

 いつの間にか鎧を脱いでいたフランが近づいてきて俺に質問して来た。
 まるで転校初日の転校生に向かってするテンプレ的な質問みたいだな。
 どこの出身......なんて答えようか…...素直に別の世界から来ましたとか言ってもな…...

「あ〜......俺は......」

「おれは?」

「どこでもないよ。気づいたらどこかに居た。だからこの世界に俺の出身地なんて無いよ。」

 どうにか嘘はつかずに済んだ。我ながら巧く誤魔化せたんじゃないかと思う。


「ふ〜ん。じゃあ彼女とかいないの?」

 これはまた耳が痛い質問だな。彼女......というか幼馴染をあっちの世界に置いて来てしまったからな…...
 付き合ってはいないが、彼女にとても近い存在だとは思ってる。だけど俺も向こうもこれ以上の関係を望んではいない。家族の延長という今の関係のままでいい。

「あ〜、今はいないよ。」

 それとなくはぐらかしながら、のらりくらりと質問を凌いでいるが、いつかめっちゃ鋭い質問が来るんじゃないかと内心ドキドキしていた。

 何故なら少なくともここにいるメンバーは全員実力者だらけだからだ。
誰が何を出来てもおかしくはない。今俺の心の中を読まれているかもしれない。そう思うとドキドキせざるを得ないのだ。

「ふ〜ん......いないんだ。」

 フランは俺の言葉を咀嚼するように反芻して繰り返し、俺を見つめた。

「な、なんだよ。俺の顔になんかついてるか?」

 息の音すら聞こえそうな近さでじっと見つめられて変に感じない方がおかしい。

「じゃあアザムキは今日からアタシの彼氏ね!」


「「「はぁ!?」」」

 俺、サギ、クーネが声を揃えて驚きの声を発した。
 なんてスピードだ......じゃなくて。会ってから付き合うまでのスピードよりも、なんで俺なんかを彼氏に決めたのかが理解出来なかった。

「いやいやいや。決断早すぎないか? もうちょっとよく考えてから......」

「いいの!アザムキは今日から私のものなんだから!」

 いきなりフランは俺のことを抱擁した。あまりの事の流れの早さについていけなくなっていた。
 俺は今何をされてるんだ?なんか物凄く暖かいが…...
 フランの腕の中はとても暖かくとても柔らかかった。ふにふにしてた。控えめに言って最高だった。

 だが俺はなんとか理性を振り絞って、フランの腕の中から抜け出した。

「なんで逃げるのさ!むぎゅうってしてあげてるのに!」

「いやいやいや。早いよ。早い。会ってから数分しか経ってないよ?」

「いいの!好きになるのに時間なんてカンケーないもんね!」

「俺の方が準備出来てないよ!」

 慌てて俺はフランを落ち着かせようとした。なんかこれ以上は不味い気がする。約2名からの視線が痛い。

「欲しくなったら速攻で決める!それがアタシの流儀だよ!」

 流石切り込み特攻隊長をやってることだけはあるな。スゲー早い。

「ま、まぁ一旦落ち着いて。まだ会ったばかりだしさ。そういう踏み込んだ関係はもっとお互いの事を知ってからでも遅くは無いんじゃないかな。」

 とりあえずフランを宥めなきゃ。

「そうだよフラン。アザムキが困ってるじゃないか。」

 サギ便乗ナイス。助け舟マジ感謝。

「むぅ〜!」

 フランはどうにも納得がいかないようだ。いやなんでだよ。分かってくれよ。

「とりあえず。今日はもう遅いし。寝ようよ!」

 強引に皆を寝させる事でこの場を強制終了させようとした。これ以上話がこじれると不味い気がする。

「おやすみ!」

 一方的にそう言って逃げるように自室に転がり込んだ。

「いやぁ焦った......」

 一応扉に備え付けの鍵をかけておき、ベッドにどかっと座り込んだ。なんか物凄い勢いで疲れた気がする。
 さっきまで寝てたからそんなことはないと思うが。

 ふと、アギルから貰った剣が気になりBOXから取り出してみた。
 部屋を傷つけないようにゆっくりと振り回しながら、なんとなく思い出していた。
 小さい頃よく見ていたアニメで、蛇腹状の剣を使って中距離のリーチを上手く立ち回っていた戦士を。

 その頃からなんとなく俺はその戦士に感化されている節があり、好きな剣の種類は蛇腹状の剣だったり、拳銃が付いている剣だったり、炎のように揺らめいた形をした剣だったりと、特殊な形状の剣を好む傾向が俺にはあった。

 ......この世界の外にいるヒーローの剣を出来るだけ正確にイメージして......


この剣に行使する。


 すると手に握っていたシンプルな形の剣はいつの間にか形を変え、俺の好きな剣が全て詰まった形になっていた。
 持ち手はリボルバーのような形状。刃はブロック状に分割線が入っており、炎のように揺らめいた形をしていた。

「なかなかいいんじゃないの。俺の能力チカラ。」

 好きなものを具現化出来る。これは誰でも共通の嬉しさだと俺は思う。
 嬉しさのあまり少しだけ素振りする力が強くなってたような気がする。

「アザムキ。いい趣味してるね。」

 不意に後ろから声をかけられた。びっくりして後ろを振り向いた瞬間、口を手で塞がれて声を出させなくされてしまった。

 いつの間にか俺の部屋に入ってきていたのはサギだった。俺の部屋に転移して来ていたのか。


「さっきはフランに先越されちゃったけど...…」

 不味い......それ以上言うな…...



「これで二人きりね。」

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コメント

  • ダン

    一気に読みやすくにここからなりました!

    段落大事ですよね!

    そしてキャラのやり取りが面白い!

    淡々としてるのでなくキャラに魂がこもってるような!

    そんな感じです!

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