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苦役甦す莇

マウスウォッシュ

Episode2 Welcome to fantasy world

 今の自分の心の中を具現化出来たら、巨大な怪獣がめちゃくちゃに暴れ回ってこの世界を潰して回ってしまうだろう、と思うほどの倦怠感に襲われていた。


 シュバルと名乗る女について行き、森を歩くこと数時間。最早疲れに疲れきっていた。

 木々の間から少しだけ顔を覗かせている空もだんだんと白くなってきて、夜明けが近いことを知らせていた。


「なぁ......どんだけ歩くんだよ。さすがに疲れたぜ。」

 今まで3人のうち1人も話すことがなく、ずっと続いてた沈黙記録も俺が痺れを切らしたことによって途切れてしまった。

「あともう少しの辛抱だ。あともう少しだけ頑張れば君たちが知りたがっている事も知る事が出来るだろう。」

 なんで今教えてくんないのさ。今教えろよ。すぐ教えろよ。ここで教えろよ。そういう探偵アニメあるあるの真相は次週みたいな物言い気に食わないんだよ。クソッタレが。

 あまりに疲れすぎて俺の心は結構殺伐としていた。


 一旦自分の気持ちを落ち着けて、隣をちらと見やるとマヤは全然平気そうな顔をして歩いていた。

 こいつどんだけ体力あるんだよ。疲れてんの俺だけかよ。もう靴も靴下も脱いで開放感に浸りたくて仕方ない。

 そんな感じで悶々と考えていると、森の終わりが目視で確認出来るくらいの所まで来ていた。

 終わりが見えたことに少し安堵すると、今まで猫背気味だった姿勢が自然と普通の姿勢に戻っていた。

「そろそろ森を抜けるよ。」

 やっと......やっとこさ森を抜けられる......今まで生きてきた中で多分最も長い距離歩いたぞ。


 森を抜けるとそこは少し小高い丘だった。眼下になにやら街のようなものが見えた。しかしその風景も違和感の塊だった。
 眼下に広がる平原のど真ん中に建物が密集した場所があるという具合だった。

 本来なら建物がない場所でも車道は敷かれてるものなのにそれらが全く見当たらなく、建物群もある場所に密集してるだけで他の場所には全然見当たらなかった。

 そしてよく見てみると建物群は壁に囲まれてるようだった。俺にとっては違和感だらけで仕方なかった。例えるならモンゴルの平原の一部にロサンゼルスのビル群があるみたいな感じだった。

「あれが私たちが今目指している所だ。そして、君たちが今ここにいる理由もあそこで全て知る事が出来るだろう。」

 違和感はありつつも、今まで見てきた景色は全部木とか茂みだけだったので、景色が一気に変わって少し感動していた。

 しかし、その瞬間1つの疑問が心の中に浮上した。

「なぁ、あんたはあそこから来たのか?俺たちを捜す為に。」

 素朴な疑問だった。目的地がハッキリしてる状態でここまで歩いてくるのに数時間かかった。

 逆に目的地がわからない状態、つまりシュバルが俺たちを捜すってなったとき。あの街からシュバルが来たとしたら相当な時間を使ったハズだと感じたからだ。

「いや、私はあの街から来たわけじゃない。実はこの森の中にいくつか小屋見たいな建物があるんだ。そこの建物から出発して君たちを捜した。」

 なるほど。と納得仕掛けたが、更に新たな疑問が浮上した。

「あんたは依頼主に依頼されて俺たちを捜したわけだよな?
今向かってるのは依頼主の所だとして、あんたはどうやって依頼されたんだ? 街の依頼主は森の小屋にいるあんたにどうやって依頼したんだ?」

 シュバルはおもむろに懐から何かを取り出した。

「こいつを使ったのさ。」

 シュバルが懐から取り出した何かは輪っかのような形をしていて、見た感じ金属質でほんのり鈍く光っていた。

「これは1種の通信手段みたいなもん。これで連絡をとって依頼されたってわけ。」


「依頼主はどうやって俺らが森の中にいるなんてわかったんだ? どうして俺らを捜してるんだ?」

 最後の疑問だった。しかし質問した瞬間、これはシュバルにすべき質問では無かったと少し後悔した。

「それは依頼主に聞いてくれ。私の依頼内容に含まれることじゃない。」

「そうだよな。あんたは俺らを捜して依頼主の所まで連れてくだけだもんな。すまん。」

「いや、君たちなら疑問に思って当然だろう。君たちには知る権利があるからな。」

 そんなこんなで少し休憩も兼ねた問答をして、丘を下る事にした。
 緩い勾配の丘をだんだんと下っていき、緩い勾配から徐々に水平になっていき、完全に水平になる頃には街の門の前に着いていた。

 街の中に入るとまぁまぁな人の数だった。都会でも田舎でもないといった具合の人口密度。
 街の建物をなんとなく横目に見ながら、石が敷き詰められた街道を歩き続けた。

 街に違和感を持ったのは結構すぐだった。
 まず歩道と車道の区別が無かった。道は全て石が敷き詰められていて、人も荷馬車も互いに譲りながら往来を行き交ってるといった感じだった。

 広場には市場なんかも開催されていた。日本では絶対と言っていいほど見かけない光景だ。
 更に街ゆく人々を見てみると人間では無い者も紛れ込んでいた。犬の顔をしてる人もいれば、猫耳が生えてる人もいた。

 シュバルに出会ってから薄々感づいてはいたが、この世界は絶対に俺たちのいた世界では無いと思った。
 昔の外国風の街並みに行き交う人々の格好も様々だった。
 学生服を着ている俺らが逆に浮いてるくらいだった。

 そのまま少し歩き続け、狭い路地に入り、とある建物の前で立ち止まった。
 シュバルはそのまま静かに扉を開けて、俺たち3人は建物の中に入った。


「やぁ。思ったより遅かったね。まぁでも無事に届けてくれてありがとう。ご苦労さんシュバル。報酬は後日送るからあんたはもう帰っていいよ。」

 朝方なのにカーテンを締め切っているせいか建物の中はほんのりと薄暗く、妖しげな女性が1人テーブルに向かって座っていた。

 フードを目深に被り、全身にはローブを羽織っている。所々装飾品を付けているのか、腕や耳がカーテンの間から差し込む光でキラキラ光っている。
 その女性はシュバルに帰るよう促すと、シュバルは何も言わずに出ていってしまった。

「こんにちは。痣剥爪跡アザムキ ソウセキくん。香椎摩耶カシイ マヤさん。」
その女性が口にした名前は確実に俺らの本名だった。

「なんで俺の名前を?」「なんで私の名前を?」

 ほぼ同時だった。考えることは一緒か。


「まぁ、落ち着いて。今君たちに起きてる事を説明するから。」

 ちらと摩耶の方に目をやると、あちらもこっちを見てきた。
 とにかく座るかと自分に言い聞かせ、椅子に腰をかけた。摩耶も続いて隣の椅子に腰をかけた。

「私の名前はアギル。この街で占い師兼魔具錬成をしてるわ。
これから話すのは、私がしようとした事とあなた達に起きた事、あなた達が今置かれてる状況の説明。」

 ......やべぇ......魔具錬成とか......マジでこの世界俺らの世界と違う世界だ。色々聞きたい事とかあるが、まずはとにかく黙って聞いてるか。



「私は魔具錬成の為に色んな世界を渡って様々な素材を集めることがあるの。例えば鉱材を集める為に鉱物が要らなくなった所に行ったりなんかして。
それで私はある日木材が必要になった。そこであなた達の世界に行って要らなくなった木材を貰おうとしたわけ。

それで色んなところから再利用もしなくなった木材を貰ってるうちにあなた達の学校の枯れた植え込みを貰おうとしたの。ただちゃんと管理人に許可はとったわよ?
そこで植え込みを誰もいない時間にこっちの世界に転移させようとした時に、偶然あなた達が植え込みに転げ落ちてしまったの。最悪のタイミングであなた達が植え込みに飛び込んでしまったものだからあなた達は巻き込まれる形でこっちの世界に転移させられた。

そしてもっと悪かった事に、ほとんど事故に近い形で転移に巻き込まれたものだから、あなた達は転移中に自分の存在を固定できなくなってバラバラになってしまった。
そしてあなた達の精神はバラバラになって、欠片となってこの世界の至る所に散らばって行った。

私は急いであなた達がこの世界のどこに転移されたかを占った。そしてあなた達を私の元に連れてくるようにシュバルに頼んだ。
今ここで私と話してるあなた達は、欠片を失くしたあなた達の結晶体。つまり欠けてる状態の自分。
あなた達は完全な存在では無いから半透明な肌をしてる。完全な存在に戻りたいのなら、あなた達は自分の欠片を取り戻す旅に出なきゃいけない。」



 ......言葉が出なかった。そういうことだったのか......

「とにかくあなた達が旅に出るにしても出ないにしても、いつまでも結晶体の姿でいられはしないわ。」

 ん? 今なんかこいつ恐ろしいこと言わなかったか?

「どういうことですか?」

 俺が聞きたいことをそっくり摩耶が代弁してくれた。

「結晶体の姿は維持するのが難しいの。あなた達はいつ消えてもおかしくない状況なの。」

 そういう事は早く言ってくれよ。

「完全な姿になるまでどうにかする方法はある。」

 アギルはおもむろにテーブルの下から謎の液体が入った桶みたいなものを取り出し、テーブルの上に置いた。

「これを飲めばあなた達の欠けてる部分を補填して消滅を免れることが出来る。
ただし、これを飲めばあなた達は旅に出ざるを得なくなるわ。
何故ならこの液体を飲んだらあなた達は否が応でも足りない自分を欲するようになるし、体を保つ為に魔力を貪らなくてはならなくなるから。」

 アギルは後ろの棚からコップを2つ持ってきてテーブルに置き、謎の液体を2つのコップに注いだ。

 緑色に光る謎の液体を注ぎ終えると、アギルは俺たちに選択を迫ってきた。



「私は強要しないわ。
あなた達自身が選択するのよ。
さあ選んで。

このまま消えてなくなるか、
自分を取り戻す旅に出るか。」

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コメント

  • ダン

    二話読んでみましたー

    最後の言葉が印象に残りましたー

    そして会話の下に主人公の心の声を貼り付けてるのはわかるんですが…

    少し読みにくいなっとおもいました…

    まあ作者さんが分かりやすいように工夫してるのは分かりますがね…

    だけどひと段落開けても一つの文に収めて。その後の文をひ二段落ら三段落開けるととかしてみては?

    別にそんな長い文ならそんな開ける必要もないですよー!

    むしろひと段落でも大丈夫かな?って思いますー

    でもあまりに会話の文が長く何度も6個ぐらい段落開けるなんて事もありますよね?

    その後の地の文を二段落か三段落あけて!

    連続でダン!ダン!っとあけてからまた書くなんてしたらどうでしょう?

    っておもうのです…!

    段落開けた方が読みやすいかなって思いました〜!

    そして地の文会話がない部分が色々細かい設定など書いてくださっていますね?

    ただもっとコンパクトにまとめた方が読みやすいと思うんですよー

    そしてやはり段落をあけてくださった方が読みやすいですよね…!

    そして文が地の文あまりに長すぎるとどの言葉が重要なのかな…?

    うーん…うん分からない・・

    重要なワードはあると思うんですが

    あまりに長い文章の文字達のせいで何が大事なのかわからないんです。

    重要なワードを分かりやすくすればより読みやすくなりますよ…!

    文章を削ってコンパクト!

    したらいいとおもいました!

    一度一から見直しコンパクトにわかりやすくするのはどうでしょうか?

    参考にしてくれると幸いです!

    頑張ってください!

    また少し時間が経てばまた読みにきますー

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