方(箱)舟のファントムズ

丸ーニィ

六十三話「神主様家族」

 「成仏の光……」
 
 モニターを眺めているザジの表情は複雑だ。
 モニターでは勝利した頭目が生身の姿で九字を切り、穢れを祓う儀式を略式で行っている。
 二依子がザジの様子が気になっているようだ。
 
 「成仏って事はもう亡霊である事に未練が無くなったって意味だよね?ザジ君的に未練ってどう言うものなの?」
 
 二依子の問いにザジは少し間を置いて、言葉を紡ぐ。
 
 「未練が強すぎるとサブボディに乗り換える事が出来ない位、亡霊を強く縛るんだ」
 
 「俺達自体の未練は半分が失われているから、その分オリジナルボディを保管したりしてた訳だが……」
 
 「半分?」
 
 ザジのこの答えにユナと二依子が首を傾げる。
 
 「半分と言うのは復讐するとかの生前の未練が無いって意味だよ、……もう半分は亡霊になってからの未練だ……」
 
 
 「それぞれ捨てきれない未練がそれなりに有るよ、みんな内緒にしてるけどな」
 
 ユナはその返答に以前の戦いで破損し、レストルームに収容されたねぱたの霊体回復作業を思い出す。
 
 オリジナルボディに戻る際に過去と対峙すると言うのは未練の有る時期の自身に戻ると言うことだろう。
 
 「ザジ君の未練は有るの?」
 
 「有るけど、言えない……な」
 
 ザジ君の回答は何か含みを感じさせる。
 
 (……)
 
 場面は変わりモニターに映った頭目がその場を立ち去り、何やら周囲を見渡して何かを探している様子。
 
 直ぐ様黒服のサポートが入る。
 
 「頭部様!トイレはそこの奥、右に曲がってすぐです!」
 
 「わかっとるのじゃあぁぁぁ!!」
 
 モジモジしている頭目が、モニターの視界から足早に去っていった。
 
 ******
 
 一夜明けてザジ達ポゼ部の試合当日。
 
 二依子の家、日奈代家は朝から騒がしかった……
 
 「ザジ君!部屋から出ていったら危ないよ!」
 
 ザジが二依子の部屋を出て廊下へと歩みだしているのである。 
 
 「家の人に見つかっちゃう!」
 
 ザジはユナの静止も聞かずとある人物の前に出向く為に歩みを進める。
 
 そのとある人物……二依子の父、雄一郎の所だ。
 
 「大丈夫だ、以前に厄介になったときにコッソリ会ってる」
 
 二依子はまだ寝ている、詰めの作業を行っていたらしい。
 その作業はポゼ部二人の後輩のフィギアの改造である。
 
 「二依子さんに断らなくて良いの?」
 
 ユナは不安そうだ。
 
 「そうしたいけど親父さんも忙しいらしいんだ、神社の神主で普段家に居ないから会うのは朝しかない」
 
 そう言うことザジはプラモデルのボディをファントムブースターで飛ばして、奥の部屋に向かってフワフワと飛ぶ。
 しばらくして誰かの声が聞こえてきた。
 
 「あらー?ザジ君じゃない!久しぶりね、家に来ていたなら一声掛けてくれれば良いのに!」
 
 女性の声だ。
 
 「久しぶりですママさん、少しだけ厄介させて貰ってます。」
 
 ザジの挨拶が聞こえる、何と母親までも霊感と面識があるらしい。
 
 「良いのよザジ君、姿を見せるとお父さんが喜ぶから」
 
 「おじさん居ますか?」
 
 「書斎に居るわ、最近神社に人の出入り多くて大変なのよ……色々聞いてあげて」
 
 「うんありがとう……行ってきます」
 
 ザジは二依子の母に一礼すると、書斎に向かって飛ぶ。
 向かった書斎では眼鏡姿の初老の男が、机の上で古い記録や伝承の書物を漁っていた。
 
 「おじさん、お世話になってます。」
 
 初老の男……二依子の父親、雄一郎がその霊の声に振り向く。
 
 「おおお!ザジ君じゃあないか、久しぶりだね元気にしてたか?」
 
 二依子の父はザジを見るや目を輝かせ、ザジの目の高さに合わせる様にしゃがみ込み喜ぶ。
 
 「亡霊に元気も何も……そう言うおじさんこそ何か忙しさがいつになく増してる様だけど」
 
 ザジの亡霊の姿の仕草はそのままプラモデルのボディにも反映して、同じ動きでジェスチャーする。
 
 「忙しいのはいつもの事さ、だけど本当にいつ見ても素晴らしい!プラモデルが動く姿なんて男のロマンで心が踊るよ。」
 
 「おじさんが相変わらずで安心した……」
 
 娘のプラモデル好きが、如何(いか)にこの父親の影響だと言う返事が返ってきてザジもやや呆れ顔だ。
 
 「それからちょっと車庫を借りてます、パルドが厄介してまして」
 
 「良いって事さ、昨日見たときはびっくりしたけどすぐに君が来てるって察知したよ、飛行船の彼(パルド)も中々面白いじゃないか」
 
 もうパルドと会話していたと言う事実はザジを驚かせる、霊感が有るとは言え亡霊に対して寛大過ぎる感覚をザジが覚えた。
 
 「おじさん、亡霊ももう最近珍しくないから俺達以外の亡霊の過度な接触は気を付けてほしい……」
 
 「そうなのか?……ザジ君、亡霊が増えているのかい?」
 
 二依子の父は眼鏡をクイッと直してザジの言葉に真剣になる。
 
 ザジが増えてる亡霊達について語る。
 
 「まだ実数は未確認だけど流れ者が出てきてるらしい、二百や三百は増えてると言う未確認な情報もある」
 
 二依子の父雄一郎も霊感の強い人物である、そしてその実数は馬鹿にならない数字だ。
 
 「あのアプリ事件でも厄介なのに、お祓いの仕事が増えそうで困るよ、奇跡の大安売りも大概だな」
 
 ザジと雄一郎の雑談は暫く続いた。
 
 場所が変わり台所……恐る恐るユナがヌイグルミクマボディで家の中を歩いていた。
 
 「ザジ君ー?ちょっと……そろそろ二依子さん起きるよー!」
 
 ユナはフラフラ歩いてザジの気配を探り歩く、すると……
 
 「んまあ~、可愛い」
 
 ユナの気配を察知した二依子の母親がしゃがみこんでユナの姿を観察していた。
 
 「んぎゃああ見つかった!」
 
 慌てふためくユナが逃げようと走るが、時すでに遅く首根っこを捕まれ移動不能!
 
 「ザジ君って隅に置けない子ね、こんな亡霊のガールフレンド作っちゃうなんてね」
 
 二依子ママがユナの霊体をマジマジと凝視している、とても可愛いとみているのかほっこりしている様だ。
 
 「ひいい、姿まで見えるんですか?!二依子さんの家の人ってみんな霊感チート過ぎません?」
 
 「ウチの家柄から代々神主だけど、私も嫁ぐ前は親戚の神社の巫女だったのよね」
 
 「二依子さんの血統、ハイブリット過ぎぃ!!」
 
 そうこうやり取りしている内に後ろから別の気配が……
 
 「ユナちゃん!何をしているの?」
 
 ユナがその気配に振り替える、後ろに居たのは起きてきた二依子だ。
 
 「二依子さん御免なさい、ザジ君追って出てきたら見つかっちゃった!」
 
 二依子は複雑な顔で母親とユナの様子を見ている。
 
 「母さんこの子は……!」
 
 二依子がユナを庇う様に手にとって胸元に隠そうとした所。
 
 「その子、生き霊ね」
 
 二依子ママの言葉は意外にも的確だった。
 
 
 
 
 

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