方(箱)舟のファントムズ

丸ーニィ

第46話「学校と過去」



翌日、ザジとユナは二依子の鞄に詰められ、学校に登校することとなった。

「くおおおお、よもやこの姿でまた学校に行こうとは……」

ユナが鞄のなかで震える。

「ボックスの中でも狭い、ユナの装備が多すぎた……」

ザジは余分に強化したことを後悔しているようだ。

鞄の外では授業が始まっている。

「パルドさんは車庫に入れといて大丈夫なんですかね」

「大丈夫だろ?多分ね……」

ユナの問いかけにザジが答える、そして今日からの予定を考える。

「今回の遠征はボディの修繕が全てで他の人間には接触しない予定だったけど、札が見つかったとなると話は別だ」

「カンチョウに定期報告を送って状況を知らせているから、地下帝国入りは多少なりとも遅れるけど……」

「その分手土産も持ち寄れる、ただ……そのランカー報酬ってのがどうやったら良いのかが問題だな」



そうこう話しているうちに二依子がザジ達の入った鞄を持って、部室のドアを開けた。

「午後の授業が終わるまで部室に居てもらうよ、菊名と愛華が先にやって来るから挨拶しておいて……」

「私は少し学校の用事を済ませるから……じゃあまた」

そう言うと、二依子はザジ達を置いて部室を後にした。



部室は狭い部屋に机が四つと言う質素な空き教室、物置小屋な広さが活動の状況を語る。

二人は周囲を探索しながら見て回る。

教室で外の景色を見ているザジが話を切り出した。

「殆ど登校してなかった二依子が、こんなに優雅に学生してるのは始めて見る」

そう言ったのはザジだ。

「どう言うことなの?二依子さん学校に行ってなかったの?」

ザジの言葉にユナが頭を傾げる。

「二依子は引きこもりしてたんだ、高校入りたての頃、俺と一緒だった頃なんかもっと家から出ること自体無理ってい言う位……」

「えええ!全然見えないですよ」

実はザジがこの事は自信が一番驚いている。


「昔話少しを話すか……」

ザジは改めて二依子との出会いの経緯を語り出した。

「二依子は引きこもりだった時にアングラな状態の憑依アプリにハマって、プラモデルに遊びで憑依してたんだ、憑依外出が好きで……ネットで募った仲間と遊びに行く毎日だったらしい……」

「その時に憑依者を狩ってた俺と出会っちまって……出会い頭に俺が思いっきり二依子のプラモデルのボディを壊したんだ」


「おいいいい!」

鋭いユナのツッコミ。

当事のザジが″黒騎士″だと言われて憑依を好むモノ達からネットで疎まれていた、KIRIKU兄の読んだバトル生放送のコメントの様子がそうである。

「初めて出会った時に随分と文句言われたなあ……」

「そりゃそうだよ!」

ユナの返答に対して、ザジが染々語る。

「俺だって半端な生き霊は流石に肉体には危険だと思って、その場にいる奴のボディを全部片っ端から壊しまくった。」

「そうなんだ……」

ザジと二依子の出会いは散々だった、そう思える位二人は対立していたようだ。


「少しずつ憑依仲間が減っていく中で、アイツはずっと俺を倒そうと必死になっていってさ……」

「最終的にはアイツとその時の親友の二人が残って、俺はずっと二人と戦ってた」


ザジ本人もその時まで自分が亡霊だと名乗っていなかったのである。

「そんなある日、とうとうアイツ一人だけになって現れて俺を倒そうと突っ掛かってきて……」

「俺はいつも通り返り討ちにしたんだ……、だが二依子のプラモのボディを破壊した途端。」

「途端?」

ユナが夢中に聞き入っている。

「俺のボディの上に二依子のパジャマが覆い被さって来て、アイツの生身に捕らえられたんだよ!」

これはザジの近くでアプリを起動し、ボディが破壊されるのを見越してザジが二依子本人に強襲されたのである。


「因果応報だ!主にザジ君が!」

ユナの言葉は以外にザジに厳しい。

「俺もそう思うよ、あの時の二依子はビクビクしながら勇気を出して家の外に飛び出して、生身で俺を倒そうとしてきたんだ」

「パジャマがズタズタになりながら夜中に薄着で外に出て、必死になって俺を押さえ込んで……」


「凄い勇気を出したんですね……」

ユナは想像するだけでグッと拳を握っている。

「その時に俺のスキルが人を斬り付けられないのがバレちゃってさ……、俺も流石に霊体の消滅の覚悟を決めたよ……」

ザジはこの時に自身が亡霊であると打ち明ける、二依子もその事実には驚いていた。

だが二依子はそこでザジしか出来ない事があると察した、″目的″があったのだ。


「だけど家路に俺を持ち帰るなり泥々のパジャマの格好で、俺のボディが軋む位強く掴んでアイツが俺に言ったんだ!」

「??」

ユナはザジの話の突然のタメに、口を紡いでいる。

「……「「みんなを探して!!!」ってな」

「!!!」

ユナが驚く。

「そうさ……二依子の元を去った憑依仲間が、それぞれ別な理由で憑依して行方不明になっていったんだ」

「ああああ!」

ユナは愕然とする。

「最後まで付き合ってた二依子の親友も行方不明、肉体も霊体も見つからなかった」


「そしてそのまま″未帰還者″になって……結果、肉体だったモノがそのまま帰らぬ人で発見されてしまった……」

憑依中毒症は憑依時間や憑依の頻度によるモノだが、未帰還者になると言うことは……

肉体が維持できずそのまま死亡するまで憑依している状態になる。

眠ったまま食事もせず、閉じ籠るか隠れるかで誰にも見つからず放置され、三週間から70日で絶食者は死ぬと言う、生命維持の限界だ。


「眠ったまま自殺して亡霊になってしまったんですね……」

ユナは二依子に言った、昨晩の自分の言葉は辛くとても重かった事だと感じる。

「……」

「俺と二依子が正式に組んだのはその結果の後だ、アプリの製作者を探し出す目的でな」

「その時に家にやっかいになってた、この体で人間と暮らすなんて毎日が新鮮だったよ」

ザジは楽しげに語っている、生活面は色々語ると多い様だ。

しばらく生活面での語りが続く。


……

そしてユナが思い出す……。

「確か以前にアプリは亡霊になった人が作ったって……」

そう、ユナはザジが以前に言ってた経緯を思い出したのだ。

「ああそうだ、製作者はあっさり見つかったんだよ……以外にも向こうから現れてアプリの消去を賭けて俺と戦った……」

「此方は何か賭けたんですか?」

対等な何かを差し出したと思い、ユナが聞き出す。

「二依子が自身の霊体を賭けたんだ、アイツはもう憑依したら即座中毒症で肉体との垣根が崩れる一歩手前だったからな」

「霊体でスキルを使いすぎたとかじゃなく、一人で限界ギリギリまで憑依して探し回ったツケだ」

「ひえええ!」

二依子の潔さにユナも脱帽である。


「アプリの製作者の亡霊もそれで″何故か″決闘を了承、結果俺が全力でソイツを思いっきりブッ叩いて倒したよ……。」

「やったあ!(ガッツポーズ)」

ザジが語る顛末はもう過ぎた事なのに、ユナは自分の事の様に上機嫌だ。


「そして俺と二依子の戦いは終わったんだ、そのままここにいても良かったんだけど……」

「まあ俺は亡霊だからな……」














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