方(箱)舟のファントムズ

丸ーニィ

第26話「満身創痍の帰還者達」

キャンパーの中でザジ達の帰還を迎える準備が進んでいた。

キャンパーのサイドパネルが開いて工作室上部の中でネットを配置、横倒しのパネルが滑走路のようなライトアップが成されて誘導灯の役割を果たす。

時間はもう夜明けに近いにも関わらず辺りはまだ暗い、だが周囲は火災の火の手が強い為に所々明るく激しい煙や熱を放ち視認を遮っているのである。

いち早く行わなければ成らないザジ達の帰還も、キャンパー側で補助が必要である。

しばらくしてその時はやって来る。

「来たぞ!ザジ達だ!」

火災の煙を抜けてザジとフォッカーが飛び出してきた、二人とも満身創痍である。

「ボロボロじゃないか!着艦出来るのか!?」

確認された二人の様子は着艦も怪しい位にダメージを受けていた。

そしてそれを追うように何かがやって来る。

そう、巨大霊体だ。

ザジの反撃を警戒してか、大きく体を立ち上げて背伸びをする様に高く伸びる。

高層ビルにも相当する巨大な全長がついに全貌を見せ始めた。






時間は少し前に遡る。

ザジ達は攻撃を受けないようにやや高めに上昇し回避を試みる。

「この高さならキャンパーまですぐに行けそうだな」

目の前の住宅街を飛び越えてキャンパーまで戻るのに3分も掛からないルート、上空に上がれば反撃も無いと踏んでの事だろう。

だが巨大霊体もそのまま何もしない訳はなく、ボディのある霊体の頭を上げてザジ達を捕らえるが如く上に延び始める。

巨大な大根が引き抜かれる様に、巨大霊体の胴体は思いの外長く大きく。

まるで高層ビルのようにザジ達の後ろにそびえ立つと、伸びた胴体から何やら光りが無数に見え、何かするのか手を広げ妙な構えを取る。

「門ヲ開ケヨ!出デヨ防人!」

胴体には幾つもの取り込んだ霊体のが見えており、壊れた武人埴輪のようなボディを得て何十体も表面に現れている。

霊糸で間接を作った壊れた武人埴輪は、同じく霊糸で作った弓矢を構え、小さな石や鉄片を鏃にしてザジ達に矢を射掛ける。

放った矢は途中で小さな鏃だけになって、ザジ達に襲いかかる!

その数無数。

「何ッ!?取り込んだ霊体が全員攻撃出来るの!」

あわててバリアで防衛するザジ達だが、以前にどんな霊体も物理でゴリ押しすれば倒せる

…考えていた返しがやって来たかの如く、バリアはそのゴリ押しに破れてボディの損傷が発生し始めていた。

「ぐあああ!駄目だフォッカー!降りよう!住宅街を盾にして射角から逃げよう!」

ザジももう受け流す余裕は無い、大きなダメージを受けないようにアーマーパーツに霊力を込めてボディのダメージコントロールを計る。

「解った、俺ももうバリアは張れない!ローターがやられたら墜落する!何とか体で防御してくれ!」

ザジが構える、背中に盾を付けてしゃがみ込み急降下に対するバランスと防御を取る。

フォッカーが高度を落とすと巨大霊体の胴体からの攻撃は一層激しくなった。

その様子は口径の小さいマシンガンの様で周囲の木々を穴だらけにし、廃屋の壁がボロボロになっていく。

「もうすぐなのに!キャンパーまで
近い筈なのに!」

すぐに着く筈の距離も大きく迂回して居るために時間が掛かる。

「グッ!」


小さな鏃の雨に晒されついにフォッカーのドローンの4つあるローターの1つが壊されると、バランスが崩れ大きく高度が下がる。

「駄目だフォッカー!墜落はするな!、蜂の巣だぞ!」

ザジが霊力を振り絞ってファントムブースターを吹かして補助、だが鏃の雨は容赦なくザジ達のボディを壊し始める!

角度的に一番割りを食うのは上に乗っているザジだ。

背中に付けていた盾が元々ボロボロだったとはいえ完全に砕け散り、続いて右足が吹き飛んでパーツが散乱。

防御を構えた左腕も肘から下が弾け飛ぶ!

左足も殆ど壊れ、フレームパーツが残った状態の満身創痍である。

そして場面は遡った時間に追い付く。



その様子を確認した後、遂にカンチョウが決断をする!

「ドク!キャンパーの霊力全開だ!最大霊力でファントムバリアを!カンチョウ権限で使用を承認だ!」

キャンパー備蓄分の霊力使用…

本当は特に承認等は要らないが″カンチョウ″としての役割として、全員の備蓄霊力の緊急時使用を宣言したのである。

膨大な霊力を使ってバリアを拡大!ザジ達の安全を確保する為の準備が整う!

「急げ!もう目の前だぞ!」

カンチョウの呼び掛けにザジとフォッカーが奮起する!

「ザジ!ドローンはもう駄目だ!分離するから下の犬に捕まれ!」

フォッカーがドローンをパージする!

そこでザジがファントムブースターで浮き上がると剣を振るって防御の姿勢を見せた

何故なら分離中のフォッカーを鏃の雨が襲いかかるが、それを残る霊力を振り絞ったザジが庇うのだ!

「ぐう!」

もう既にザジのプラモデルのボディの損傷は限界である。

庇ったダメージで胴体が砕けて腹から下のパーツは分断、顔にも一発貰い顔面も半壊。

だが右腕と剣はしっかり残り、フォッカーの犬ロボットが剣をくわえた状態で堪えていた。

「なんちゅう無茶を…!」

ザジを回収してそのままフォッカーがジャンプ、鏃の雨の追撃で、犬ロボットの後ろ右足も弾け飛ぶ!

「ちい!」

だが上手く霊体の手を引っ掻けキャンパーのサイドパネルの飛び込むと、張ってあった内部のネットに飛び込んだ!


「うおおおお!霊体消えるかと思ったあああ!」

フォッカーが叫ぶ。

間一髪とは正にこの事、二人とも霊体の損傷もボディの損傷も限界寸前。

キャンパーに到着して霊体保持が出来なければ、消滅が確定していたのだ。

「おいザジ?大丈夫か?返事しろよ!」

フォッカーはザジの霊体の反応を見るが確認出来ない!

「おおお!おい!ザジ!どうした!返事をしろ!」

するとザジのプラモデルボディの後ろから霊体の気配が…

「お疲れフォッカー、危なかったよ」

フォッカーの目の前に居たのはガールズプラモデル。

ザジは到着と同時に、あらかじめ以前のボディに残ってた霊力を回収するため抜け出していたのである。

「いつの間に抜け出てた!?てかその乗り移りスキルは本当チートじゃねえか!」

「そんなこと無いよ、この微量の霊力は本当重要だったんだよ!危なかったんだぞ!」


フォッカーの霊体は頭を抱えていた。

「俺の無い胆を冷すなよ、ビビったじゃねえか。」

軽いジョークにザジがガールズプラモデルで会釈して返す。

「ワリイ、とにかく今はレストルームに行こうぜ」

ボロボロのフォッカーの犬ロボットを抱え、ガールズプラモデルのザジはエレベーターに乗りレストルームに向かった。



























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