方(箱)舟のファントムズ

丸ーニィ

第16話「その噴射は尻から出る」

「これだけか全てやったのに!この訓練のウチの存在価値ここしかなかったのに!」

「んもう、ねぱた姉さんはすぐ脱線しようとする」

嘆くねぱたに慰めるザジ、特撮フィギアがガールズプラモデルに泣きつく様はちょっと滑稽である。

「いきます!(シャキーン)」

ユナが腕を振り上げると熊手に剣が飛び出す、ユナのフルアーマー熊子の新たな装備パーツに「熊手ソード」という内蔵型武器であり、折り畳み式で展開するのだ。

「必殺の熊手スラッシュ!」

もうユナもノリノリである、しかしやはり上級スキルである以上、ザジ程の切れ味は発揮しない。

結果半端に切り裂くだけで刃が止まってしまう。

「ひええええ、抜けない!なんでえ!」

ジタバタするつもりユナに、ザジがアドバイスする。

「斬り抜ける途中で半霊化が切れたからだよ、もう一度抜くために半霊化すれば抜けるよ」

「そんなホイホイできませええん!」

結局ザジに抜いて貰って事なきを得る。

「熊手スラッシュはまだ未完成のようね、今なら熊手ニードルで許したげる。フフフ」

誰に向かっていっているのかいざ知らず、ユナは戦闘の基本を一通り学んだ。

「問題はここからや、次は防御手段やで!」

「はい!」

ユナは気合いが入ってきたらしく返事も威勢がいい。

「ファントムバリアーについて説明するで!」

ねぱたはスマホのお絵かきツールをなぞって説明を開始する。

「バリアーの範囲が狭いなら守れる部分が限定される訳や、そういうタイプがマトリョーシカみたいなボディを使うねん」

「なるほど」

ここでザジが注釈を入れる。

「俺達は霊体の手をかなりのばして引き寄せたり払ったり出来るけど、俺や姉さんやフォッカー以外は精々手前の物を掴む程度なんだ、カンチョウは特別だけど…」

「ほほう」

ユナは他人事みたいな聞き取り方をするが、自信の興味はとても深く、常にどんな使い方しようかと発想力を展開している。

「今から教えるバリアーが自分より離れた位置で使えたらウチらと同じ通常ボディ」

「胴体の周囲表面でしか使えないならマトリョーシカで安定や」

ザジの注釈はここでも入る。

「俺や姉さんでもバリアはこんなもんだぜ」

ザジは適当な廃材を放り投げると、廃材がねぱたの手をかざした周囲で弾かれる。

うっすらだが大きな球状のバリアがねぱた周囲に展開、半径二十センチ位(等身大だと半径二メートル程)周囲展開され廃材を弾く。

「一メートル以上(等身大十メートル)霊体の手を伸ばせれるウチでも(フォースごっこ可)、球状バリアは手前周囲が限界や」

「俺も同じ位だ」

ねぱたとザジが球状展開距離を申告すると、次はいよいよユナのバリアの距離を測る。

「マトリョーシカは自身の手足は守れへんからな覚えとき、ユナちゃんほな行くで!」

ユナに向かって廃材が投げられる、ユナは真っ先に先程のねぱたバリアのイメージそのまま展開するが…


「おおおお!」

バシッとバリアに弾かれる廃材。

ユナのバリアは球状ではなく小さな盾と言う形で発動、キチンとかざした腕の前で展開されていた。

「凄いやん!ピンポイント展開やで、いきなりザジレベルの高等技術や!………バリア小さいけど(ポツリ)」

ねぱたが跳びはしゃぎ、オチまで付ける。

ザジもかなり驚いた様で、自分しか出来ないと思われてた技術が、ちゃんと他でも扱える逸材に巡り会えて感動している。

「姉さん、俺!やってみたかったんすよ!ダブルでバリアを展開して敵の一撃止める奴!……相方バリア小さいけど(ポツリ)」

「そうやで!ダブルバリア防御展開とか最高やん!……相方バリア小さいけど(ポツリ)」

お前らは小学生か、とツッコミいれたくなるユナだが、これで自分のボディは霊体に合ってないと判明した。

「うわああん!このお札の馬鹿ああああ!」

特訓はしばらく復唱も兼ねて行われた。

一通り落ち着くと、そして最後の議題に入る。

「よくぞここまでついてきたな、これが最後や」

ねぱたは周囲を確認する、するとキャンパーの屋根を指して言う。

「上に上がるで、最後の特訓は上でやるからな」

「上ですか」

「せやでエレベーターで先上がり」

ユナはそう薦められてエレベーターでキャンパーの屋根まで上がる。
しかしエレベーターで先に着いた筈のユナだったが、何故かねぱたとザジが先に上がっていて驚くのである。

「え、ええ?!」

ユナは確かに先に上がって来たのを確認する。

「エレベーターに乗ってなかったのに?」

「そうやでこれからが最後の議題、そう」

「ファントムブースターや」

そう言うとねぱたはしゃがみ力を溜める。

「とおう!」

一気に大ジャンプする。
そして着地と同時に議題のファントムブースターを使う。

「よっと!」

バックパックのようなパーツからジェット噴射のようなモノを出す。

そしてゆっくり地面に着地。

「このジェット噴射がファントムブースターやで、各種移動に欠かせないウチらの足や」

ザジが毎度のごとく注釈を入れる。

「姉さんは簡単な移動補助にしてるけど俺は多少飛べる」

そう言うとザジはキャンパーの屋根を、フワフワと飛んでは横にスライド移動する仕草を見せる。

「航続距離はとても短いからあてには出来ないよ、だが無いよりは移動しやすい」

「それでどうやって先回り出来たんですか?」

ユナは明らかに使いにくいその技が先に上がったのと関係在るか気になった。

「単純に霊体の手を伸ばして壁を引っ掻けて、引き寄せつつジェット噴射で移動するんやけど」

「色々立体的に軌道で駆逐出来そうな…」

おっといけない、とか言いつつもユナは上手く出来た移動手段に感服である。

ユナは自分も出来るかどうか試したいと思ったが…

尻からブースターが吹き出したらと思った途端に…

「あ、あれ?」


思うように体が動かない。

「やっぱりアカンな、合ってないのも合間ってガス欠が早いみたいやな」

ユナがポカンとしている。

「やっぱりダメじゃないですか!やだー。」

「今日はこれくらいで訓練おしまいやな、回復したら復唱しときな」


こうしてアーマー熊子の訓練編は終了した。








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