クズスキルでも、努力次第で世界最強!?

シュトロム

34話 努力次第で

 俺が話している間、アリサは静かに聞いていた。
 普通ならいきなりこんな話をされても、何の意味があって話しているのかとまず疑問に思うはずだ。
 だがアリサは俺が今話していることに意味があると、疑うことなく信じてくれているのだろう。

「そして少年はたくさん努力し、誰からも認められる立派な武術家となりました、おしまい。…とまぁ、わざわざ作り話を聞かせたわけだが。俺が言いたかったのは、たとえ使えないスキルでも努力すれば、それを補えるだけの力がつく。俺の知り合いの武術家にもそういう人は少なくない。だからあんまり自分のスキルのことで気に病むなってこと。」

 アリサはそこまで聞いてようやく顔を綻ばせた。
 だが、完全に吹っ切れたわけではなさそうだ。
 アリサの悩みを他人の俺が言葉一つで解決できるとは思っていないし、そういうものは自分で納得いくまで悩むべきだ。
 俺にできることはせいぜい話を聞いてやるか、気分転換させてやるくらいが関の山だ。
 アリサが自分のスキルのことを話さない以上、適当な小話でもして気を紛らわせるくらいしかできない。

「ありがとう。そう言ってくれるだけで十分よ。」
「おう。それじゃ、今日はいつも通りのメニューで修行するかな。」

 その後、日が暮れるまでいつものように修行をした。

 ----------------------

「聞いて欲しいことがあるのだけど。」
「…わかった、聞こう。」

 あれから一週間後のこと、アリサは出合頭にそう言った。
 表情はいつもより真剣で険しい、それを見てスキルのことだろうと察した。
 ここ数日、集中できていないわけではないがどこか上の空な時が多かったように見える。
 きっと話すか話さないか考えていたのだろうな。
 一拍おいて、固かった口を開く。

「この前貴方がした話、あれは実話?」
「ほとんど実話だな。多少省いたりしたところはあるが。それがどうかしたのか?」
「あの話で少年は鑑定士にスキルの有無を確認してもらってたわよね。実は私もそうなの。」
「そうだったのか。と言う事はまさかアリサも……?」

 アリサはゆるゆると首を横に振った。
 アリサも俺が話した少年と同じように、スキルの詳細がわからないのかと思ったがどうやら違うらしい。
 どこかあきらめのようなものを漂わせた表情でアリサは笑っい、そして自嘲的に言った。

「鑑定士の方にはこう言われたわ。『あなたにはスキルがありません』って。」




あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く