クズスキルでも、努力次第で世界最強!?
29話 弓での戦い方の確立 中編
冷汗が頬や背中を伝う。
張り詰めた空気の中で感じる緊張感と極限まで高められた集中力が、それの感覚を普段より鋭敏に感じさせる。
アリサが攻撃側にまわって戦うという事は俺にとって、自分の限界を出し続ける必要があるほどギリギリの環境下に置かれているということになる。
アリサは人外レベルの瞬発力と速度でありながら、的確に急所を突いてくる正確さを持ち合わせている。
その上、今は幽鬼のようにゆらゆらと動き初動が読み辛いことで、反応し対応するまでに幾分か遅れが出てしまう。
本来であればその一瞬が命取りではあるのだが、今のアリサの場合は特別だ。
王族剣技で培った身体能力や体力はそのまま持っていたのだとしても、王族剣技以外の戦い方を知らない彼女の攻撃は単調であるがゆえに避けることは容易い。
かといって反撃ができるわけではない。
慣れたとはいえ、アリサの移動速度が圧倒的であることには変わりない。
その上、接近戦で弓矢を使っての反撃なんてものはそもそも誰もやったことがないだろう。
だがこの戦いでは是が非でもそれをしなければならない。
俺もアリサと同じように何の基盤もないところから始めることになる。
こうして頭を働かせている間にも、アリサの攻撃は続いている。
剣先を霞ませ、高速移動からの刺突・薙ぎ払い・逃げ切りの三連撃をし、再度距離を取ってまた同じように突進してくる。
角度変えたりフェイントなども織り交ぜ、複雑さが増してき始めている。
早急に対処法を見つけなければ俺が倒されるのは時間の問題だ。
大きく見ればやはりヒット&アウェイではあるが形が違うため対処法は変わる。
闘技場で戦った時のようにあらかじめ手に入れてあるような情報なく、元々知っているアリサ自身の基礎的な能力の情報だけ。
戦闘スタイルは今まさに作り上げられているわけで、対処法も定まらない状態では姑息な時間稼ぎしかできない。
さらに時間が経つにつれてアリサの動きにも変化が訪れる、攻撃をすると言う事に慣れ始めているのだ。
初めの覚束ない様子は一切見られなくなり、動体視力の問題を除けば素人の目にも卓越した技術が見られるだろう。
つくづくアリサは武術における天武の才を授かっているんだなと思う。
今まで俺が会った天才と呼ばれる人たちの中でも格別な、天才の中の天才と言ってもいいくらいだ。
俺も非凡な才能くらいはある、だがそれと比べれば天と地ほどの差があるだろう。
だが、俺はただの天才程度には負けるつもりはない。
武術に関する経験と知識ならそこいらの武術家には比べられないほどあると胸を張って言える。
何か一つが群を抜いて秀でていなくとも、別の何かで補ってやればいい。
完璧なものなんてこの世界には存在しない、だが欠点をできるだけ減らすことで完璧に限りなく近づくことならできる。
今の俺にはまだ欠点となりうるところは多い、だからこそ勝つために俺は思考を止めない。
天才の中の天才に勝つための糸口を、一縷の光をこの手に掴むまでは。
----------------------
それから数十分後、ようやく攻撃の波が収まった。
「ハァ、ハァ、これで、何十合目だろうな……。」
「ふぅ、…さぁ、数えてないから、わからないわ。」
絶え絶えの息をゆっくりと整えながら、集中力は切らさずアリサを注視する。
アリサの方も不慣れな事をしているせいか、思いのほか体力を使っているらしく珍しく息を吐く動作をした。
普段は疲れてもすぐ回復するからあまり見ないのだが、目に見えて疲れている様子がわかるのはこれで二度目だろうか。
アリサが高速で動き回り攻撃を止めどなく放っているため、いつもの修行の時の五倍以上は打ち合っている。
いつもは俺が中心的に攻撃をしているが、今回は捌いて避けてを繰り返しているだけなので身体的にはあまり疲れてない。
だが息が詰まるような緊張感と一瞬も切らすことのできない集中状態が小一時間続いたとなれば、精神的疲労はいつもの修業とは比にならない。
貴重な休憩時間を余すところなく使い、できるだけいい状態にしておかなければ必ずどこかでミスしてしまう。
アリサはすでに自分の戦い方を完全に見出したようだ。
一時間前のアリサから考えるとまさに別人と言っていいだろう。
少しづつ修正されていく過程で暗殺術の動きはもう影も残っていない、代わりにアリサの最大の持ち味である速度を十全に生かした『一切止まらない』という戦闘スタイルになった。
常に動き続け、相手の周りをぐるぐる回り予備動作なしに突進してくる。
これが非常に厄介だ、常に見続けていても相手が突進してくるタイミングが全くつかめなくなっているのだ。
後の先を確実に取らされる形になるため、反応が遅れ懐に入られたら確実に三連撃を受けることになるだろう。
そして止まらない事で俺が矢を放つスキが無くなってしまった。
牽制程度のものではそもそも当たる前に通り過ぎてしまう、当てようとしても簡単にはじかれる。
手も足もでないとはまさにこのこと、なんで俺が弓なんかで戦っているのかわからなくなりそうだ。
だが、ここまで耐えきったおかげで活路は見えた。
うまくいくかわからないが、やってみるだけの価値は十分にある。
アリサにしかできない戦い方には、俺にしかできない戦い方で返そう。
さぁ、反撃開始だ!
張り詰めた空気の中で感じる緊張感と極限まで高められた集中力が、それの感覚を普段より鋭敏に感じさせる。
アリサが攻撃側にまわって戦うという事は俺にとって、自分の限界を出し続ける必要があるほどギリギリの環境下に置かれているということになる。
アリサは人外レベルの瞬発力と速度でありながら、的確に急所を突いてくる正確さを持ち合わせている。
その上、今は幽鬼のようにゆらゆらと動き初動が読み辛いことで、反応し対応するまでに幾分か遅れが出てしまう。
本来であればその一瞬が命取りではあるのだが、今のアリサの場合は特別だ。
王族剣技で培った身体能力や体力はそのまま持っていたのだとしても、王族剣技以外の戦い方を知らない彼女の攻撃は単調であるがゆえに避けることは容易い。
かといって反撃ができるわけではない。
慣れたとはいえ、アリサの移動速度が圧倒的であることには変わりない。
その上、接近戦で弓矢を使っての反撃なんてものはそもそも誰もやったことがないだろう。
だがこの戦いでは是が非でもそれをしなければならない。
俺もアリサと同じように何の基盤もないところから始めることになる。
こうして頭を働かせている間にも、アリサの攻撃は続いている。
剣先を霞ませ、高速移動からの刺突・薙ぎ払い・逃げ切りの三連撃をし、再度距離を取ってまた同じように突進してくる。
角度変えたりフェイントなども織り交ぜ、複雑さが増してき始めている。
早急に対処法を見つけなければ俺が倒されるのは時間の問題だ。
大きく見ればやはりヒット&アウェイではあるが形が違うため対処法は変わる。
闘技場で戦った時のようにあらかじめ手に入れてあるような情報なく、元々知っているアリサ自身の基礎的な能力の情報だけ。
戦闘スタイルは今まさに作り上げられているわけで、対処法も定まらない状態では姑息な時間稼ぎしかできない。
さらに時間が経つにつれてアリサの動きにも変化が訪れる、攻撃をすると言う事に慣れ始めているのだ。
初めの覚束ない様子は一切見られなくなり、動体視力の問題を除けば素人の目にも卓越した技術が見られるだろう。
つくづくアリサは武術における天武の才を授かっているんだなと思う。
今まで俺が会った天才と呼ばれる人たちの中でも格別な、天才の中の天才と言ってもいいくらいだ。
俺も非凡な才能くらいはある、だがそれと比べれば天と地ほどの差があるだろう。
だが、俺はただの天才程度には負けるつもりはない。
武術に関する経験と知識ならそこいらの武術家には比べられないほどあると胸を張って言える。
何か一つが群を抜いて秀でていなくとも、別の何かで補ってやればいい。
完璧なものなんてこの世界には存在しない、だが欠点をできるだけ減らすことで完璧に限りなく近づくことならできる。
今の俺にはまだ欠点となりうるところは多い、だからこそ勝つために俺は思考を止めない。
天才の中の天才に勝つための糸口を、一縷の光をこの手に掴むまでは。
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それから数十分後、ようやく攻撃の波が収まった。
「ハァ、ハァ、これで、何十合目だろうな……。」
「ふぅ、…さぁ、数えてないから、わからないわ。」
絶え絶えの息をゆっくりと整えながら、集中力は切らさずアリサを注視する。
アリサの方も不慣れな事をしているせいか、思いのほか体力を使っているらしく珍しく息を吐く動作をした。
普段は疲れてもすぐ回復するからあまり見ないのだが、目に見えて疲れている様子がわかるのはこれで二度目だろうか。
アリサが高速で動き回り攻撃を止めどなく放っているため、いつもの修行の時の五倍以上は打ち合っている。
いつもは俺が中心的に攻撃をしているが、今回は捌いて避けてを繰り返しているだけなので身体的にはあまり疲れてない。
だが息が詰まるような緊張感と一瞬も切らすことのできない集中状態が小一時間続いたとなれば、精神的疲労はいつもの修業とは比にならない。
貴重な休憩時間を余すところなく使い、できるだけいい状態にしておかなければ必ずどこかでミスしてしまう。
アリサはすでに自分の戦い方を完全に見出したようだ。
一時間前のアリサから考えるとまさに別人と言っていいだろう。
少しづつ修正されていく過程で暗殺術の動きはもう影も残っていない、代わりにアリサの最大の持ち味である速度を十全に生かした『一切止まらない』という戦闘スタイルになった。
常に動き続け、相手の周りをぐるぐる回り予備動作なしに突進してくる。
これが非常に厄介だ、常に見続けていても相手が突進してくるタイミングが全くつかめなくなっているのだ。
後の先を確実に取らされる形になるため、反応が遅れ懐に入られたら確実に三連撃を受けることになるだろう。
そして止まらない事で俺が矢を放つスキが無くなってしまった。
牽制程度のものではそもそも当たる前に通り過ぎてしまう、当てようとしても簡単にはじかれる。
手も足もでないとはまさにこのこと、なんで俺が弓なんかで戦っているのかわからなくなりそうだ。
だが、ここまで耐えきったおかげで活路は見えた。
うまくいくかわからないが、やってみるだけの価値は十分にある。
アリサにしかできない戦い方には、俺にしかできない戦い方で返そう。
さぁ、反撃開始だ!
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