クズスキルでも、努力次第で世界最強!?
26話 一歩ずつ前へ
いつもどおり歩く俺と、それに少し遅れながらも後ろをついてくるアリサ。
時々止まって後ろの様子を見つつゆっくりとしたぺースで歩く。
本来なら森の中は魔物の住処、こうしている間にも周りを囲まれてもおかしくはない。
だがそれはないと俺は知っている。
なぜなら、大樹の公園と俺の家を結ぶこの一直線上の道は俺の道と言っても過言じゃないからだ。
思い出すこと五年前、いろいろと事情があって森の中に家を建てた俺がまず初めにしなければいけなかったことは、森に棲む魔物たちに俺の家と町までの道に近づかせないようにすることだ。
家の周りに近づかれると落ち着かないし、帰り道に襲われるのも面倒だったから、いち早くこの森の魔物たちに俺の存在を知らしめる必要があった。
長く険しい道のりだったのを今でも鮮明に思い出す、今のように安全になるまでは一年かかった。
でもわざわざ近づかないようにしたというのに、年に一回の武術祭の日だけは俺の家からクレア闘技場までを一直線に突っ切るので、毎年落ち着いてからそのことを思い出してひやひやする。
場合によってはたくさんの魔物を引き連れていてしまうかもしれない、そうなったら大惨事だ。
五年目にして、その道も統制しようか考えているところだ。
何やかんや思索に耽りながら歩いていると、ようやく俺の家の屋根が見えた。
「アリサ、もう家が見えるぞ。あと少しだ、頑張れ。」
「大丈夫、もうでこぼこした道にも慣れてきたし。それに意外と楽しいし。」
心配する必要はなかったみたいだな。
--------------------
いつもの倍近く時間はかかったが、俺の家の玄関までたどり着いた。
「着いたぞ、ここが俺の家だ。」
「わぁぁぁぁ……?」
……なんだよ、そのリアクション。
「……言いたいことがあるなら言っていいんだぞ?」
「え?う、うーん……、なんて言うか、小さくない?」
「王族分家の貴族のボンボンの家と比べられてもなぁ、天と地、月とスッポン、エビとタイ、は違うか。一般市民の家としてはいい家だと思うんだけどな、周り静かだし。」
「それは森だからでしょ?交通の便は酷く悪いと思うのだけれど、馬車どころか普通に馬に乗ってでも通りづらそうな道だし。」
「ここに来るやつなんてほとんどいないし、町に行く間に足腰と体感が鍛えられるし一挙両得だと思うんだけどなぁ。」
「そんなこと考えるのソーマだけだと思うけど、確かに修行の場としてはいいかもしれないわね。」
「だろ?まぁとりあえず、中に入るか。」
見慣れた自分の家に入る、個室と呼べる場所はトイレと風呂場だけで部屋はない。
この方が朝起きてからの行動がしやすくて俺は気に入っているし、インデンスのアタッチメントにはかなり大きいものもあるから、広い空間があると手入れがしやすくていい。
インデンスのアタッチメントは全てこの家の壁に掛かっている。
大きいもので二メートル、小さいものだと五センチくらいのものまである。
大きいものはアタッチメントとしてのみの活用だが、小さいものはそのまま投げナイフのようにしてもいいし、俺の戦闘スタイルとしては手数の多さと素早さ重視なので使い勝手が良くて非常に重宝している。
「まぁ適当に寛いでくれ。」
さてと、今日はどれを使うとするかな。
最近使ってないのからだと……。
「……なんか殺風景過ぎない?いろんな意味で。」
「仕方ないだろ、俺は武術にしか興味ないんだから。必要なものしか置いてないだけだ。」
「ふーん……、ねぇ少しだけ触ってもいい?」
「いいけど、落とすなよ?床が傷付いたら後々面倒だからな。」
「大丈夫、そんな簡単なミスしないって。」
そういって俺の横に立つとすぐ近くにあったアタッチメントを手に取った。
「これは何?なんか角みたい…。」
「それは弓になるやつだ、そこに弦と矢があるだろ。」
「へぇ、弓も使えるんだ。」
「使えるって言っても剣とか槍とかに比べると練度はまだまだだぞ?かなり遠距離まで飛ばせるし当てようと思えばできるけど、対人戦だとどうにも速射性に欠けるんだよなぁ。矢がなくなったら結局は接近戦だし、まぁ弓術兼棒術もできる武器って考えたら利便性はある方なのかな?」
そこが課題ではある、今じゃ魔物相手の牽制くらいにしか使っていない。
せっかく作ったんだし何か考えないととは思っていたがそのまま保留になっていた。
……そうだな、今日これを使おう。
久しぶりに使うからどうなるかわからないが、逆に何か新しい発見ができるかもしれない。
「よし、そろそろ行くか。俺は準備できたぞ。」
「うん、わかった。先行ってて。」
「?いいけど…。扉の前で待ってるぞ。」
普段使っているバックに必要なものを詰めて、外に出る。
日はもう高いところにある、町の人たちも少しづつ行動し始めていることだろう。
森の中に家を作って暮らしている俺には町の賑わいは聞こえてこない。
不自由には思ったことはない、心地いいとさえ思っている。
かすかに聞こえる動物の声や、風が吹き木々が揺れ葉っぱが擦れる音に癒されて生活している分、町の人たちが感じるような心の負担はない。
落ち着いた精神と万全な身体を持ってして武術家は成り立つ、この生活はそのためのもの。
まだまだ師匠に認められていない、武術家見習の身分ではあるが志だけではだれにも負けていないと思っている。
「お待たせ、それじゃあ行こうか。」
「あぁ、今日も張り切って行くか。」
いつか、アリサのような圧倒的才能を持ちながら研鑽も努力も惜しまないような、俺の手の届かない領域に達している人と出会うかもしれない。
それでも俺は、一歩ずつゆっくりと前に進む意志は曲げない。
いつか『最強』という高みに登りつめるために。
時々止まって後ろの様子を見つつゆっくりとしたぺースで歩く。
本来なら森の中は魔物の住処、こうしている間にも周りを囲まれてもおかしくはない。
だがそれはないと俺は知っている。
なぜなら、大樹の公園と俺の家を結ぶこの一直線上の道は俺の道と言っても過言じゃないからだ。
思い出すこと五年前、いろいろと事情があって森の中に家を建てた俺がまず初めにしなければいけなかったことは、森に棲む魔物たちに俺の家と町までの道に近づかせないようにすることだ。
家の周りに近づかれると落ち着かないし、帰り道に襲われるのも面倒だったから、いち早くこの森の魔物たちに俺の存在を知らしめる必要があった。
長く険しい道のりだったのを今でも鮮明に思い出す、今のように安全になるまでは一年かかった。
でもわざわざ近づかないようにしたというのに、年に一回の武術祭の日だけは俺の家からクレア闘技場までを一直線に突っ切るので、毎年落ち着いてからそのことを思い出してひやひやする。
場合によってはたくさんの魔物を引き連れていてしまうかもしれない、そうなったら大惨事だ。
五年目にして、その道も統制しようか考えているところだ。
何やかんや思索に耽りながら歩いていると、ようやく俺の家の屋根が見えた。
「アリサ、もう家が見えるぞ。あと少しだ、頑張れ。」
「大丈夫、もうでこぼこした道にも慣れてきたし。それに意外と楽しいし。」
心配する必要はなかったみたいだな。
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いつもの倍近く時間はかかったが、俺の家の玄関までたどり着いた。
「着いたぞ、ここが俺の家だ。」
「わぁぁぁぁ……?」
……なんだよ、そのリアクション。
「……言いたいことがあるなら言っていいんだぞ?」
「え?う、うーん……、なんて言うか、小さくない?」
「王族分家の貴族のボンボンの家と比べられてもなぁ、天と地、月とスッポン、エビとタイ、は違うか。一般市民の家としてはいい家だと思うんだけどな、周り静かだし。」
「それは森だからでしょ?交通の便は酷く悪いと思うのだけれど、馬車どころか普通に馬に乗ってでも通りづらそうな道だし。」
「ここに来るやつなんてほとんどいないし、町に行く間に足腰と体感が鍛えられるし一挙両得だと思うんだけどなぁ。」
「そんなこと考えるのソーマだけだと思うけど、確かに修行の場としてはいいかもしれないわね。」
「だろ?まぁとりあえず、中に入るか。」
見慣れた自分の家に入る、個室と呼べる場所はトイレと風呂場だけで部屋はない。
この方が朝起きてからの行動がしやすくて俺は気に入っているし、インデンスのアタッチメントにはかなり大きいものもあるから、広い空間があると手入れがしやすくていい。
インデンスのアタッチメントは全てこの家の壁に掛かっている。
大きいもので二メートル、小さいものだと五センチくらいのものまである。
大きいものはアタッチメントとしてのみの活用だが、小さいものはそのまま投げナイフのようにしてもいいし、俺の戦闘スタイルとしては手数の多さと素早さ重視なので使い勝手が良くて非常に重宝している。
「まぁ適当に寛いでくれ。」
さてと、今日はどれを使うとするかな。
最近使ってないのからだと……。
「……なんか殺風景過ぎない?いろんな意味で。」
「仕方ないだろ、俺は武術にしか興味ないんだから。必要なものしか置いてないだけだ。」
「ふーん……、ねぇ少しだけ触ってもいい?」
「いいけど、落とすなよ?床が傷付いたら後々面倒だからな。」
「大丈夫、そんな簡単なミスしないって。」
そういって俺の横に立つとすぐ近くにあったアタッチメントを手に取った。
「これは何?なんか角みたい…。」
「それは弓になるやつだ、そこに弦と矢があるだろ。」
「へぇ、弓も使えるんだ。」
「使えるって言っても剣とか槍とかに比べると練度はまだまだだぞ?かなり遠距離まで飛ばせるし当てようと思えばできるけど、対人戦だとどうにも速射性に欠けるんだよなぁ。矢がなくなったら結局は接近戦だし、まぁ弓術兼棒術もできる武器って考えたら利便性はある方なのかな?」
そこが課題ではある、今じゃ魔物相手の牽制くらいにしか使っていない。
せっかく作ったんだし何か考えないととは思っていたがそのまま保留になっていた。
……そうだな、今日これを使おう。
久しぶりに使うからどうなるかわからないが、逆に何か新しい発見ができるかもしれない。
「よし、そろそろ行くか。俺は準備できたぞ。」
「うん、わかった。先行ってて。」
「?いいけど…。扉の前で待ってるぞ。」
普段使っているバックに必要なものを詰めて、外に出る。
日はもう高いところにある、町の人たちも少しづつ行動し始めていることだろう。
森の中に家を作って暮らしている俺には町の賑わいは聞こえてこない。
不自由には思ったことはない、心地いいとさえ思っている。
かすかに聞こえる動物の声や、風が吹き木々が揺れ葉っぱが擦れる音に癒されて生活している分、町の人たちが感じるような心の負担はない。
落ち着いた精神と万全な身体を持ってして武術家は成り立つ、この生活はそのためのもの。
まだまだ師匠に認められていない、武術家見習の身分ではあるが志だけではだれにも負けていないと思っている。
「お待たせ、それじゃあ行こうか。」
「あぁ、今日も張り切って行くか。」
いつか、アリサのような圧倒的才能を持ちながら研鑽も努力も惜しまないような、俺の手の届かない領域に達している人と出会うかもしれない。
それでも俺は、一歩ずつゆっくりと前に進む意志は曲げない。
いつか『最強』という高みに登りつめるために。
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