クズスキルでも、努力次第で世界最強!?

シュトロム

25話 のんびりする

 朝食は昨夜と同じ客間でとることになっていて、俺たちがそこについた時にはすでに料理が並べられていた。
 昨日に引き続き、非常に豪華な料理に圧倒されつつも席に着く。
 すごいとは思ったが、昨日ほど驚きはしなかったし、遠慮もせずに食べた。
 もう慣れ始めている自分が怖い。
 今までの俺の暮らしを鑑みると、自堕落の極みになってしまいそうなほどの至れり尽くせりを受けている気がする。
 あれだ、ちょっと奮発して旅行に来たんだと思えば、家に帰ってから自分の作るひもじい料理にも耐えられるさきっと、うん。

 自分で思ってて悲しくなってきたからやめよう……。

「今朝はアルバトラウサムさんはいないんですね。」
「旦那様は日が昇る前にはお出かけになられました。なんでも急用ができたとのことで…、お伝えするのが遅れてしまい申し訳ありません。」
「あ、いや、気にしなくて大丈夫ですよ。」

 そう、アリサの親父さん、アルバトラウサムさんがいないのだ。
 貴族で、ましてや王族の分家の現当主が忙しくないわけがない。
 昨日一緒に食卓についていたのは、かなり珍しいことだったのかもしれない。
 あ、この卵料理美味しい。

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 たいへん美味しかったです。
 素材の味を生かした料理の数々に感動した、頑張ってくれたのであろうメイドや料理人の人諸々に心の中で敬礼と最大限の感謝を送る。
 また食べたい、とは思うがこれっきりにしておかないと後で困る、ここにはもう来ないでおこうと心に決めた。
 また来るような機会もないだろうし大丈夫だとは思うが、一応ね。

 さて、この後どうするかな。
 アリサが王族剣技をやめるといったのでこれからやるメニューも変わってくる。
 まぁこれから自分一人でやるっていうなら話は別だが、どちらにせよ俺は一度自宅に帰らなければならない。
 いろいろやることとか準備とかもあるし。

「アリサ、今日はどうするつもりだ?」
「ん、そのことなんだけど、私ソーマの家に行ってみたい。」
「は?俺の家?いきなりどうした。」
「だってソーマだけ私の家に上がり込んで、私は行かないって不公平じゃない?それにどんな家に住んでるのか興味もあるし。」
「えぇ……。」

 普通それで、いいですよ、って言うやつ極少数だと思うんだけど、絶対下心ある奴でしょそいつ。
 それに、俺の家に来ても大して面白いものが置いてあるわけでもないし、来てもつまらないだけだろう。
 確かに予期せず一晩泊めさせられたし食事ももらったけど……。

「…俺の家とかなにも置いてないし、一般人の家にちょっと武器類が置いてあるくらいだぞ?そんなの見てるだけじゃつまらなくないか?」
「いいの、私が勝手に行きたいって思ってるだけだから。そんなこと気にしないから、早く行こう?今日の修行する時間が減っちゃうでしょ。」

 なんか無理やり押し切られた、それに俺に教えてもらう気満々だった。

「……別にいいけど、後で後悔しても知らないからな。」
「はーい。」

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「ねぇ、まだ着かないの?どこまで歩くのよ…。」
「あと少しだって、アリサのペースに合わせてるからいつもより着くのが遅いんだぞ?俺一人だったらもう往復しきってるぞ。」
「人のこと化け物とか言っておきながら貴方も大概じゃない…。」
「林道を歩きなれてるかどうかの差だと思うけどなー。大丈夫、帰るころには慣れてるって。アリサの身体能力なら余裕余裕。」

 度々振り返りながら軽く煽りつつ先に進む俺と、地面に張り出した木の根に注意しながら慎重かつ確実に一歩ずつ進むアリサ。
 ハイキングではなく俺の家へ向かってる最中である、勘違いしてはいけない。
 俺の家は大樹の公園を入口とは反対方向に、ほぼまっすぐ行った所にある。
 大きな木がたくさん生い茂っている林の中にある公園の奥にあるのだから、道が険しいのは言うまでもない。
 さらに奥に進めば山になる、この辺りは気にならない程度だが多少の勾配はある。
 俺の家までならそこまで大変なわけじゃないがいつもより体力は奪われるだろう。

 一人じゃないけど、こうやって自然の中をゆっくり歩くっていうのも悪くない。
 昨日の一件と今朝のことで精神的にはかなり疲れてるから、余計そう感じるのかもしれないな。
 特別何かしているときじゃないなら、のんびりするのもいいと思った。
 人間にとって、休息は大切なことだ。
 疲れたままではベストな動きはできない、誰だってそうだ。
 心身ともに落ちついていなければ、普段はうまくいくこともなかなかできなくなってしまう。
 普段からのんびりしすぎるわけにはいかないが、たまにする分にはいいだろう。
 そのことに気づけたんだ、今日くらいは気楽に行こう。

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