クズスキルでも、努力次第で世界最強!?
16話 暇つぶしに異性の観察をする変態(半分誤解)
アリサは思いの外、長い間気絶していた。
もしや死んでいるのでは?と思い、何度か確認したが脈は正常だし、しっかり呼吸もしている。
待っているだけなのも暇なので、最近出来ていなかった自主練習を行うことにした。
準備運動はアリサと一緒にやっているので飛ばす。
まず初めに素振りをする。
カチャッ
『インデンス:大斧フォーム』に換装しました。
「よっこいしょ。」
『インデンス:大斧フォーム』は柄が150センチ、刃長が縦30センチ横50センチで、構造はバルディッシュを基本としているが刃の形はトマホークよりで、外ではなく内に湾曲しているのが特徴的だ。
そして、この時のインデンスの総重量はなんと50キロ超だ。
理由はもちろんアッタチメントの部位にあたる、刃の部分にある。
この刃は、素材を俺自身で選りすぐり、知り合いの鍛冶師に頼み込んで作ってもらった、超一級品ではあるのだが…。
俺が武器の構成を考える時は、先にテーマを決めてから考えている。
例えば、『どんな力もいなせる武器』としたものは剣、『もっとも素早く動ける武器』としたものは槍、といった具合にどんな武器を作るかを先に決めて、それに見合う武器の種類を選別しているのだ。
このことから、大斧のテーマは『全部なぎ倒せるくらい強い武器』となっている。
これは素早さしか取り柄のない俺の攻撃力を補強する為に考えたものだ。
しかし基礎部分のインデンスはただの組立式の棒なので、破壊力はアタッチメントに依存することになる。
つまりは、重さが足らなかった。
だが、インデンスに合わせて刃を作るとどうしても大きくすることによる重さの増強は見込めなかったので、唯一この武器だけ自分1人で作るのを諦め、知り合いの鍛冶師に頼んだのだ。
そいつは、この状況を打開するのにお誂向きのスキル持ちだったし、この大斧を作ることに関しては快く受けてくれるとわかっていたから、完成品を見るまで浮かれていたのだ。
「これで俺に不足してた攻撃力面を補えるぜ!」と調子にのって後先を考えていなかったのだ。
そいつが俺のところに刃をとてもいい笑顔で持ってきた時、ようやく自分が何をしでかしたのか気づき後悔した。
その鍛冶師は武器をひたすら重く固く強くしたがる、所謂火力馬鹿なのである。
結果がこれだ。
刃と元々軽い方だったインデンス本体との重量比が49対1くらいになってしまった。
非力な俺には、まともに振ることも難しい。
よって、この大斧フォームは筋トレ用武器になってしまったのである。
この大斧を振り続けて早3年、ただ縦に振ることだけを続けて頑張ったおかげで、かなりの筋力がついた。
それでもこれを実践で使うのはかなり厳しい。
素早さが売りの俺にはとことん合っていないのだ。
その代わり、攻撃力は自らの筋肉で補えたので当初の目標は達成出来てると言っていい。
「ハァッ!!」
いつものように、インデンスを振り下ろす。
鈍く重々しい風切り音が辺り一面に広がる。
もし生き物に当たれば一溜りもないだろう。
腕にかかる負荷に耐え、ゆっくりと持ち上げる。
頭上まで持ち上がったところで再度振り下ろす。
この筋トレを始めた当初は、振り下ろすたびに地面に叩きつけて、大量の傷跡をつけてきた。
今のように地面スレスレで止められるようになったのは、つい半年前のことだ。
はじめてできるようになった時は、子供のように喜んだのを覚えている。
何度かこのトレーニングをした後、別の練習に移った。
ただ、正直に言うとこの練習は意味があるのかわからない。
俺の師匠に言われたから、此方10年間続けてきた練習なのだが、全くといっていいほど成果は出ていないし、そもそも成長するだなんて思ってもいないことだ。
その練習とは、スキルの練習だ。
生まれてからずっと、疑問に思っていた。
何故、スキルなんてものがあるのか。
何故、スキルの優劣がそのまま人の価値に相当するような社会なのか。
何故、俺のスキルは全く使えないクズスキルなのか、と。
何の役にも立たないスキルを持って生まれたせいで、街のヤツらにさんざん馬鹿にされてきた。
味方は孤児院の人しかいなかった。
それでも、月日が経てば独り立ちしていかなければならないと、幼いながらも気づいていたから、1人でも生きていける力が欲しいと思うようになった。
なにかないかと模索していた時に見つけた、武術家になろうと思ったのは、孤児院の先輩(兄弟)に憧れたから、その先輩の言葉があったからだ。
先輩は俺にこう言った。
『お前みたいに世間に馬鹿にされるようなスキルの人なんて世の中にたくさんいる。俺だって元はそうだったんだぜ?でもな、この世界は誰だって一番になれるようになってるんだ。初めはダメダメだったとしても、努力して努力して、朝昼晩毎日毎日努力して、諦めなかったやつが1番になれるんだ。だから、絶対諦めんなよ。』
この言葉が、今の俺のほぼすべての原動力になっている。
俺もこの人みたいになりたいと思ってここまで努力できたのだ。
それと師匠の助言も相まって、スキルの練習をしているわけだ。
スキルの練習自体はそう難しいことじゃない、逆に簡単すぎるくらいだ。
そこが、使えないスキルである所以ではあるのだが。
俺のスキルは『観察』というスキルだ。
能力は見る力がすごいということらしい。
それだけだ。
本当にそれだけの能力だ。
どうだ、使えないだろう。
スキルの練習は周りの風景を見たり、武器の手入れをしながら細かいところをチェックしたり、普段見ないようなところを注視したり、といった別にこのスキルじゃなくとも誰にでもできることだ。
楽ではあるが、時間を無駄に消費しているだけのようで、なんとも言えない気持ちになる。
それでも練習を欠かしたことはない。
先輩と師匠の2人に言われたなら、いづれなにかの役には立つだろう。
さて、今日は何を見ていようか。
インデンスは、特に手入れするところもなさそうだし、このあたりの景色はもう見慣れてしまったし。
キョロキョロと見回していたら、居るのはわかっていたし、目につけたくはなかったがそれ以外に候補もなかった。
逡巡したが、諦めたかのようにため息をつきながら木陰へ、アリサのいる方へ歩いていった。
できれば気絶して無防備な異性を不躾に、しかもジロジロ見続けるというのは、ただの変態クソ野郎よろしくな行いだとはわかっているが、これはスキルの練習のためだ。
後で謝ろう。
1つ深呼吸をして静かにアリサを見やる。
前々から気づいてはいたが、こうマジマジと見ると、やっぱりアリサは他のどんな人よりも群を抜いて美人だということがわかる。
長い黒髪は根元から先端までしっかりと手入れがされているようで、ハネやクセもなくまっすぐ伸び、日陰にいてもその髪の艶は保たれていた。
意図したわけではなかったが、木に寄りかからせて座らせていたのだが、座り方が物腰の落ち着いた年上の女性が見せる安心感のようなものが、寝ているだけのアリサからも伝わってきた、年上かどうかは知らないが。
顔つきは、先程の座り方からは反してどこか幼さを感じさせる。
長めのまつげと水も弾く肌を持ち、成人もしていないくらいに見える。
体つきは、………見ないでおこう。
後で何言われるかわかったもんじゃないし、倫理的にもどうかと思うし、決してあの強さからは考えつかないほど女性的な、非常に整った体つきで、免疫なさすぎて恥ずかしくて見れないとかじゃないから!
「う、うぅーん……。」
おっと、もう少しで起きそうだ。
起きたらまず、頭蹴ったこととマジマジと観察したこと謝ろう。
もしや死んでいるのでは?と思い、何度か確認したが脈は正常だし、しっかり呼吸もしている。
待っているだけなのも暇なので、最近出来ていなかった自主練習を行うことにした。
準備運動はアリサと一緒にやっているので飛ばす。
まず初めに素振りをする。
カチャッ
『インデンス:大斧フォーム』に換装しました。
「よっこいしょ。」
『インデンス:大斧フォーム』は柄が150センチ、刃長が縦30センチ横50センチで、構造はバルディッシュを基本としているが刃の形はトマホークよりで、外ではなく内に湾曲しているのが特徴的だ。
そして、この時のインデンスの総重量はなんと50キロ超だ。
理由はもちろんアッタチメントの部位にあたる、刃の部分にある。
この刃は、素材を俺自身で選りすぐり、知り合いの鍛冶師に頼み込んで作ってもらった、超一級品ではあるのだが…。
俺が武器の構成を考える時は、先にテーマを決めてから考えている。
例えば、『どんな力もいなせる武器』としたものは剣、『もっとも素早く動ける武器』としたものは槍、といった具合にどんな武器を作るかを先に決めて、それに見合う武器の種類を選別しているのだ。
このことから、大斧のテーマは『全部なぎ倒せるくらい強い武器』となっている。
これは素早さしか取り柄のない俺の攻撃力を補強する為に考えたものだ。
しかし基礎部分のインデンスはただの組立式の棒なので、破壊力はアタッチメントに依存することになる。
つまりは、重さが足らなかった。
だが、インデンスに合わせて刃を作るとどうしても大きくすることによる重さの増強は見込めなかったので、唯一この武器だけ自分1人で作るのを諦め、知り合いの鍛冶師に頼んだのだ。
そいつは、この状況を打開するのにお誂向きのスキル持ちだったし、この大斧を作ることに関しては快く受けてくれるとわかっていたから、完成品を見るまで浮かれていたのだ。
「これで俺に不足してた攻撃力面を補えるぜ!」と調子にのって後先を考えていなかったのだ。
そいつが俺のところに刃をとてもいい笑顔で持ってきた時、ようやく自分が何をしでかしたのか気づき後悔した。
その鍛冶師は武器をひたすら重く固く強くしたがる、所謂火力馬鹿なのである。
結果がこれだ。
刃と元々軽い方だったインデンス本体との重量比が49対1くらいになってしまった。
非力な俺には、まともに振ることも難しい。
よって、この大斧フォームは筋トレ用武器になってしまったのである。
この大斧を振り続けて早3年、ただ縦に振ることだけを続けて頑張ったおかげで、かなりの筋力がついた。
それでもこれを実践で使うのはかなり厳しい。
素早さが売りの俺にはとことん合っていないのだ。
その代わり、攻撃力は自らの筋肉で補えたので当初の目標は達成出来てると言っていい。
「ハァッ!!」
いつものように、インデンスを振り下ろす。
鈍く重々しい風切り音が辺り一面に広がる。
もし生き物に当たれば一溜りもないだろう。
腕にかかる負荷に耐え、ゆっくりと持ち上げる。
頭上まで持ち上がったところで再度振り下ろす。
この筋トレを始めた当初は、振り下ろすたびに地面に叩きつけて、大量の傷跡をつけてきた。
今のように地面スレスレで止められるようになったのは、つい半年前のことだ。
はじめてできるようになった時は、子供のように喜んだのを覚えている。
何度かこのトレーニングをした後、別の練習に移った。
ただ、正直に言うとこの練習は意味があるのかわからない。
俺の師匠に言われたから、此方10年間続けてきた練習なのだが、全くといっていいほど成果は出ていないし、そもそも成長するだなんて思ってもいないことだ。
その練習とは、スキルの練習だ。
生まれてからずっと、疑問に思っていた。
何故、スキルなんてものがあるのか。
何故、スキルの優劣がそのまま人の価値に相当するような社会なのか。
何故、俺のスキルは全く使えないクズスキルなのか、と。
何の役にも立たないスキルを持って生まれたせいで、街のヤツらにさんざん馬鹿にされてきた。
味方は孤児院の人しかいなかった。
それでも、月日が経てば独り立ちしていかなければならないと、幼いながらも気づいていたから、1人でも生きていける力が欲しいと思うようになった。
なにかないかと模索していた時に見つけた、武術家になろうと思ったのは、孤児院の先輩(兄弟)に憧れたから、その先輩の言葉があったからだ。
先輩は俺にこう言った。
『お前みたいに世間に馬鹿にされるようなスキルの人なんて世の中にたくさんいる。俺だって元はそうだったんだぜ?でもな、この世界は誰だって一番になれるようになってるんだ。初めはダメダメだったとしても、努力して努力して、朝昼晩毎日毎日努力して、諦めなかったやつが1番になれるんだ。だから、絶対諦めんなよ。』
この言葉が、今の俺のほぼすべての原動力になっている。
俺もこの人みたいになりたいと思ってここまで努力できたのだ。
それと師匠の助言も相まって、スキルの練習をしているわけだ。
スキルの練習自体はそう難しいことじゃない、逆に簡単すぎるくらいだ。
そこが、使えないスキルである所以ではあるのだが。
俺のスキルは『観察』というスキルだ。
能力は見る力がすごいということらしい。
それだけだ。
本当にそれだけの能力だ。
どうだ、使えないだろう。
スキルの練習は周りの風景を見たり、武器の手入れをしながら細かいところをチェックしたり、普段見ないようなところを注視したり、といった別にこのスキルじゃなくとも誰にでもできることだ。
楽ではあるが、時間を無駄に消費しているだけのようで、なんとも言えない気持ちになる。
それでも練習を欠かしたことはない。
先輩と師匠の2人に言われたなら、いづれなにかの役には立つだろう。
さて、今日は何を見ていようか。
インデンスは、特に手入れするところもなさそうだし、このあたりの景色はもう見慣れてしまったし。
キョロキョロと見回していたら、居るのはわかっていたし、目につけたくはなかったがそれ以外に候補もなかった。
逡巡したが、諦めたかのようにため息をつきながら木陰へ、アリサのいる方へ歩いていった。
できれば気絶して無防備な異性を不躾に、しかもジロジロ見続けるというのは、ただの変態クソ野郎よろしくな行いだとはわかっているが、これはスキルの練習のためだ。
後で謝ろう。
1つ深呼吸をして静かにアリサを見やる。
前々から気づいてはいたが、こうマジマジと見ると、やっぱりアリサは他のどんな人よりも群を抜いて美人だということがわかる。
長い黒髪は根元から先端までしっかりと手入れがされているようで、ハネやクセもなくまっすぐ伸び、日陰にいてもその髪の艶は保たれていた。
意図したわけではなかったが、木に寄りかからせて座らせていたのだが、座り方が物腰の落ち着いた年上の女性が見せる安心感のようなものが、寝ているだけのアリサからも伝わってきた、年上かどうかは知らないが。
顔つきは、先程の座り方からは反してどこか幼さを感じさせる。
長めのまつげと水も弾く肌を持ち、成人もしていないくらいに見える。
体つきは、………見ないでおこう。
後で何言われるかわかったもんじゃないし、倫理的にもどうかと思うし、決してあの強さからは考えつかないほど女性的な、非常に整った体つきで、免疫なさすぎて恥ずかしくて見れないとかじゃないから!
「う、うぅーん……。」
おっと、もう少しで起きそうだ。
起きたらまず、頭蹴ったこととマジマジと観察したこと謝ろう。
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コメント
シュトロム
まみやらわさん、コメントありがとうございます。自分なりのペースで頑張っていこうと思いますので、応援よろしくおねがいします!
斉藤 自由
今の一週間に一度のペースでも自分は良いと思いますよー
シュトロム
投稿に慣れてきたら、少しづつ投稿頻度上げていこうと思います。応援よろしくお願いします!