異世界モノ【削除予定】

月付豆吃

漆黒王の牙剣【空王】と不死の王の魂刃【不滅】

『ホブゴブリン一体以上の討伐』

それがギルドランクEからDに昇格するために光瑠がクリアしなければならないクエストの内容で。

光瑠はゴブリンが多く出るススラの森・浅域でも奥まった方へと赴いていた。

――――ホブゴブリンとは、ゴブリンの中でも身体能力が全体的に高く、中でも知力が有るとされる部類のことを言う。

出生率はゴブリン二十体のうち一体がホブゴブリンとされ、一度の交配からなる出産数の多いゴブリンであればその数は少なくないと言われている。

実際光瑠もゴブリン討伐クエストで一度相対し倒している。短剣を新調しようと思い至らせたクエストの時だ。

(そういえば)

ふと思い出す。一昨日訪ねた店で起きた出来事を。

店主が魔族と分かり、話が紆余曲折しつつも纏まった内容は、決して軽口で話せるような内容ではなかった。そして簡単に奪い返せるような内容でないことも知った光瑠は契約だけを済ませ、今はレベルアップや技術力を向上させる方針で店を後にした。

その時に契約の対価として貰った短剣を背中腰に装着した鞘から抜き、見遣る。

――――漆色に染まった短剣は、伝説級の性能を誇る最強の武器、『漆黒王の牙剣【空王くうおう】』。

世界に百もないと言われているクラスの武器を、この世界に来て間もない光瑠は手にしていた。

それがどれだけ異常なことか知りつつも、〝テンプレ〟の一言で済ませ、深く考えることを放棄していた。

それよりも光瑠は十全に扱えるよう【空王】のスキルを使用し、体に馴染ませることを優先させることを考えた。それが昨日のことだ。

予定では昨日の午前に武器に慣れ、午後に実践で扱いを覚える気でいたが、コレともう一つ貰った短剣の使い勝手が非常に繊細で難しかったせいで、一日潰すこととなった。

夜暗くなるまでスキルを使った甲斐あってかある程度制御出来るようになりはしたが、それでも十全どころか五割の性能も発揮出来ていないのが現状で。

――――短剣術あげるかすればちょっとはマシになるんだろうが……

とこれ以上の成果は望めないと判断したため、その翌日、つまり今日、こうしてクエストを受注し、討伐へと来ているわけだった。

「あーくそ、こんなことなら上級か最上級あたりの武器貰った方が良かったかもしんね」

昨日何度唱えたかも分からない愚痴を零す光瑠。

伝説級と呼ばれる武器を二つ持つ。それがどれほど名誉で有難いことか、光瑠は理解しつつも、そう思わずにはいられなかった。

それもこれも自身のうちに燻る厨二心と、それを呼び起こす厨二度全開の武器が悪いと結論づけ、意識を切り替えようとステータスを開く。

――――――――
名前:霧雨・光瑠
レベル:9
種族:人間種
職業:盗賊
魔力:29962/29962
エクストラスキル:〈強奪〉〈万物破壊〉
スキル:〈短剣術:3〉〈無属性魔法:1〉〈闇属性魔法:1〉〈身体強化:1〉〈スカイウォーク:1〉〈察知:1〉〈プレッシャー:1〉〈死突:1〉〈状態異常無効:極〉〈採取:2〉〈鑑定:極・改〉
契約:〈相互契約:アウディア〉
称号:【解析不明】
――――――――

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品