異世界モノ【削除予定】
契約
店主の説明に光瑠は納得した。そして鑑定のアクションと、自身の使用している改バージョンのアクションを初めて知る。
常時ないしは自動で発動するパッシブスキルには発動時にアクションは無いが、任意によって使用するアクティブスキルはアクションが発生する。
そして鑑定は後者に該当する。それは改でも変わらないだろう。……余談ではあるが前者のパッシブスキルは光瑠の持つ状態異常無効などが当てはまる。
店主はそれを知っており、目が赤くなったことに反応したのだ。それも硬直してしまうほどに。
しかしそれも光瑠には理解出来た。事情は分からないが、店主には思い出深い人物が持っていたエクストラスキルと、色は違うものの同じアクションを起こす鑑定を使ったのだ。思い出が深ければ深いほど衝撃は大きいものだろう。
「それで、もう一度聞く。お前の鑑定は本当に普通の鑑定なのか?」
吸い切られたタバコの火を消し、再度問われる。
その問いにどう答えるべきか、光瑠は一瞬戸惑うものの、店主に追撃される前に決断した。
「……確かに、あんたの言う通り俺の鑑定は普通じゃない。正式な名前は〈鑑定:極・改〉。通常の極よりも強いチカラを持ってる鑑定だ」
真実を話す。それは同じように昔の話を交えて語ってくれた店主に対するお返しも込めた理由からだった。
「改だぁ? てめぇそれ本気で言ってんのかよ?」
「本気つか本当だわ。なんなら見せてやりたいぐらいだが、他の見られたら面倒だし無理だわ」
〈状態異常無効:極〉も見られてしまうからだ。非公開の機能は一つ一つのスキルではなく項目であり、エクストラスキル、スキル、称号といったふうに纏めて非公開状態になるため、鑑定を見せようとすると状態異常無効まで見られてしまうことになるのだ。
今更と言われればそれまでだが、対人においては鑑定よりも状態異常無効の方が隠匿すべきスキルなのは明白なので、教えなくて済むには越したことは無い。
しかし口頭だけで信用してもらえない場合もあるので、その時はその後の展開に身を委ねるしか無いわけだが。
「…………嘘は言ってない感じだな。そもそも嘘にしたらヘタな嘘だし……マジか……?」
ぶつぶつと独り言を喋る店主。地獄耳なので何を言ってるか聞こえており、光瑠は何とかなりそうな状況に内心安堵する。
「……取り敢えずお前の話は信じてやる。その上で聞きたい、お前、オレと契約しねぇか」
契約という聞き覚えのない言葉に眉を顰める光瑠。
レイには一通りの常識を教えて貰い、書物からもそれなりの知識は得たつもりだったが、その中に契約という言葉は出なかった。
流れや言葉からしてある程度意味は分かるが、それでも慎重に光瑠は聞く。
「契約ってのはなんなんだよ?」
「言葉の通り、オレとお前が何らかの契約を交わすことだ。オレの願いを叶える代わりにお前の願いを叶えるっつう契約なわけだ。これを破ろうとした場合、身体に激痛が走って動けなくなるんだよ」
なるほど。光瑠は契約を把握する。
「で、その契約であんたは俺みたいなガキに何を望むんだ?」
「――――奪い返してほしいもんがある」
今までの睥睨したような面はどこへいったのかと聞きたくなるほどに真摯な表情で発言した店主。
その態度から奪い返して欲しいものがどれほど店主にとって大事なものかが光瑠には良くわかった。
しかし光瑠は即答は出来なかった。情報が足りな過ぎるためだ。
「奪い返すっていうことは今持ってるのは別のヤツなんだよな、さっきの言葉に追加させてもらうが俺は鑑定だけが取り柄のただのガキで、レベルも一桁の雑魚だ。そんな俺が取り返せるもんなわけ?」
言外に自分で行けないのかと問う光瑠へ返ってきた答えは両方――光瑠にも、そして店主自身にも――とも無理だった。
「今のオレが取り返しに行けば返り討ちで殺られるだろう。そしてそれは今のお前も同じだ。だがオレとお前の違うことが一つだけある。それがお前は強くなれることだ」
オレはとある事情でレベルが上がらねぇんだ。続けざまに放たれたのはそんな嘆きだった。
「で、じゃあどうするって話だが、オレは一つ、お前に危害を加えない。二つ、全部とはいかないがここにあるものの何個かをタダでやる。三つ、お前が奪い返せると思うまでオレの願いを強制しない。これを確約する」
店主の提案した内容。それがどれだけ破格な条件であるかは光瑠でなくとも分かるほどで。
それだけに店主の考えが読めなかった。
「伸びしろが有るからってだけで俺に所持金を全ベッドするような契約をするのか?」
「誰が全ベッドするっつった。……オレはお前が嫌いだが、お前の持つチカラとお前自身は信頼に値すると考えたまでだ。それに仮にお前が奪い返せないにしろ、失うのは持ってるもんの幾つかと短い時間だ、それで取り返せる可能性が有るなら後悔はしねぇよ」
店主の奪い返して欲しいものに対する重要度の認識を、もう一度改める必要があると光瑠は判断する。
「それに……根本は違うとはいえ似たような能力持ったやつだ。ちったぁ賭けにでたくなるもんよ」
……その理由が、契約を交わそうと思った一番の理由ではないかと、光瑠には思えた。
常時ないしは自動で発動するパッシブスキルには発動時にアクションは無いが、任意によって使用するアクティブスキルはアクションが発生する。
そして鑑定は後者に該当する。それは改でも変わらないだろう。……余談ではあるが前者のパッシブスキルは光瑠の持つ状態異常無効などが当てはまる。
店主はそれを知っており、目が赤くなったことに反応したのだ。それも硬直してしまうほどに。
しかしそれも光瑠には理解出来た。事情は分からないが、店主には思い出深い人物が持っていたエクストラスキルと、色は違うものの同じアクションを起こす鑑定を使ったのだ。思い出が深ければ深いほど衝撃は大きいものだろう。
「それで、もう一度聞く。お前の鑑定は本当に普通の鑑定なのか?」
吸い切られたタバコの火を消し、再度問われる。
その問いにどう答えるべきか、光瑠は一瞬戸惑うものの、店主に追撃される前に決断した。
「……確かに、あんたの言う通り俺の鑑定は普通じゃない。正式な名前は〈鑑定:極・改〉。通常の極よりも強いチカラを持ってる鑑定だ」
真実を話す。それは同じように昔の話を交えて語ってくれた店主に対するお返しも込めた理由からだった。
「改だぁ? てめぇそれ本気で言ってんのかよ?」
「本気つか本当だわ。なんなら見せてやりたいぐらいだが、他の見られたら面倒だし無理だわ」
〈状態異常無効:極〉も見られてしまうからだ。非公開の機能は一つ一つのスキルではなく項目であり、エクストラスキル、スキル、称号といったふうに纏めて非公開状態になるため、鑑定を見せようとすると状態異常無効まで見られてしまうことになるのだ。
今更と言われればそれまでだが、対人においては鑑定よりも状態異常無効の方が隠匿すべきスキルなのは明白なので、教えなくて済むには越したことは無い。
しかし口頭だけで信用してもらえない場合もあるので、その時はその後の展開に身を委ねるしか無いわけだが。
「…………嘘は言ってない感じだな。そもそも嘘にしたらヘタな嘘だし……マジか……?」
ぶつぶつと独り言を喋る店主。地獄耳なので何を言ってるか聞こえており、光瑠は何とかなりそうな状況に内心安堵する。
「……取り敢えずお前の話は信じてやる。その上で聞きたい、お前、オレと契約しねぇか」
契約という聞き覚えのない言葉に眉を顰める光瑠。
レイには一通りの常識を教えて貰い、書物からもそれなりの知識は得たつもりだったが、その中に契約という言葉は出なかった。
流れや言葉からしてある程度意味は分かるが、それでも慎重に光瑠は聞く。
「契約ってのはなんなんだよ?」
「言葉の通り、オレとお前が何らかの契約を交わすことだ。オレの願いを叶える代わりにお前の願いを叶えるっつう契約なわけだ。これを破ろうとした場合、身体に激痛が走って動けなくなるんだよ」
なるほど。光瑠は契約を把握する。
「で、その契約であんたは俺みたいなガキに何を望むんだ?」
「――――奪い返してほしいもんがある」
今までの睥睨したような面はどこへいったのかと聞きたくなるほどに真摯な表情で発言した店主。
その態度から奪い返して欲しいものがどれほど店主にとって大事なものかが光瑠には良くわかった。
しかし光瑠は即答は出来なかった。情報が足りな過ぎるためだ。
「奪い返すっていうことは今持ってるのは別のヤツなんだよな、さっきの言葉に追加させてもらうが俺は鑑定だけが取り柄のただのガキで、レベルも一桁の雑魚だ。そんな俺が取り返せるもんなわけ?」
言外に自分で行けないのかと問う光瑠へ返ってきた答えは両方――光瑠にも、そして店主自身にも――とも無理だった。
「今のオレが取り返しに行けば返り討ちで殺られるだろう。そしてそれは今のお前も同じだ。だがオレとお前の違うことが一つだけある。それがお前は強くなれることだ」
オレはとある事情でレベルが上がらねぇんだ。続けざまに放たれたのはそんな嘆きだった。
「で、じゃあどうするって話だが、オレは一つ、お前に危害を加えない。二つ、全部とはいかないがここにあるものの何個かをタダでやる。三つ、お前が奪い返せると思うまでオレの願いを強制しない。これを確約する」
店主の提案した内容。それがどれだけ破格な条件であるかは光瑠でなくとも分かるほどで。
それだけに店主の考えが読めなかった。
「伸びしろが有るからってだけで俺に所持金を全ベッドするような契約をするのか?」
「誰が全ベッドするっつった。……オレはお前が嫌いだが、お前の持つチカラとお前自身は信頼に値すると考えたまでだ。それに仮にお前が奪い返せないにしろ、失うのは持ってるもんの幾つかと短い時間だ、それで取り返せる可能性が有るなら後悔はしねぇよ」
店主の奪い返して欲しいものに対する重要度の認識を、もう一度改める必要があると光瑠は判断する。
「それに……根本は違うとはいえ似たような能力持ったやつだ。ちったぁ賭けにでたくなるもんよ」
……その理由が、契約を交わそうと思った一番の理由ではないかと、光瑠には思えた。
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