異世界モノ【削除予定】
鑑定:極・改のチカラ
怒鳴り声が店内に響き渡る。
一般人が聞けば体を竦め、中には恐怖に気絶しかねないその怒声に、しかし光瑠は想定していたように耳を塞ぎ、緩和させていた。
殺気混じりに怒声をあげた店主は続け様に言い放つ。
「金貨三枚で何を買うってんだよ! そんなんで短剣買おうとしても精々レア度3が限度だボケ!!」
咥えていたタバコを握りしめつつ、怒鳴る男。
レア度2とは全てのアイテムに存在するレアリティのことで、ショートソードはレア度1に該当する。
「よくそんなんであんな自信満々に出れたもんだなお前は!」
いやまったくその通りだと光瑠自身思う。
ある意味求めていたようなリアクションをしてくれた店主に免じて正直に光瑠は答えることにした。
「いや、面白い反応してくれると思ったからやっただけなんで。因みに反省も後悔もする気はないっ!!」
堂々と胸を張って宣言する光瑠に、言葉を失った店主。だがそれも一瞬のことで、すぐにその表情を苛立ちに変える。
「……てめぇがなんの目的で来たかは知らないが、売れるもんはここにはねぇ。さっさと帰るこった」
清々しいクズ発言で逆に冷静になったのか、顔は渋面なものの荒々しさの減った口調で促してくる。
その落ち着きに敬意を表し出ていく。そんなタイプでは光瑠は決してなく。
「却下で。金が無いのは認めるが冷やかしで来たわけじゃないのも事実。ただこの店に俺が求めるような短剣が有れば値段を聞いておいた方が目標とかそういったもんになるし、まずは見せて欲しいと思ってるだけだ」
金額を知ればそれを目指すために稼ぐため頑張るタイプ。そう自己評価する光瑠の言い分だった。
そんな光瑠の考えを聞き、店主は数秒間沈黙したのち、溜め息をつく。
「はぁ……わーった、そんな見てぇなら持ってきてやる。だが先に言っとくが、どれもお前が頑張った程度で買える品じゃねぇと思え」
そう言い残して、店主は奥へと入っていった。
言葉通り短剣を取りに行ったのだろう。
光瑠は立ちぼうけしているのもなんだと、雑貨屋兼装飾屋と名乗るだけある数多く並べられている商品を見ていくのだった。
「おら、持ってきたぞ……って陳列商品見てんじゃねぇよ」
商品を品定めしていた客に対して店主が言う言葉じゃねぇな、などと思いつつも物色を切り上げカウンターへと戻る。
するとそこには精錬された多くの短剣が並べ置かれていた。
「数は十三匕。どれも俺が認めたモンだ」
華美なものから質素なもの、刃渡りが極端に短いものや長いものと多種多様な十三本の短剣がずらりと並んだ光景。
(確か短剣の定義ってこの世界だと刃渡りが四十センチ以下だったよな)
それ以上の長さを剣として扱い、九十センチ以上を長剣、両手で持つことを前提とした長剣を大剣と部類分けされているとレイから聞かされていた光瑠は、目の前の探検を見てそのことを記憶から掘り起こされる。
「にしてもどれも凄そうだな」
稚拙としか言いようのない評価を下す光瑠に店主は鼻で笑う。
「ハッ、凄いなんてもんじゃねぇよ。この中には国宝級、中には伝説級の武具も揃ってんだよボケが」
店主の言葉に、光瑠は「それは素直に凄いな」と称賛を口にする。それもそうだった。
――――武器にはレア度とは別にランクが存在する。
それはレア度1から10の評定と、その武器の強化値、能力、見栄えといった性能という評定を合わせた総合評価からなる。
というのも武器には同じ名称でも性能が違うものが存在する。
例えばショートソードという武器でも中には小さな火を纏う物もある。そういったものはショートソードのレア度だけで評価出来ないのだ。
そのためレア度と性能の評価からランクが振られるのだ。
光瑠の感覚では牛のランクと同じ要領で付けられるランクは、下から低級、上級、最上級、最高級、国宝級、伝説級、神器級となり、レイですら国宝級の武器は一つも持っていないと言っていた。
――――レイへの評価がかなり高いことから、国宝級ないしは伝説級の武具と言われ、光瑠が感嘆するのも無理からぬ話だった。
だからといって光瑠の心境にそれ以上の変化はなく、ランクに対しての思いというものは薄かった。
結局武具に求められるのは使いやすいかどうかだと光瑠は考えているからだ。
そもそもどうして光瑠が短剣をレイから貰ったのか。それは光瑠がレイから聞かれたためだ。なんの武器で戦うかを。
そして熟考して行き着いた答えが短剣だったのだ。
というのも光瑠は生まれてこの方、武器を身に纏って生活した経験は無い。そのため日常的に持っていてもさほど邪魔にならないものとなると小柄な武器が一番だと考え至ったのだ。
故に言う。短剣が良いと。
こうして光瑠は短剣を選んだわけだが、そんな光瑠は、どれだけ能力が強かろうとも、どれだけ――ステータスには見えないもののあると仮定して――攻撃力が高かろうとも使い勝手が悪ければ意味が無いと考えていた。
「……となると」
光瑠はまず七本の短剣を列から省く。
それらは剣身が歪だったり、変わった形をしているもの、もしくは見るからに装飾が華美なものだった。
歪で変わった形を省いたのは使い方が特殊なかんじがしたからであり。
華美なものを省いたのは、見るからに高そうだと分かるものは周囲から様々な形から目をつけられかねないからだと思ったためである。
「……なぁ、これ鑑定しても良いか?」
残った五本の短剣だったが見た目の好みに差はあっても能力が分からないので取捨選択出来ずにいた。
なので鑑定で見れば分かるだろうと聞いたのだが、店主から返ってきたのは、
「はあぁっ?」
という素っ頓狂な声だった。
一瞬なにに対しての反応か分からなかった光瑠だったが、何言ってんだこいつ、という目と、状況諸々を組み合わせて答えに辿り着く。
「あぁ、大丈夫、これでも俺鑑定に関してはプロだから」
正確には童貞プロみたいなものだろうか。なにせ鑑定経験は全く無いと言っても過言ではないのだから。
「……いや、プロって、お前残った五匕がどんだけ高いレア度や能力をしてるか分かって言ってんのかよ、なぁおい」
馬鹿にしたような、というよりは言い聞かせるような物言いの店主を無視し、光瑠は五本の短剣のうちの一本を鑑定する。
――――――――
名前:漆黒竜の牙剣【空王】
レア度:8
能力:〈重量変化〉
スキル:〈闇属性付与:極〉〈スカイウォーク:5〉〈プレッシャー:7〉〈死突:5〉
――――――――
漆色で見るからに厨二心を擽られるようなデザインは、中身も厨二心どストライクなものだった。
「うおぉ、漆黒竜って、名前からしてやばそうな武器だなこれ」
名前の部分を見て光瑠は声を上げる。
そしてその台詞に店主が更に大きな声を上げた。
「なっ!? お前、鑑定出来たのか!?」
信じていなかった(当然といえば当然である)店主は驚愕していた。そんな店主に光瑠は【空王】から目を逸らさず反応する。
「だから言ったでしょうに、プロだって。つかこれやばいですやん。重量変化とか最大五百キロで所有者には元の重量って最強だろ」
前半は店主への返答で後半は確認した能力の性能に口にせずには居られずに出たものだった。
その意図せずして漏れた言葉に、店主は愕然とした表情をする。
「う、そだろ……」
頭上辺りから聞こえた声にも反応せず、光瑠はスキルを確認したのち、顔を上げたその時、店主は光瑠の顔を見て固まる。
「――――――――」
硬直。もはや石化したといってもおかしくないほどに停止した店主を、どんだけ驚いてんだか、と思いつつ、そんな店主をほっといて、残りの四本の鑑定を進めたのだった。
一般人が聞けば体を竦め、中には恐怖に気絶しかねないその怒声に、しかし光瑠は想定していたように耳を塞ぎ、緩和させていた。
殺気混じりに怒声をあげた店主は続け様に言い放つ。
「金貨三枚で何を買うってんだよ! そんなんで短剣買おうとしても精々レア度3が限度だボケ!!」
咥えていたタバコを握りしめつつ、怒鳴る男。
レア度2とは全てのアイテムに存在するレアリティのことで、ショートソードはレア度1に該当する。
「よくそんなんであんな自信満々に出れたもんだなお前は!」
いやまったくその通りだと光瑠自身思う。
ある意味求めていたようなリアクションをしてくれた店主に免じて正直に光瑠は答えることにした。
「いや、面白い反応してくれると思ったからやっただけなんで。因みに反省も後悔もする気はないっ!!」
堂々と胸を張って宣言する光瑠に、言葉を失った店主。だがそれも一瞬のことで、すぐにその表情を苛立ちに変える。
「……てめぇがなんの目的で来たかは知らないが、売れるもんはここにはねぇ。さっさと帰るこった」
清々しいクズ発言で逆に冷静になったのか、顔は渋面なものの荒々しさの減った口調で促してくる。
その落ち着きに敬意を表し出ていく。そんなタイプでは光瑠は決してなく。
「却下で。金が無いのは認めるが冷やかしで来たわけじゃないのも事実。ただこの店に俺が求めるような短剣が有れば値段を聞いておいた方が目標とかそういったもんになるし、まずは見せて欲しいと思ってるだけだ」
金額を知ればそれを目指すために稼ぐため頑張るタイプ。そう自己評価する光瑠の言い分だった。
そんな光瑠の考えを聞き、店主は数秒間沈黙したのち、溜め息をつく。
「はぁ……わーった、そんな見てぇなら持ってきてやる。だが先に言っとくが、どれもお前が頑張った程度で買える品じゃねぇと思え」
そう言い残して、店主は奥へと入っていった。
言葉通り短剣を取りに行ったのだろう。
光瑠は立ちぼうけしているのもなんだと、雑貨屋兼装飾屋と名乗るだけある数多く並べられている商品を見ていくのだった。
「おら、持ってきたぞ……って陳列商品見てんじゃねぇよ」
商品を品定めしていた客に対して店主が言う言葉じゃねぇな、などと思いつつも物色を切り上げカウンターへと戻る。
するとそこには精錬された多くの短剣が並べ置かれていた。
「数は十三匕。どれも俺が認めたモンだ」
華美なものから質素なもの、刃渡りが極端に短いものや長いものと多種多様な十三本の短剣がずらりと並んだ光景。
(確か短剣の定義ってこの世界だと刃渡りが四十センチ以下だったよな)
それ以上の長さを剣として扱い、九十センチ以上を長剣、両手で持つことを前提とした長剣を大剣と部類分けされているとレイから聞かされていた光瑠は、目の前の探検を見てそのことを記憶から掘り起こされる。
「にしてもどれも凄そうだな」
稚拙としか言いようのない評価を下す光瑠に店主は鼻で笑う。
「ハッ、凄いなんてもんじゃねぇよ。この中には国宝級、中には伝説級の武具も揃ってんだよボケが」
店主の言葉に、光瑠は「それは素直に凄いな」と称賛を口にする。それもそうだった。
――――武器にはレア度とは別にランクが存在する。
それはレア度1から10の評定と、その武器の強化値、能力、見栄えといった性能という評定を合わせた総合評価からなる。
というのも武器には同じ名称でも性能が違うものが存在する。
例えばショートソードという武器でも中には小さな火を纏う物もある。そういったものはショートソードのレア度だけで評価出来ないのだ。
そのためレア度と性能の評価からランクが振られるのだ。
光瑠の感覚では牛のランクと同じ要領で付けられるランクは、下から低級、上級、最上級、最高級、国宝級、伝説級、神器級となり、レイですら国宝級の武器は一つも持っていないと言っていた。
――――レイへの評価がかなり高いことから、国宝級ないしは伝説級の武具と言われ、光瑠が感嘆するのも無理からぬ話だった。
だからといって光瑠の心境にそれ以上の変化はなく、ランクに対しての思いというものは薄かった。
結局武具に求められるのは使いやすいかどうかだと光瑠は考えているからだ。
そもそもどうして光瑠が短剣をレイから貰ったのか。それは光瑠がレイから聞かれたためだ。なんの武器で戦うかを。
そして熟考して行き着いた答えが短剣だったのだ。
というのも光瑠は生まれてこの方、武器を身に纏って生活した経験は無い。そのため日常的に持っていてもさほど邪魔にならないものとなると小柄な武器が一番だと考え至ったのだ。
故に言う。短剣が良いと。
こうして光瑠は短剣を選んだわけだが、そんな光瑠は、どれだけ能力が強かろうとも、どれだけ――ステータスには見えないもののあると仮定して――攻撃力が高かろうとも使い勝手が悪ければ意味が無いと考えていた。
「……となると」
光瑠はまず七本の短剣を列から省く。
それらは剣身が歪だったり、変わった形をしているもの、もしくは見るからに装飾が華美なものだった。
歪で変わった形を省いたのは使い方が特殊なかんじがしたからであり。
華美なものを省いたのは、見るからに高そうだと分かるものは周囲から様々な形から目をつけられかねないからだと思ったためである。
「……なぁ、これ鑑定しても良いか?」
残った五本の短剣だったが見た目の好みに差はあっても能力が分からないので取捨選択出来ずにいた。
なので鑑定で見れば分かるだろうと聞いたのだが、店主から返ってきたのは、
「はあぁっ?」
という素っ頓狂な声だった。
一瞬なにに対しての反応か分からなかった光瑠だったが、何言ってんだこいつ、という目と、状況諸々を組み合わせて答えに辿り着く。
「あぁ、大丈夫、これでも俺鑑定に関してはプロだから」
正確には童貞プロみたいなものだろうか。なにせ鑑定経験は全く無いと言っても過言ではないのだから。
「……いや、プロって、お前残った五匕がどんだけ高いレア度や能力をしてるか分かって言ってんのかよ、なぁおい」
馬鹿にしたような、というよりは言い聞かせるような物言いの店主を無視し、光瑠は五本の短剣のうちの一本を鑑定する。
――――――――
名前:漆黒竜の牙剣【空王】
レア度:8
能力:〈重量変化〉
スキル:〈闇属性付与:極〉〈スカイウォーク:5〉〈プレッシャー:7〉〈死突:5〉
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漆色で見るからに厨二心を擽られるようなデザインは、中身も厨二心どストライクなものだった。
「うおぉ、漆黒竜って、名前からしてやばそうな武器だなこれ」
名前の部分を見て光瑠は声を上げる。
そしてその台詞に店主が更に大きな声を上げた。
「なっ!? お前、鑑定出来たのか!?」
信じていなかった(当然といえば当然である)店主は驚愕していた。そんな店主に光瑠は【空王】から目を逸らさず反応する。
「だから言ったでしょうに、プロだって。つかこれやばいですやん。重量変化とか最大五百キロで所有者には元の重量って最強だろ」
前半は店主への返答で後半は確認した能力の性能に口にせずには居られずに出たものだった。
その意図せずして漏れた言葉に、店主は愕然とした表情をする。
「う、そだろ……」
頭上辺りから聞こえた声にも反応せず、光瑠はスキルを確認したのち、顔を上げたその時、店主は光瑠の顔を見て固まる。
「――――――――」
硬直。もはや石化したといってもおかしくないほどに停止した店主を、どんだけ驚いてんだか、と思いつつ、そんな店主をほっといて、残りの四本の鑑定を進めたのだった。
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