異世界モノ【削除予定】
原住民
森の中を(当然と言えば当然だが)宛もなく彷徨うこと一時間。
光瑠は歪な切り口の切り株に腰を掛ける。
「ふぅ……」
肉体的疲労よりは精神的な疲労から、目を閉じて息をつく。
思いのほか悪くない足場の中とはいえ、見知らぬ森を歩くのは大変なものだと再認識させられる。
とはいえ一時間の探索も無駄ではないと、光瑠は横に置いた果物を見やる。
学校指定のブレザーに包まれた各種果物、ないしは野菜。それらは鑑定によって毒等が無いと表記されたものだった。
赤く熟れた果実。ソレは『ムカエ』と呼ばれ、反ってはいないが縦に太く、皮を剥き食べるため、赤いバナナ=ムカエと光瑠は脳内変換していた。
「んむ……うまうま」
甘酸っぱい味わいが口いっぱいに広がる。腹を満たすものではないが、空腹を凌ぐには丁度良かった。
他にも緑の卵みたいな果物に、白い葉っぱの野菜他、取り敢えず今日を凌ぐだけの食べ物は確保出来た光瑠は思案に入る。
(衣食住のうち衣、食は表面上解決しているとして、問題は住だな)
木々に囲まれた森の中、野営の道具が一切無い状況下で寝るのは恐ろしいものがある。
幸い、と言うべきか、探索中は居るであろう魔物にまだ出会っていない。
しかし居ると考えた場合、おちおちとその辺で寝ることは出来ないだろう。
そうするとやはり人里を見付けるのが一番といえる。
「つってもなぁ……」
光瑠は空を見上げる。
もし日本と今現在の場所に時差が無いのだとすれば、時間は午後四時を過ぎたあたり。春先ということから暗くなるのはもう少し先になるが、それでも猶予は二時間ないしは三時間。
それまでに人里へ、というのは難しいだろう。
「……はぁ」
詰んだ。勿論普通に森の中で寝ても問題ない可能性は有るが、正直望み薄な可能性だ。
果てさてどうしたものかと頭を抱え悩ませていると、がさりがさりと茂みを掻き分ける音が聞こえた。
びくりと体を震わせ、立ち上がると共に音源――――背後へと振り返る。
魔物か。警戒する光瑠。
「……おっと、そこまで警戒しないで欲しいかな」
音源の向こうから聞こえたのは声だった。
(声…………?ということはまさか……!)
高まる期待。その期待に応えるかのように、茂みから姿を現したのか、一人の青年だった。
――――青年、と表現はしたものの、彼の見た目は光瑠の知る一般的な青年とは違っていた。
切り揃えられた薄青の髪。こちらの警戒心を解すような柔和な表情。服装は華美では無いものの、清潔感と高級感溢れる上下セットの装備。
腰には彼の武器であろう剣が拵えており、青年からは警戒は解いている様子ではあるが、もし襲おうものなら抜剣され一文字に斬られる空気が光瑠には感じられた。
日本ではお目にかかれない――コスプレイヤーなどが居るにはいるがそれは省くとして――格好をした青年がそこには居た。
「人の気配を感じたから来てみると、困ってた様子だったからね。声を掛けたんだけど……」
――勘違いだったかな?
青年から放たれた問いに光瑠は間も空けず答える。
「いや、凄い困ってた。かなり困ってた。冗談抜きに死ぬ可能性ある程には困ってた」
光瑠の言葉に苦笑する青年。
「……そんなにかい?それで、なにを困ってたのかな」
「死んだかと思ったらこの森に飛ばされたんだ」
嘘では無い。敢えて異世界を匂わせる発言はしなかったが、事実光瑠はトラックに轢かれ、死んだかと思っていたらこの森に転移していたのだから。
「嘘……では無さそうだね」
「……え、こんな嘘っぽい話、信じるん?」
疑わなかった青年に、逆に嘘だろうと光瑠が思ってしまう。それほどのことを言っているのだと光瑠自身が思っているからだ。
けれど青年は首肯して見せた。
「まぁね。僕は他人の嘘には敏感なんだけど、それで判断したんだ」
「嘘に敏感って……、スキル的なやつで?」
「そ。看破っていう相手の言葉が本当かどうか分かるスキルなんだ」
光瑠は思わず唸る。そういったスキルもあるとなると異世界人であることを隠し通すのは難しいのでは無いかと思い至ったためだ。
さてどうしたものかと悩みはするもそれは一瞬のことで、光瑠は決断する。
(言うか、異世界人だってこと)
それは青年に自身が異世界人であることを教える選択だった。
なぜそう決断したのか。その理由は様々有るが、なによりも光瑠は感じたのだ。この人なら大丈夫だろ、と。
あまりにもテキトーで、けれど一番信頼性の高い、己の勘。当たれば天国外せば地獄が待ち受ける大博打を、光瑠は勘と運に任せたのだ。
(まぁ、こういう異世界転移でこういうヤツは悪いのは少ないしな。それに実はクソ野郎で地獄が待ってるとしても、それはそれで面白そうだしな)
暢気な思考で纏めると、光瑠は口を開いた。
「まず初めに、今から言うことは事実だかんな」
「え?あ、あぁ」
いきなり話の流れを変えられ、戸惑いながらも返事をした青年に、遂に光瑠は暴露する。
「俺――――この世界とは別の世界から来たんだわ」
光瑠は歪な切り口の切り株に腰を掛ける。
「ふぅ……」
肉体的疲労よりは精神的な疲労から、目を閉じて息をつく。
思いのほか悪くない足場の中とはいえ、見知らぬ森を歩くのは大変なものだと再認識させられる。
とはいえ一時間の探索も無駄ではないと、光瑠は横に置いた果物を見やる。
学校指定のブレザーに包まれた各種果物、ないしは野菜。それらは鑑定によって毒等が無いと表記されたものだった。
赤く熟れた果実。ソレは『ムカエ』と呼ばれ、反ってはいないが縦に太く、皮を剥き食べるため、赤いバナナ=ムカエと光瑠は脳内変換していた。
「んむ……うまうま」
甘酸っぱい味わいが口いっぱいに広がる。腹を満たすものではないが、空腹を凌ぐには丁度良かった。
他にも緑の卵みたいな果物に、白い葉っぱの野菜他、取り敢えず今日を凌ぐだけの食べ物は確保出来た光瑠は思案に入る。
(衣食住のうち衣、食は表面上解決しているとして、問題は住だな)
木々に囲まれた森の中、野営の道具が一切無い状況下で寝るのは恐ろしいものがある。
幸い、と言うべきか、探索中は居るであろう魔物にまだ出会っていない。
しかし居ると考えた場合、おちおちとその辺で寝ることは出来ないだろう。
そうするとやはり人里を見付けるのが一番といえる。
「つってもなぁ……」
光瑠は空を見上げる。
もし日本と今現在の場所に時差が無いのだとすれば、時間は午後四時を過ぎたあたり。春先ということから暗くなるのはもう少し先になるが、それでも猶予は二時間ないしは三時間。
それまでに人里へ、というのは難しいだろう。
「……はぁ」
詰んだ。勿論普通に森の中で寝ても問題ない可能性は有るが、正直望み薄な可能性だ。
果てさてどうしたものかと頭を抱え悩ませていると、がさりがさりと茂みを掻き分ける音が聞こえた。
びくりと体を震わせ、立ち上がると共に音源――――背後へと振り返る。
魔物か。警戒する光瑠。
「……おっと、そこまで警戒しないで欲しいかな」
音源の向こうから聞こえたのは声だった。
(声…………?ということはまさか……!)
高まる期待。その期待に応えるかのように、茂みから姿を現したのか、一人の青年だった。
――――青年、と表現はしたものの、彼の見た目は光瑠の知る一般的な青年とは違っていた。
切り揃えられた薄青の髪。こちらの警戒心を解すような柔和な表情。服装は華美では無いものの、清潔感と高級感溢れる上下セットの装備。
腰には彼の武器であろう剣が拵えており、青年からは警戒は解いている様子ではあるが、もし襲おうものなら抜剣され一文字に斬られる空気が光瑠には感じられた。
日本ではお目にかかれない――コスプレイヤーなどが居るにはいるがそれは省くとして――格好をした青年がそこには居た。
「人の気配を感じたから来てみると、困ってた様子だったからね。声を掛けたんだけど……」
――勘違いだったかな?
青年から放たれた問いに光瑠は間も空けず答える。
「いや、凄い困ってた。かなり困ってた。冗談抜きに死ぬ可能性ある程には困ってた」
光瑠の言葉に苦笑する青年。
「……そんなにかい?それで、なにを困ってたのかな」
「死んだかと思ったらこの森に飛ばされたんだ」
嘘では無い。敢えて異世界を匂わせる発言はしなかったが、事実光瑠はトラックに轢かれ、死んだかと思っていたらこの森に転移していたのだから。
「嘘……では無さそうだね」
「……え、こんな嘘っぽい話、信じるん?」
疑わなかった青年に、逆に嘘だろうと光瑠が思ってしまう。それほどのことを言っているのだと光瑠自身が思っているからだ。
けれど青年は首肯して見せた。
「まぁね。僕は他人の嘘には敏感なんだけど、それで判断したんだ」
「嘘に敏感って……、スキル的なやつで?」
「そ。看破っていう相手の言葉が本当かどうか分かるスキルなんだ」
光瑠は思わず唸る。そういったスキルもあるとなると異世界人であることを隠し通すのは難しいのでは無いかと思い至ったためだ。
さてどうしたものかと悩みはするもそれは一瞬のことで、光瑠は決断する。
(言うか、異世界人だってこと)
それは青年に自身が異世界人であることを教える選択だった。
なぜそう決断したのか。その理由は様々有るが、なによりも光瑠は感じたのだ。この人なら大丈夫だろ、と。
あまりにもテキトーで、けれど一番信頼性の高い、己の勘。当たれば天国外せば地獄が待ち受ける大博打を、光瑠は勘と運に任せたのだ。
(まぁ、こういう異世界転移でこういうヤツは悪いのは少ないしな。それに実はクソ野郎で地獄が待ってるとしても、それはそれで面白そうだしな)
暢気な思考で纏めると、光瑠は口を開いた。
「まず初めに、今から言うことは事実だかんな」
「え?あ、あぁ」
いきなり話の流れを変えられ、戸惑いながらも返事をした青年に、遂に光瑠は暴露する。
「俺――――この世界とは別の世界から来たんだわ」
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