真の勇者は影に潜む
七:戦闘における魔法科学の実用性
クリューラレス魔術学院の<魔法科学>分野における研究テーマの一つ、<戦闘における魔法科学の実用性>。スライン・クスーランプ教授が指揮を執っている。
「スクーランプ教授。教授の研究テーマで授業を受けさせて頂けないでしょうか。」
「断る。」
「どうしてでしょうか?」
私は今、スクーランプ教授に必死に頼み込んでいる。どうやら私は教授の気に入らなかったらしい。ただ、嫌われ続けるのも大変なので、理由を聞いて改善できる事なら改善する。
「お前、入学したばかりだろ。」
「はい、そうですが……。」
「入学したばかりのやつに<戦闘魔法>はまだ早い。出直せ。」
の一点張りだった。この教授、頑固爺として学院内で有名らしい。本人は否定しているが、研究生は皆、異口同音。クスーランプ教授の頑固な出来事を語る。
「では、実戦だけでも……一度見て頂けませんか?」
「時間が無い。」
「今、休憩しているじゃないですか。」
「人間に適度な休憩は必要だ。」
私はクスーランプ教授に何度も何度も何度も頼み込んだが、無理だった。どうしてだろう。実力を見らずに実力を知ったような口を聞かれるのは些か心外である。
「では、どうして私に<戦闘魔法>は、まだ早いのですか?」
「<戦闘魔法>は高度な<魔力操術>が必要だ。それが入学したばかりのお前にこなせるとは思えん。」
「どれほどの<魔力操術>を使えれば、認められるのですか?」
「そうだな……。これぐらいならどうだ?」
そう言ってクスーランプ教授は掌を上に向けた。その指一本一本から小さな火柱が立つ。さらにその火柱は一つになって、薔薇を作り上げた。
「美しい魔法ですね。」
「あぁ、これが<魔力操術>が素晴らしいとされる所以だ。お前にこれができるか?」
「どうでしょう────」
と、言いつつ私はクスーランプ教授と同じように掌を上に向けた。そして、その指一本一本からそれぞれ違う属性の魔法を出した。
親指からは<火属性>の火柱、人差し指からは<水属性>の水柱、中指からは<風属性>の風柱、薬指からは<土属性>の土柱。そして、小指からは属性を持たない只の魔力を使った魔力の柱のようなものを出現させた。
「……なっ!」
さらに私はそれをクスーランプ教授と同じく一つに混じり合わせた。別の属性同士を混ぜる技術は、未だ完成していないようだが、私は以前も成功している。仕組みは簡単なのだ。後はその発想があるかどうか。
だが、私はその技術を見せるのはまだ早いと思った為、赤い薔薇と青い薔薇を作った。そして、枝の部分を緑の風である<風属性>で<土属性>は全体のバランスに用いた。
何故、<土属性>を全体のバランスに用いるのか。これは火、水、風、土の四大属性の効果と思ってくれれば良い。
火は万物を焼き払う属性。水は万物を癒す属性。風は万物を守る属性。土は万物を保つ属性。
この特徴を活かし、私は<土属性>で赤薔薇、青薔薇のバランスに用いた。因みにリグレット教授の魔方陣にも多少の安定化の為に<土属性>が用いられている。
私は完成した赤薔薇と青薔薇に魔力を通す事で属性を活発化させた。活発化した魔法は、さらに勢いと美しさを放つ。赤薔薇は凛とした紅に輝き、青薔薇は聖なる蒼に輝く。
名付けるならば、<紅輝ノ薔薇>と<聖蒼ノ薔薇>だろうか?
「……美しい。君はどこでそれほどの<魔力操術>を?魔力自体を操るなど私でも難しいのだが。」
「私の家でメイドをしているエスラさんが指導してくれました。」
「……エスラと言ったかね?」
「はい、そうですが。」
「まさか……な。」
クスーランプ教授は何か心当たりがあるようだ。もう少し掘り下げてみるか。
「心当たりがあるのですか、教授?」
「あぁ、昔教え子に同じ名前の天才がいたのだよ。First Nameは分かるか?」
「はい、クォーツです。」
クォーツ。日本では水晶の意だ。
「ふっ……まさか本人だとは。」
「そうでしたか?」
「ああ、私の教え子と全く同じ名前だ。間違いないだろう。これも何かの縁だ。君も授業を受けるかね?それだけの<魔力操術>があれば、<戦闘魔法>も容易いだろう。」
「ありがとうございます!」
「それと……先程まで君を貶すような事を言ってすまなかったな。」
「いえ、気にしていませんよ。」
やはり人柄は悪くないようだ。元来、<戦闘魔法>は危険がある為、<魔力操術>を先程のクスーランプ教授ほどのレベルで操れる必要がある。その域に達していなければ、危険すぎるのだ。
元々は、私の身を思っての優しさだったのだろう。それがついつい強く言ってしまったと、いうことだ。
それにしてもエスラさん……天才か。今日、帰って聞いてみるか。エスラさんの<魔力操術>のお陰だな。ビシバシ鍛えられた甲斐があった……。それにしてもあれはキツかった。
私はクスーランプ教授と共に研究室へ立ち入った。中にはリグレット教授の研究室の数倍の人数がいた。凡そ……20人ぐらいだ。
「諸君!新しい研究生を紹介する!」
研究生と呼ばれた中にいた20人程が私の方を向いた。挨拶をしろ、という事だろう。
「私はラウル・アヴルドシェインと
申します。<魔力操術>には自信がありますが、<戦闘魔法>に関しては素人の身です。これから宜しいお願い致します。」
あまり慣れない敬語で恐らく間違っているだろうが、挨拶は終えた。最後は礼をしておく。
「ラウル君か。君の<魔力操術>を見せてくれるかい?」
一人の研究生が聞いてきた。それもそうだろう。いくら<魔力操術>に自信があると言っても客観的に見たものと主観的に見たものでは差異がある。<紅輝ノ薔薇>と<聖蒼ノ薔薇>を見せる。
「「素晴らしい……。」」
誰も彼もが見とれていた。確かに自信過剰と思われるかもしれないが、この薔薇には自信がある。
「改めてラウル君、よろしく頼むよ。」
最後はクスーランプ教授が締めた。やはり研究室のリーダーだけあるのだろう。……<戦闘魔法>楽しみだ。勇者の仲間として役に立てそうな技術がやっと手に入りそうだ。
「スクーランプ教授。教授の研究テーマで授業を受けさせて頂けないでしょうか。」
「断る。」
「どうしてでしょうか?」
私は今、スクーランプ教授に必死に頼み込んでいる。どうやら私は教授の気に入らなかったらしい。ただ、嫌われ続けるのも大変なので、理由を聞いて改善できる事なら改善する。
「お前、入学したばかりだろ。」
「はい、そうですが……。」
「入学したばかりのやつに<戦闘魔法>はまだ早い。出直せ。」
の一点張りだった。この教授、頑固爺として学院内で有名らしい。本人は否定しているが、研究生は皆、異口同音。クスーランプ教授の頑固な出来事を語る。
「では、実戦だけでも……一度見て頂けませんか?」
「時間が無い。」
「今、休憩しているじゃないですか。」
「人間に適度な休憩は必要だ。」
私はクスーランプ教授に何度も何度も何度も頼み込んだが、無理だった。どうしてだろう。実力を見らずに実力を知ったような口を聞かれるのは些か心外である。
「では、どうして私に<戦闘魔法>は、まだ早いのですか?」
「<戦闘魔法>は高度な<魔力操術>が必要だ。それが入学したばかりのお前にこなせるとは思えん。」
「どれほどの<魔力操術>を使えれば、認められるのですか?」
「そうだな……。これぐらいならどうだ?」
そう言ってクスーランプ教授は掌を上に向けた。その指一本一本から小さな火柱が立つ。さらにその火柱は一つになって、薔薇を作り上げた。
「美しい魔法ですね。」
「あぁ、これが<魔力操術>が素晴らしいとされる所以だ。お前にこれができるか?」
「どうでしょう────」
と、言いつつ私はクスーランプ教授と同じように掌を上に向けた。そして、その指一本一本からそれぞれ違う属性の魔法を出した。
親指からは<火属性>の火柱、人差し指からは<水属性>の水柱、中指からは<風属性>の風柱、薬指からは<土属性>の土柱。そして、小指からは属性を持たない只の魔力を使った魔力の柱のようなものを出現させた。
「……なっ!」
さらに私はそれをクスーランプ教授と同じく一つに混じり合わせた。別の属性同士を混ぜる技術は、未だ完成していないようだが、私は以前も成功している。仕組みは簡単なのだ。後はその発想があるかどうか。
だが、私はその技術を見せるのはまだ早いと思った為、赤い薔薇と青い薔薇を作った。そして、枝の部分を緑の風である<風属性>で<土属性>は全体のバランスに用いた。
何故、<土属性>を全体のバランスに用いるのか。これは火、水、風、土の四大属性の効果と思ってくれれば良い。
火は万物を焼き払う属性。水は万物を癒す属性。風は万物を守る属性。土は万物を保つ属性。
この特徴を活かし、私は<土属性>で赤薔薇、青薔薇のバランスに用いた。因みにリグレット教授の魔方陣にも多少の安定化の為に<土属性>が用いられている。
私は完成した赤薔薇と青薔薇に魔力を通す事で属性を活発化させた。活発化した魔法は、さらに勢いと美しさを放つ。赤薔薇は凛とした紅に輝き、青薔薇は聖なる蒼に輝く。
名付けるならば、<紅輝ノ薔薇>と<聖蒼ノ薔薇>だろうか?
「……美しい。君はどこでそれほどの<魔力操術>を?魔力自体を操るなど私でも難しいのだが。」
「私の家でメイドをしているエスラさんが指導してくれました。」
「……エスラと言ったかね?」
「はい、そうですが。」
「まさか……な。」
クスーランプ教授は何か心当たりがあるようだ。もう少し掘り下げてみるか。
「心当たりがあるのですか、教授?」
「あぁ、昔教え子に同じ名前の天才がいたのだよ。First Nameは分かるか?」
「はい、クォーツです。」
クォーツ。日本では水晶の意だ。
「ふっ……まさか本人だとは。」
「そうでしたか?」
「ああ、私の教え子と全く同じ名前だ。間違いないだろう。これも何かの縁だ。君も授業を受けるかね?それだけの<魔力操術>があれば、<戦闘魔法>も容易いだろう。」
「ありがとうございます!」
「それと……先程まで君を貶すような事を言ってすまなかったな。」
「いえ、気にしていませんよ。」
やはり人柄は悪くないようだ。元来、<戦闘魔法>は危険がある為、<魔力操術>を先程のクスーランプ教授ほどのレベルで操れる必要がある。その域に達していなければ、危険すぎるのだ。
元々は、私の身を思っての優しさだったのだろう。それがついつい強く言ってしまったと、いうことだ。
それにしてもエスラさん……天才か。今日、帰って聞いてみるか。エスラさんの<魔力操術>のお陰だな。ビシバシ鍛えられた甲斐があった……。それにしてもあれはキツかった。
私はクスーランプ教授と共に研究室へ立ち入った。中にはリグレット教授の研究室の数倍の人数がいた。凡そ……20人ぐらいだ。
「諸君!新しい研究生を紹介する!」
研究生と呼ばれた中にいた20人程が私の方を向いた。挨拶をしろ、という事だろう。
「私はラウル・アヴルドシェインと
申します。<魔力操術>には自信がありますが、<戦闘魔法>に関しては素人の身です。これから宜しいお願い致します。」
あまり慣れない敬語で恐らく間違っているだろうが、挨拶は終えた。最後は礼をしておく。
「ラウル君か。君の<魔力操術>を見せてくれるかい?」
一人の研究生が聞いてきた。それもそうだろう。いくら<魔力操術>に自信があると言っても客観的に見たものと主観的に見たものでは差異がある。<紅輝ノ薔薇>と<聖蒼ノ薔薇>を見せる。
「「素晴らしい……。」」
誰も彼もが見とれていた。確かに自信過剰と思われるかもしれないが、この薔薇には自信がある。
「改めてラウル君、よろしく頼むよ。」
最後はクスーランプ教授が締めた。やはり研究室のリーダーだけあるのだろう。……<戦闘魔法>楽しみだ。勇者の仲間として役に立てそうな技術がやっと手に入りそうだ。
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