異世界ファイター ~最強格闘技で異世界を突き進むだけの話~

チョーカー

魔界トーナメント編 完

 
 「俺の名は疾風のパルプンテ! 冒険者ランク3位だ!」
 「わが名はジンナイ。シュット国王室武術師範代」
 「ワシはアゼエロ、魔道の深淵に挑む者じゃ」

 明の前に立つ3人。 
 それぞれ知り合いと言う訳でもなさそうだ。
 わざわざ、教会の最高指導者でも、魔王でもなく明を選択した所を考えれば、その戦い方に感銘を受ける何かがあったのかもしれない。

 「いいよ。全員、同時にかかって来い!」

 明は父親と同じような言葉を発した。
 だが、3人を明と戦う前に倒れた。
 彼らを一瞬で蹴散らして、明の前に立った女性が1人。

 「約束? 覚えていますか?」

 彼女は――――カスミ・カキザキはそう言った。

 「悪いが、忘れている。なんだったか?」
 「あぁ、それって挑発ですよね? 本当に忘れてるわけじゃないですよね? それって殺していいって事ですよ?」

 カスミは鞘から杖を取り出す。
 剣の形状に近い、金属性の杖。 

 「エンチャント 風属性付加 射程距離UP 切れ味UP 」

 カスミは放つ殺気。
 それは攻撃の射程距離。彼女が魔法を使用すると同時に射程が延びる。

 「せい!」

 掛け声と共に振るった剣――――いや、杖だ。
 杖から斬撃に似た魔法が放射された。
 それをサイドステップで回避した明はジャンプした。
 あまりにも無防備な姿にカスミの反応が遅れた。

 「剣豪宮本武蔵が残した言葉 切り結ぶ太刀の下こそ地獄なれ……なんだったけ?」
 「戯言を!」

 カスミは杖を振るうも遅い。

 「まぁ、剣を相手にした時は前に出ろって事だ。悪いけど、俺は女でもグーで殴れる男だ」

 明の連撃でカスミは前から倒れた。

 「さて次は――――」

 明は周囲を伺う。
 どいつもこいつも熱に当てられて、熱狂状態の乱戦だ。
 それをクスリと笑う。 
 まるで、この世の地獄で笑える者は、地獄の鬼ではなかろうか?

 「上等だ。どいつもコイツもかかってこい!」

 明は前に飛び出した。

 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 『教会』の地下。
 かつて、そこには怪物がいた。 怪物の前には巨大な瓶があり、そこに女性が入っていたはずだ。
 しかし、今は瓶がいない。 中にいたはずの女性が立っていた。

 「私の計画が……まったく、あの人は500年前から私を惑わしてばかり……」

 彼女の前にはトーナメント会場での乱闘が映し出されている。

 「私も小細工をしている場合ではなかったわ。500年間も無駄時間を過ごしました。でも――――
 愛しいあの人に会いに行くのに花束じゃなくて邪神を1匹プレゼントできただけでもよしとしましょう」

 女性は――――ロザリーは歌うように言い。踊るように歩きだした。

 

 魔界トーナメント編 

 ――― 完 ―――
 

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