異世界ファイター ~最強格闘技で異世界を突き進むだけの話~
レオの覚醒
パウンド。 寝技グランドの状態から放たれる拳による打撃の総称だ。
主に相手の上側をキープして放たれる場合が多い。
トーヤはレオの顔面を掴み、地面に押し付けている状態。
地面と腕によってレオの頭部は固定されている。
自身の腕が邪魔となり、トーヤにしてみれば打撃ポイントは狭く、精密が打撃が必要とされる。
狙いは、耳の裏側。
アンダー・ジ・イヤーと呼ばれ拳闘ボクシングでは反則とされる箇所。
人体の急所だ。
そこへ狙いを定めて――――
拳を振り落とした。
この戦いが始まって2回目。観客が耳を覆い隠したくなるほどの打撃音。
レオは自身の内部で、何かが割れるような音を聞いた。
薄れていく意識。薄れていく自身の力。
そんな中、レオは最後まで浮かび上がる疑問に答えが出せなかった。
(どうして、コイツは……動ける? 生命力を削り取ったはずなのに……)
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「トーヤの体力は二重底。摂津流に伝わる特殊な鍛錬法エクササイズによって細胞内のたんぱく質を分解。アミノ酸を体内で自作する事が可能になっている。これが新旧の摂津流が編み出した『HP吸収』対策だ」
トーヤの勝利を確信したセコンド。国栖明は誰に聞かせるわけでもなく、1人でドヤ顔を決める。
本当ならレオとの再戦時に自身が使うはずの計画プランだった。
もちろん、その計画をトーヤに提供したのレオに対して、どれほど有効か? 確かめる目的もあった。
だが、その必要性はない。 もはや、レオは意識を失っている。 いくら超絶的な回復能力があっても、この戦いの最中に意識を取り戻す事はない。
そう明は確信していた。だが――――
摂津の拳士たちは、同時に感づいた。
膨大な感情のうねり。
それが地下から現れて、レオの内部に入り込んでいる。
それは単純な力。純粋なエネルギーとしか表現できないものだ。
だが、明には心当たりがある。
「教会の地下に潜む者……」
かつて、『教会』に足を踏み入れた時に感じた存在。
それが、レオの体を借りて顕現しようとしているのだ。
「――――ッ!?」と明は躊躇する。
勝敗など関係なく、乱入してレオが――――いや、レオの内部にいる者が蠢き始めるよりも前に、ダメージを与えようと考える。
だが、体が動かない。
(威圧される? この俺が?)
ならばと明は声を張りあがる。
「トーヤ! 会場から逃げろ。アレはもう、個人が相手をする存在じゃない!」
だが、トーヤは動かない。
「そんな事は分かっているわい。せやかて、降魔摂津に後退はない。逃げるなら後ろじゃなく――――前や!」
その言葉と同時にトーヤは前に飛び出した。
そして、その言葉が聞こえていたのか――――
レオの目が開く。
爛々と赤く光る目。 それは、もはや人間の目ではない。
主に相手の上側をキープして放たれる場合が多い。
トーヤはレオの顔面を掴み、地面に押し付けている状態。
地面と腕によってレオの頭部は固定されている。
自身の腕が邪魔となり、トーヤにしてみれば打撃ポイントは狭く、精密が打撃が必要とされる。
狙いは、耳の裏側。
アンダー・ジ・イヤーと呼ばれ拳闘ボクシングでは反則とされる箇所。
人体の急所だ。
そこへ狙いを定めて――――
拳を振り落とした。
この戦いが始まって2回目。観客が耳を覆い隠したくなるほどの打撃音。
レオは自身の内部で、何かが割れるような音を聞いた。
薄れていく意識。薄れていく自身の力。
そんな中、レオは最後まで浮かび上がる疑問に答えが出せなかった。
(どうして、コイツは……動ける? 生命力を削り取ったはずなのに……)
・・・
・・・・・・
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「トーヤの体力は二重底。摂津流に伝わる特殊な鍛錬法エクササイズによって細胞内のたんぱく質を分解。アミノ酸を体内で自作する事が可能になっている。これが新旧の摂津流が編み出した『HP吸収』対策だ」
トーヤの勝利を確信したセコンド。国栖明は誰に聞かせるわけでもなく、1人でドヤ顔を決める。
本当ならレオとの再戦時に自身が使うはずの計画プランだった。
もちろん、その計画をトーヤに提供したのレオに対して、どれほど有効か? 確かめる目的もあった。
だが、その必要性はない。 もはや、レオは意識を失っている。 いくら超絶的な回復能力があっても、この戦いの最中に意識を取り戻す事はない。
そう明は確信していた。だが――――
摂津の拳士たちは、同時に感づいた。
膨大な感情のうねり。
それが地下から現れて、レオの内部に入り込んでいる。
それは単純な力。純粋なエネルギーとしか表現できないものだ。
だが、明には心当たりがある。
「教会の地下に潜む者……」
かつて、『教会』に足を踏み入れた時に感じた存在。
それが、レオの体を借りて顕現しようとしているのだ。
「――――ッ!?」と明は躊躇する。
勝敗など関係なく、乱入してレオが――――いや、レオの内部にいる者が蠢き始めるよりも前に、ダメージを与えようと考える。
だが、体が動かない。
(威圧される? この俺が?)
ならばと明は声を張りあがる。
「トーヤ! 会場から逃げろ。アレはもう、個人が相手をする存在じゃない!」
だが、トーヤは動かない。
「そんな事は分かっているわい。せやかて、降魔摂津に後退はない。逃げるなら後ろじゃなく――――前や!」
その言葉と同時にトーヤは前に飛び出した。
そして、その言葉が聞こえていたのか――――
レオの目が開く。
爛々と赤く光る目。 それは、もはや人間の目ではない。
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