異世界ファイター ~最強格闘技で異世界を突き進むだけの話~

チョーカー

トーヤ対レオ開戦

 試合開始と同時にレオは前に出る。
 しかし、トーヤは接近を許さない。

 炸裂音。

 腕よりも足よりも長いリーチであるトーヤの尻尾がレオの腹部にめり込んだ。
 追撃。2発3発と尻尾を振るう。
 レオも顔を歪めて、ガードを固める。
 その腕ごと叩き折るつもりなのか、トーヤの連撃は激しさを増していく。
 激しい連撃ゆえに気がつかないのだろうか? トーヤはジリジリと距離を詰めていた。
 当初の距離を取って戦う計画プランとは違う。
 それを見ているセコンドの明は―――― 

 「だが、それでいい」

 声を張り上げた。
 左右にガードを固めたレオ。そのガードの隙間にトーヤの拳がねじ込まれた。
 ダウン。
 開始2分13秒の早い時間帯でのレオのダウンだ。
 トーヤは倒れたレオに追撃を――――行わない。
 ダメージを与えても掴まれたら回復してしまう。
 そんな相手に寝技はあり得ない。
 やるなら、レオが立ち上がるタイミングで、さらに打撃を叩き込む事。
 そのためにトーヤは集中力を高める。やがて立ち上がってくるレオの一挙手一投足に集中して――――

 そして、レオは立ち上がった。

 若干のふらつき。足元はダメージが隠しきれていない?
 そのタイミングでトーヤは追撃を――――行わなかった。
すでにレオが回復していると判断したのだ。
 一方のレオは――――

 (やれやれ、釣られてはくれませんか。思っていた以上にクレバーですね)

 そう心の中で舌打ちをした。
 トーヤの見立てどおり、レオはダメージから回復してた。

 (早速、1人分の生命力を消費してしまいましたが……まぁ、いいでしょう。なんせ、予選と1回戦で貯めた生命力は残り149人分。ストックは十分です)

 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 一度目のダウンを味わい、戦法を変えてくると思われていたが……
 レオは同じように前にでる。
 「せぇいやぁ」とトーヤは裂帛の気合と共に尻尾を振るう。

 その音はパッキッと甲高い音のように聞こえた。

 木の枝が折られた時にする音とよく似ている。
 ガードすら放棄して無防備にトーヤの攻撃を食らったレオ。
 ヒットした腕は奇妙な方向に捻じ曲がっている。
 明らかに腕は折れている。 ――――いや、腕だけではない。
 トーヤは放った攻撃の衝撃は、腕だけには留まらずアバラ骨をも破壊する。
 この時、折れた骨が肺に突き刺さっていた。
 しかし、それでも――――レオは前に出る。
 クニャと打撃の衝撃のまま、体がくの字に曲がった状態のまま、手を伸ばしてくる。
 その姿は、まるで爬虫類。
 トーヤはバックステップで回避する。それと同時に蹴り剥がすような前蹴りで距離を取る。
 しかし、レオは前に進み続ける。
 振られた尻尾を避けると地面を這うような低い状態。
 トーヤの足首を掴むように腕を伸ばす。
 「チッ」と舌打ちをしたトーヤはジャンプで回避。そのままレオの腕を蹴る。
 両者は、そのまま間合いは広げる。 

 「まるで中国拳法の地功拳だな」

 セコンドの明はレオを体術を分析した。
 地功拳とは、倒れた状態で戦うのが特徴的な拳法であり、その反面でアクロバットな軽業も存在している。
 なら――――

 「飛んでくるぞ、気をつけろ!」

 明の言葉に反応してか? レオは一気に間合いを詰めるように飛んだ。
 それも地面スレスレのスライディングと見間違うほどの低空軌道。
 今まで、トーヤが死守してきた間合いを軽々と越えた。
 そのまま、トーヤの足に自分の足を絡み付ける。

 『カニバサミ』

 ついにレオの腕でトーヤの体に届く距離での戦いになった。

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