異世界ファイター ~最強格闘技で異世界を突き進むだけの話~
VSコスタレス戦 その③
『アキレス腱固め』
ミシミシと軋む様な異音。
明の耳はハッキリと自身の足が破壊されかけている音を聞いた。
しかし、コスタレスも同じ異音を自身の足から聞いていた。
明が仕掛けた技。それは――――
『ヒールホールド』
明とコスタレスの体格差では、従来のヒールホールドはかけれない。
そのため、直接コスタレスの足首を掴んで捻るという、かなり変形のヒールホールドになっている。
いや、もうそれはヒールホールドではないのだが……
かつて、最強の幻想種であるドラゴン相手にしかけたヒールホールドを思い出せば、まだ常識的な解釈だ。
互いに関節技を仕掛けあう我慢比べ。
先に限界が来たのは――――
コスタレスの方だ。
彼はアキレス腱固めを解き、自身の足首をキャッチしている明の手を蹴る。
それと同時にヒールホールドで捻られている方向にクルクルと地面を回る。
基本的なヒールホールドの脱出方法だ。
明のヒールホールドが解かれる。
両者のダメージは――――
技の危険度の違いが、そのまま両者のダメージ差になったのだろう。
コスタレスは立ち上がろうとする瞬間に激しい痛みを感じ、一瞬動きが止まる。
その一瞬の差が両者の明暗を分ける事になった。
「飛び独楽」
既に立ち上がっていた明が蹴りを繰り出していた。
その蹴りは超低空のとび蹴り。
地面すれすれに飛ぶそれは、いまだしゃがむコスタレスの顔面を捉える。
無防備な状態で蹴りを受けたコスタレスは、そのまま仰向けに倒れ――――
立ち上がってこなかった。
国栖 明 ―――予選通過―――
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「予想通りとは言え、魔王四天王のコスタレスを倒すなんて流石やな」
試合が終わったばかりの明へ最初に駆けつけたのは緑色の少年、トーヤ・キリサキだった。
「俺よりも負けた同門の方に声をかけてやれよ」
「アイツなら心配いらんわ。 ゴーレムだから、少々壊れても簡単に直る」
「……コスタレスの事、嫌いなのか?」と問うと冗談だと思われたらしい。
「真面目そうな顔して、冗談もうまいやないか」と笑われた。
「それにしても、そんな疲労してて本戦は大丈夫なんか?」
「まぁ、怪我らしい怪我はないさ。2、3日も休めば全快する」
「もしかして、お前知らないのか?」
「ん? 何がだ?」
「本戦、1回戦は予選終了後の当日……2、3時間後やで」
「……そうなのか」
「お前、大会の詳しい説明聞いてないかい」
「まぁ、心配ないさ。2、3時間もあれば戦える」
「全快まで2、3日って言ってたやないか……」
そんな明とトーヤの会話に割り込んでくる者がいた。
「貴様の試合、見させてもらったぞ」
ソイツはいかにも戦士風の男。
無骨な鎧に身を包み、大剣と背負っている。
「俺の名前はクロム。本戦1回戦の相手であり、時期魔王候補筆頭だ。俺の名前をその脳髄に刻み付けておくがいい」
ピリとした空気が流れる。
「魔王 国栖源高の息子と聞いていたが、優勝候補と言うのは尾びれがついた噂にすぎないみたいだな」
おそらくは挑発目的の煽り。
しかし、明よりも激しい敵意を放っている人物がいた。
時期魔王候補筆頭と名乗ったのが気に食わなかったのだろうか?
ギロリとトーヤがクロムを睨みつけ、敵意をぶつける。
だが、クロムはその敵意を簡単に流す。
「トーヤ・キリサキか。魔王四天王……ね。貴様とはいずれ当たるだろう。楽しみにしておけ」
そう言うってクロムは立ち去っていった。
「おい、明。あんなキザたらしい奴なんかに負けんなよ」
トーヤはクロムが立ち去った方角を今も睨んでいた。
「あぁ、負けないよ」と明は呟いた。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・
国栖 明 2回戦進出決定 (開始10秒 右ストレート 最短決着大会レコード記録更新)
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