異世界ファイター ~最強格闘技で異世界を突き進むだけの話~
幽鬼な女性(?)
犬を貴族に返却して依頼終了となった。
貴族側は「犬を元のサイズに戻せないか?」と困惑していたが、飼い主である娘さんは巨大化した愛犬を気に入ったみたいだった。
「追加依頼でしたら冒険者ギルドを通してお願いします」
スイカは、きっちりと闇営業ならぬ闇依頼にお断りを入れた。
しかし、実際に『魔物を食べて巨大化した犬を元に戻してほしい』なんて依頼が来たら、どうやって解決すればいいのか? 明は想像してみたが、答えはでなかった。
「それこそ、アキラさまが神殿で調理師に転職すれば、そういった食材が見つけやすくなるので?」
そうスイカに言われたが「うむ……」と明は少し納得しなかった。
この世界では神殿と言われる場所で職業を選択できるらしい。
そこで得た職業には特殊技能と言われる不思議な力を使えるようになるらしい。
これらは、父親である源高から聞いた話だ。
聞いた時は――――
「なるほど、そういうものか」
そう明は納得したが、よくよく考えてみると、学んでもいない知識が就職する事で手に入るというのは不気味なものがある。
実のところ、神殿へ行き転職するだけの貯えは十分にあるという。
例の強化ゴブリンと倒した時に手に入れた武装。
ドラゴン退治のときの鱗と爪。
それらを売り払い、手にした金額のは、ほとんど冒険者としての初期投資(主にスイカの魔剣代)に消えたのだが、それでも十分に遊んで暮らせるだけの大金は残っているらしい。
しかし、明が二の足を踏む理由は、不気味という印象だけではない。
教会に行けば冒険者の肉体を強化してくれるという、この世界独特のレベルアップ方式。
だが、その教会の地下には得体の知れない怪物が存在していて、その力を冒険者に分け与えられているという事を見抜いた今、安易にこの世界のシステムに身を任せるのは、怖いものがある。
明は、その事を誰にも話していない。もちろん、スイカにもだ。
仮に「教会の下に得体の知れない怪物がいる」と言って回れば、どうなるだろうか?
よくて、狂人扱い。最悪、牢屋にぶち込まれる。
これについて相談できるとしたら、明と同じ召喚者である父、源高くらいだ。
(救国の勇者や魔王の親父なら、教会のカラクリに気づいているはずだ。……親父と言えば)
「親父がデカイ花火を上げるとか言っていた和平交渉ってどうなっているんだ?」
「そうですね。国からの発表で、盛り上がりをみせている所ですが、具体的な情報はまだ何も……」
そう言いかけたスイカは言葉を止めた。
急に明が前に出たのだ。まるでスイカを庇うように……
「あのアキラさま?」
不安げな視線は明の表情を見る。
それは険しい表情。強敵を前に見せるものだった。
「何のようだ? ここまで気配を消して、ただ歩いていたわけじゃないだろ?」
スイカには、明が誰に言っているのかわからなかった。
場所は人気のない橋の上。 周囲には人はいなく、自分とアキラさましかいない。
少なくとも、スイカの知覚ではそうだった。しかし――――
「思っていたよりも気配に鈍感なのですね」
ユラッリと視界の隅で何かがゆれた。
その人物は――――おそらくは女性。
長く美しい金髪が前に垂れて顔を隠している。立ち姿は、まるで幽鬼のそれ。
(確か、アレは異世界の服装……着物と言う)
スイカの知識は正しい。
急に現れた女性は着物を着ていた。
黒地に桜の花。
黒の着物でありながら、派手とも言える柄。
それを花魁のように着崩している。
「何のようだ?」と明は再び問うた。
1度目とは違い、2度目は強い口調。
その口調から、明が正体不明の女性に強い警戒心を抱いている。
スイカは、そう判断して背中から、ひっそりと魔剣を抜いた。
貴族側は「犬を元のサイズに戻せないか?」と困惑していたが、飼い主である娘さんは巨大化した愛犬を気に入ったみたいだった。
「追加依頼でしたら冒険者ギルドを通してお願いします」
スイカは、きっちりと闇営業ならぬ闇依頼にお断りを入れた。
しかし、実際に『魔物を食べて巨大化した犬を元に戻してほしい』なんて依頼が来たら、どうやって解決すればいいのか? 明は想像してみたが、答えはでなかった。
「それこそ、アキラさまが神殿で調理師に転職すれば、そういった食材が見つけやすくなるので?」
そうスイカに言われたが「うむ……」と明は少し納得しなかった。
この世界では神殿と言われる場所で職業を選択できるらしい。
そこで得た職業には特殊技能と言われる不思議な力を使えるようになるらしい。
これらは、父親である源高から聞いた話だ。
聞いた時は――――
「なるほど、そういうものか」
そう明は納得したが、よくよく考えてみると、学んでもいない知識が就職する事で手に入るというのは不気味なものがある。
実のところ、神殿へ行き転職するだけの貯えは十分にあるという。
例の強化ゴブリンと倒した時に手に入れた武装。
ドラゴン退治のときの鱗と爪。
それらを売り払い、手にした金額のは、ほとんど冒険者としての初期投資(主にスイカの魔剣代)に消えたのだが、それでも十分に遊んで暮らせるだけの大金は残っているらしい。
しかし、明が二の足を踏む理由は、不気味という印象だけではない。
教会に行けば冒険者の肉体を強化してくれるという、この世界独特のレベルアップ方式。
だが、その教会の地下には得体の知れない怪物が存在していて、その力を冒険者に分け与えられているという事を見抜いた今、安易にこの世界のシステムに身を任せるのは、怖いものがある。
明は、その事を誰にも話していない。もちろん、スイカにもだ。
仮に「教会の下に得体の知れない怪物がいる」と言って回れば、どうなるだろうか?
よくて、狂人扱い。最悪、牢屋にぶち込まれる。
これについて相談できるとしたら、明と同じ召喚者である父、源高くらいだ。
(救国の勇者や魔王の親父なら、教会のカラクリに気づいているはずだ。……親父と言えば)
「親父がデカイ花火を上げるとか言っていた和平交渉ってどうなっているんだ?」
「そうですね。国からの発表で、盛り上がりをみせている所ですが、具体的な情報はまだ何も……」
そう言いかけたスイカは言葉を止めた。
急に明が前に出たのだ。まるでスイカを庇うように……
「あのアキラさま?」
不安げな視線は明の表情を見る。
それは険しい表情。強敵を前に見せるものだった。
「何のようだ? ここまで気配を消して、ただ歩いていたわけじゃないだろ?」
スイカには、明が誰に言っているのかわからなかった。
場所は人気のない橋の上。 周囲には人はいなく、自分とアキラさましかいない。
少なくとも、スイカの知覚ではそうだった。しかし――――
「思っていたよりも気配に鈍感なのですね」
ユラッリと視界の隅で何かがゆれた。
その人物は――――おそらくは女性。
長く美しい金髪が前に垂れて顔を隠している。立ち姿は、まるで幽鬼のそれ。
(確か、アレは異世界の服装……着物と言う)
スイカの知識は正しい。
急に現れた女性は着物を着ていた。
黒地に桜の花。
黒の着物でありながら、派手とも言える柄。
それを花魁のように着崩している。
「何のようだ?」と明は再び問うた。
1度目とは違い、2度目は強い口調。
その口調から、明が正体不明の女性に強い警戒心を抱いている。
スイカは、そう判断して背中から、ひっそりと魔剣を抜いた。
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