異世界ファイター ~最強格闘技で異世界を突き進むだけの話~
現れたのは異世界最強種 ドラゴン
「襲ってこなくなりましたね」とスイカ。
「あぁ、少し倒しすぎたかもしてない」と明。
30~40体ほど倒すとワイバーン達は攻撃を止めた。
空を見上げれば、こちらを警戒するように上空で旋回してる。
時たま威圧するような鳴き声を上げるが、攻撃は仕掛けてこない。
「これ、倒せないと依頼成功にならないのか?」
「そうですね。いつものセッツリュウ○○みたいな感じで倒せないのですか?」
スイカは意外そうな顔をした。
「いや、いくらなんでも遠すぎる」
確かに、摂津流には『虚無』と言われる遠距離系の攻撃がある。
しかし、それらは使用条件が限られていて、今のコンディションでは使用ができない。
どうしたものか……暫く2人で佇んでいた。
「そう言えば、ワイバーン対策の用意をしていたんじゃないか?」
「はっ! そうでした!」とスイカは雑嚢袋をゴソゴソと探り始める。
取り出したのは短剣だった。
「その短剣でどうするんだ?」
明の質問にスイカはニヤッと笑みを浮かべた。
「実は、これ炎の魔剣なのです」
昨日、4億ギルという予想外の臨時収入。冒険の必要経費としてなら、いくら使ってもかまわないと言われ、スイカが購入したが魔剣だった。 それも数本。
魔力が失われたとしてもスイカは『天才魔法使い』と言われた少女だ。
魔剣という形で、魔力そのものを別の場所から引っ張り出せば、高威力の魔法も使用可能になるのだ。
もちろん、強烈な武器だからこそのデメリットも存在する。 具体的には値段と維持費だ。
「それでは放ちます!」
スイカは空に向けて魔剣を振るう。 それと同時に業火が発射された。
不意を突かれたワイバーンの何体かは直撃。 直撃を逃れたものの羽や体の一部にダメージを受けたワイバーンたちが落下していく。
「へぇ、これは凄い!」と明も興味津々で、その様子を眺めていた。
やがて、空からワイバーンの姿が消えた。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「これで、周囲のワイバーンは倒せましたね」
依頼者が言ってた崖までたどり着いた。後はワイバーンの幼体が異常発生した理由を解明する必要があるが……
「……」
「どうかしましたか? アキラさま?」
明は返事を返さない。
この時、明が感知したものは未知の感覚。
殺気や敵意や悪意と超え、伝播してくる何者かの感情は――――
「巨大だ。感情が大き過ぎて、何に由来している感情なのか分析ができない」
明がそう言うと――――
『人間ごときが我が心情を読み取ろうとする愚考。見過ごせないないな』
それは言葉ではなかった。何かの意思が脳に叩きつけられたような錯覚。
そして――――地鳴り。
何か、巨大な存在が出現する前兆だけを刻み――――
それは現れた。
「そんな……どうして、こんな所に……」とスイカの言葉には絶望への響きがあった。
そのまま、彼女は膝から地面に崩れ落ち、自分の自分の体を抱きしめるように震えた。
そして、彼女はこう続けるのだ。
「どうして、どうして……こんな所にドラゴンが!?」
そう、それはドラゴンだった。
全身を覆う赤き鱗は鋼鉄以上の硬度を誇る。
見上げるほどの巨体から発せられる魔力は、雄弁に強さを語りかけてくる。
人を凌駕する英知。 膨大な魔力。 巨大で強固な肉体。
この世界で最強と言われる幻想種。それがドラゴンだ。
スイカが動揺するのも当然だ。
人里から、そう離れてない場所にドラゴンが出現して、今の今まで誰も気づかない不自然さ。
それは、召喚士のスイカだからこそ、わかった。
「そんな……まさか……誰かが、召喚したの? 一体、なんのために?」
その言葉にドラゴンは反応した。まるで面白そうな玩具を見つけたように表情で――――
『小娘、貴様は召喚士か? 面白い。我を倒して召喚獣として降伏させてみるか?』
それだけの言葉でスイカは全身が震えて動けなくなる。
――――否。それだけではない。 まるで魂が掴ませたかのように意識が薄れている。
(誰か、誰か助けて!)
声を出すことすら叶わず、ついに倒れていくスイカ。
しかし、彼女を支える人間がいた。
「あ、アキラさま……」
そう明だ。
「よくわからないが、ここらでワイバーンが大量発生した原因ってお前か?」
彼は、最強の存在を前にしても動じない。
なぜなら、彼は――――
過去に様々な『最強』と呼ばれる存在に挑み勝利してきた男なのだから――――
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