異世界ファイター ~最強格闘技で異世界を突き進むだけの話~
階級と依頼とレベル
明たちは、ギルド内にある喫茶店に入った。
「何はともあれ、俺も冒険者か。それで、依頼ってのは、どうやって受けるんだ?」
「基本的には、窓口で個々の階級によって宛がわれることになります」
「階級? じゃ、レベル99の俺は、どの依頼でも受けれるって事か?」
「いや、階級とレベルは違うものです。階級は組合への貢献度……緊急性の高い依頼受注。その受注頻度や成功率。それらの査定を受けて昇格していくシステムです。昇格していけば、難易度と報酬が高い依頼が受けれるようになります」
「なるほど、多くの依頼を受けて、素早く解決させればいいのか。……ん?」
明は、クエスチョンマークを浮かべる。
それに気づいたスイカは「どうかしました?」と尋ねた。
「そう言えば、強化種ゴブリンとか依頼内容に齟齬があった場合、ボーナスポイントみたいなのはないのか?」
「そうですね。細かい査定内容は組合が秘匿しているので、正確にはわかりせん。ただ、組合の想定外の出来事、設定された難易度を大きく逸脱した依頼に成功した場合、階級昇格大きく影響がある……とは言われています」
「おそらく、突発的な異常への対応力が隠し評価なのでしょう」とスイカは続けた。
「それで、最初の階級は白から始まります」
「白?」
「証明書の色と同じですね」
「あぁなるほど」と明は証明書を取り出した。
一度、紛失したら再発行されないと説明され、スイカと同じように鎖を購入して首から下げれるようにしていた。
「階級が昇格していけば、証明書の色も変わるのか」
「はい、種類は6つ。白から始まり、青、緑、赤、黒、金……最後の色は公開されていません」
「公開されていない?」と明は聞き返した。
「えぇ、階級性が始まって500年といわれていますが、最上階級にたどり着いたのは僅かに10名だけです。だから、最上階級が何色なのか? それは、もう歴史的検証みたいになっちゃってますね」
「ふ~ん、気の遠くなる話だ」と明は欠伸をした。
「まぁ、レベルって概念がよくわからないけど、俺のレベル99ってどのくらいだ?」
「……わかりません」
その答えに「ん?」と明は首を横に曲げた。
「あの時は数値そのものの異常性に目が向いていたのですが……」
「……いたのですが?」
「なんですか! レベル99って!?」とスイカは立ち上がり絶叫した。
「今、驚いて騒ぐ所なのか! ここで叫ぶなよ。他のお客さんにも迷惑だろ」
「そ、そうですね。私としたことが取り乱しました」
「気にするな。お前が取り乱すのに、なんだか慣れてきたよ」
「う、うぅ、お恥ずかしいです」とスイカは大人しく席に座る。
「そんなにレベル99って凄いことなのか?」
「それは、もう……才能がある冒険者が鍛錬を重ね、困難に立ち向かい、生涯を賭けた末にたどり着けるかどうかの極地だと言われいます」
しかし、明は――――
「ん~ それはおかしいな」
「何がおかしいのですか?」
「いや……今、俺の年齢は17歳だ」
「はい、存じていますが?」
「つまり、まだ成長期の真っ只中にいるわけだ」
「……これから、さらに強くなると?」
ゴクリと喉を鳴らすスイカに対して、明は、どこか暢気で――――
「レベル99以上の数字って出てくるのかなぁ」
まるで他人事のように言った。
「そう言えば、スイカのレベルっていくつだったけ?」
「私は48ですよ」
「それじゃ、魔力が0になった今の状態から、俺を召喚した当時の魔力までレベルを上げるには、単純に倍のレベル96まで上げないといけないって事か?」
「いえいえ、まさか。レベル96なんて命がいくつあっても足りませんよ」とスイカは首を横に振った。
「レベルアップに対して、魔力増加量は個人差があります。私の場合は魔法使いタイプなのでレベルが上がれば上がるほど、魔力が伸びが大きくなっていきます。具体的にレベル60前後なら、再びアキラさまを元の世界に戻れる魔力量になると思います」
「なるほど」と明は、何か思いついたように――――
「当面は、組合の依頼からイレギュラーが起こりやすそうなのを積極的に選んで、数多くこなして階級を上げる。階級を上げながら難易度の高い依頼をこなして、スイカのレベルを上げる……でいいか?」
「はい、そうですね……って、わざとイレギュラーが起こりやすそうなの依頼を狙って受けるって難しくないですか?」
スイカの言うとおりだ。
あからさまに不審な依頼なら、ギルドも難易度を高めに設定する。
明が言っている事は、プロであるギルドですら気づかないような裏がある依頼を選別して受けると言うことだ。
だが――――
「そんなに難しいことじゃないさ」
明はポケットから紙を出した。数は10枚ほど……
それはギルドの窓口で貰った初心者向けの依頼が書かれた紙だ。
「この中からイレギュラーが起きる確率の高い依頼を選んでみせる」
明は、そう宣言した。
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