異世界ファイター ~最強格闘技で異世界を突き進むだけの話~

チョーカー

冒険者登録 スイカのステータス

 明たちが、冒険者組合ギルドに来た目的はゴブリン退治の依頼完了の報告と報酬をもらう事だけではない。
 ここに来るまでの道中、スイカと相談して明も冒険者として登録する事になったのだ。
 戸籍のない自分が公共機関のようなものに登録できるのか? と明は疑問にも思ったが、そこら辺の審査は甘いらしい。 
 なんせ、命の価値が低い世界だ。
 ある日突然、住んでいる場所に魔物が現れ、焼き尽くされる。
 戸籍なんて、あってないようなもの……

 「アキラさま。クズ アキラさま。こちらの窓口にどうぞ」

 ギルドの受付で名前が呼ばれた。

 「本日は、どのようなご用件でしょうか?」と受付嬢。
 満面の営業スマイルが炸裂している。

 「えっと、冒険者として登録したいのでけど……」
 「はい、わかりました。何かご身分を証明できる物をお持ちでしょうか?」 
 「いえ、何もありません」
 「……そうですか。では、こちらの登録申請用紙に記入をお願いします」

 「はい」と明は羽ペンを手に取り、紙に目を通す。
 当然ながら、それは難解な異世界の文字で書かれている。
 本来なら、明には解読不可能なはずだが……不思議ながら、目を凝らせば何が書かれているのか理解できる。
 どうやら、スイカの『英雄召喚の儀式』で召喚された時、必要最低限の知識が頭に流れ込んでいたらしい。 言語が違うはずのスイカと苦もなく会話ができるのが、その証拠だ。

 (しかし、勝手に頭の中を弄られたみたいで、いい気はしないな)

 そう苦笑しながら、明は記入用紙を読み終えた。
 そこに必要なのは「名前」「年齢」「性別」「職業」「国」の5つ。
 明は「職業」と「国」の部分だけ悩んだ。
 職業の記入例を見ると「戦士」や「魔法使い」と書かれている。

 (俺の場合は武道家ってやつだな)

 さらさらとペンを走らせ、ついでに「国」も素直に日本と記入した。

 「できました」と受付嬢に用紙を渡す。
 「では、こちらに手を触れてください」はタブレット端末のような物を差し出してきた。

 「これは?」
 「こちら、お客様の指紋と魔力波形を登録させていただいています。また、同時に冒険者証明書ライセンスに表示される数値ステータスの読み取りも行います」

 「こう……で良いですか?」と明は触れると、一瞬だけ激しい光を発した。
 「はい、結構でございます。 証明書ライセンス発行が終わりましたら、お呼びしますので、あちらの椅子にかけてお待ちください」

 そう言って受付嬢は窓口から部屋の奥に向かって行った。
 明は言われた通りに椅子に腰を下ろした。

 「どうでしたか?」と待っていたスイカが近づいてきた。

 「ん~ 問題はないみたいだ。今のところは……そう言えば、ライセンスの実物ってどんな感じになるんだ?」

 「少し待ってくださいね」とスイカは――――
 自分の胸元に手を突っ込んだ。

 「えっと……あれ? おかしいな。どこにいったのでしょうか」

 そのまま、モゾモゾとまさぐっている様子はよろしくない。
 女の子が自分の胸元に手を入れる様子はビジュアル的には非常によろしくない。

 「よいしょ、よいしょ……んっ、あっ、これは……違う。……ふぅ」

 もしかし、わざとやってるのか? ほら、周囲のお客さんもチラチラみてるじゃないか。
 若干、空気がピンク色に変わってるじゃないか。

 「あっ、ありました!」

 ジャジャジャジャーンと取り出したのは白色のプレート。
 よく見ると銀の鎖をつけてペンダントにしている。
 明は米軍の認識票ドッグタグを連想したが、間違っているわけではないだろう。
 おそらく、認識票と同じ目的だ。
 持ち主が冒険の途中で息を引き取り、個人が特定できないほどの損傷を負っても、誰かが特定できるように……
 明は、少しだけ嫌な感じがした。

 一方でスイカはお気に入りの玩具を見せるように――――

 「それで、こうやって指で擦ると……ほら、私の数値ステータスが表示されました」

 明も、異世界転移や異世界転生のお約束となっている数値ステータスの存在に興味があった。
 凝視するために顔を近づけたため、スイカの顔色が赤くなっていってる事に気づいていない。

 名前 スイカ・ザ・ガジェッド

 年齢 19歳

 職業 召喚士 サブ職業 魔法使い

 レベル 48

 体力 85 

 魔力 156(魔力異常状態)

 攻撃力 55

 魔法攻撃 211

 防御力 88

 俊敏性 115


 他にも、使用可能な魔法らしき名前が書かれていたが、名前だけでその効果まではわからない。
 それぞれ魔法名の横に(封印状態)と書かれている。
 たぶん……というよりも間違いなく俺を呼び出した『英雄召喚の儀式』によるペナルティだろう。

 「これだけ見ると、大体100の数字が冒険者としての平均なのか?」

 「そうですね。個人に資質に左右されるそうですが、大体レベル50前後だと、ステータスの平均は100に近づくって話ですね」

 素っ気無い返事だが、普通の冒険者の1.5倍の魔力と2倍の魔法攻撃が可能だと考えれば……

 「スイカって冒険者として優秀な部類みたいだな」

 「え? そんな褒めないでくださいよ」としなを作った。

 (いや、この数値の2倍までスイカを鍛え上げないと、俺は元の世界に帰れないのか……これはキツそうだな)

 そんなことを考えていると、受付嬢が明の名前を呼んだ。

 

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